3月27日(土)に上演された新国立劇場のダンス・コンサート『舞姫と牧神たちの午後 2021』を鑑賞しました。
新型コロナ感染防止のため当初は50%の座席販売で、チケットは早々にソールドアウト。緊急事態宣言の解除により、公演直前に追加販売されたチケットを手に入れて観ることができました。
ちょっと記事を書くのが遅くなってしまいましたが、感想を記録しておきます。
公演概要
『舞姫と牧神たちの午後 2021』
2021年3月27日(土)13:00〜
新国立劇場 小劇場 THE PIT
主催:新国立劇場
芸術監督:吉田都
舞台監督:柴崎大
第一部 55分
『Danae』
『かけそし』
『Butterfly』
休憩 15分
第二部 45分
『極地の空』
『Let's Do It !』
『A Picture of You Falling』より
男女6組のダンサーのデュエットによる競演。このうち2組は新国立劇場バレエ団からの出演でした。
新国立劇場の小劇場ははじめてでしたが、客席と舞台の距離がとても近く、ダンサーたちの息遣いが聞こえてくる感じ。
『Danae』
振付:貝川鐵夫
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
出演:木村優里&渡邊峻郁 (新国立劇場バレエ団)
新国立劇場バレエ団のファースト・ソリスト貝川鐵夫さんによる振付作品で、初演は『DANCE for the Future 2019』。初演時のキャストも木村優里さんと渡邊峻郁 さんです。
ギリシャ神話のアルゴスの姫ダナエと全能の神ゼウスとの情事がモチーフの作品。黄金の雨に変身して天窓から入り込んだゼウスによって、英雄ペルセウスを身ごもるダナエはクリムトの絵画でも有名です。
長い手脚、広い肩幅…木村優里さんはとても美しい骨格をもつダンサーだと思うのですが、その骨格を余すところなく生かした踊りが素晴らしかった。
ラスト、黄金の雨の降り注ぐ中に佇む木村優里さんの姿が強い印象を残しました。
木村優里さんと渡邊峻郁 さん主演の『くるみ割り人形』の記事はこちら↓
『かそけし』
演出・振付:島地保武
音楽・演奏:藤元高輝(gt.)
衣裳:萩野緑
出演:酒井はな&森山未來
「我が屋戸のいささ群竹ふく風の音のかそけきこの夕べかも」大伴家持
古語「かそけし(幽けし)」とは、かすか、ほのかという意味。
…本作『かけそし』では性差、からだの際、色とか音とか、あらゆるものの境界線がぼやけ、夜の闇に溶けそうなほんの前の淡い時間を引き延ばして舞台に表出させることを試みます。
出展:公演パンフレット
藤元高輝さんのおかしなギターの奏法など、様々な仕掛けがある作品。コバルトブルーに、部分的にちょっとパープルのグラデーションが入ったサルエルパンツのような衣裳が可愛いかった。
今回の公演の中では、もっとも身長差が少ないと思われる酒井はなさん、森山未來さんのペア。2人の個性が引き立ち、自由な2人組という感じがよかったです。久しぶりに観た酒井はなさんのキレの良さ、鋭さとゆるさの加減が絶妙な森山未來さんの個性を楽しみました。
『Butterfly』
構成・演出:平山素子
振付:平山素子&中川 賢
音楽:マイケル・ナイマン、落合敏行
演奏(録音):蛭崎あゆみ
衣裳:堂本敦子
出演:五月女遥&渡邊拓朗 (新国立劇場バレエ団)
『舞姫と牧神達の午後 2005』が初演の作品。初演時は振付の平山素子さんと中川賢さんが踊っています。
『舞姫と牧神達の午後 2005』の公演概要↓
今回の公演ポスターやパンフレット表紙の右上の写真がこの作品を踊る平山素子さんと中川 賢さん。
この日の出演は五月女遥さんと渡邊拓朗さん。ダブルキャストで池田理沙子さんと奥村康之さんも出演しています。
ダイナミックでスリリングな振付と、五月女遥さんと渡邊拓朗さんのエネルギーにあふれる踊りに惹きつけられました。
新国立劇場バレエ団の公演では、いつもキレのいい踊りを見せてくれる五月女遥さん。最近では『ペンギン・カフェ』のノミの踊りが印象に残っています。そんな五月女遥さんの別の一面を発見できた気がします。
渡邊拓朗さんは『Danae』を踊った渡邊峻郁さんの弟さん。新国立劇場バレエ団ではまだアーティストと知って驚きました。これからのバレエ団公演ではチェックしなければ…
『極地の空』
構成・演出:加賀谷香
音楽・演奏:坂出雅海
衣裳:清水典子
出演・振付:加賀谷香&吉﨑裕哉
6演目の中では一番日本的な湿度を感じた作品。舞台上で存在感があった音楽・演奏の坂出雅海さんは調べたら、ヒカシュー在籍37年のベーシストでした。
加賀谷香さんへと続く白い光の帯の上で踊る吉﨑裕哉さんの重みのある踊りが印象に残りました。
『Let's Do It!』
音楽:ルイ・アームストロング、コール・ポーター
衣裳:池田木綿子
出演・振付:山田うん&川合ロン
副題はLet’s fall in love (公演パンフレットより)
男性はダブルのジャケットにロングのフレアスカート、女性は背中にフリルがついたジャケットに半ズボンという衣裳。
軽快な曲に乗せて踊られる踊りの合間に、2人が組み合った時に騙し絵的に現れる不気味な姿(女性の上半身と男性の下半身が繋がって見えたり)に意表をつかれる作品。
クラシカルな女教師みたいな衣裳で淡々と踊る川合ロンさんがかっこよかった。
2021年7月には新国立劇場で山田うんさん主催のCo.山田うん『オバケッタ』が予定されています。
『A Picture of You Falling』より
振付:クリスタル・パイト
音楽:オーウェン・ベルトン
衣裳協力:ネザーランド・ダンス・シアター
出演:湯浅永麻&小㞍健太
クリスタル・パイトが2010年に振り付けた4つの小品からなる『The You Show』より、ある男女の関係性を切なく描いた『 A Picture of You Falling』からの抜粋デュエット。
(出典:公演パンフレット)
英語でのモノローグが流れる中、始まるダンス。2人の間の張り詰めた空気を感じる作品。湯浅永麻さん、小㞍健太 さんの精巧な動きに魅せられ、ラストまで息を詰めて観てしまう作品でした。
こちらで作品の冒頭だけ観られます。
おわりに
普段バレエ以外の公演はほとんど観ないので、ちょっと及び腰で感想を書きました 笑
どうしてもクラッシクバレエ的な観方から逃れられない(綺麗なつま先に目を奪われるとか)なあ…と感じつつも公演は楽しかった!
新国立劇場バレエ団のダンサーたちの新たな魅力も発見できました。
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