公演からはや、半月以上…今更ではありますが、KバレエカンパニーSpring 2021『ドン・キホーテ』の感想を。
もともと話題の飯島望未さんの主演日のチケットを買っていましたが、今年3月の『白鳥の湖』の配信が素晴らしかったので、日髙世菜さん主演日のチケットも買い足しました。
結果的にタイプの違う2人のキトリが観られて、とても面白い鑑賞体験でした。
日髙世菜さんの『白鳥の湖』配信の感想はこちら
公演概要
Spring 2021『ドン・キホーテ』 Kバレエ・カンパニー
Bunkamura オーチャードホール
2021年5月19日(水) 14:00〜
2021年5月20日(木) 18:30〜
芸術監督/演出/再振付/舞台美術 /衣装デザイン:熊川哲也
原振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー
音楽:レオン・ミンクス
指揮:井田勝大
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー
【上演スケジュール】
プロローグ・第1幕 45分
休憩 20分
第2幕 50分
休憩 20分
第3幕 35分
【キャスト】
2021年5月19日(水)14:00〜
キトリ:日髙世菜
バジル:髙橋裕哉
2021年5月20日(木)18:30〜
キトリ:飯島望未
バジル:山本雅也
*主役以外のキャストは両日共通
ドン・キホーテ:ニコライ・ヴィュウジャーニン
ガマーシュ:ビャンバ・バットボルト
サンチョ・パンサ:酒匂麗
メルセデス:戸田梨沙子
エスパーダ:杉野慧
ロレンツォ:伊坂文月
花売り娘:成田紗弥、毛利実沙子
ドルネシア:片岡美紅
第1幕
闘牛士:石橋奨也、栗山廉、西口 直弥、吉田周平、奥田祥智、田中大智
第2幕
森の女王:戸田梨沙子
キューピッド:萱野望美
第3幕
第1ヴァリエーション:成田紗弥
第2ヴァリエーション:毛利実沙子
クラシカルジェンツ:石橋奨也、吉田周平
アントレ:佐伯美帆、高橋怜衣、辻久美子、平野佐代子、新居田ゆり、塚田真夕
闘牛士:栗山廉、西口 直弥、奥田祥智、金瑛揮、田中大智、中井 皓己
熊川哲也版『ドン・キホーテ』は2004年初演。演出、再振付のみならず、舞台装置や衣装デザインまで熊川哲也さんが自ら手がけたこだわりの作品です。
スペインの街並みを再現した立体的なセット、衣裳もとても豪華。闘牛士たちの衣裳は、眩いばかりの豪奢な装飾にピンクソックス&ピンクとイエローのマント。キトリは幕ごとに、赤、青、白と3色の衣裳で登場。特に3幕の純白に黒いアクセントが入ったチュチュが素敵です。ありきたりな「赤と黒のなんとな〜くスペイン風」で終わらせないところに熊川哲也さんの美学を感じます。
日髙世菜さんと飯島望未さん、タイプの違う2人のキトリ
日髙世菜さんを劇場で観るのははじめて。改めて魅力的に感じたのは、上半身の柔らかさと、シャープなテクニックが同居しているところ。特に上半身の表情の豊かさは素晴らしい…
タイプ的にはオデットのようなしっとりした役のイメージかなと思っていましたが、長い手脚を生かしたダイナミックな踊りは、キトリにもとても似合っていました。
ご本人のインスタグラムには、衣裳の色別に分けた公演の写真が。
こちらは白バージョン!日髙世菜さんのインスタグラムより。
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『白鳥の湖』と同じく、パートナーは髙橋裕哉さん。黒タイツがものすごく似合う「美脚バジル」でした。このふたりのキトリとバジルの関係はなんとなく、ほのぼのとしていて微笑ましい感じ。
一方、飯島望未さんはヒューストン・バレエの元プリンシパルで、シャネルのビューティー・アンバサダーを務めるなど、バレエ以外の活動も話題のダンサー。この公演はゲストとしての出演でしたが、8月にKバレエカンパニーへ入団することが発表されています。
飯島望未さんのキトリは、とてもキャッチー。ちょっとした仕草、表情、走り方などが、あまりクラシックバレエ然としていないというか…
このインタビューを読むと、「わかりやすさ」を目指して、意識的にされているのだとわかります。
「わかりやすさ」については色々な意見がありそうですが、この飯島さんの「挑戦」が、今後Kバレエカンパニーでどんな風に進化していくかは、とても興味深い。
インタビューによると、意外なことに全幕キトリは初めてとのこと。舞台で観る飯島さんは想像より小柄でしたが、エネルギーあふれるチャーミングなキトリでした。 やんちゃな感じの山本雅也さんのバジルとも相性が良かったです。
舞台とは関係ないのですが、この日の劇場の客席、シャネル率が高かった!(シャネルの招待枠とかあるのかな…)おしゃれな人も多くて、「飯島効果」を感じました。
杉野慧さんのエスパーダに目が釘付け
登場しただけで、客席がざわめいた杉野慧さんのエスパーダ。
細い眉、ひさしの張ったリーゼント風の髪型。なんだかヤンキーテイスト(笑)のエスパーダなのですが、これがかっこいい!突き抜けた演技力で客席を沸かせていました。エスパーダはやりすぎなぐらいやってくれないとね(笑)
5月22日の公演では、バジルも演じた杉野さん。その公演のあと、プリンシパルソリストに昇格が決まりました!
杉野慧さんのインスタグラムより。感激の瞬間…いい写真ですね。
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印象的だった吉田周平さん
日髙世菜さんと共にタルサバレエ から移籍した吉田周平さん。
前回鑑賞した『白鳥の湖』の公演ではパドトロワを踊っていましたが、入団して間もない公演だったせいか、やや緊張している印象を受けました。今回の公演では、高身長&イケメン軍団の闘牛士たちの中でも、小柄な吉田さんの大きな踊りが目を引きました。3幕のクラシカルジェンツも伸びやか。
吉田周平さんのインスタグラムより。
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舞台上のドラマが楽しい
Kバレエカンパニーの『ドン・キホーテ』は主役が踊っている脇でも、さまざまなドラマが繰り広げられていてすごく楽しい。
Kバレエカンパニーの名優、伊坂文月さん演じるキトリの父親ロレンツォが、キトリの婚礼の踊りを見ながらずっと泣いていてドン・キホーテに慰められてるとか、山田蘭さんが演じる酒場の女将がガマーシュ(だったと思う)に触っちゃった手が臭いとほかの女の子に嗅がせようとするとか、前出のクラシカルジェンツの吉田周平さんが、3幕最後でキトリとバジルの結婚に感激して涙を流し、女の子に慰められてるとか…
そこここにドラマがあり、主役の踊りを見逃しそうになって危険なくらい。役者揃いのKバレエカンパニーの魅力が生きる演目だと思いました。
おわりに
飯島望未さん×山本雅也さんの公演日は、ライブ&アーカイブ配信されていましたが、劇場公開も発表されています。見逃した方はぜひ劇場で。
【7/2(金)公開】『ドン・キホーテ in Cinema』上映決定! | K-BALLET COMPANY / K-BALLET FRIENDS
これからのKバレエカンパニーの2大看板になりそうな日髙世菜さんと飯島望未さん。さらに、秋の公演『シンデレラ』では、休養していた矢内千夏さんの復帰も発表されています!
Autumn Tour 2021『シンデレラ』 | K-BALLET COMPANY / K-BALLET FRIENDS
*2021.9追記
9月1日付けで矢内千夏さんの退団が発表され、キャストが変更になりました。
退団理由は一身上の都合としか書かれていなかったですが…。
キャスト変更のお知らせ | K-BALLET COMPANY / K-BALLET FRIENDS
大きな世代交代期コロナ禍を同時に迎える中でも新しいことに次々とチャレンジし、勢いを感じるKバレエカンパニー。目が離せないです。
バジルといえば熊川哲也さん!2004年収録版です。
★最後までお読みいただきありがとうございました。