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大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

『トゥシューズのすべて』を読みました【バレエの本・大人バレエつれづれ】

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最近、大人バレエ 界隈で話題の本といえばこれ!『トゥシューズのすべて』

「私たちはなぜ輝くサテン地のシューズに魅せられるのか?」

表紙に書かれているこの言葉に深く頷きつつ、ページをめくりました。

本の内容のご紹介や感想です。

 

『トウシューズのすべて』 編集・著 富永明子

誠文堂新光社 定価2,200円+税

トウシューズのすべて | 株式会社誠文堂新光社

表紙は小野絢子さんの美しいアラベスクの写真。

ちなみに私が購入した本も、出版社のサイトで紹介されているものもこの表紙なのですが…

bookfan楽天市場店の商品ページは、なぜか表紙が違う!

アチチュードのポーズを斜め後ろから撮ったカット。こちらも素敵ですね。

文字のレイアウトも少し違います。パイロット版でしょうか?

そのうち変更されてしまうかもしれませんね。

富永明子さん『バレエ語辞典』の著者。ちなみに『バレエ語辞典』でイラストを担当していた丸山裕子さん(幻冬舎plusの連載「大人バレエの世界」でもおなじみ)が、今回の本でもイラストを担当しています。

 

『トウシューズのすべて』というだけあって、さまざまな角度からトウシューズを解説していて、とても読み応えがありました。バレエを習っている人にも、バレエを観る人にも楽しめる内容になっています。

本文は歴史、作り方、選び方、見つけ方、鍛え方、踊り方、加工の仕方、怪我の防ぎ方、魅せ方、進化、という10のパートに分かれています。

さらに、10月にお亡くなりになった牧阿佐美さん吉田都さんへのスペシャルインタビュー、トウシューズでトレーニングする堀内將平さん(Kバレエカンパニー)と海外トウシューズ事情についての西村奈恵さん(ノルウェー国立バレエ団)のコラムも掲載され、盛りだくさんの内容です。

 

意外におもしろかったのは、「作り方」。普段目にすることない、シルビアとチャコットの工場での工程が、写真で紹介されています。トウシューズは想像以上に手間がかかるハンドメイドだということがよくわかりました。「トウシューズ高いなぁ…」と思っていましたが、これを見ると納得です。

 

自分に合うトウシューズを探している方には「見つけ方」。比較的入手しやすいトウシューズ101足が掲載されたこのパートは、36ページのボリュームがあります。すべてのトウシューズについて5方向(上、裏、横、前、後)から撮影された写真付き。実際に履いてみないとわからないとはいえ、撮影アングルが統一されているので比較しやすい。トウシューズ売り場にいく前の予習によさそうです。

 

「踊り方」では、小野絢子さん(新国立劇場バレエ団)、渡辺恭子さん(スターダンサーズ・バレエ団)、織山万梨子さん(牧阿佐美バレエ団)のトウシューズで踊ることに関するインタビューが掲載されています。これまでのトウシューズ歴や加工方法、どんな作品でどんなトウシューズを用意するのか、トウシューズで踊るときに気をつけていること、どんなトレーニングをしているのか…。三人三様の答えが興味深い。

印象的だったのは、小野絢子さんがソリストや主役を踊るようになってから、練習量が増えて足裏のアーチが上がり、足のサイズが小さくなったというエピソード。小野さんのような方なら、元々アーチは上がっていたはず。そこからさらにトウシューズのサイズが変わるほどアーチが上がる…プロの鍛錬のすごさを感じました。

渡辺恭子さんが、フォーサイス振付の『ステップテクスト』に挑戦したときのエピソードにも驚いた!リハーサル期間の2ヶ月間、上半身を鍛えるために、両手に2kgのバーベルを持ってバーレッスンしたといいます。

 

9月に『舞踏の情熱』で渡辺恭子さんの『ステップテクスト』を観たときの記憶が蘇りました。↓

www.balletaddict.com

 

トウシューズの「魅せ方」には小山恵美さん(スターダンサーズ・バレエ団/バレエミストレス)、湯川麻美子さん(新国立劇場バレエ団/バレエミストレス)が登場。長年のダンサーとして活躍し、現在は多くのダンサーを指導しているおふたり。最近のダンサーの特徴や指導方法、バランシン、フォーサイス、マクミラン、アシュトン、プティ…振付家によって異なるポワントワークの特徴など興味深いお話がたくさん。バレエを鑑賞するときに理解を深めるのにも、役立ちそうな内容でした。

 

そして吉田都さんのスペシャル・インタビューは圧巻。あまりに繊細で微妙なコントロールのもとに成り立っているポワントワークのお話は、もう異次元です。インタビューの最後、トウシューズを履くことで行ける”違う世界”は「ダンサーが長い時間をかけ、大変な努力を積み重ねてようやくたどり着ける世界」との言葉の重みに心打たれました。

おわりに

観客として観ているときは、夢のような別世界に誘ってくれるトウシューズ。

自分が履くときには、履いた途端に自由を奪われ、自分に不足しているものをイヤというほど突きつけてくるトゥシューズ。(←こんな人は履いてはいけないんですよね、本来は 汗)

奥深いトウシューズの世界への理解を深めることができた一冊でした。

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。