12月13日(日)14:30(現地時間)に無観客で上演され、世界にライブ配信されたパリ・オペラ座『ラ・バヤデール』。ライブは見られませんでしたが、アーカイブ配信で鑑賞しました。
幕ごとに主役キャストが入れ替わる特別版。パリ・オペラ座ならではの美しい衣裳と装置、人気エトワール達の踊りを堪能しました。当日はポール・マルクのエトワール昇進発表のサプライズも!(←アーカイブ配信でもみられます。)
視聴はパリ・オペラ座の新しい配信プラットフォーム「L'Opéra chez soi」から。
日本語サイトはありませんが、簡単なアカウント作成とクレジットカードの登録で視聴できました。視聴料金は税込1,377円、7日視聴可能です。
配信は12月31日までのようです。
*視聴環境等詳細については、ご自身でお確かめください。
公演概要
パリ・オペラ座『ラ・バヤデール』全3幕
12月13日(日) 14:30〜(現地時間)
会場:オペラ・バスティーユ
音楽:ルドヴィッヒ・ミンスク
原振付・台本:マリウス・プティパ、セルゲイ・クデコフ
振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ
装置:エジオ・フリジェリオ
衣裳:フランカ・スカルチピアーノ
照明:ヴィニチオ・ケリ
【1幕】
ニキヤ:ドロテ・ジルベール
ソロル:ジェルマン・ルーヴェ
ガムザッティ:レオノール・ボラック
【2幕】
ニキヤ:アマンディーヌ・アルビッソン
ソロル:ユーゴ・マルシャン
ガムザッティ:ヴァランティーヌ・コラサント
【3幕】
ニキヤ:ミリアム・ウルド=ブラーム
ソロル:マチアス・エイマン
***
ブロンズアイドル:ポール・マルク
奴隷:オドリック・ベザール
マヌー(壺の踊り):マリーヌ・ガニオ
ファキール:フランチェスコ・ムーラ
ラジャ:ヤン・シャイヨー
大僧正:ヴァンサン・シャイエ
インドの踊りソリスト:セリア・ドゥロイ / アクセル・マグリアーノ
3幕第1バリエーション:セ・ウン・パク
3幕第2バリエーション:シルヴィア・サン=マルタン
3幕第3バリエーション:オニール・八菜
幕ごとに異なるニキヤ、ソロル、ガムザッティは全員エトワールの豪華キャスト。
渋めの色と金の組み合わせの衣裳、荘厳なセット、陰影の強い照明…全てが洗練されていて美しい。
ルドルフ・ヌレエフ版は1992年制作。神殿崩壊の第4幕がない全3幕バージョンです。
ジェルマン・ルーヴェの腕に魅せられる
1幕のニキヤとソロルは ドロテ・ジルベール&ジェルマン・ルーヴェ。
ドロテ・ジルベールは大僧正に対する毅然とした態度と、ソロルと2人の時の華やいだ表情の対比がみごと。振り付けの中で多用されているパ・ド・ブレのポアントの足元の繊細な動きが素晴らしい。ポアントが完全に体の一部になっていて、もはやシューズではない感じです。
ジェルマン・ルーヴェを観るとつい目が行ってしまうのが、彼の腕。身長に比して腕がとても長く、手もとても大きく、指も長い。そしてなんだか動きが色っぽい。しなやかに動いている時はもちろんですが、ファキールに何か命令する時の、まっすぐに伸びた腕と指先でさえも、なぜか優雅で色気を感じます。
想像以上によかったのが、レオノール・ボラックのガムザッティ!
1幕のガムザッティは踊らない役ですが、表情や立ち居振る舞いが素晴らしく、気の強いお嬢様の役柄にぴったりはまっていました。父親ラジャに見せる甘えた表情から一転、ニキヤとの対決での表情には凄みを感じました。いつか全幕で観てみたい。
象に乗って登場!輝くユーゴ・マルシャン
2幕のソロル、ユーゴ・マルシャン巨大な象に乗って登場!
相変わらずの後光が刺すような明るさと、伸びやかで爽快感溢れる踊り。観ているだけで気持ちが晴れるような気がします。
ガムザッテイに対して戸惑いを隠せなかった1幕のジェルマン・ルーヴェのソロルに対して、ガムザッテイとも屈託なく踊るユーゴ・マルシャンのソロル。(途中から突然表情が曇りますが)
そしてニキヤ登場で「わ〜どうしたらいいんだろう」と俯くソロル。どこかで見たことがあるな、こんな男、と思ったら、コロナ禍直前に観たパリ・オペラ座日本公演の『ジゼル』のアルブレヒトだった 笑。
ドロテ・ジルベールよりも「哀れ」を感じさせる アマンディーヌ・アルビッソンのニキヤ。腰から背中にかけての柔らかいラインが美しかった!
そして本日の主役とも言えるポール・マルクのブロンズアイドル。跳躍力やキレがあるだけではなく、美しくエレガントなブロンズアイドルでした。
エネルギッシュな太鼓の踊りも素晴らしかったです。観客が入っていたらさぞかし盛り上がったことでしょう。
この世のものではない美しさ
3幕の影の王国、ニキヤはミリアム・ウルド=ブラーム、ソロルはマチアス・エイマン。
ベテラン勢ふたりのすみずみまでコントロールされた精緻な踊りは、神秘的な影の王国にふさわしいものでした。2人のパートナーリングも素晴らしかった。
白い精霊たちが描く円の中に、幻影になったニキヤとソロルが2人で佇むエンディングは、永遠に続く夢の世界を表しているようでした。
気品のあるセ・ウン・パクの第1バリエーション、華やかなオーラのオニール・八菜の第3バリエーションもよかったです。
ポール・マルクのエトワール昇進発表!
今回の無観客上演では観客の拍手は一切なし。素晴らしい踊りのあとや、ダンサーのレヴェランスに対して拍手がないのがこんなに寂しいとは思わなかった。ダンサーたちは一体どんな気持ちなのだろうと胸が痛くなりました。
(ライブ配信で観ている観客の拍手が届けられるシステムとか、開発されればいいのに…)
*2020.12.30追記
オンライン拍手システム、すでにあるようです!無観客で開催される2021年のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートで実装されるとのこと。
カーテンコールでのダンサーたちの表情もどこか硬い…。
しかし!最後のカーテンコールで芸術監督のオーレリー・デュポン、ネーフ総裁が登場しポール・マルクのエトワール昇進を告げると、一気にダンサーたちの表情が華やぎ、会場はダンサーやスタッフの拍手に包まれました。ポール・マルクも本当に嬉しそう!
この公演でポール・マルクが踊ったのはブロンズアイドル。エトワール昇進を告げる役としては異例で、本人も予想していなかったに違いありません。
幕が降りてもダンサーたちの歓声が聞こえ、幸せな気持ちになりました。
ポール・マルクはパリ・オペラ座来日公演『オネーギン』のレンスキー役もとてもよかった↓
おわりに
豪華で洗練された衣裳や装置も含めて、パリ・オペラ座ならではの世界を堪能!
幕ごとに違う配役も、ダンサーによる役の解釈の違いが浮き彫りになって興味深かったです。
そして、このコロナ禍の中でも、コンディションをきちんと維持しているダンサーたちに頭が下がる思いでした。
パリでは再びの感染拡大で、この無観客特別公演以外の公演は中止になってしまったようです。
パリ・オペラ座のインスタグラムでは、アドベントカレンダーとして『ラ・バヤデール』のリハーサル動画が毎日アップされていますが、動画では配信された公演以外のキャストによるリハーサルが見られます。公演中止が本当に残念…
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イザベル・ゲラン、ローラン・イレールのヌレエフ版『ラ・バヤデール』↓
★最後までお読みいただきありがとうございました。