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【鑑賞レポート】映画「ロミオとジュリエット」英国ロイヤルバレエ団

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新型コロナウィルスで家にこもりがちの日々…。気がつけば英国ロイヤルバレエ団の映画「ロミオとジュリエット」が、早くも東京では3月19日で上演終了ではないですか!TOHOシネマズシャンテにあわてて観に行きました。

 

映画「ロミオとジュリエット」の記事はこちら。

 

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再現された16世紀のヴェローナの街並(←実際のロケ地はブダペスト)で繰り広げられる物語バレエの傑作、ケネス・マクミラン版「ロミオとジュリエット」を、映画ならではのカメラワークでとらえた作品です。音楽はもちろんセルゲイ・プロコフィエフ。

ジュリエットは映画「キャッツ」でも主役をつとめたフランチェスカ・ヘイワード、ロミオはウィリアム・ブレイスウェルです。

 キャスト

ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード

ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル

ティボルト:マシュー・ボール

マキューシオ:マルセリ-ノ・サンベ
ベンヴォーリオ:ジェームズ・ヘイ
パリス:トーマス・ムック
キャピュレット卿:クリストファー・サウンダース
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリ-
乳母:ロマニー・パイダク
ローレンス神父:ベネット・ガートサイド
ロザライン:金子扶生

見慣れるまでは違和感が

ありそうでなかったこの手のバレエ映画。観はじめてしばらくは、現実的なスケールの空間で踊られるバレエにすごく違和感がありました。慣れてくると映画ならではの表現を楽しみましたが、舞台で観るバレエとは別物だと思って観るほうが良さそう。バレエには広い劇場の空間が必要なんだなと再認識しました。

また普段舞台のバレエを観ない人はどんな感想を持ったのか、聞いてみたい気がします。

ダンサーたちの表現力が素晴らしい

さすがと思ったのはダンサー達の表現力。表情のアップなど舞台とは全く違う表現が必要とされるこの映画でも、自然に役が表現できている。ダンサー=演技者なのだなあと改めて感じました。これで撮影は6日間だったというから驚きです。

今回のキャストはマイケル・ナン監督らが舞台でのキャリアとは関係なく、スクリーンテストを行って選んだとのこと。主役の2人、フランチェスカ・ヘイワードとウィリアム・ブレイスウェルではとても自然な演技でスクリーン映えしていました。

無精髭を生やし、暗い目をしたマシュー・ボールのティボルト、キャピュレット夫人のクリステン・マクナリ-、ローレンス神父のベネット・ガートサイドも印象深かった。哀愁を感じさせるベネット・ガートサイドの佇まいが好きなのですが、若い恋人たちを案じながらも、すでに悲劇の予兆を感じ取っているようなローレンス神父役がハマっていました。本当にロイヤルは役者揃いですね。

一方、踊りという点で輝いていたのはマキューシオのマルセリ-ノ・サンベでしょうか。さすがのダンサーたちも屋外やセットでは踊りにくかったようですが、マルセリ-ノ・サンベはそんなことは全く感じさせないキレキレの踊りで作品を盛り上げていました。

バレエが表現するもの

この映画をみたことで、逆に舞台のバレエの表現というものを改めて考えさせられたのは面白い体験でした。

映画では町の広場は広く、ジュリエットの部屋は狭いですが、舞台では町の広場もジュリエットの部屋も同じ広さ。そこでダンサーが踊るだけで、同じスペースが広場にも部屋にも見えてしまう。

映画のラストシーンでは、自らを刺したジュリエットがロミオの方に伸ばした手にカメラが寄っていき、最後はだらんと垂れ下がった手のアップで物語が終わります。一方舞台のラストシーンでは、どこをクローズアップして観ているかは観る人によって異なります。ジュリエットの手なのか、倒れているロミオなのか、暗い霊廟全体を引きで観ているのか…それによって受け取る物語が異なってくる。観ている人に委ねられている部分が多いのも、舞台を観る面白さだなと感じました。

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。