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新国立劇場バレエ団 米沢唯&井澤駿『くるみ割り人形』【鑑賞レポート】

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新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』を鑑賞しました。

『くるみ割り人形』全12公演初日の2021年12月18日(土)のマチネ。主演は米沢唯さん&井澤駿さんです。

公演概要

『くるみ割り人形』全2幕 新国立劇場バレエ団

2021年12月18日(土) 13:00〜

会場:新国立劇場 オペラパレス

芸術監督:吉田都

振付:ウエイン・イーグリング

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

指揮:アレクセイ・バクラン 管弦楽:東京フィルハーモーニー交響楽団

美術:川口直次

衣裳:前田文子

照明:沢田祐二

【キャスト】

 クララ/こんぺい糖の精:米沢唯

ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:井澤駿

ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫

ねずみの王様:木下嘉人

ルイーズ:池田理沙子

シュタルバウム:中家正博

シュタルバウム夫人:関晶帆

雪の結晶(ソリスト):飯野萌子、広瀬碧

スペインの踊り:朝枝尚子、廣田奈々、清水裕三郎

アラビアの踊り:渡辺与布、宇賀大将、小柴富久修、中島駿野、福田紘也

中国の踊り:奥田花純、髙橋一輝、樋口 響、井澤 諒、渡部義紀

ロシアの踊り:福田圭吾、加藤朋子、木村優子、稲村志穂里、関 優奈

蝶々:池田理沙子

花のワルツ(ソリスト):寺田亜沙子、中島春菜、浜崎恵二朗、渡邊拓朗

【上演スケジュール】

第1幕 13:00〜13:55

休憩 30分

第2幕 14:25〜15:15

 

新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』は、2017年初演のウエイン・イーグリング版。

今年の「くるみ割り人形」全12公演の主演キャストは2017年の初演以来主演をつとめている、小野絢子&福岡雄大、米沢唯&井澤駿、池田理沙子&奥村康祐、木村優里&渡邊峻郁の4組に、新たに柴山紗帆&渡邊峻郁が加わりました。(当初発表された柴山紗帆さんの相手役速水渉悟さんは、残念ながら怪我で降板。)

 

登場した途端に米沢唯さんのクララに心奪われる

米沢唯さんのクララを観るのは初めて。イーグリング版では、1幕の途中で子役のクララから主演ダンサーに入れ替わります。クララの夢の中では、クララ自身が少女からレディになっているという設定です。

まず登場したときの、米沢唯さんのあまりの可憐さに心をうばわれました。生き生きとした表情や動き、全身が光り輝いているような存在感…この登場だけで、物語に強く引き込まれます。

そしてリフトやスローイング満載のイーグリング版の振り付けで問われるのは、パートナーリングの巧みさ。

米沢唯さんと井澤駿さんの『くるみ割り人形』での共演は5年目。米沢さんが井澤さんにリフトされているときの姿の美しさといったら!

この振付を淀みなく踊るだけでも大変なことだと思うのですが、そんなことを感じさせない流れるようなパ・ド・ドゥ。おふたりが積み上げてきた互いへの信頼が目に見えるようでした。

木下嘉人さんの振り幅の広さ

イーグリング版では、かぶり物で踊りまくる重要な役であるねずみの王様。今シーズンのねずみの王様役は木下嘉人さん、小柴富久修さん、渡邊拓朗さん。

昨シーズンは、王子とねずみの王様両方にキャスティングされているダンサーが3人もいましたが、今年は王子とねずみの王様は別キャスト。(イーグリング版の王子役は3役を演じ、ほぼ出ずっぱりのヘビーな役。さすがに過酷すぎるということだろうと想像します。)

バレエチャンネルがねずみの王様役ダンサーのインタビューが面白かった↓

balletchannel.jp

この日のねずみの王様は木下嘉人さん。

私の中では、『白鳥の湖』の憂いのあるベンノ、『DANCE to the Future』での美しく繊細な振付作品のイメージが強かった木下嘉人さん。コミカルな役のイメージはあまりなかったのですが、軽快なねずみの王様も良かったです。

以前観た奥村康祐さんの、隙あらば笑いをとりにいく関西系ねずみの王様とはまた違うタイプ。ちょっとニヒルな、でも憎めない感じのねずみの王様でした。

 

雪の結晶のコールドバレエの素晴らしさは相変わらず。上階から観ていると、全員の円形のチュチュがくるくると乱れなく動く様が本当に美しい…。

 

少女の夢の世界

振付も美術も衣裳も、イーグリング版『くるみ割り人形』のムードはちょっと独特です。はじめて観た時は少し戸惑いがありました。

肋骨が出てたり、目が赤く光るねずみの王様のデザインはかなりグロテスク。お菓子の国はなんだか夜のムード。クララの姉ルイーズ役のダンサーが、お菓子の国では蝶々として艶やかに舞う。ドロッセルマイヤーも、謎めいたマジシャンという印象です(貝川鐵夫さんのはまり役)。

キラキラ輝くおとぎ話の世界とは異なる。ちょっと奇妙で、ときに少しダークで…。

今回改めて、これは子供の頃みていた夢の世界だなぁと感じました。ちょっとこわかったり、奇妙だったり、身のまわりの人が全然別の役割で登場したりする、不思議な夢。子供の頃、そんな夢をみていませんでしたか?

そんな夢の世界を思い出させてくれたイーグリング版『くるみ割り人形』でした。

おわりに

昨年の『くるみ割り人形』公演はコロナ禍の中でのはじめての開催で、クリスマスの装飾もなしでした。今年はクリスマスツリーなどが復活。屋外テラスでのドリンク・フードのテスト販売もはじまり、少し以前の劇場が戻ってきたようで嬉しかった。

今回の『くるみ割り人形』公演は年をまたいで2022年1月3日までのロングラン。

1月1日、2日はまだ残席もあるので、気になる方はぜひ!(2021年12月29日現在)

くるみ割り人形 | 新国立劇場 バレエ

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2017年収録のイーグリング版DVD。主演は小野絢子さんと福岡雄大さん↓ 

 

2020年『くるみ割り人形』小野絢子&福岡雄大の感想はこちら

www.balletaddict.com

 

2019年『くるみ割り人形』木村優里&渡邊峻郁の感想はこちら

www.balletaddict.com

★最後までお読みいただきありがとうございました。