新国立劇場バレエ団の『ライモンダ』を鑑賞しました。コロナ禍の影響か、全5日の公演は全てマチネ、平日は1日のみという日程。
ライモンダとジャン・ド・ブリエンヌは米沢唯×福岡雄大、小野絢子×奥村康祐、木村優里×井澤駿、柴山紗帆×渡邊峻郁の4組。少し前までは、ほとんど固定化していた新国立劇場の主役男女の組み合わせ、現在はシャッフル状態ですね(笑)
どの組も興味津々でしたが、今回は柴山紗帆さん×渡邊峻郁さんのフレッシュな『ライモンダ』を観てきました。
公演概要
『ライモンダ』全3幕 新国立劇場バレエ団
6月11日(金) 14:00〜
新国立劇場 オペラパレス
芸術監督:吉田都
振付:マリウス・プティパ
改訂振付・演出:牧阿佐美
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
美術・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
照明:沢田祐二
指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【キャスト】
ライモンダ:柴山紗帆
ジャン・ド・ブリエンヌ:渡邊峻郁
アブデラクマン:速水渉悟
ドリ伯爵夫人:本島美和
アンドリュー2世王:貝川鐵夫
クレメンス:廣川みくり
ヘンリエット:五月女遥
ベランジュ:浜崎恵二朗
ベルナール:中島瑞生
〈ワルツファンタジア〉
第1バリエーション:渡辺与布 第2バリエーション:廣田奈々
サラセン人:益田裕子、朝枝尚子、原田舞子、宇賀大将、小野寺雄、樋口響
スペイン人:寺田亜沙子、木下嘉人
チャルダッシュ:奥田花純、小柴富久修
マズルカ:川口藍、玉井るい、今村美由紀、関晶帆、山田歌子、吉田明花
〈グラン・パ・クラシック〉
バリエーション:池田理沙子
パ・ド・カトル:中家正博、原健太、浜崎恵二朗、中島端生
パ・ド・トロワ:中島春菜、廣田奈々、横山柊子
【 上演スケジュール】
プロローグ/第1幕 60分
休憩 25分
第2幕 35分
休憩 20分
第3幕 35分
今回上演された『ライモンダ』は牧阿佐美さんによる改訂版。牧阿佐美さんが新国立劇場バレエ団の芸術監督就任中の2004年に初演、その時はゲストで現芸術監督の吉田都さんが出演されています。ちなみにこの公演が、吉田都さんのライモンダデビュー。
新国立劇場バレエ団での全幕の上演はなんと12年ぶりということで、今回メインのキャストは全て初役です。
コンテストやガラ公演ではおなじみでも、意外に全幕で上演されることが少ない『ライモンダ』。そのストーリーはシンプル。
出征した婚約者の帰りを心待ちにしているライモンダが、異国の強引な男に迫られて拐われそうになるが、すんでのところで婚約者が帰還して男を倒し、2人は結婚しました。以上!
詳しいストーリーはこの辛酸なめこさんのエッセイにわかりやすく(面白く)まとめられています(笑)
このシンプルなストーリーのもと、グラズノフの美しい旋律に乗せて次々に繰り広げられる踊りは圧巻。主人公ライモンダが踊る5つのバリエーションをはじめとして、美しい中世の絵巻物を観ているような気分になれます。
主役の風格、柴山紗帆さん
新国立劇場バレエ 団の公演では、いつも印象的な踊りを観せてくれる柴山紗帆さんですが、主役を踊るのを観るのははじめて。ソリストというポジションですが、すでに色々な演目で主役を務めています。
柴山さんがバレエチャンネルのインタビューで、ライモンダの5つのバリエーションについて語っている記事が面白かった。
『ライモンダ』の踊りはキツイ。多くのダンサーから聞かれる言葉ですが、記事を読むとその理由が良くわかります。
「この人がセンターにいて当然」。主役に求められるのは、そんな納得感。ライモンダを演じた柴山紗帆さんは、佇まいも踊りも主役の風格がありました。音楽的で気品があり、丁寧な踊りは観ていて気持ちがよかった。
前出のインタビューでは「踊る人の芯の強さが問われる」と話されていた最後のハンガリアン(手打ち)バリエーションも、凛とした美しさと存在感がありました。
ジャン・ド・ブリエンヌ役の渡邊峻郁さんもはまり役。ライモンダの夢の中に登場するシーンが特に素敵でした。伸びやかでクセのない踊りが、夢の中の愛しい婚約者にぴったり。
柴山紗帆さんのインスタグラムより。お似合いのライモンダとジャン。
まわりのダンサーの猫耳みたいな頭飾りが可愛い。(ハンガリアン様式なんでしょうか??)
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速水渉悟さん、情熱のアブラデクマン
ひねりのない『ライモンダ』のストーリーの中で、ドラマティックな要素を一手に引き受けているのが、アブデラクマン。フランス・プロヴァンス地方のお城に、突如登場するサラセン(中世ヨーロッパ世界でのイスラム教徒の呼称)の首領です。アブデラクマンは中家正博さんと速水渉悟さんのダブルキャストで、この日は速水渉悟さん。
バレエ チャンネルの中家正博さんと速水渉悟さんインタビュー。中家正博さんのアブデラクマンも観たかった!
牧阿佐美版『ライモンダ』のアブデラクマンは、極悪人というキャラクターではなく、ライモンダに夢中になるあまり、許されない行動に走ってしまうという、ちょっと切なさのある設定。
速水渉悟さんのアブデラクマンも、そんな情熱と哀れさを感じさせました。思った以上にガタイが良く、肉体派アブデラクマンのマッチョな衣裳が似合う!テクニック的な見せ場の多いソロの踊りも、キレがあって素晴らしかった。
中家正博さんはこの日は3幕のパ・ド・カトルなどに出演。抑制の効いた品のある踊りは素敵でしたが、アブデラクマンとは真逆の役だけに、「どんなアブデラクマンだったのだろう」とちょっと気になってしまいました。
福岡雄大さんのインスタグラムより。2枚目以降の写真に中家正博さんのアブデラクマンが登場するのですが、この投稿ちょっと面白いです(笑)
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コールドバレエ の美しさを堪能
ライモンダの友達、ヘンリエットの五月女遥さんはいつもながら躍動感のある踊り。ハンサムでスタイルがいい浜崎恵二朗さんと中島瑞生さんのベランジェとベルナールも似合っていました。
そして今回も、コールドバレエのレベルの高さを堪能。1幕のワルツファンタジア、3幕のグラン・パ・クラシックの群舞は素晴らしかったです。
入団一年目の岸谷沙七優さんのインスタグラムより。
このグリーンの衣裳での群舞が、夢のように美しかった…
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おわりに
配信も楽しいのですが、やっぱり劇場で観るバレエは最高です。
最近発表された新シーズンの『白鳥の湖』でもオデット・オディールに配役されている柴山紗帆さん。ファースト・ソリストへ昇格も近いのでは?
『白鳥の湖』では井澤駿さんが相手役!楽しみです。
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トリプルビルとしてシネマでも上映されていた英国ロイヤル・バレエ団の『ライモンダ』第3幕。主役はオシポア様とムンタギロフ!
英国ロイヤル・バレエ団の『ライモンダ』第3幕をシネマで観た感想はこちら
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