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大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマ『ドン・キホーテ』【バレエ鑑賞メモ】

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2023/24のカルロス・アコスタ版『ドン・キホーテ』を鑑賞しました。

当初1月26日(金)から2月1日(木)まで上演の予定でしたが、TOHOシネマズ日本橋では2月8日(木)までのアンコール上演が決定。

私は2月1日(木)に鑑賞しましたが、この日も満席。チケット売り切れで、ガッカリしている人を見かけました。

バレエ『ドン・キホーテ』アンコール上映決定! | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2019/20アコスタ版『ドン・キホーテ』の鑑賞メモはこちら。キトリは高田茜ちゃんです!

www.balletaddict.com

 

公演・上演概要

『ドン・キホーテ』全3幕 英国ロイヤル・バレエ団

収録日:2023年11月7日

【振付】カルロス・アコスタ、マリウス・プティパ
【音楽】レオン・ミンクス
【デザイナー】ティム・ハットリ―
【照明】ヒューゴ・バンストーン
【ステージング】クリストファー・サンダース
【指揮】ワレリー・オブシャニコフ
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

【出演】
ドン・キホーテ:ギャリー・エイヴィス
サンチョ・パンサ:リアム・ボズウェル
ロレンツォ(キトリの父):トーマス・ホワイトヘッド
キトリ:マヤラ・マグリ
バジル:ギャリー・エイヴィス
ガマーシュ(金持ちの貴族):ジェームズ・ヘイ
エスパーダ(闘牛士):カルヴィン・リチャードソン
メルセデス(街の踊り子):レティシア・ディアス
キトリの友人:ソフィー・アルナット、前田紗江
二人の闘牛士:デヴィッド・ドネリー、ジョセフ・シセンズ
ロマのカップル:ハンナ・グレンネル、レオ・ディクソン
森の女王:アネット・ブヴォリ
アムール(キューピッド):イザベラ・ガスパリーニ
ファンダンゴのカップル:ミーシャ・ブラッドベリ、ルーカス・B・ブレンスロド

【上演スケジュール】

解説+インタビュー 19分

第1幕 52分

休憩 11分

解説+インタビュー 14分

第2幕 34分

休憩 12分

解説+インタビュー 11分

第3幕 46分

この日の公演は、チャールズ国王とカミラ王妃が鑑賞。国王が着席する際の劇場の様子なども映されていました。

いつものように、上演前に芸術監督ケヴィン・オヘア、幕間には振付のカルロス・アコスタや小道具の管理を担当するスタッフの方が登場。出演ダンサーたちや衣裳・美術のティム・ハットリ―のインタビュー映像も流されました。

幕間に登場した、タイトなスーツ姿のカルロス・アコスタは現役時代と変わらず、スレンダーでカッコよかった!

 

英国ロイヤル・オペラ・ハウスの公式youtubeチャンネルより。

ギャリー・エイヴィス、マヤラ・マグリ、マシュー・ボールのインタビューや、リハーサルの映像を見ることができます。

www.youtube.com

ゴールデンカップル!マヤラ・マグリとマシュー・ボール

なんと言っても、マヤラ・マグリの天性の明るさや活力に溢れたムードが、キトリにぴったり!マシュー・ボールのシャープで若々しいバジルも魅力的でした。テクニック、特に回転系のキレが素晴らしい。

実生活でもカップルであることが知られる2人だけに、パートナーリングの息もぴったり。1幕の片手リフトなども余裕を感じさせ、落ち着いて観ていられます。

2人そろって長い脚のラインが美しく、組んだときの体型のバランスもいいですね。

リアム・ボズウェルのサンチョ・パンサが気になる

『ドン・キホーテ』では主演以外のキャストの名演を観るのも楽しみ。

いつもは好青年なイメージのジェームス・ヘイですが、ガマーシュが予想外に似合ってました。表情が豊かでキュート。

カルヴィン・リチャードソンのエスパーダも素敵だった。酒場でエスパーダの目線だけで女の子が倒れちゃうシーンがありますが、それも納得のカッコよさ。踊りに重厚さと迫力がありました。

闘牛士たちの中ではルーカス・B・ブレンスロドが光ってた。イザベラ・ガスパリーニのアムール(キューピッド)もチャーミング!

 

そして今回もっとも気になるキャスティングだったのはリアム・ボズウェルのサンチョ・パンサ。ベテランのキャラクターアーティストが演じる役なのかなと思っていましたが、リアム・ボズウェルは2019/20シーズン入団、2023年にファースト・アーティストになったばかりの若手。公式サイトの写真に見覚えがある…と思ったら、昨年の英国ロイヤル・バレエ団の来日公演で上演された『田園の出来事』でコーリャ(息子)を演じたダンサーでした。コーリャのソロの踊りがクリーンでキレがあり印象的だった。(私は観られなかったけど、来日公演では、ウィリアム・ブレイスウェル、ジョセフ・シセンズ、レオ・ディクソンと共に『FOR FOUR』にも出演していますね。)

サンチョ・パンサは、3幕最後にストリート・キッズ(街の悪ガキ4人組)たちと一緒に登場し、キレキレのピルエット・ア・ラ・スゴンドを披露していました。こんなに踊るサンチョ・パンサははじめて見た。サンチョ・パンサ体型になるためには、かなりの肉襦袢を身体につけてるはずですが、リアム・ボズウェルすごいな。

それにしてもなぜ彼がサンチョ・パンサに?演技力を買われて??ご本人のインスタグラムを見ると、すでに先シーズンから『くるみ割り人形』のハンス・ピーター/くるみ割り人形を演じているんですね。サンチョ・パンサからくるみ割り人形まで、振り幅がすごい。これからどんな役を踊るのか、気になるダンサーになりそうです。

リアム・ボズウェルのインスタグラムより。

ハンス・ピーター/くるみ割り人形を演じるリアム・ボズウェル。

 
 
 
 
 
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アコスタ版のキモは3幕なのかも

ダンサーたちが声をあげたり、舞台でギターの生演奏が行われたり、と大胆な演出も多いアコスタ版ですが、3幕の結婚式の設定もこの版ならでは。

3幕のキトリとバジルの結婚式のシーンは、貴族の館とか庭園みたいな場所で、高貴そうな人たちに見守られながら、と言うパターンが一般的で、1幕のバルセロナの街とは別世界。でもアコスタ版ではバルセロナの街中で、1幕にも登場してる街の人たちに祝福されながらの結婚式です。庶民の物語に徹しているところが潔いし、1幕から物語が途切れないところが魅力ですね。

ドン・キホーテの馬には人が入ってた!

幕間で行われた小道具管理のスタッフの方のインタビューも面白かった。

この作品には300個以上の小道具があるらしい。小道具はすぐ壊れるので修理も大変とのことでした。確かにカップとか放り投げたりしますしね。

驚きだったのは、ドンキホーテが跨って登場する藁と金属でできた大きな馬。あの馬の中には人が入ってた!馬の胴体部分に操作する人の上半身を入れ、足はそのまま外に出ていて歩いて馬を動かしてる。脚には馬と同じような衣裳をつけて馴染ませてるということでした。

3幕でドン・キホーテが馬に乗って去っていくシーンを注意して見たら、確かに馬の後ろ脚の間に人間の脚が!今まで全く気がつきませんでした。

2幕の場面転換が秀逸

美術でもみどころの多いアコスタ版。

印象的なのは2幕のジプシーと風車の場面から、夢の場へと転換するところ。それほど大きく背景を変えていないのに、荒涼としたジプシーたちの野営地から、エキゾチックな花が咲き乱れる夢の場へと転換するデザインが見事です。

 

衣裳については、酒場のシーンのエスパーダの緑の衣裳が好き。主役より派手、しかも主役は着替えていないのにエスパーダは衣裳チェンジ!闘牛士たちやファンタンゴの衣裳も素敵です。

夢の場のチュチュも独特の装飾がきれい。この版はアムール(キューピッド)もチュチュなのですが、キトリは白、森の女王は黄色、アムールは水色と意表をついた配色。3幕のキトリの友人のベージュとラベンダーが段々になったスカートも可愛かった。

おわりに

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2023/24のバレエの次回上演作品は『くるみ割り人形』。2024年2月16日(木)からです。

くるみ割り人形 | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。

『NHK バレエの饗宴2024』【バレエ鑑賞メモ】

2024年のバレエ鑑賞はじめは、『NHK バレエの饗宴 2024』から。

永久メイさん、金子扶生さん、中村祥子さん、米沢唯さんという、まさに今観たいダンサー勢揃いの公演でした。

この公演はNHK Eテレで放映されます。

放送予定:2024年2月18日(日)21:00〜 NHK Eテレ「クラシック音楽館」

*2024.2.18追記

小澤征爾さんの追悼番組放送のため、『NHKバレエの饗宴』の放送は延期になりました。放送日は決まり次第発表とのことです。

*追記

放送日は以下になります。

2024年4月14日(日)14:30〜17:00
Eテレ「クラシック音楽館」

前回、『NHK バレエの饗宴 2022』の感想はこちら↓

www.balletaddict.com

 

公演概要

『NHK バレエの饗宴 2024』

2024年1月27日(土)17:00開演

NHKホール

指 揮:井田勝大
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【上演スケジュール】

第1部(約40分)
L’heure bleue
休憩(20分)
第2部(約50分)
『眠りの森の美女』からグラン・パ・ド・ドゥ
『くるみ割り人形』からグラン・パ・ド・ドゥ
(舞台転換)
幻灯(改訂版)

休憩(25分)

第3部(約35分)
『ドン・キホーテ』第3幕

東京シティ・バレエ団「L’heure bleue(ルール・ブルー)」

振付: イリ・ブベニチェク
音楽: バッハ、モーツァルト、ボッケリーニ

舞台美術・衣裳デザイン:オットー・ブベニチェク

バレエミストレス:若林美和
出演: 岡博美、平田沙織、植田穂乃香、折原由奈、石塚あずさ、吉留諒、沖田貴士、福田建太、岡田晃明、林高弘

イリ・ブベニチェク振付作品。はっきりしたストーリーはないけれど、ひとりの女性を巡っての恋の駆け引きなどが、ちょっとユーモラスに表現された洒落た作品でした。

絵画がモチーフになっていて、大小の額縁が効果的な装置や小道具として登場します。絵画の中からダンサーたちが飛び出してくる感じが印象的。

衣裳・美術のデザインはイリ・ブベニチェクの双子の弟、オットー・ブベニチェクによるもの。バロック調のクラシックな衣裳と、スピーディーで躍動感のある現代的な振付の組み合わせが新鮮でした。なかでもバロック調の長い男性の上着に短パンに素足という、女性用の衣裳がカッコよかった。

オットー・ブベニチェクのYouTubeチャンネルより。

www.youtube.com

ノースカロライナ・ダンス・シアター、2013年とあるので、おそらく世界初演時の映像ですね。東京シティ・バレエ団のレパートリーは曲数を増やしたスペシャル・バージョンとのことです。

永久メイ&フィリップ・スチョーピン『眠りの森の美女』からグラン・パ・ド・ドゥ

振付: コンスタンチン・セルゲーエフ(プティパ版に基づく)
音楽: チャイコフスキー
出演: 永久メイ(マリインスキー・バレエファーストソリスト)
フィリップ・スチョーピン(マリインスキー・バレエファーストソリスト)

永久メイさんの、柔らかにしなる上半身、高く高く挙げられたアチチュードの脚のライン…溜め息がでます。もともと長い手脚が、踊りはじめるとさらに長く見える。体の7〜8割が脚みたいな感じ 笑。

生まれ持った資質、絶え間ない努力、強靭な精神力、すべて兼ね備えてる人なんだろうなと、改めて感じさせる見事な踊りでした。

永久メイさんのインスタグラムより。

 
 
 
 
 
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金子扶生&ワディム・ムンタギロフ『くるみ割り人形』からグラン・パ・ド・ドゥ

振付: ピーター・ライト(イワノフ版に基づく)
音楽: チャイコフスキー
出演: 金子扶生(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)

陳腐な例えですが、金子扶生さんの大輪の花のようなゴージャスな輝きと、ワディム・ムンタギロフのピュアな輝き。2人とも眩しすぎます。

ワディム・ムンタギロフのノーブルでありながら温かみのある踊りは、いつ観ても心に沁みる。パートナーリングも本当に丁寧。

白にオレンジのアクセントが入ったキラキラの衣裳も素敵でした。

金子扶生さんのインスタグラムより。衣裳は英国ロイヤル・バレエ団の『くるみ割り人形』のものですが、髪とティアラは全幕とは違いますね。

 
 
 
 
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中村祥子&小㞍健太 「幻灯」(改訂版)

振付: 小㞍健太
音楽:マックス・リヒター (録音音源)
出演:中村祥子(Kバレエカンパニー名誉プリンシパル)、小㞍健太

振付協力・指導:渡辺レイ

衣裳:matohu

幕が開くと、朝靄のようなスモークの中、白い衣裳と素足で踊り始める中村祥子さん。やがて祥子さんのうしろに影のように寄り添う黒い衣裳の小㞍健太さん。その姿が舞台の黒い床にくっきりと映り込みます。まるで水面に映っているみたい。

前の演目からの舞台転換がやや長めだったのですが、きっとこの床を張っていたんですね。

祥子さんは素足で踊り始め、途中でポアントになり、最後はまた素足に戻る。

表題の「幻灯」とは、強い光を照らして映写幕へ映してみせる装置のことで、舞台に自自身を投影させるダンサーたちの「瞬間を記録する」という意味を込めた。

パンフレットに書かれたこの一文のとおり、おふたりのダンサーとしての長いキャリアと現在が投影された舞台に強く引き込まれました。

衣裳はファッションブランド”matohu”によるもの。祥子さんの白いレースの衣裳は、雪の結晶のデザインとのことで、様々な文様の6角形がつなぎ合わされた凝ったものでした。

小㞍健太さんのインスタグラムより。リハーサルの動画。

 
 
 
 
 
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新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』第3幕

振付: マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
改訂振付: アレクセイ・ファジェーチェフ
音楽:ミンクス

美術・衣裳:ヴァチェスラフ・オークネフ

照明:梶 孝三
出演:   

キトリ:米沢唯

バジル:速水渉悟

ドン・キホーテ:趙 載範
サンチョ・パンサ:福田圭吾

ボレロ:川口藍、中島瑞生
グラン・パ・ド・ドゥ
第1ヴァリエーション:山本涼杏
第2ヴァリエーション:直塚美穂

新国立劇場バレエ団の2023/24シーズンの開幕作品『ドン・キホーテ』より第3幕。セットも立ち役の貴族たちもすべて全幕公演通りの豪華版。プログラムの最後にふさわしい、明るく華やかな舞台で、客席も盛り上がりました。

グラン・パ・ド・ドゥコーダで、米沢さんの手のポジションを変えつつ、さらに扇子を開閉しながらの回転とか、もう人間業じゃない…。速水渉悟さんのキレも素晴らしい。

新国立劇場の公式YouTubeチャンネルで、このふたりのグラン・パ・ド・ドゥのコーダが観られます。

www.youtube.com

昨年秋の新国の全幕も米沢唯さんと速水渉悟さんの組を観ました。今回メインのキャストは、ほぼこのときの全幕公演と同じでしたが、ボレロのキャストだけは違ってた。中島瑞生さんのソロの踊りが久しぶりに観られて嬉しい。中島さんののキャラクターダンス、派手さがあり、カッコよくて好きです。

おわりに

大好きなダンサーたちの踊りを観られただけでも満足!なのですが、前回『NHK バレエの饗宴 2022』の「Pas de quatre(パ・ド・カトル)」や「Variations for four(バリエーション・フォー・フォー)」のように、バレエ団の垣根を越えての夢の共演が観られる演目がなかったのは、少し残念でした。ああいう演目は、お金も時間もかかって大変ではあるとは思うのですが…贅沢ですかね…。

 

ダンスマガジン2024年3月号には、中村祥子さんと小㞍健太さんのリハーサルレポートが掲載されています。

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。

2023年に観たバレエをまとめて振り返る その3【バレエ鑑賞メモ】

昨年観たバレエ公演やバレエシネマをまとめて記録。その3です。

鑑賞メモを投稿済みの公演については過去記事を貼っておきます。

 

2023年3月

ハンブルク・バレエ団『ジョン・ノイマイヤーの世界 Edition 2023』

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映画『ヌレエフ:伝説と遺産』

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ハンブルク・バレエ団『シルヴィア』

2023年3月11日(土)18:00開演

東京文化会館大ホール

音楽:レオ・ドリーブ
振付・ステージング:ジョン・ノイマイヤー
装置・衣裳:ヤニス・ココス

指揮:マルクス・レティネン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【キャスト】

シルヴィア: 菅井円加
アミンタ: アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ: アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン: クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン: ヤコポ・ベルーシ

【上演スケジュール】

第1部 1時間5分
休憩 25分
第2部、第3部 50分

 

2023年に印象的だった公演ベスト5には確実に入る『シルヴィア』。菅井円加さんをはじめとするダンサーたちの素晴らしさや、作品世界へ強く引き込まれる感覚が忘れられません。

そして、ヤニス・ココスの衣裳・美術が、4半世紀たってもまったく古びていないのも驚きです。

カーテンコールではジョン・ノイマイヤーも登場し、熱狂的な拍手を受けていました。芸術監督退任前にハンブルク・バレエ団が来日してくれたことに感謝!

幕が上がる前から始まるノイマイヤーの演出

SNSで上演前に何かが起こるらしいとの情報を得て、早めに劇場に到着。上演前の舞台には弓矢の的が置かれ、バックにはブルーの空に白い三日月が出ている。

開演少し前になると、緑のドレスと白いパンツの男女(1幕の”森”を演じるダンサーたち)が、舞台に登場し、ゆっくりと動き始める。徐々に観客の注目が舞台上に集まって、客席が静まりかえると、舞台の幕開け。女狩人たちが2階の客席にも現れて、的に矢を放つというドラマティックな演出で一挙に物語に引き込まれます。

開演前の無粋なアナウンスなしでも、自然に観客が舞台に集中して幕が開く。新鮮な体験でした。

幕間の休憩の前後も同じような演出がありましたが、ちょっとトイレに行くタイミングの見極めが難しかった 笑。

3つの舞踏詩

ノイマイヤーの『シルヴィア』は3部構成。パートごとにまったくイメージが異なります。パンフレットには「神話をテーマとした3つの舞踏詩」という言葉が。"舞踏詩"という言葉が、本当にこの作品にぴったりだなと思いました。

パートごとにタイトルもついているのですが、当日の配役表では、

第1部 弓の技術

第2部 感覚の世界

第3部 冬の太陽

けれど、公演パンフレットに載っていた「ノイマイヤーによるあらすじ」のところに書かれていたのは、ちょっとちがっていました。

第1部 デイアナの聖なる森

第2部 アムール/オリオンの宴

第3部 冬

 

第1部 弓の技術=デイアナの聖なる森

なんと言っても、アンナ・ラウデール演じるディアナを筆頭に、革のベスト、黒のショートパンツ、素足にポアントで弓を持って踊る女狩人たちのかっこよさ!

シルヴィアを演じる菅井円加さんのしなやかさ、躍動感は群を抜いていました。ひとつひとつのパが、くっきりとした輪郭で浮かび上がってくる感じ。

アミンタとシルヴィアの出逢いのパ・ド・ドゥでは、徐々に距離を縮めていく2人の繊細な表現に引き込まれます。菅井円加さんとアレクサンドル・トルーシュは、ユニゾンで踊るときのシンクロぶりも完璧。

赤いキャップに赤いサロペットで登場するアムールは、クリストファー・エヴァンズ。

ガタイがよくて迫力のあるタイプが多いハンブルク男性ダンサーの中で、軽快な雰囲気のクリストファー・エヴァンズは、物語を影で操る役回りにぴったりでした。『ジョン・ノイマイヤーの世界』でも、ノイマイヤーの分身を演じていましたね。

デイアナの想い人で、永遠の眠りにつかされた美しい羊飼いエンディミオン役のヤコポ・ベルーシのちょっと甘いムードも印象的だった。ゆっくりと動き続けるエンディミオンから目が離せませんでした。

第2部 感覚の世界=アムール/オリオンの宴

ムードはガラッと変わり、真紅のドレスを着たシルヴィアと燕尾服姿のアムール/オリオン、正装の客人たちが、真っ白なモダンな空間で踊る官能的な2部。2部の菅井円加さんの洗練された美しさも神々しい。

タキシードだったり、燕尾服だったり、ドレスシャツ姿だったりの男性客人たちの中で、気になったのはひとりだけ上半身裸だった長髪のダンサー。裸で目立つということを差し引いても、存在感があった。おそらく、ガラでも目立っていたダヴィッド・ロドリゲス…だったと思う。

 

第3部 冬の太陽=冬


3部の核は、年月を経て再び巡り合った年老いたシルヴィアとアミンタのパ・ド・ドゥ。可愛らしいピチカートの音楽とは、不釣り合いにも思えるちょっとクラシックで垢抜けない感じの服装のシルヴィアとアミンタ…

ガラ公演で上演されるのを観るたびに、ちょっとどう観ていいのかわからない感じがあったのですが、全幕を観てやっと腑に落ちた感じ。

パ・ド・ドゥを踊ったあと、シルヴィアは落ち着いた紳士然とした男性とともに立ち去ります。この男性は誰なのか?死?

シルヴィアが去った後の、膝を抱えるトルーシュの哀しい瞳が印象的。

アミンタは聖なる森に現れるときも、立ち去るときも、「森を守ろう」という日本語のスローガンが書かれた看板を担いでいました。パリ・オペラ座の昔の映像などでは、それらしきものは出てこない。ジョン・ノイマイヤーからのメッセージでしょうか。

Kバレエ・カンパニー『白鳥の湖』 

2023年3月22日(水) 14:00開演

Bunkamura オーチャードホール

芸術監督/演出/再振付:熊川哲也

原振付:マリウス・プティパ / レフ・イワーノフ 

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 

指揮:井田勝大 管弦楽:シアター オーケストラ トウキョウ

衣裳・舞台美術:ヨランダ・ソナベンド / レズリー・トラヴァース

照明デザイン:足立恒

【キャスト】

オデット/オディール:日髙世菜
ジークフリード:山本雅也
ロットバルト:堀内將平

王妃:山田蘭

ベンノ(王子の友人):関野海斗   

家庭教師:ビャンバ・バットボルト
パ・ド・トロワ:岩井優花、吉田周平、成田紗弥

4羽の白鳥:山田夏生、吉田早織、塚田真夕、辻梨花

2羽の白鳥:小林美奈、戸田梨紗子

6人の姫:成田紗弥、岩井優花、佐伯美帆、辻久美子、吉岡眞友子、長尾美音

ナポリ:山田夏生、吉田早織、栗原柊、本田祥平

チャルダッシュ:戸田梨紗子、グレゴワール・ランシェ

塚田真夕、辻梨花、世利万葉、藤吉沙季、金瑛揮、武井隼人、本元光、森雅臣

マズルカ:川本果侑、島村彩、丸山さくら、清水理那、吉田周平、岡庭伊吹、髙橋芳鳳、中井 皓己

スペイン:高橋怜衣、栗山結衣、布瀬川桃子、今本和佳、杉野 慧、栗山廉、奥田祥智、山田博貴

【上演スケジュール】

プロローグ・第1幕・2幕 70分

休憩 25分

第3幕・4幕 65分

2021年春の日髙世菜さん主演の『白鳥の湖』の配信を観たのがきっかけで、日髙さん推しになったので、今回日髙さんのオデット/オディールを舞台で観るのを楽しみにしていました。

日髙さんの細く伸びやかな手足のライン、端正なテクニックは、オデット/オディールを踊るために生まれてきたダンサーのようです。配信のときより、のびのびと大胆になった印象。踊りの緩急がよりはっきりし、ギリギリまで攻めていくような音の取り方が印象的でした。

ジークフリート王子は山本雅也さん。このふたりが主演で組むのははじめてかな?

長身の日髙さんとのバランスからいうと、若干身長が足りない感じはあるのですが(失礼!)、相性はよかった気がする。ふたりの気持ちの交流が感じられる2幕、後悔と悲嘆にくれる4幕と、感情のこもった踊りでした。

関野海斗さん(退団されてしまいましたね…)の軽快なベンノ、岩井優花さん、吉田周平さん、成田紗弥さんによる躍動感のあるパ・ド・トロワ、小林美奈さんのダイナミックな大きな白鳥も印象に残りました。

 

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマ『赤い薔薇ソースの伝説』

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新国立劇場バレエ団『DANCE to the Future 2023』

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パリ・オペラ座バレエ団 シネマ『眠れる森の美女』

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おわりに

公演4回にシネマ3本の3月。内容も濃厚な味わいのものが多く、見応えありました!

★最後までお読みいただきありがとうございました。