2019年9月にNHKBS1スペシャルで放送されたドキュメンタリー「バレエの王子になる!〜“世界最高峰”ロシア・バレエ学校の青春〜」。大きな話題になったこの番組に登場したワガノワ・バレエ・アカデミーの4人の男子生徒、ミーシャ、アロン、マルコ、キリルのその後を2020年、2021年と記事にしてきました。
ワガノワ卒業後はマリンスキー・バレエに入団したミーシャ、アロン、マルコ。ひとりボリショイ・バレエに入団したキリル。
2022年も4人のバレエ王子たちの近況をチェックしてみました。
2021年1月の記事はこちら↓
「バレエの王子になる!」気になるその後のその後 2021 - ballet addict
2020年5月の記事はこちら↓
「バレエの王子になる!」気になるその後 - ballet addict
現在のロシアの劇場の状況は?
はじめに4人の生活にもバレエ団公演にも大きな影響を与えると思われる、ロシアの新型コロナの感染状況について。
1年前、2021年1月の記事を書いた時には第2波が到来し、感染者爆増中だったロシア。2021年11月にも感染の大きなピークがありましたが、現在は減少傾向にあります。とはいえ7日間の平均新規感染者数は約1.6万人/日(2022.1.10現在)。
人口あたりの感染者数で考えても、現時点(2022.1.12)では感染拡大中の現在の日本より多いのですが、4人のインスタグラムの投稿でも、マスク姿はほとんど見られません。日本とは感覚が違うのでしょうね…。マリンスキー劇場やボリショイ劇場のホームページを見ても、通常通り連日公演が開催されています。
ミハエル・バルキジャ(ミーシャ)
Mikhail Barkidzhidzha
米国シカゴ生まれ。2018年ワガノワ・プリではグランプリを受賞。校長ニコライ・ツィスカリーゼの一番のお気に入りで、10年に一度の逸材と言われる。 ワガノワ卒業後はマリンスキー・バレエに入団。入団後間もない2019年9月「白鳥の湖」のパ・ド・トロワに抜擢され、舞台デビュー。
2020年5月に椎間板ヘルニアを患い、米国に一時帰国して治療にあたっていた彼ですが、2020年秋には無事復帰をはたしています。
マリインスキー・バレエのホームページに掲載されているプロフィールページをチェック。1年前は”『白鳥の湖』の王子の友人”としか記載がなかったレパートリーが、増えています。
ざっと訳してみると…
ラ・シルフィード(若者)
白鳥の湖(王子の友人)
ライモンダ(ベランジェ,バリエーション)
シンフォニー・イン・C((IV アレグロ・ヴィヴァーチェ)
パキータ(士官、第3幕グラン・パ)
*振付者、改訂版などについての表記は省略しています。
自身のインスタグラムにも、『ライモンダ』『パキータ』バランシン 振付の『シンフォニー・イン・C』などに出演している写真やストーリーズを投稿。
長身で正統派ハンサムのミーシャ。主人公の友人や士官などの役を中心に順調にキャリアを築いているようです。
こちらは自身のインスタグラムに掲載された『ライモンダ』の投稿。主人公ライモンダの友人ベランジェ、もしくは吟遊詩人などといわれる役柄です。
この投稿をInstagramで見る
こちらは『シンフォニー・イン・C』出演時の写真。パートナー、アナスタシア・スミルノワのインスタグラムより。2枚目で動画もみられます。
この投稿をInstagramで見る
ミーシャはロシアのバレエ・メディア「La Personne」でマリンスキー・バレエの7人の外国人ダンサーの特集「Special project Foreigners in St. Petersburg」に登場しています。アーティスティックな写真が美しい。この特集には永久メイさんの記事も。
Mikhail Barkidzhidzha – La Personne
記事中でミーシャは、ニコライ・ツィスカリーゼ校長からはレッスンのみならず、文学やアートについても薫陶を受けたと語っています。
2021年に引き続き、2022年の年頭のインスタグラムの投稿はニコライ・ツィスカリーゼ校長の誕生日を祝うもの。相変わらず強い絆を感じさせます。
インスタグラム
https://www.instagram.com/mishabark/
YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCJuCPBlWyORF4sWfMDzun_A/featured
大澤ホロウィッツ有論(アロン)
Aaron Osawa-Horowitz
アメリカ生まれの英国育ちのアロン。父親は米国人、母親は日本人です。英国ロイヤルバレエスクール卒業後、ワガノワ・バレエ・アカデミーに編入。身長175cmでロシアの男性ダンサーとしては小柄ですが、抜群の跳躍力を誇ります。努力家で謙虚な好青年です。
ワガノワ卒業後はマリンスキー・バレエに入団。入団後の2019-2020シーズンから数々の舞台に出演しています。
アロンのプロフィールページのレパートリーも1年前と比べるとかなり増えていました。
ミーシャのレパートリーと違って日本では観る機会がない演目もあり、どんな役柄かわからないものもあるのですが、ざっと訳してみると…
ラ・バヤデール(ヒンドゥー・ダンス)
バフチサライの泉(ヌラリ)
くるみ割り人形 Vasily Vainonen版(ピエロ、ムーア人、チャイナ)
くるみ割り人形 Mihail Chemiakin & Kirill Simonov版(スペイン、チャイナ、2人のコサック、ペトルーシュカ)
ロメオとジュリエット(道化師)
スパルタクス(エトルリアの踊り)
シュラレー(悪霊)
石の花(スコモローフ(放浪芸人))
ル・パルク(庭師)
イワンと仔馬(仔馬)
ダフニスとクロエ
レナード、マヴラ
【オペラへの出演】
マゼッパ(ヤング・コサック)、イーゴリ公(ダッタン人の踊り)、ラクメ
*振付者、改訂版などについての表記は省略しています。
入団3年目にして、このレパートリーの数!『くるみ割り人形』だけで2バージョン、合計7つの役を踊っています。さすがバレエの本場ロシア、公演数が日本とは桁違いなのでしょう。
相変わらず、跳躍力が必要とされる役、エキゾチックな役柄が多い。
注目すべきはラトマンスキー版『イワンと仔馬』の仔馬役。タイトルロールです!
タイトルロール・デビューの記念の投稿。仔馬役のアロン、可愛い…。
この投稿をInstagramで見る
そして、注目のこの投稿。ふたりの老人…誰??
なんとアロンとマルコです!
投稿にコメントしているニコライ・ツィスカリーゼ校長にもめっちゃウケてます 笑。
メイクをした(と思われる)方の投稿にはバレエ『ペトルーシュカ』と書かれています。
この投稿をInstagramで見る
昨年と同様、アロンはインスタグラムに2021-2022seasonというタイトルのストーリーズのハイライトを投稿。さまざまな舞台の様子をまとめて見ることができます(観客席からの動画がメインで、小さくてどれがアロン?というものも多いのですが)。
どの役柄でもジャンプの高さやブレない回転が素晴らしい。跳躍系の役だけでなく、『ル・パルク』の庭師(映像遠いですが、中盤あたりに出てくる黒い衣裳にゴーグルの怪しい4人組)のシャープでキレのある踊りも素敵。劇場で観てみたい…。
舞台で大活躍のアロン。インスタグラムのオフショットでは髭を蓄え、大人っぽくなった姿も見られます。
インスタグラム
https://www.instagram.com/aaron__oh/
マルコ・ユーセラ(マルコ)
Marko Juusela
フィンランド出身。14歳でワガノワ・バレエ・アカデミーに入学。クラスではミーシャについでナンバー2の成績、大きな瞳と笑顔が印象的だったマルコ。卒業後はマリンスキー・バレエに入団しました。
コロナ禍で一時はフィンランドに戻っていたマルコですが、2020年秋からは劇場に戻っています。
マルコのプロフィール
マルコのプロフィールもレパートリーが増えています。
ラ・シルフィード(若者)
ジゼル(クラシック・デュエット) ←ペザントのことでしょうか…
ライモンダ(バリエーション)
放蕩息子(放蕩息子の友人)
くるみ割り人形(道化師)
バフチサライの泉(若者)
スパルタクス(アテナイの道化師)
愛の伝説(フェルハドの友人)
くるみ割り人形(コサック、スペイン舞踊)
ル・パルク
シンデレラ(夏)
パキータ(士官、第3幕グラン・パ)
ダフニスとクロエ
妖精の接吻(妖精の従者)
*振付者、改訂版などについての表記は省略しています。
ミーシャとアロンのレパートリーの演目は一切かぶってないですが、マルコとアロン、マルコとミーシャはちょっとかぶってます。アロンとミーシャの中間的な立ち位置といえそうです。
マルコのインスタグラムの最近の投稿は『ジゼル』のペザント。
この投稿をInstagramで見る
番組ではベビーフェイスで可愛らしい印象だったマルコですが、投稿を見るとずいぶん大人っぽくなった気がします。
マルコもミーシャと同じく、ロシアのバレエ・メディア「La Personne」でマリンスキー・バレエの7人の外国人ダンサーの特集「Special project Foreigners in St. Petersburg」に登場しています。
記事の中で印象的だったのは、コンテンポラリーダンスへの興味を語っていたこと。入団一年目に参加したロシアの若手振付家ウラジーミル・ワルワナの『ダフニスとクロエ』などに触れ、クラッシクバレエ以外にもいろんなことにチャレンジしたい!と意欲的です。
インスタグラムにもこの記事の写真が掲載されていますが、顔つきも体のラインも引き締まった印象。
この投稿をInstagramで見る
インスタグラム
https://www.instagram.com/markojuusela/
キリル・ソコロフスキー(キリル)
kirill sokolovski
ベラルーシ出身。189cmの長身、美しい容姿をもつキリル。アカデミー在学中もモデルのアルバイトをしたり、絵を描いたりと、バレエ一筋の他の3人とはちょっと異なるタイプです。アカデミーではニコライ・ツィスカリーゼ校長から叱られ続け、卒業公演にも出演できませんでした。
卒業後、4人の中で彼だけはボリショイ・バレエ団に入団。
ボリショイ・バレエのホームページにロシア語のプロフィールページがあります。
Балетная труппа Большого театра
*2021年の記事では、コールドバレエのページに名前と写真が掲載されているだけで、個別のプロフィールはないと書いてしまいましたが、ロシア語版ホームページには存在していることを発見(英語ページはないようです)。昨年時点でも存在していたかもしれません。確認不足で申し訳ありません。
プロフィールは年別に掲載されています。
ロシア語表記しかなく、google翻訳頼みなので、正確性には自信がありませんが、レパートリーを挙げてみます。
2019年
白鳥の湖(ワルツ)
くるみ割り人形(ファイナルワルツ(花のワルツ?)、アポテオシス)
2020年
くるみ割り人形(フランス人形)
«Четыре персонажа в поисках сюжета»『Тишина』(ソリスト)*世界初演
眠れる森の美女(フォーチュン王子)
2021年
ジュエルズ(ダイヤモンド、ソリスト)
*振付者、改訂版などについての表記は省略しています。
レパートリーの数は少ないですが、主なものだけ記載しているのかもしれません。昨年記事では『くるみ割り人形』のフランス人形について触れましたが、それ以外にも『眠れる森の美女』のフォーチュン王子や、バランシン振付『ジュエルズ』のダイヤモンド・ソリスト…。けっこう大きな役が多い。
こちらは『ジュエルズ』のダイヤモンド・ソリストデビューの日の投稿。踊っている動画は投稿されていませんが、カーテンコールの動画の、 白い衣裳のキリルが輝くダイヤモンドのように美しい。
この投稿をInstagramで見る
キリルのインスタグラムの2021年の投稿を振り返ってみると、ほかの3人とはちょっと違った様相を呈しています。登場するのはカルティエの時計、トムフォードの香水、カプリ島のバカンス?、ボッテガヴェネタ、サンローラン…。
ファッションモデルも続けているようです。さらに2021年11月には自分のファッションブランドを立ち上げています!
この投稿をInstagramで見る
ちょっと面白かったのはこの投稿。きっとあまりにバレエ以外の投稿が続いたことに、自分でも気がついたのでしょう 。
バーレッスンの写真にこんなコメントが添えられてます。「I completely forgot that people want to see ballet」(みんながバレエをみたいってこと、すっかり忘れてた)。
でもキリルのバレエの投稿ってちょっとワンパターンなんですよね 笑。いつも同じポーズやストレッチ…(相変わらず素晴らしいラインではありますが)。ファッション関連の投稿のほうが、気合が入っているように思えるのは気のせいなのか?
この投稿をInstagramで見る
余計なお世話と思いつつ、バレエファンとしては思ってしまう…
大丈夫なのか、キリル? 笑
「こんな素晴らしい資質に恵まれているのだから、バレエに邁進してほしい」というのは、バレエファンの身勝手な願い…ですけどね。
というわけで、相変わらず我が道を行く、キリルの近況でした。
インスタグラム
https://www.instagram.com/kirill_sokolovski/
おわりに
番組ではまだ幼さの残っていた4人ですが、3年経ってそれぞれ大人の顔つきに変わってきているのが印象的でした。
入団3年目の彼ら。コロナ禍の影響を考えると正味2年も踊っていないのに、そのレパートリーに圧倒されます。さすがバレエ の本場ロシア、鍛えられますよね。
コールドバレエの階級でそれぞれに頑張るミーシャ、アロン、マルコ、キリル。これからの活躍が楽しみです。
そろそろドキュメンタリーの続編が見たいですね。NHKさんよろしくお願いします!
ワガノワ・クラス男子編!
★最後までお読みいただきありがとうございました。