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小林十市×加治屋百合子×山本康介スペシャル座談会レポート!【Heart of Artists/バレエのイベント】

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ヒューストン・バレエ団プリンシパルの加治屋百合子さんが中心になって立ち上げられたアーティスト支援のプロジェクト〈Hearts for Artists〉(ハート・フォー・アーティスト)のバレエダンサートークイベント。最近は週2回、3回と開催されていてレポートが追いつきません(笑)

今回は7月9日(木)に開催された「小林十市×加治屋百合子×山本康介オンライン・スペシャルトーク!」の参加レポートです。

〈Hearts for Artists〉のイベントの収益は公益基金《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。今回もZoomウェビナーのシステムを利用したイベントで参加費用は1,000円

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 コアなファンを持ちバレエチャンネルの連載でもおなじみの小林十市さん、著書の「英国バレエの世界」やインスタライブのレッスンでも話題の山本康介さんという異色の顔合わせですが、実はプライベートでも親交があるというおふたり。

今までのトークイベントはゲストに加治屋さんが質問するQAの形式が基本でしたが、今回はまさにクロストーク。予想外のお話が次々に飛び出す、とても濃い内容でした。

中でもスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SABで学んだ小林さんとアメリカン・バレエ・シアター(ABTで活躍していた加治屋さんが語るニューヨークのバレエ事情は興味深かかったです。印象に残った部分をレポートします。

*言葉遣いなどは正確ではありません。およその内容としてご覧ください。

3人の出会いは2000年のローザンヌ

開始時間の少し前に入室すると、すでに3人がお揃いでお話がスタートしていました。

山本康介さんはネイビーに白い星がプリントされたTシャツ、小林さんはグレーのTシャツ、加治屋百合子さんは黒いレースのトップス(もしかするとワンピース)で登場。山本さんは日本、小林さんは南仏、加治屋さんはアメリカヒューストンのそれぞれのご自宅からという、3カ国をつないだ対談です。

まずは3人の出会いから。

山本さんと加治屋さんは2000年のローザンヌ国際バレエコンクールに出場。当時小林さんはベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)に在籍していて、奥さんのクリスティーナさんと観にきていたそうです。出会いといっても、3人が同じ場にいたということで、特に親しく言葉を交わした訳ではなかったようです。

ちなみに2000年ローザンヌは、清水健太さん、木田真理子さん、大貫真幹さんと日本人大活躍の年。加治屋さんはスカラシップ賞受賞。当時英国ロイヤルバレエスクールで学んでいた山本康介さんは「セミファイナルで落ちた」とのことでした。(小林さん自身が出場した時もセミファイナルで落ちたとおっしゃっていました。)

 

3:20あたりから加治屋さんの2000年ローザンヌでのジゼルのバリエーションが出てきます↓

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2000年ローザンヌには堀内元さんが審査員で、ケヴィン・マッケンジーABT元プリンシパル、現芸術監督)、イーサン・スティーフルABT元プリンシパル)も来ていたという話の流れで、小林十市さんから加治屋さんに、「百合子さんはケヴィン・マッケンジーの伝説をご存知ですか?」と質問が。

「知っています。映像を持っています」と加治屋さん。その伝説とは、ABTでケヴィン・マッケンジーがナタリア・マカロワと『ロミオとジュリエット』を踊ったとき、3幕でケヴィン・マッケンジーが衣裳の上にスウエットパンツを着たまま出てきたという話!

この話をきっかけに、メール・パーク(元英国ロイヤル・バレエ団)は舞台にレッグウォーマーをしたまま舞台に上がった、山本康介さんは『イン・ジ・アッパー・ルーム』でホッカイロをつけて舞台に出たことがある、小林さんはキネシオを貼ったまま『ボレロ』に出たことがある(これはうっかりではなく、故障のため)など、「舞台あるある」の話が続きました。

山本康介さんのインスタライブレッスン、驚きの視聴者数

緊急事態宣言中に話題になった山本康介さんインスタライブのレッスン。8週間毎日行われ、休みはGW中の1日のみ。

始めたきっかけはダンサーたちからの要望だそうです。1回あたりののべ参加(視聴)人数は18001900人ぐらいになっていたこともあったそう!

山本さん曰く「ダンサーの体のメンテナンスは楽器のチューニングと同じ。自習では自分の出来る範囲のことしかしないので、やはり指導者によるレッスンが必要」。加治屋さんは「時差の関係でライブは見られなかったけど、あとで動画をみて難しいレッスンで驚いた!」とおっしゃっていました。「狭いところでやろうとするとどうしても複雑になる。実際のレッスンはもっとシンプル」と山本さん。

ちなみに山本さんはこのレッスンと、コロナ禍で移動を自転車でするようになった効果で、3kg痩せたそうです。

ニューヨークのバレエダンサーのレッスン事情

そうして話はニューヨークのレッスン事情に。加治屋さんによると、「ABTやニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)は特殊で、カンパニークラスを受けないといけないというルールがない。(ABTの現芸術監督の)ケヴィン・マッケンッジー自身がダンサーの時にはカンパニークラスを受けていない」とのこと。

加治屋さん自身も、バリシニコフをはじめ数々のスターを指導した伝説のバレエ・マスター、デヴィッド・ハワードのレッスンに出ていたとのこと。(加治屋さんはデヴィッド・ハワードのレッスンDVDのデモストレーションも担当されていますね。)デヴィッド・ハワードは自身のスタジオではプロからはレッスン料はとっていなかったそうです!

小林さんもSABにもたくさんのプロダンサーがレッスンに来ていたといい、「プロダンサーとの戦いでしたよ(笑)」とおっしゃっていました。

QA

参加者からの質問への答えも一部ご紹介します。

Q:コロナ後のバレエは?

小林さん:バレエは変わらないと思う。

山本さん:アートフォームとしては変わらないと思うが、今回のコロナでダンサー同士の横のつながりができた。今後それが生きてくればいいと思う。

 

Q:山本康介さんの「英国バレエの世界」は準備にどれくらい時間がかかったか?また、苦労したことは?

山本さん:準備と執筆で半年ぐらい。インタビューを文字おこししてもらってから校正していった。校正ではじめの文章から半分ぐらいの量まで削った。校正段階から毎回締め切りに追われていた。書き物のトレーニングはしていないので、辞書をたくさん引いた。最後はローザンヌ国際バレエコンクール中にプレスセンターで校正した。

*そこで小林さんから「写真が小さいのがもったいない」とのコメントが。「小さくていいんです。写真は消去法で選んでいます(笑)」と山本さん。

 

Q:小林さんが以前やっていたブログジャンプ(街中などでジャンプしている写真をブログに掲載)のファン。撮影秘話などは?

小林さん:セルフタイマーで撮るのが決まり。そのバカバカしさも含めて楽しんでもらうのがコンセプト。今は跳べないので、回っている。

やりたいイメージが決まっていてそこに近づける感じ。ジャンプもピルエットも1回でうまくいくときも、何回もやるときも。

山本さん:何度か頼まれて写真撮ったことがあるけど、妥協がない。

小林さん:ボトルキャップチャレンジは一時間半回し蹴りし続けて成功。翌日股関節がガタガタ。

 

ボトルキャップチャレンジはこちらの記事の最後に! 

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Q:小林十市さんに。ベジャールダンサーになって良かったことは?

小林さん:自分自身でいられることの強さ。例えばマノンなら自分のフィルターを通してマノンを演じるけど、ベジャール作品では自分の中の追求、自分を強く求められる。

Q:忘れられない舞台は?

小林さん: 野外劇場で『火の鳥』をやった時、センターに出たら舞台ど真ん中にセミが死んでいた。20分後、最後に見たら同じ所に死んでいた。

(小林さんの話を受けて)

加治屋さん:野外で黒鳥のフェッテをやったら、頭上をコウモリがぐるぐる回っていたらしい。観ていた人から迫力があったと言われた。

山本さん:ペザントやっていたら、黄色い蝶々3回胸にとまったことがある。野外ではない。

ほかにも、加治屋さんの「60代のバリシニコフSteps on Broadway(NYのダンススタジオ)のレッスンに出たとき、5番で立っただけでオーラがすごかった!」など話はつきず、予定時間を30分以上オーバーして対談終了。

Hearts for Artists〉今後の予定

今後もトークやオンラインレッスンが8月上旬まで続く予定とのことです。

現在発表されているのは2つのトークイベント。

 

平田桃子さん、崔由姫さん、加治屋百合子さんによる同世代バレリーナ・トーク!

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ローザンヌ国際バレエコンクール審査員経験者である島﨑徹さん、齊藤亜紀さん、加治屋百合子さんによるローザンヌ・トーク!バレエを習っているお子さんたちも必見ですね。

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《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》について

〈Hearts for Artists〉が寄付を行う《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》は、コロナ禍で大きな影響を受けた舞台芸術に携わるアーティスト・クリエーター・スタッフ(個人・団体・企業問わず)の今後の活動に向けた金銭的支援を目的として設立された基金です。

2020年8月25日までクラウドファンディングで寄付を募っています。一口3,000円から寄付が可能です。

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》https://www.butainomirai.org/

おわりに

トークイベントへの参加は4回目でしたが、一番話が予想外の方向へ広がっていく対談でした。小林十市さんの個性によるところが大きいかも(笑)いつもは聞き手に回っている加治屋さんのお話もたくさん聞けて楽しかったです!

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。