新国立劇場バレエ 団の『白鳥の湖』を鑑賞しました。はじめは米沢唯さん×福岡雄大さんの日だけの予定でしたが、予想以上に素晴らしくてもう一度観たくなり、追加で柴山紗帆さん×井澤駿さんの日のチケットを購入しました。
鑑賞後かなり時間が経ってしまい、やや記憶が薄れ気味ではありますが…感想を記録しておきます。
公演概要
ピーター・ライト版『白鳥の湖』(新制作) 新国立劇場バレエ団
新国立劇場 オペラパレス
芸術監督:吉田都
振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト 共同演出:ガリーナ・サムソワ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
美術・衣裳:フィリップ・プロウズ
照明:ピーター・タイガン
指揮:ポール・マーフィー *10月31日、11月3日公演のみ、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【キャスト】
2021年10月30日(土)13:00〜
オデット/オディール:米沢 唯
ジークフリード王子:福岡雄大
王妃:盤若真美 *ゲストダンサー
ロットバルト男爵:貝川鐵夫
ベンノ:木下嘉人(←速水渉悟さんがケガにより降板)
クルティザンヌ(パ・ド・カトル):池田理沙子、池田紗弥(←柴山紗帆さんが体調上の理由により降板)
ハンガリー王女:廣田奈々
ポーランド王女:飯野萌子
イタリア王女:奥田花純
2021年11月2日(火)14:00〜
オデット/オディール:柴山紗帆
ジークフリード王子:井澤 駿
王妃:本島美和
ロットバルト男爵:中島駿野
ベンノ:福田圭吾
クルティザンヌ(パ・ド・カトル):奥田花純、広瀬 碧
ハンガリー王女:中島春菜
ポーランド王女:根岸祐衣
イタリア王女:赤井綾乃
【上演スケジュール】 *上演時間 約3時間
第1幕・2幕 70分
休憩25分
第3幕 40分
休憩20分
第4幕 25分
コロナ禍の影響により1年延期になりましたが、本来は吉田都芸術監督就任後の記念すべき第1作となるはずだった新制作の『白鳥の湖』。
バレエ・チャンネルのインタビューで、吉田都さんがなぜピーター・ライト版の『白鳥の湖』を選んだかを語っています。
このインタビュー、読み応えあり↓
吉田都さん曰く、ピーター・ライト版は「非常にロジカル」。
例えば、版によっては単なる「残念な人」に思えてしまうジークフリート王子のキャラクター。ピーター・ライト版は、急死した思われる王子の父親・国王の葬列でスタートし、王子の置かれた状況をきちんと描くことで、王子の心情が理解しやすくなっていました。
全体の構成も無駄がなく、密度の高い重厚なドラマを観た!という印象でした。
【10/30公演】期待を裏切らない米沢 唯×福岡雄大
どの公演を観ても期待を裏切ることがない米沢唯さん。今回も素晴らしかったです。
観る前はオディールのほうがはまるかなと思っていましたが、個人的にはオデットが印象に残りました。オデットととして登場した途端、「なんか腕が長くなってる?」と思ったほど、腕がしなやかで美しかった。福岡雄大さんの端正で堂々とした風格も、王子そのものでした。
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ピーター・ライト版では道化は登場せず、王子の友人ベンノが重要な役割を担っています。木下嘉人さんは常に王子を気遣う繊細なベンノという雰囲気。最後の王子の亡骸を抱いて嘆く姿が、胸に迫るものがありました。
パ・ド・トロワの2人の女性は、ベンノが王子を気遣って連れてきたクルティザンヌ(高級娼婦)という役どころ。公式ホームページで発表された配役には”クルティザンヌ(パ・ド・カトル)”と書いてあって、「パ・ド・トロワでは??」と思っていたのですが、クルティザンヌとベンノの踊りに途中から王子も参加するので、パ・ド・カトルということのようです(たぶん…)。クルティザンヌは、王子との絡みも多く、王子を誘惑するようなそぶりを見せたりと、ほかの版のトロワの初々しい女性たちとは異なる艶っぽい雰囲気。
この日のクルティザンヌは池田理沙子さん&池田紗弥さんのW池田コンビ。池田紗弥さんは、柴山紗帆さんが体調上の理由で降板したことによる出演でした。この池田紗弥さんが素晴らしかった。キレのある踊りと堂々とした佇まい、華やかな池田理沙子さんに勝るとも劣らない艶やかさがあって驚きました。池田紗弥さんは、以前記事にした「SPOTLIGHT」というプロジェクトに参加していたダンサーです。今シーズンから新国立劇場に入団したばかりですが、今後の活躍が楽しみです。
「SPOTLIGHT」の記事↓
池田紗弥さんのインスタグラムより。W池田のクルティザンヌ。
*この日の公演の写真ではありません。↓
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3幕の構成もすっきりしていて好みでした。花嫁候補はハンガリー、ポーランド、イタリアの少数精鋭の3人のみ。1幕で王妃が3人の見合い写真ならぬ肖像画?釣書書?みたいのものを王子に示すという前振りもあります。各国の舞踏団の踊り→その国の花嫁候補の踊りという構成で、3人の花嫁候補のソロの踊りがあります。イタリア王女のソロはチャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲だったと思う…(あとは記憶がはっきりせず…すみません)。王女同士のライバル意識もはっきりしていて面白かった。
最後に突如現れるスペイン舞踏団とともに登場するのがオディール。(スペインが悪の手先みたいになっているパターン、多いですよね…)
各国の踊りでは軽快な五月女遥さんのナポリ、華やかな寺田亜沙子さんのスペインが印象に残りました。
少し残念だったのは、ピーター・ライト版のロットバルトはわりと存在感が薄めなこと。この日のロットバルトは貝川鐵夫さん。強烈なオーラを放つ貝川さんをもってしても、そこまで印象に残るシーンがなく…。4幕最後に王子に兜を取られて、ガイコツみたいな白塗りの頭でもがき苦しむ場面が一番の見せ場だったかもしれません。
ピーター・ライト版の主役はあくまでもジークフリード王子、ということでしょうか。
【11/2公演】新鮮な魅力、柴山紗帆×井澤駿組
今シーズンからファーストソリストに昇格した柴山紗帆さん。体調上の理由でクルティザンヌを降板していたので心配していましたが、オデット/オディールは予定通りの出演でした。
はかなげで透明感のあるオデットもよかったのですが、3幕のオディールのキレのある踊りが印象に残りました。バランスやアチチュード・ターン、なめらかな手の動きが素晴らしかったです。
井澤駿さんは踊りや佇まいの印象が変わった気がしました。よりすっきりとクリアな印象になったというか…。想像以上にノーブルで王子が似合っていました。
このふたりの組み合わせは初めて観ましたが、バランスがよかった。井澤さんにリフトされたときの柴山さんは、羽のように軽く見えました。
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プチ情報ですが…この日ポーランド王女を踊った根岸祐衣さん。ANAのCAを経て、27歳で入団したことがニュースになっていた方です。華やかな存在感がありました。
世界に誇れる白鳥たちの群舞
新国立劇場バレエ団の公演を観るたび、群舞のレベルの高さに魅せられます。今回の白鳥のコール・ド・バレエもとにかく美しかった!これだけでも観に行く価値があると思いました。
上の階から鑑賞していたのですが、一糸乱れぬ踊りとフォーメーション。かなり複雑で変化に富んだフォーメーションにもかかわらず、間隔や形の整い方が神業級でした。4幕の幕開け、スモークの中から白鳥たちの姿が現れる幻想的なシーンでは、観に行った2回とも観客席から拍手があがりました。
絵画のような美術・衣裳を堪能
衣裳と美術はとにかく素晴らしかった。細部をじっくり観たくなりました。
衣裳は1幕のグレー(シルバー?)と黒、3幕は黒と赤のカラートーン。遠目からでもわかる凝った装飾がほどこされ、繊細でありながら重みがある美しい衣裳でした。
全体に暗いトーンのゴシック調の舞台美術も中世絵画のようでした。比較的シンプルな2幕、4幕の湖畔のシーンで、印象的だったのは湖。暗い水面にわずかな光が当たってきらめく感じが表現されていて美しかったです。今まで観た『白鳥の湖』のなかではベスト・オブ・湖かも。(単なる書き割りみたいな湖も多いですよね )
おわりに
今後はこのピーター・ライト版『白鳥の湖』が繰り返し上演されるものと思われますが、『くるみ割り人形』のように毎年やってほしい。何度も観たいと思わせる、素晴らしいプロダクトでした。
2022年1月23日、NHK BSプレミアムで米沢唯さん×福岡雄大さんの公演(10月23日収録)が放映されます。吉田都さんの引退公演『ラスト・ダンス』の再放送との豪華2本立てです!
★最後までお読みいただきありがとうございました。