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新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』【鑑賞レポート】

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2022年のバレエ鑑賞初めは、1月14日(金)の新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』。バランシンの『テーマとバリエーション』とビントレーの『ペンギン・カフェ』という、バレエの多様な魅力を堪能できるダブル・ビルでした。

昨年2021年のライブ配信の感想はこちら↓

公演概要

『ニューイヤー・バレエ』新国立劇場バレエ団

ニューイヤー・バレエ | 新国立劇場 バレエ

1月14日(金)19:00〜

会場:新国立劇場オペラパレス

芸術監督:吉田都

指揮:冨田実里

管弦楽:東京交響楽団

 

第1部『テーマとヴァリエーション』

振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
美術:牧野良三
衣裳:大井昌子
照明:磯野 睦

【キャスト】

米沢唯、奥村康祐

 

第2部『ペンギン・カフェ』

振付:デヴィッド・ビントレー
音楽:サイモン・ジェフス
美術・衣裳:ヘイデン・グリフィン
照明:ジョン・B・リード

【キャスト】

ペンギン:広瀬碧

ユタのオオツノヒツジ:木村優里、井澤駿
テキサスのカンガルーネズミ:福田圭吾

豚鼻スカンクにつくノミ:五月女遥、原健太、小柴富久修、清水裕三郎、浜崎恵二朗、福田紘也
ケープヤマシマウマ:奥村康祐
熱帯雨林の家族:小野絢子、貝川鐵夫(←中家正博さん降板により変更)、谷口奈津(日本ジュニアバレエ)

ブラジルのウーリーモンキー:福岡雄大、飯野萌子、加藤朋子

【上演スケジュール】 1時間35分

第1部 19:00〜19:25

休憩25分

第2部 19:50〜20:35

『テーマとヴァリエーション』

ジョージ・バランシンの代表作のひとつ『テーマとヴァリエーション』。チャイコフスキーの音楽にのせた華やかなで端正なバレエ 。新春にぴったりな演目ですね。

主役の男女のパ・ド・ドゥからいきなり始まる冒頭。米沢唯さんの堂々とした風格、柔らかい表現の奥村康祐さんに一気に引き込まれる感じです。

その後登場する、ソリストを含めて男女それぞれ12人の群舞のアンサンブルも素晴らしかった。『テーマとヴァリエーション』は一見クラシカルにみえて、振付は時にかなりスピーディで激しく、踊りの密度が異常に高い…。(プログラムに掲載されていた上野房子さんの解説のなかで「偽装古典バレエ」という表現を使われていましたが、納得です。)

この振り付けを全員でそろえながら、美しくみせるってどれほど大変なことか…新国立劇場バレエ団の底力を感じます。終盤、音楽と踊りがどんどん盛り上がっていくところでは、ちょっと鳥肌が立つ感じでした。

個人的に悔やまれるのは、センターブロックの席を取らなかったこと。センターブロックの席ならば、シンメトリーなフォーメションの美しさがより感じられたことだと思います。

『ペンギン・カフェ』

昨年1月の無観客公演の配信を観てから、劇場でぜひ観たいと思っていた『ペンギン・カフェ』。

ポップな音楽と、動物のマスクをかぶったダンサーたちによる華やかなダンスが繰り広げられる明るくユーモラスな作品と思いきや、ペンギン(オオウミガラス)をはじめ、登場する動物たちは絶滅危惧種や絶滅種。環境問題や文明批判を含んだデヴィッド・ビントレー振付の異色のバレエ作品です。初演は1988年英国ロイヤル・バレエ団。30年以上前の作品とは思えません。

 

ホワイエでは絶滅危惧種の動物に関する展示もありました。

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新国立劇場バレエ団での初演は2010年、デヴィッド・ビントレー芸術監督就任のオープニング公演。今回出演の福田圭吾さん、小野絢子さん、貝川鐵夫さん、福岡雄大さんは初演時からのキャストです。

初演時の特設サイト。『ペンギン・カフェ』の見どころも詳しく掲載されています。↓

2010/2011シーズンバレエ「ペンギンカフェ」特設サイト | 新国立劇場

 

まず、ペンギンの広瀬碧さんが素晴らしかった。軽快で、ユーモラスで、ちょっと哀愁のただようペンギンにぴったりはまっていました。カーテンコールのときも、舞台センターでペンギンのままお辞儀する姿が可愛かった。(幕前の挨拶のときだけ、一瞬被り物をとっていました。)

広瀬碧さんのインスタグラムより。

 
 
 
 
 
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この日ユタのオオツノヒツジ役デビューだった木村優里さん。頭が被りもので隠れている分、手脚の細くしなやかなラインがいつも以上に印象的。なかなか色っぽいオオツノヒツジでした。

本日の 功労賞は間違いなくこのかた、『テーマとヴァリエーション』主演からのシマウマ、奥村康祐さん。サバンナの大地でたてがみを波立たせて踊るシマウマ、おとずれる突然の死。奥村さんの厳かな佇まいに引き込まれます。役に入っているときの奥村さんには、なにか凄みのようなものを感じます。

 

自然への畏怖や祈りを感じさせる熱帯雨林の家族のパートは、配信で観たとき以上に胸に迫る…。小野絢子さん、貝川鐵夫さんがせつなく美しい。

 

福岡雄大さんのウーリーモンキーは圧巻でした。音楽と見事にシンクロした躍動感あふれる踊り。福岡さんの魅力が生きる役柄だなと思います。

福田圭吾さん、五月女遥さんの軽快さ、決して途切れないリズムも見事でした。

 

ラストシーンは、箱舟に乗れなかったペンギンと箱舟の描かれた紗幕の後ろに佇む動物たちや人間たちの姿。箱舟から客席に向けられた視線に、「どうするの?」と問われているような気持ちになる幕切れでした。

 

昨年の配信のときは、オオツノヒツジ→シマウマモデル→再びオオツノヒツジという早替えが大変そうと思いました。今回改めて観てみると、それ以外にも役の掛け持ちをたくさん発見。オオツノヒツジのパートで燕尾服で踊っていたダンサーが、豚鼻スカンクにつくノミと一緒に民族衣装で「モリスダンス」を踊っている…。前半の燕尾服の男性と踊るソワレ姿の女性たちの中には、熱帯雨林の家族を演じた小野絢子さんがいたような。

少人数で上演できるようにという意図でしょうか?2幕や3幕のバレエでは、何役も兼ねるのは当たり前ですが、45分の短い作品では、楽屋裏はなかなか大変そうですね!

おわりに

昨年の『ニューイヤー・バレエ』は、直前に関係者から新型コロナの感染者が出て、急遽無観客ライブ配信になりました。今年も感染者激増中で心配していましたが、無事劇場で観ることができてよかった。

新国立劇場バレエ団の次の公演は2月19日(土)からの『吉田都セレクション』。新型コロナ感染状況が落ち着いてくれるのを祈るばかりです。

吉田都セレクション | 新国立劇場 バレエ

 

中古ですが、プレミアついてますね…↓

 

ペンギン・カフェ・オーケストラのベスト盤↓

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。