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新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』ライブ配信【鑑賞レポート】

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1月11日の新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』無観客公演を、ライブ配信で鑑賞しました。劇場に観に行く予定だったこの公演、たとえ画面越しでも観ることができて、本当によかった。楽しい3時間を過ごすことができました。

配信の様子と感想のまとめです。

公演概要

1月9日から11日まで上演予定だった『ニューイヤー・バレエ』は関係者に新型コロナ感染が確認され、1月6日に中止が発表されました。しかしその後、関係者全員の陰性が確認されたことから、無観客公演のライブ配信が実現!

「ニューイヤー・バレエ」無観客ライブ配信(無料) 実施のお知らせ(2021年1月11日(月・祝)14:00~) | 新国立劇場 バレエ

『ニューイヤー・バレエ』新国立劇場バレエ団

1月11日(祝・月)14:00〜16:45

会場:新国立劇場オペラパレス(無観客上演)

*YouTube、Facebookで無料ライブ配信(アーカイブ配信はなし)

芸術監督:吉田都

指揮:冨田実里

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

第1部 パキータ 14:00〜14:40

第2部 Contact / ソワレ・ド・バレエ / カンパネラ 15:05〜15:35

第3部 ペンギン・カフェ 16:00〜16:45

ライブ配信がスタートすると、マスク姿の吉田都芸術監督が登場し、今回のライブ配信の経緯を説明しました。コロナ感染者が出て、ダンサーたちは3日間自宅待機を行い、その後無観客上演が決まり、急遽リハーサルを再開したとのこと。これだけの大規模な公演で、これだけのスピードで、当初予定されていなかった配信までこぎつけるとは素晴らしい統率力と組織力…

また、第3部の『ペンギン・カフェ』ではダンサーが声をあげる演出は、舞台上のダンサーは声をあげず、客席のダンサーがマスクをして声をあげる演出に変更したと説明がありました。

第1部  パキータ

音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ

【キャスト】

米沢 唯、渡邊峻郁
パ・ド・トロワ:池田理沙子、柴山紗帆 、速水渉悟
バリエーション:寺田亜沙子、細田千晶 、益田裕子、奥田花純

北村香菜恵、木村優子、 多田そのか、 徳永比奈子、中島春菜 、原田舞子 、土方萌花、 廣川みくり 、廣田奈々、山田歌子 、横山柊子

新国立劇場バレエ団ではなんと18年ぶりの上演だという『パキータ』。終幕の結婚式のグラン・パを中心に、1幕のパ・ド・トロワが挿入された抜粋バージョンです。

コリフェやソリストたちは赤い衣裳、主役2人は真っ白な衣裳。米沢唯さんはいつもながら素晴らしいテクニック、堂々としたキレのある踊りでした。技術も容姿も粒揃いな群舞もとても華やかでした。

パ・ド・トロワでは、咋秋『ドン・キホーテ』のバジル役に抜擢されて、注目の速水渉悟さんが登場!テクニックもさることながら、登場するだけで舞台が明るくなる感じがいいですね。

ソリストのバリエーションでは、奥田花純さんの歯切れのいい踊りが印象に残りました。

第2部

当初の予定では、新制作のバランシン作品『デュオ・コンチェルタント』の予定だった第2部は新型コロナの影響で、小品3作品に変更になりました。

3作品のうち、2作品は、新国立劇場バレエ団のダンサーから振付家を育てるプロジェクト、NBJ Choreographic Groupから生まれた作品。

振付をおこなったのは木下嘉人さん、貝川鐵夫さん。「バレエ・チャンネル」に掲載されたお二人へのインタビューはこちら。読み応えあり!

balletchannel.jp

Contact

音楽:オーラヴル・アルナルズ

振付:木下嘉人

【キャスト】

小野絢子、木下嘉人

新型コロナの影響で中止になってしまった20203月の公演「DANCE to the Future 2020」で上演予定だった、ソリスト木下嘉人さんの振付作品。男女のデュオで、男性は木下嘉人さん自身が踊っています。

男女の触れ合いを描くちょっと切ない感じの作品で、小野絢子さんの雰囲気にあっていると思ったのですが、インタビューを読むと当初は米沢唯さんに振り付けられたものらしい。米沢唯さんのキャストでも観てみたい…

ソワレ・ド・バレエ

音楽:アレクサンドル・グラズノフ
振付:深川秀夫

【キャスト】

池田理沙子、中家正博

2020年9月に73歳で死去された深川秀夫さんの振り付け作品。吉田都芸術監督は追悼の意味も込めてこの作品を選んだと語っています。深川秀夫さんは1960年代からヴァルナ国際コンクールやモスクワ国際コンクールで入賞するなど、国際的に活躍する日本人バレエダンサーの先駆けとして知られ、振付家としても多くの作品を残しています。

『ソワレ・ド・バレエ』は1983年初演の作品からのガラ公演用に一部抜粋したパ・ド・ドゥ。星空の下で踊られるパ・ド・ドゥは、クラシックの振付に洒落たアクセントになる動きが加えられていて、ロマンチックで粋な印象。余韻が残る作品でした。

池田理沙子さんの柔らかな雰囲気が作品に合っていました。

カンパネラ

音楽:フランツ・リスト

振付:貝川鐵夫

ピアニスト:山中惇史

【キャスト】

福岡雄大


独特の存在感で新国立劇場バレエ団の公演にはなくてはならないダンサー、貝川鐵夫さんですが、「DANCE to the Future」で多くの振り付け作品を発表するなど、振付家としても期待されています。『カンパネラ』は今回で3回目の上演。舞台上に置かれたピアノの横で踊られる男性のソロ作品です。

この作品は素晴らしかった!

前出のインタビューで貝川さんはこの作品を「ピアニストとダンサーの格闘技」と表現されていましたが、言い得て妙。上半身は裸、下半身は黒い袴のような衣裳は武闘家を思わせます。

鋭く宙を切る腕、しなる上半身…暗い背景に浮かび上がるダンサーの肉体と力強いピアノの音の競演。張り詰めた空気が画面越しにも伝わってきました。

福岡雄大さんは古典作品の王子も素敵ですが、こういう音と一体になるようなソロ作品の方がより個性が引き立つような気がします。

 

第3部 ペンギン・カフェ

音楽:サイモン・ジェフス
振付:デヴィッド・ビントレー

【キャスト】

ペンギン:広瀬 碧

ユタのオオツノヒツジ:米沢 唯
テキサスのカンガルーネズミ:福田圭吾

豚鼻スカンクにつくノミ:五月女遥
ケープヤマシマウマ:奥村康祐
熱帯雨林の家族:本島美和、貝川鐵夫

ブラジルのウーリーモンキー:福岡雄大

www.youtube.com

サイモン・ジェフス率いる「ペンギン・カフェ・オーケストラ」の音楽を使用したデヴィッド・ビントレー振り付け作品。バレエに使用されている音楽はサイモン・ジェフスによってオーケストラ・バージョンにアレンジされています。

デヴィッド・ビントレーは音楽だけではなく、エミリー・ヤングが描いた「ペンギン・カフェ・オーケストラ」のレコードジャケットのイラストにもインスピレーションを得たと言われ、このイラストの世界がバレエ作品の衣裳にも反映されています。

 

 ポップな音楽が鳴り続け、動物のマスクをかぶったダンサーたちによる華やかなダンスが繰り広げられる明るくユーモラスな作品と思いきや、登場する動物たちは絶滅危惧種や絶滅種。ペンギン(オオウミガラス)はすでにこの世にいない…。

環境問題というテーマが根底にある異色のバレエ作品です。初演は1988年英国ロイヤル・バレエ団。30年以上前の作品とは思えません。

『ペンギン・カフェ』は2010年にデヴィッド・ビントレーが新国立劇場バレエ団の芸術監督に就任した際のシーズン開幕作品でもあります。

2010年の公演記録(米沢唯さん、福岡雄大さんが若い!)

ペンギン・カフェ/シンフォニー・イン・C/火の鳥 | 舞台写真・公演記録 | 新国立劇場

 

 作品は曲ごとに8つのパートに分かれ、クラシック、民族音楽など様々な要素を取り入れた音楽と同様に、サンバ、チャールストン、民族舞踊などの要素がミックスされた多彩なダンスが繰り広げられます。

かぶり物をかぶって踊るバレエは、考えただけで大変そうですが、全編を通して躍動感のある踊りが素晴らしかったです。

どことなく哀愁を帯びた燕尾服姿のペンギン(オオウミガラス)の踊りからスタートし、ペンギンマスクの燕尾服の男性とドレス姿の女性の男女ペアの踊りに。

米沢唯さんが演じるオオツノヒツジは大きなマスクにロングドレス。井澤駿さんをはじめとする5人の男性にエスコートされて踊ります。

福田圭吾さんのテキサスのカンガルーネズミは軽快なソロ。

五月女遥さんが演じる、豚鼻スカンクにつくノミは、ちょっと仮面ライダー感のあるマスクとオレンジの衣裳に、同じ色のポアント。ポアントでのユーモラスな動きが面白かった。

ちょっとゾッとするのは奥村康祐さんが演じるケープヤマシマウマのパート。大地に捧げるようなシマウマの踊りの後ろで、シマウマの毛皮を身につけ、ガイコツを頭に乗せた女性たちがモデルウォークのような動きを繰り返し、シマウマが撃たれても無反応…。

このモデルウォークの女性たちの中に米沢唯さんがいるのですが、オオツノヒツジ→シマウマモデル→エンディングはオオツノヒツジという早替え、かなり大変そう…。(この2役は何か意図のある配役なんでしょうか…?)

熱帯雨林の家族は、自然への畏敬を感じさせるおごそかな踊り。お母さんとお父さんは、本島美和さん、貝川鐵夫さん。2人ともマッシュルームカットが可愛い。エキセントリックな役の多い貝川鐵夫さんですが、父性を感じさせる静かな佇まいが新鮮に感じました。

ブラジルのウーリーモンキー役の福岡雄大さんの躍動感ある踊りも素晴らしかった。

サンバのようなリズムにのせた陽気な踊りの後、舞台は暗転。マスクをとる動物たち、にげまどう人間たち、降り出す雨。ラストは浮かび上がるノアの箱舟の前に佇む、乗り遅れたペンギンの姿…

前出のバレエチャンネルのインタビューで貝川鐵夫さんがデビット・ビントレーの振り付けを「(前略)音を聴いて、感じて、踊りながら作ったものだという感じがします。(中略)…振り付けが呼吸して生きているんです。」と話していましたが、『ペンギン・カフェ』はまさにそんな作品でした。今度はぜひ劇場で観てみたいです。

おわりに

心躍る3時間でした。吉田都芸術監督の英断に感謝です。

Twitterなどでは、はじめてバレエを観たけど面白かったという感想も目にしました。特にバレエとしては異例の作品と言える『ペンギン・カフェ』は、逆にバレエを観たことがない人にとっては、親しみやすいのかもしれません。 

ほとんど拍手のない公演は少し寂しくはありましたが、幕が降りた後ダンサーたちの笑い声が聞こえてきたのが、嬉しかった。

 

 芸術監督吉田都さんを追ったドキュメンタリー番組の感想はこちら

www.balletaddict.com

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』の配信は2021年1月15日(金)まで!

chicoissyo.com

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。