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新国立劇場バレエ団 『くるみ割り人形』小野絢子×福岡雄大【鑑賞レポート】

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新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』を観てきました。

全9公演初日の2020年12月12日(土)のマチネ。主演は新国立劇場バレエ団の看板ペア、小野絢子さんと福岡雄大さんです。

昨年の『くるみ割り人形』公演の時は、クリスマスリースやクリスマスツリーが飾られ華やかだった会場ですが、今年はコロナのせいなのか、ほとんど装飾なしでちょっと寂しい。装飾まで自粛しなくてもいい気がしますが…人が集まったり、触ったりを避けるためには仕方がないのか…それとも主催者はそれどころではないのか…

観客は連絡先を事前登録、体温チェック、手の消毒を済ませ、自分で半券を切り取って会場に入ります。観客側も主催者側も感染防止対策にだいぶ慣れてきた感じ。

公演概要

『くるみ割り人形』全2幕 新国立劇場バレエ団

2020年12月12日(土) 13:00〜

会場:新国立劇場 オペラパレス

芸術監督:吉田都

振付:ウエイン・イーグリング

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

指揮:冨田実里 管弦楽:東京フィルハーモーニー交響楽団

【キャスト】

 クララ/こんぺい糖の精:小野絢子

ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大

ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫

ねずみの王様:奥村康祐

ルイーズ:池田理沙子

シュタルバウム:中家正博

シュタルバウム夫人:関晶帆

雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布

スペインの踊り:寺田亜沙子、細田千晶、速水渉悟

アラビアの踊り:本島美和、宇賀大将、小柴富久修、清水裕三郎、中島駿野

中国の踊り:奥田花純、髙橋一輝、樋口 響

ロシアの踊り:福田圭吾、加藤朋子、木村優子、菊地飛和、関 優奈

蝶々:池田理沙子

花のワルツ:柴山紗帆、飯野萌子、井澤 諒、原 健太

 

新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』は、2017年に新制作されたウエイン・イーグリング版。ウエイン・イーグリングは元英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルで、オランダ国立バレエやイングリッシュ・ナショナル・バレエの芸術監督も務めています。

今年の新国立劇場バレエの「くるみ割り人形」全9公演の主演キャストは昨年と同じ、小野絢子&福岡雄大、米沢唯&井澤駿、池田理沙子&奥村康祐、木村優里&渡邊峻郁の4組。吉田都新芸術監督の元での初の『くるみ割り人形』だったので、新キャストがありそうと予想していたのですが、コロナの影響で難しかったのかもしれません。

昨年2019年は木村優里&渡邊峻郁ペアを鑑賞。コロナに怯えることなく鑑賞できて、握手会も開催されていた昨年の公演が懐かしい…

感想はこちら↓ 

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オケピットは密ですね…前から3列は販売されていません。1階はほぼ満席でした。

 小野絢子さんと福岡雄大さんの鉄板ペア

男女が組んだ踊りが多く、時にアクロバティックとも言えそうなリフトが多用されるイーグリング版。高度なパートナーリングが要求される振り付けですが、小野絢子さんと福岡雄大さんの2人なら、安心して観ていることができます。福岡さんにリフトされている時の小野さんは、羽が生えたように軽く見える…。

小野絢子さん主役の舞台は、およそ1年前に観た『ロミオとジュリエット』以来でしたが、キラキラした輝きと美しいラインは相変わらず。

イーグリング版の大きな特徴とも言えるのは、男性の主役がドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子の3役を踊ること。舞台には出ずっぱり、ドロッセルマイヤーの甥とくるみ割り人形はなんども入れ替わる複雑な構成、さらにくるみ割り人形ではマスクもかぶる…本当にハードそうですが、福岡さんの安定感は素晴らしかったです。

奥村康祐さんのコミカルなねずみの王様

 イーグリング版では、結構踊るネズミの王様。クララたちの乗る気球の下にぶら下がってお菓子の国までついてきてしまうなど、見せ場も多い。

昨年の公演と最も印象が違ったのは、このねずみの王様。コミカルな動きが強調され、ちょっと憎めない印象に変わりました。これは演じている奥村康祐さんのキャラクターによるところが大きそう。振り付けにはもともとコミカルな要素があったのでしょうが、それが前面に出た感じ。昨年は目が赤く光るマスクや衣裳のちょっと怖い感じに隠れて、あまり目立ちませんでした。

奥村さん演じるねずみの王様は、公演中のみならずカーテンコールでも、隣に並んでいる王子役の福岡雄大さんと手を繋ごうとして拒否され、それでもしつこく手を差し出したり、長いねずみの尻尾を自分で持ってくるくる回したりのやりたい放題で、会場の笑いを誘っていました。

奥村さんは、シーズン幕開けの『ドン・キホーテ』のガマーシュもとても良かった。果たして演技がうまいのか、地なのか…。

翌日のマチネではドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子にキャスティングされている奥村康祐さん。被り物で踊ったあとは3役で出ずっぱりのタイトルロール…昨年も書きましたが、イーグリング版は男性ダンサーにとって非常に過酷!

奥村康祐さんのほか、渡邊峻郁さん、井澤駿さんもドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子とねずみの王様、両方にキャスティングされています。

ドロッセルマイヤーは貝川鐵夫さん。貝川鐵夫さんの演じる役をいつも楽しみにしているのですが、今回のドロッセルマイヤーも独特の奇妙な味があって好きです。

一糸乱れぬ雪の国

雪の国のシーンは、いつもながら一糸乱れぬフォーメションと踊り、ハリのあるチュチュの円形の動きが美しかった!新国立劇場のコールドバレエは本当に素晴らしい。

昨年の公演で気になったチュチュのバサバサいう音は今回はさほど気にならず。座席の位置にもよるのかな…。

幻想的なお菓子の国

イーグリング版お菓子の国の装置や衣装は、子供が喜びそうなキラキラしたパステルではなく、全体的に重めのトーンで大人っぽい世界。そんな中で繰り広げられる各国の踊りはちょっと幻想的なムードです。花のワルツも、ピンクではなくてポピーをイメージしたオレンジ。

個人的に楽しみにしていたのは、シーズン幕開けの『ドン・キホーテ』で初の全幕主役に抜擢された速水渉悟さんのスペインの踊り。キレのあるダイナミックな踊りで目を引きました。女性2人を同時にリフトするなど大変そうなサポートも力強くこなしていました。

気高く美しい本島美和さんが4人の男性にかしずかれるアラビアの踊りも素敵でした。 

花のワルツもリフトが多用された男女ペアの踊り。群舞としてのフォーメーションを整えたまま、男女ペアの高度な踊りを行うのは相当大変なことだと思う…。ソリストの原 健太さんが丁寧な踊りで爽やかな印象でした。

おわりに

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』の公演は12月20日(日)まで。

くるみ割り人形 | 新国立劇場 バレエ

12月20日(日)18:00〜の公演はライブ配信があります。(*見逃し配信はなし)

主演は小野絢子さんと福岡雄大さん。

また年明けにはオンデマンド配信の予定があります。

おうちでも新国立劇場バレエ団のステージを!『くるみ割り人形』映像配信のご案内 | 新国立劇場 バレエ

 

2017年収録のイーグリング版DVD。主演は小野絢子さんと福岡雄大さんのペア↓ 

★最後までお読みいただきありがとうございました。