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「審査員」が語る!ローザンヌ・トーク〜島﨑徹×齊藤亜紀×加治屋百合子 参加レポート【Hearts for Artists/バレエのイベント】

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ヒューストン・バレエ団プリンシパルの加治屋百合子さんが代表をつとめるアーティスト支援のプロジェクト〈Hearts for Artists〉(ハート・フォー・アーティスト)のオンラインイベント。プロジェクトは8月2日(日)までで一区切り。

頻繁に参加していたイベントが終了してしまい、ちょっとしたロス状態に…笑。気を取り直して、まだあげていない参加レポートがたくさんあるので、少しずつ記事にしていきます。

今回は7月19日(日)に開催された『「審査員」が語る!ローザンヌ・トーク~島﨑徹×齊藤亜紀×加治屋百合子』の参加レポートです。

ちょうど、コロナの影響で放送が遅れていた2020年ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝の放送が8月16日(日)15:00からNHK Eテレで放映になるタイミング。審査員目線でファイナルを鑑賞するのも楽しそうです。

〈Hearts for Artists〉のイベントの収益は公益基金《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。 今回もZoomウェビナーのシステムを利用したイベントで参加費用は1,000円でした。

*トークの言葉遣いなどは正確ではありません。およその内容としてご覧ください。

島﨑徹さん、齊藤亜紀さんのプロフィール

今回は加治屋百合子さんを含め、全員がローザンヌ国際バレエコンクールの審査員経験者。島崎徹さんはコンテンポラリー課題曲の振り付けを担当された経験もお持ちです。

齊藤亜紀さんのプロフィール

1991年 ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラーシップを受賞し、ベルギー王立アントワープバレエ学校に留学
1994年 ベルギー・ロイヤル・フランダースバレエ団にハーフソリストとして入団
1995年 ソリストに昇格
1998年 ファーストソリストに昇格
2004年 プリンシパルに昇格
2018年 現役を引退

現在はベルギー王立アントワープバレエ学校で後進の指導にあたる。
ローザンヌ国際バレエコンクールでは2002年、2003年、2007年、2017年と審査員を4回務めている。

島崎徹さんのプロフィール

1990年 SITTER SCHOOL OF DANCING(カナダ)のバレエ部門主任兼振付家に就任。 1998年 日本舞踊批評家協会新人賞受賞
1999年 ローザンヌ国際バレエコンクール審査員
2001年〜2003年 ローザンヌ国際バレエコンクールコンテンポンラリー課題曲の振付けを手がける
20011年 ローザンヌ国際バレエコンクール審査員
2011年〜2013年 ユースアメリカグランプリジャパン審査員

世界各国のバレエ団に振り付けるほか、宝塚歌劇団やミュージカルの振り付けも手がける。2005年度より神戸女学院大学音楽学部舞踊専攻教授。

 

齊藤亜紀さんと加治屋百合子さんは2010年に青山劇場で上演された「ローザンヌ・ガラ」で共演。そして島崎徹さんは、加治屋さんが出演した2013年の「ローザンヌ・ガラ」の芸術監督をされていました。

ローザンヌは特別なコンクール

ローザンヌ国際バレエコンクールはスイスのローザンヌで毎年開催される15歳から18歳までを対象とするコンクール。スイスの非営利団体が開催し、若手ダンサーの登竜門として知られています。

島崎さん「非常にクリーンなコンクール。出演者のことを第一に考えている」

斎藤さん「ローザンヌは本番で失敗しても大丈夫。たまたま失敗したのか、普段できていたのか、審査員には見えている。その日の出来だけを見てるわけではない」

非常にクリーンということはクリーンでないコンクールもあるということかな(笑)

単にその時の舞台の出来を競うのではなく、将来有望な子供を見出し、プロになるための環境を提供するという目的のはっきりしたコンクールがローザンヌ。その目的のために審査方法を絶えず更新させているということでした。

審査員は何を見ているのか?

出場者の将来性を見抜くには、審査員は何を見ているのか?気になるところです。

まず3人で話されていたのは、例えばクラシックが素晴らしくコンテンポラリーが良くない子の場合、ローザンヌなら帳尻合わせる。つまり(ファイナルで)クラシックを見たいからコンテにすごく悪い点はつけないということです。

斎藤さん曰く「その子をもう一度観たいか?」が何よりも大切ということ。

そして、グッドラーナーであるか(学べる子であるか)、目、受け答え、先生への反応、一週間での成長。また学校関係者からすると、自分の学校に入ってその子がハッピーでいる姿が描けるか

これは、レッスンでの審査がかなり重要になりそう。審査員は審査がない日のレッスンも見るそうです。

 

そしてやはり基礎は大切。

出場者のポテンシャルや伸び代はどこを見るのかという質問には、

斎藤さん「基礎は大切、体の条件をどう使っているか。人を惹きつける何か、音楽性など学んだものでない何か」

島崎さんからは「日本では舞台とバーレッスンが結びつかないことがある。ヨーロッパでは基礎と舞台は比例する」という指摘がありました。

日本では一つのバリエーションに取り組む期間が長く、バリエーションが素晴らしくても、初めての先生のクラスに対応できない出場者もいるそう。

 

そして現実的なアドバイスとしては「濃いメイクはしない!

加治屋さん「アジア勢はメイクも濃く、衣裳も派手すぎる」

その年齢ならではの良さが隠れてしまうようなメイクはしないことが重要なようです。

コンテンポラリーは何歳から?

ローザンヌの審査にコンテンポラリーダンスが加わったのは1999年から。現代のバレエダンサーにはクラッシックとコンテンポラリーの両方が求められるというのは異論がないところでしょうが、視聴者からの「コンテンポラリーは何歳からやらせるのがいいか」という質問にはおふたりの回答は別れていました。

 

島崎さん「バレエ団に入ってからでもいい。エクストリームなものは別かもしれないが、バレエ団のディレクターは自分のバレエ団にあうコンテンポラリー作品を買って来るもの。やりたいならやればいいし、もっと自由に体を動かすということをやってもいい。頭を柔らかくメンタルバリアを作らない人で、バレエがしっかり踊れていれば大丈夫」

 斎藤さん「国にもよる。ヨーロッパはコンテ、クラシック半々。(入団した時に)両方踊れる子の方が活躍できる」

 現実的には、コンテをやらないとローザンヌにも出れないわけなので、島崎さんの答えは「極端に言えば」ということなのでしょう。

ヨーロッパではクラシックとコンテンポラリーの境が曖昧で、よりコンテンポラリーが踊れることが重視される傾向にあるようです。アメリカの方がコンサバティブということでした。

コンテンポラリーへの比重が大きくなってきている理由としては、バレエ団の経済事情もあるとのこと。お金がかかるクラシックに比べ、オーケストラがいらない場合もあり、衣装もシンプルであることが多い

この傾向はコロナ禍でさらに加速するかもしれません。バレエ団の経済状況はますます苦しくなっており、感染を防ぎつつ公演をするためにも、大人数での大掛かりな作品はやりにくくなりそう

コンクールが舞踊を変えつつある

コンクール全盛時代の今、コンクールが舞踏を変えつつあるという話題も。

島崎さん「(踊りが)心ではなく目に訴えるものになってしまっている

「白鳥が何幕あるか知らずに、白鳥のバリエーションをやっている子がいる」

 

そして島崎さんが世界のバレエ団と仕事をする時、ダンサーが休憩中、世界共通で熱心に練習するパはピルエットだといいます。「ピルエットだけが数字に置き換えられるパだから」

なるほど~。コンクールの影響で、分かりやすい基準があるもので競いあう傾向が強くなっているということでしょうか。

さらに「テクニックが優れているのと、アートであるかどうかは別問題。こういう時期だからこそ本当のアートが必要、その場の空気が変わるということは映像ではわからない」というお話には深く納得。空気が変わる…わかりますね。コロナで舞台公演から遠ざかっている今、生の舞台が本当に恋しい。

これから求められるダンサーとは

これから求められるダンサー像については、

島崎さん「今ヨーロッパでは”リアルな人”を探していて、それが舞台の上でも求められている」

加治屋さん「”こうでないといけない”ではなく(それはもう古い)、自分の個性や自分がどんな人間なのか…アメリカン・バレエ・シアターに入った時、みんなが(目標として)ソロを踊りたいのだろうと思っていたが、違った。それぞれに自分なりのゴールを持っていて驚いた」

斎藤さん「10代なら10代の良さがある。現在の自分を受け入れることが大切。みんなが同じゴールを目指す必要はない」

 

作られた振る舞いは見抜かれてしまうこれからのダンサーには、作り物ではないリアルな個性が求められているということでしょう。

Hearts for Artists〉今後の予定

バレエチャンネルで【Hearts for Artists】のイベントのアーカイブ映像の有料配信がスタートしました!

27イベントのうち21イベントが配信されています。見逃したイベントもあるのでこれは嬉しい。また参加したイベントの映像を視聴する場合は割引クーポンが適用されます。

販売終了日は2020815日、視聴は購入日から1週間の期間限定ですのでお見逃しなく!

この有料配信の収益も《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。

balletchannel.jp

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》について

〈Hearts for Artists〉が寄付を行う《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》は、コロナ禍で大きな影響を受けた舞台芸術に携わるアーティスト・クリエーター・スタッフ(個人・団体・企業問わず)の今後の活動に向けた金銭的支援を目的として設立された基金です。

2020年8月25日までクラウドファンディングで寄付を募っています。一口3,000円から寄付が可能です。

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》https://www.butainomirai.org/

おわりに

ローザンヌ国際バレエコンクールのみならず、バレエという芸術の将来を見据えた熱のこもった議論が繰り広げられました。その時代に求められるダンサーを育成するために、常に審査方法を変化させているローザンヌ。今回のコロナ禍で、舞台芸術の置かれる状況も大きく変化しそうですが、ローザンヌもまた変わっていくのでしょうね。

また、島崎さんがあくまでもバレエは才能があり、選ばれた肉体が踊るものとしながらも、才能がない子供でもバレエをやる意味はあると言われていたのが印象的でした。自分でどうにかできる部分でやることをやる経験が、その子が何か才能のあるものに出会った時に生きてくると。

自分でどうにかできる部分でやることをやる全くレベルが違う話ではあるのですが(笑)大人バレエにおいても胸に刻んでおきたい言葉です。

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。