元旦夜のお楽しみといえば、ウィーン楽友協会大ホールで演奏されるウィーン・フィル ニューイヤーコンサートの生中継。コロナ感染拡大防止のため、今年は無観客で開催されました。
毎年の恒例のウィーン国立バレエ団によるバレエシーンには日本人第1ソリスト(最高位)木本全優さんが出演!
無観客の黄金のホールの様子には心が痛みましたが、今年のニューイヤーコンサートはいつも以上に感動的なものでした。
見逃した方は再放送をぜひチェックしてみてください。
【ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2021 再放送予定】
2021年1月9日(土)14:00~17:00 Eテレ
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ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2021
指揮者はイタリアの巨匠、王様とも称される リッカルド・ムーティ。今年はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演50周年の記念の年、ニューイヤーコンサートは6回めの登場です。背筋の伸びた堂々とした姿が素敵なリッカルド・ムーティさん、今年80歳になるというから驚きです。
コロナ禍に苦しむ世界に向けて「希望とよろこび」がテーマという今回は、胸がすくような、晴れやかで明るい曲が多かった気がします。
演奏された曲目はこちら↓
画期的なオンライン拍手システム
今回の無観客公演では、事前登録された7000人の拍手が世界から会場に届けられるオンライン拍手システムも導入されていました。第1部、第2部の終わりに、団員たちが立ち上がると、大きな拍手がわき起こります。終演後は拍手に混じってブラボーの掛け声も。会場ではどんな風に聞こえているのでしょう…皆さん嬉しそうな表情を浮かべていました。リアルタイムではないようですが、事前に寄せられた登録者の写真が画面を埋め尽くす演出もあり、感動的な瞬間でした。
(恒例の「ラデツキー行進曲」の観客の手拍子はなし。微妙な遅延もあり、手拍子は難しいのでしょうね…)
このオンライン拍手システム、無観客上演のリアルタイム配信ではぜひ普及してほしい。拍手のない公演は観ていて心が痛みます。
パリ・オペラ座の無観客公演の感想はこちら↓
心に響いた「美しき青きドナウ」
演奏前や休憩中のダニエル・フロシャウアー楽団長らへのインタビューも興味深いものでした。ウィーンフィルがいち早く演奏中の飛沫拡散の実験を行い、コロナ渦中での演奏会のあり方を模索したこと、いたずらに演奏者同士の距離を離すことは音の響きを変えてしまうこと…。
そして第2部演奏後、通常ならアンコールで演奏される「美しき青きドナウ」、「ラデツキー行進曲」の演奏前に、リッカルド・ムーティさんがマイクを握り短いスピーチをしました。「音楽家は職業ではなく使命」、「音楽こそ心の健康を助けるもの」。力強いメッセーッジのあとに演奏された「美しき青きドナウ」は本当に美しかった…
「美しき青きドナウ」は普墺戦争に敗戦し打ちひしがれていたオーストリアの人々を励ますために、作られたといいます。コロナ禍に苦しむ世界中の人に向けられた「希望とよろこび」が、私の元にも確かに届いた気がしました。
木本全優さんは「春の声」で登場!
ウィーン国立バレエ団のバレエは第2部の3曲目「マルゲリータ・ポルカ」と5曲目「春の声」で登場。木本全優さんは「春の声」に出演しました。
出演に先駆けて、第1部と第2部の間の休憩では、木本全優さん、橋本清香さんご夫婦が登場し、インタビューに答えていました。2019年に夫婦揃ってニューイヤーコンサートのバレエに登場した時の映像や、ちらっとですが今年のバレエシーン撮影のメイキングも流れていました。今回のバレエシーンは8月に収録されたものだそうです。半年前には収録しているのですね。
木本全優さん、橋本清香さんは共に兵庫県出身。10代のときに留学先のフランス・カンヌ・ロゼラハイタワーで出会い、木本全優さんはその後、コンセルヴァトゥール(パリ国立音楽院)に編入。それぞれ学校を卒業すると、ドレスデン国立歌劇場バレエ団に入団、2008年には2人でウィーン国立バレエ団に移籍。橋本清香さんは2016年、木本全優さんは2017年、最高位である第1ソリストに昇格しています。
10代で出会って、海外のメジャーなバレエ団で夫婦そろって最高位に昇りつめるのは、奇跡のような確率ではないでしょうか。
こちらは木本全優さんのプロフィール動画。脚のラインが美しい!シャイなお人柄を感じさせる最後のシーンもいいですね↓
こちらは橋本清香さん。強いテクニックと華やかなオーラ!↓
ウィーン国立バレエ団は昨年、芸術監督がマニュエル・ルグリからマーティン・シュレップァーに交代していますが、振り付けは昨年のニューイヤーコンサートに引き続き、元パリ・オペラ座エトワールのジョゼ・マルティネス。ネオクラシック的な振り付け、男女のちょっとしたストーリーあり、微妙な小芝居あり(笑)という感じ。2曲ともクリスチャン・ラクロワの衣裳がとても美しかったです。
「マルゲリータ・ポルカ」作曲:ヨーゼフ・シュトラウス
オーストリアの建築家アドルフ・ロースが設計したロースハウスがバレエの舞台。ロースハウスはオーストリアのモダニズム様式を代表する建築といわれています。装飾を抑えた20世紀初頭のスタイルは、ニューイヤーコンサートのバレエの舞台としてはちょっと新鮮。
1人の男性をめぐる、3人の女性の恋の駆け引きみたいな感じ?のストーリー。背景の建築が美しく、印象的なアングルの映像が多かったです。ミニドレスの3人の女性ダンサーの足元はハイヒールでした。
「ワルツ「春の声」」作曲:ヨハン・シュトラウス
ヨハン・シュトラウスのおなじみの名曲「春の声」。バレエの舞台はリヒテンシュタイン庭園宮殿です。
美しい宮殿内からスタートして庭園へ展開する4組の男女ペアの踊りで、木本全優さんは3組目に登場し、庭園の木立の中での踊りました。相手役はアリーチェ・フィレンツェ、だったと思う(すみません、不確かです)。女性ダンサーの紫など深い色の衣裳が、木々の緑に生えてとてもきれい。男性は燕尾服で、木本全優さんの美しい脚のラインが見えにくいのはちょっと残念でしたが、ウィーンの宮殿にふさわしい気品ある踊りでした。
優雅な踊りの足元を見ると芝生の上だったり、砂利道だったりの過酷な状況。さらに女性たちはポアント。撮影は大変そう…
おわりに
終演後の日本に向けてのインタビューに応えて「世界中にポジティブなメッセージを届けられたと思う」と語ったダニエル・フロシャウアー楽団長。
ポジティブなメッセージ、確かに受け取りました!
★最後までお読みいただきありがとうございました。