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『英国バレエの世界』山本康介【バレエの本】

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元バーミンガム・ロイヤル・バレエのファーストソリスト、ローザンヌ国際バレエコンクールの解説でもおなじみの山本康介さん。最近は自らのインスタグラムでおこなうオンラインレッスンでも注目を集めていますね。その山本康介さんの初の著書「英国バレエの世界」。

ダンサーが自ら書く本というと、自伝的なものが多いですが、こちらの本では自伝的な要素もありつつ、英国バレエの歴史や作品解説が語られています。ダンサーが実際に踊った経験を通して語る、歴史や作品紹介は面白かった!

『英国バレエの世界』の内容のご紹介と感想を書きたいと思います。

『英国バレエの世界』目次

  • はじめに
  • Part1 僕の来歴と現在について
  • Part2 英国バレエの“歴史”と“今”に迫る
  • Part3 英国的おすすめ演目を徹底解説!
  • Part4 バーミンガム・ロイヤル・バレエの仲間との思い出話
  • Special Movie
  • あとがき

Part1 僕の来歴と現在について

Part1は山本康介さんがバレエを始めてから、ロイヤル・バレエ・スクール、バーミンガム・ロイヤル・バレエを経て、振付家、指導者、解説者として活躍する現在までの軌跡。

たくさんのエピソードから、幼少の頃から才能溢れる少年だったことがうかがわれます。踊りの才能に加えて、ロイヤル・バレエ・スクール宛にレッスンを見学させて欲しいと、自ら手紙を書いて見学の機会を得、それがスクール入学につながるなど、物怖じしない行動力が印象的。

バーミンガム・ロイヤル・バレエ退団の理由については、若くてエネルギーがあるうちに次のステップへ、と比較的あっさりと語られています。これだけの才能がある人が30歳にならないうちに退団というのは、ちょっと不思議な気もするのですが、今の活躍をみていると、踊るだけでは終わらないご自身の才能を自覚されていたんでしょうね。

指導者としてのパートでは、日本の指導方法についても少しふれられていますが、大人バレエにおいても参考になるポイントも。

僕がRAD(Royal Academy of Dance)でいいなと思うことの一つに、「おへそから頭のほうへ上に引っぱる、そしておへそから下に足を引っぱる」とまず習うことがあります。…(中略)…日本ではどうも上へ上へとの意識が強くて、両方に引き合うという意識がおろそかになっているのではないでしょうか。

実際に使うのは「つま先」ではなく「足首」なのです。「つま先を伸ばして」ではなく、「足首のラインに気をつけなさい」というのが、僕が実際に使う言葉なのです。

 

Part2 英国バレエの“歴史”と“今”に迫る

Part2は、世界のバレエ史、英国バレエの歴史、個性あふれる英国のカンパニーの紹介、英国の2大振付家であるアシュトンとマクミラン、現在活躍中のイギリス人振付家、マーゴット・フォンティーン吉田都さん、ロイヤルスタイルについて、各国のバレエの特徴、と盛りだくさんの内容。

バレエの歴史や振付家について書かれた本はたくさんありますが、この本では実際に踊った人の視点が入っていることがとても興味深い。特にアシュトンとマクミランについては面白かった。

グループワーク(群舞)も面白いものが多いアシュトンに比べ、マクミランはグループワークに関しては情熱が薄かったのではないかと分析しています。

ダンサーの立場からいえば、マクミランの作品は“固有名詞のある役”をもらわないと、正直踊っていてあまり面白くありません。

 

しかしながら、そうした不満を完全に払拭してしまう魅力に溢れているのが、彼のパ・ド・ドゥです。

なるほど!『ロミオとジュリエット』を観ていても、確かに主要人物の印象しか残らない…群衆のシーンでは、踊りよりもそれぞれの演技が、舞台に奥行きを与えている感じ…

山本さんは、マクミランはとにかく物語や主題を観客に伝えることを第一に考えるタイプの芸術家なのだと分析し、人間への興味と洞察力に根ざしたパ・ド・ドゥの魅力を讃えています。

Part3 英国的おすすめ演目を徹底解説!

こちらのパートも読み応えあり!ダンサーの視線が生きていて、通常の作品ガイドとは一線を画すものがあります。

作品のあらすじや成り立ちと、演目によってはピーター・ライト版の魅力、山本さんの踊った役についてなどについて語られます。『白鳥の湖』をはじめとする誰もが知る古典から、日本では観る機会が少ない『火の鳥』や『チェックメイト』まで、13作品が掲載されています。

興味深かったのは『Symphony in 3 Movements』の章で触れられているバランシンの魅力。

ダンサーとしては、バランシンのバレエはテクニック的な難しさと疲労感が適度にくるので、とても充実感があります。

バランシン作品を観ると、もしこんなバレエが踊れたらどんなに気持ちがいいだろうと感じることが多いので、なんだか納得。

Part4 バーミンガム・ロイヤル・バレエの仲間との思い出話

バーミンガム時代の同僚、佐久間奈緒さん、厚地康雄さん、平田桃子さんとの特別対談。裏話満載で興味津々で読みました。(佐久間奈緒さんと厚地康雄さんの結婚については、対談の中でも世界3大びっくりニュースと言われているので、仲間内でも驚きだったことがわかります。)

海外で苦労を共にしてきた4人の連帯感を感じるエピソードの数々。山本康介さんのキャラクター、結構尖っているけど暖かく、憎めない感じ、が伝わってくるパートでした。

Special Movie

本についているQRコードから、山本康介さんの特別指導動画が視聴できます。「眠れる森の美女」のオーロラのバリエーションと「くるみ割り人形」のバリエーションをジュニアに指導しています。

オーロラのバリエーションの指導で、山本さんがお手本を何度か見せているのですが、男性であり、どちらかと言えばがっちり体型でオーロラとはほど遠い(失礼!)山本さんが、ある瞬間オーロラに見える!実際にこの役を舞台で踊られているわけではないのに…。動きの意味や本質を教える指導は、見ているだけでもためになります。

公開中の指導動画のショートバージョン↓

www.youtube.com

おわりに

バレエを観るのが好きな人にも、踊るのが好きな人にもおすすめです。

こういうスタイルの本で「ロシアバレエの世界」「フランスバレエの世界」「米国バレエの世界」も読んでみたい。どなたか書いてくれないでしょうか…

 

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★最後までお読みいただき、ありがとうございました。