世界バレエ フェスティバル、終わってしまいましたね。
Bプログラム、初日の感想です。
Aプロの感想はこちら↓
公演概要
8月19日(木)14:00〜
第16回世界バレエフェスティバル Bプログラム
東京文化会館 大ホール
指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 菊池洋子(「3つのプレリュード」)
【上演スケジュール】
第1部 14:00~15:00
休憩 15分
第2部 15:15~16:05
休憩 15分
第3部 16:20~16:50
休憩15分
第4部 17:05〜17:55
1994年第7回の世界バレエフェスティバルで、マリシア・ハイデとジョン・ノイマイヤーが踊ったベジャール作品「椅子」を、27年振りにアレッサンドラ・フェリとジル・ロマンが上演することが話題になっていたBプロ。Aプロは3部構成でしたが、Bプロは「椅子」が単独で第3部となり、全4部構成でした。
Aプロに比べて、コンテポラリー作品が増えて、いつもの世界バレエフェスティバルらしいバランスのプログラムでした。
第1部
「グラン・パ・クラシック」菅井円加、ダニール・シムキン
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
Aプロがとても良かった菅井円加さん。この演目も素晴らしかった!
ポアントが床に突き刺さっているかのように微動だにしない見事なバランスなど、キレのあるテクニックに加えて、堂々とした風格がありました。オープニングを飾るにふさわしい踊りでした。「グラン・パ・クラシック」で黒の衣裳って、ちょっと珍しい気もしましたが、このふたりには似合っていてとてもきれいでした。
「スティル・オブ・キング」マルセロ・ゴメス
振付:ヨルマ・エロ
音楽:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
上半身は裸、黒タイツに素足というシンプルな姿で登場したゴメス。ゴメスのために振り付けられた作品で「若き王の青春、権力と敗北の旅」(パンフレットより)を表現しているらしい。王様ということはなんとなくわかるけど、そこまで細かいストーリーはわかりませんでした…。ちょっとコミカルな感じがする振り付け。
ゴメスが女性ダンサーと組むときは、相手を美しく見せることに専念しているせいなのか、意外に印象に残らないことがあるのですが、ソロを観ると改めてにその踊りに魅せられます。特に腕の動きに独特な美しさがあるなぁ…と。どこまでも伸びていきそうな表情豊かな腕、久しぶりに観られて嬉しかったです。
「トゥー・ルームズ」マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ
振付:イリヤ・ジヴォイ
音楽:マックス・リヒター
マリンスキー出身の振付家イリヤ・ジヴォイによる、2020年7月パンデミックの最中に構想されたという新作。照明によってつくられた2つ部屋を思わせるスペースで、それぞれに踊るアレクサンドロワと ラントラートフ。
黒のシースルーの衣裳越しの鍛えられた身体の動きが美しかった。アレクサンドロワは3年前のバレエフェスの時より、身体を絞ってパワフルになった気がする…。
「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ エリサ・バデネス、ワディム・ムンタギロフ
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
Aプロのフリーデマン・フォーゲルに続き、Bプログラムではエリサ・バデネスが、2演目に出演。シュツットガルトは働き者だな(笑)
黒鳥に簡単にだまされそうな王子がとても似合うムンタギロフ。踊りは伸びやか。エリサ・バデネスも歯切れのいい踊りで、黒鳥を楽しげに演じていました。
このふたりは12年前に英国ロイヤル・バレエスクールで一緒に学んでいるんですね。
黒鳥に愛を誓う、というよりは黒鳥にスリスリと甘えているように見える王子ムンタギロフ↓
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第2部
追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)
Aプロとは違う追悼映像が流れました。パトリック・デュポンは「サロメ」、カルラ・フラッチは「シェヘラザード」と「レ・シルフィード」。Aプロと同じく大きな拍手が。
ホワイエにはカルラ・フラッチのポアントの展示も。
「ジュエルズ」より "ダイヤモンド" オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャローフ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
スミルノワの高貴な佇まいと踊りはまさにダイヤモンド。Aプロのパリオペ組の"ダイヤモンド"に比べると、よりクールな美しさ…かな。
キラキラのスミルノワ、シクリャローフの後ろに影のように映り込むキム・キミン↓
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「3つのプレリュード」アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ
振付:ベン・スティーヴンソン
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
男女のダンサーのバーを挟んで繰り広げられるデュエットから始まり、伸びやかなパ・ド・ドゥへと展開していく作品。はじめのパートのバーを挟んでのリフトなどがとても印象的で、だんだんバーがふたりを隔てる境界のように見えてくる…
シンプルですが情感がある素敵な作品でした。菊池洋子さんのピアノがとても美しかった。
こういうレッスン着のような衣裳でさえ、パリ・オペラ座クオリティーを感じる…
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「海賊」オニール八菜、マチアス・エイマン
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリゴ
「ダイヤモンド」もそうでしたが、なぜか「フランスVSロシア」的なプログラムになっている今回のバレエフェス。Aプロでロシア組が会場を沸かせた「海賊」、Bプロではパリ・オペラ座チームが踊りました。
ダイナミックというよりは繊細で緻密な表現が似合う気がするマチアス・エイマン。できればほかの演目で観たい気もしましたが(Aプロの「ゼンツァーノの花祭り」がよ過ぎたせいもあり…)、それでも十分に素晴らしい「海賊」でした。最後の超高速アラスゴンドターンはすごかった。
オニール八菜さんはメドーラがとてもお似合いでした。ふたりのブルーグリーンのシンプルな衣裳も美しかった。
第3部
「椅子」 アレッサンドラ・フェリ、ジル・ロマン
振付:モーリス・ベジャール(ウージェーヌ・イヨネスコに基づく)
音楽:リヒャルト・ワーグナー
原作は不条理演劇、ベジャール振り付け、上演時間は30分ときいて、ついていけるだろうか…と不安でしたが、舞台から目が離せず、あっという間の30分でした。理解したのかと問われれば、「うーん」なのですが、2人の創り出した世界に引き込まれました。
幕が開くと、舞台の上にはおびただしい数の椅子。天井からも沢山の椅子が吊り下げられています。ジル・ロマンは95歳の老人、フェリは94歳の老婆という設定です。白いスリップドレスを着たフェリは、老婆のようにも幼女ように見える…。
あらかじめ作品の解説ページを設けてくれたり、セリフの翻訳を配ってくれたり、さすがNBS。
第4部
「ロミオとジュリエット」より 第3幕のパ・ド・ドゥ ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
入国が遅れ、Aプロでは観られなかった待望のユーゴ・マルシャン!ドロテ・ジルベールとの「ロミオとジュリエット」は一瞬で作品世界に引き込まれる感じ。激しく、切なく、とても素敵でした。
ユーゴ・マルシャンファンとしてはもう少し彼の踊りが観たかったですが〜。
2021年のロミオ。撮影はシムキン。
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「シャル・ウィ・ダンス?」より "アイ・ガット・リズム" 菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ジョージ・ガーシュウィン
ガーシュウィンの曲にのせたショーダンスのような雰囲気の作品。「グラン・パ・クラシック」から一転、燕尾服にポアントで踊る菅井円加さんがチャーミング。 アレクサンドル・トルーシュの粋なムードも素敵でした。
今回のバレエフェスでは、菅井円加さんのいろんな魅力を観せてもらった感じ。世界のスターダンサーたちの中でも強い輝きを放っていました。
「悪夢」 エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル
振付:マルコ・ゲッケ
音楽:キース・ジャレット、レディー・ガガ
フリーデマン・フォーゲルのコンテンポラリーはいつも期待を裏切らない!作品自体も新鮮で面白いし、彼の踊りもいい。クラシックも素晴らしいですが、コンテンポラリーを踊っている時はよりのびのびしている気がします。ふたりの研ぎ澄まされた身体能力が十分に生かされた演目でした。
「ドン・キホーテ」エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
エカテリーナ・クリサノワの独楽のような回転、キム・キミンの滞空時間が長く美しいジャンプを堪能しました。ふたりのクリアな踊りを観て、清々しい気持ちに。やっぱり最後は「ドン・キホーテ」ですね。
フィナーレ 「眠れる森の美女」よりアポテオーズ
アポテオーズにのせて、ダンサーたちが登場。Aプロと同じく見事な花火のプロジェクションマッピングが映し出されて、フィナーレ。
最終日には、ハッピを着てのアトラクションもあったようですね。観たかったな…
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おわりに
バレエ鑑賞の際は、自分なりに最大限の注意をしているつもりではありますが、観に行っていいかなという迷いは常にあります。バレエフェスティバルのような、大規模な公演ならなおのこと…
誰もが複雑な思いを抱きながら、足を運んだと思われる今回の世界バレエフェスティバル。主催者や関係者、ダンサーたちに感謝しつつ、早く安心して、劇場に行ける日が来ることを心から祈ります。
★最後までお読みいただきありがとうございました。
「SWAN」2021夏号は世界バレエフェスティバル特集