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【鑑賞レポート】ミハイロフスキー劇場バレエ「眠りの森の美女」

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4年ぶりに来日したミハイロフスキー劇場バレエ(旧レニングラード国立バレエ)

の「眠りの森の美女」の公演を観てきました。以前は毎年のように来日していましたが、そんなに間があいていたのですね。

今回の「眠りの森の美女」は芸術監督として返り咲いた、ナチョ・ドゥアト版。以前ガラ公演で、ドゥアト版「眠り」のグラン・パ・ド・ドゥを観て以来、全幕で観たいと思っていました。

ミハイロフスキー劇場バレエ2019 光藍社(こうらんしゃ)

ミハイロフスキー劇場バレエ「眠りの森の美女」公演概要

11月24日(日)11:30〜

東京文化会館 大ホール

振付:ナチョ・ドゥアト

【キャスト】

オーロラ姫:アナスタシア・ソレボア

リラの精:ユリア・ルキヤネンコ

デジレ王子:ヴィクトル・ベレデフ

カラボス:ファルフ・ルジマトフ

 

前日のキャストはイリーナ・ペレン&ヴィクトル・ベレデフだったのですが、ペレンが降板したので、ソレボア&ベレデフのペアは2日連続公演。ペレンの降板はドゥアトの意向によるものらしいです…

チケットはC席、D席は残席わずかだったのですが、会場全体は2 / 3ぐらいの入り。最近のバレエ公演は悪い席から売れていきますね。数を観るにはいい席ばかりは買っていられないということもありますが、いい席と悪い席が埋まって残りが空いてるのは、中間層が減りつつある今の日本の状況の反映なのでしょうか…?

かくいう私も、C席3階サイドの超見切れ席で鑑賞 笑。センター奥がかなり見切れたのでちょっと後悔しました。特に今回の舞台は中央奥のセンターにセットがある場面が多かったので。舞台が遠くてもセンターより優先にすべきだった…目がかなり悪いので、つい舞台からの近さを優先するのですが、その度に後悔している気がする 笑

振付は全面改訂に近い、ドゥアト版「眠りの森の美女」

現在よく観る機会がある「眠りの森の美女」は、ほとんどプティパの振り付けのさまざまな改訂版だと思います。

ドゥアト版「眠りの森の美女」は、そのプティパ版から振り付けを全面改訂。あらすじなどはそのままに、あくまでもクラッシクの振り付けをベースにした改訂です。ドゥアト自身も、プティパの振付をリフレッシュさせる程度と考えていたが、結局オリジナの振り付けが必要になったと語っています。

「眠り」といえばあの振り付けという、見慣れた振り付けは、ローズアダージオの4人の王子の手をとってアチチュードでバランスするところや、青い鳥の男性のブリゼ、

グラン・パ・ド・ドゥの何箇所か…私が気づいていない、もしくは記憶していないところもあるとは思いますが…

ドゥアトの振り付けは、全体に流れるようなしなやかな印象でした。「眠りの森の美女」の従来の振り付けは、流麗というよりは、ポーズのひとつひとつが印象に残るような振り付けだと感じるのですが、ある意味対照的。

そして、マイムが少なく踊りのシーンが多い。フロレスタン王、王妃(オーロラの両親)もちょっと踊ります。

全体に違和感なく楽しんで観ることができましたが、同時に古典的な作品の定番の振り付けの力を感じたのも確か。繰り返し観ることで、脳内に刷り込まれているのでしょう。どうしても記憶している振り付けと比較してしまう…それはそれで面白い鑑賞体験ではありますが。

ドゥアト版も繰り返し見て行けば、また違う感想になるかもしれませんね。

主役オーラがまぶしい、ソボレワ&レベデフ

主役のふたりは、踊りも容姿もまさに姫と王子にふさわしいペアでした。後光がさしている感じ。特にレベデフのやわらく上品な踊りがよかった。プライベートでもパートナーらしいですが、公演最後のレヴェランスでも、仲の良さを感じさせて微笑ましかったです。なんてきれいなカップルなんでしょうか。

もうひとつの見所はファルフ・ルジマトフのカラボス!いつもながらすごい存在感。ドゥアト版のカラボスの衣装は黒のゴージャスなロングドレス。ルジマトフが着ているとちょっとドラッグクィーンぽい。思った以上にガタイがいい気がしましたが、ちょっと大きくなった…?笑

最近のロシアのバレエ団のコールドバレエは、サイボーグか?と思うほど、容姿が整った人ばかりですが、ミハイロフスキーも同様。容姿がそろいすぎていて、個別の印象が残りにくいぐらいです。そんな中でも、リラの精のユリア・ルキヤネンコは美しい踊りでした。

そして、日本の田中美波さんが、宝石のゴールドで出演していました。背が高くスレンダーで、ロシア人たちと並んでも全く遜色なし!とても丁寧な踊りでした。

アンゲリーナ・アトラギッチの衣装と装置が素晴らしい!

この舞台、衣装と装置が素晴らしかった。デザインはアンゲリーナ・アトラギッチという女性デザイナー。シンプルでありながら、格式を感じさせる装置。絵画の世界のような調和のとれた色調。パステルカラーを多用しているのですが、ややくすんだトーンで子供っぽい印象がありません。

1幕、3幕の宮廷シーンの王妃以下、女性コールドは基本肩がむき出しのベアトップドレス。クラシカルな男性と比べるとやや現代的な気もしましたが、このドレスでの踊りのシーンはきれいでした。

妖精たちは、着ているチュチュと同じ色の衣装の男性(お付きの騎士らしい)に付き添われて入場。この舞台、男性は全般的に体にぴったりした衣装が多い。ちょっと着る人を選ぶ感じ 笑 遠目だと気にならないのですが、一部の騎士たちのタイツ部分に、魚のウロコのような模様が描かれていました。青い鳥の男性のタイツにも同じ模様が描かれていて…どんなイメージなんだろう?甲冑?

花のワルツは、ガーランド(花輪)なしの男女ペアバージョンで、女性はチュチュではなく、膝ぐらいのスカート。グリーンとオレンジのグラデーションが美しかったです。

そして、黒のロングドレスのカラボスの手下は、黒の全身タイツとマスクで、ちょっとバットマンを思い出す衣装です。3幕の青い鳥、赤ずきんの狼、雄猫も、みんな全身タイツ系でセクシー。雌猫もちょっと色っぽかったな…全体に大人向けの童話の世界です。

 そして3幕最後、人々に捧げられた純白の超ロングトレーンの下をオローラが歩き、壇上でトレーンをつけて王子と結ばれるシーンは絵画のようでとてもきれいでした。

 

見所いっぱいのドゥアト版「眠りの森の美女」。1回の鑑賞では見逃しもたくさんありそう。またの機会があれば、ぜひ観に行きたいと思います。

 

★こちらはスタンダードな「眠りの森の美女」

プティパの振り付けにフレデリック・アシュトン、アンソニー・ダウエル、クリストファー・ウィールドンが追加振り付けをおこなった版です。

ヌニュスとムタンギロフのペアが素晴らしい!

 

★最後までお読みいただき、ありがとうございました。