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Kバレエカンパニー 『クラリモンド〜死霊の恋』全編ほか2作品【バレエ鑑賞メモ】

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Kバレエカンパニーの『クラリモンド〜死霊の恋〜』全編、『FLOW ROUTE 』、『Simple Symphony』のトリプルビルを鑑賞しました。

1月29日(土)マチネ公演。3作品のメインキャストは『クラリモンド〜死霊の恋〜』は日髙世菜×堀内將平、『FLOW ROUTE 』は飯島望未×山本雅也、『Simple Symphony』は成田紗弥×髙橋裕哉。

翌日30日にライブ配信された公演と同じキャストです。

公演概要

1月29日(土)13:00開演

『クラリモンド〜死霊の恋〜』全編、『FLOW ROUTE 』、『Simple Symphony』

会場:Bunkamuraオーチャードホール

芸術監督:熊川哲也

出演:Kバレエカンパニー

照明デザイン:足立 恒

指揮:井田勝大

ピアノ独奏:塚越恭平 (『クラリモンド〜死霊の恋〜』全編)

管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

 

【上演スケジュール】  2時間20分

シンプル・シンフォニー 20分

休憩15分

FLOW ROUTE 25分

休憩20分

『クラリモンド〜死霊の恋〜』全編 60分

 

『Simple Symphony』(シンプル・シンフォニー)

振付:熊川哲也
音楽:ベンジャミン・ブリテン

舞台美術デザイン:鈴木俊朗

衣裳デザイン:前田文子

英国を代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンが若き日に書いた交響曲に振り付けた抽象バレエ(2013年初演)。

 

【キャスト】

成田紗弥、髙橋裕哉

小林美奈、山田夏生、杉野慧、吉田周平

雰囲気の異なる4つの楽章からなるブーレの「シンプル・シンフォニー」。その音楽を視覚化したような、華やかでおしゃれな作品でした。クラシカルでありつつ、腕の動きや顔の付けかた、リフトなどに、ひねりが効いている感じの振り付け。20分踊りっぱなしでとてもハードそうですが、6人のアンサンブルが見事でした。

衣裳もシック。女性は黒いチュチュ、黒タイツ、黒ポアントなのですが、チュチュの内側だけが鮮やかなグリーン。リフトのときなどに内側にのぞくグリーンが美しかった。男性も全身黒のぴったりした衣裳。

 

いつもながら躍動感のある踊りが印象的な吉田周平さんのインスタグラムより。

 
 
 
 
 
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素敵な衣裳なのですが、上階からみているとリノリウムとなじんでしまって、脚や腕の動きが見えにくい。(舞台の背景は赤系だったので、1階からならもっとよく見えたのかも)

男女共に肌が出ているのは顔と手先ぐらいなので、かなり手先が目立ちました。杉野慧さんの手先がきれいだった。杉野慧さんはマチネでは3作品全てに出演して、大活躍でした。

2022年1月にソリストとして入団した山田夏生さん(元ドレスデン歌劇場バレエ)はこの日がKバレエ公演デビュー。驚くほど小顔で美しいダンサー。これからの活躍が楽しみです。

『FLOW ROUTE 』

振付:渡辺レイ
音楽:ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーベン

衣裳デザイン:渡辺レイ

2018年初演のコンテンポラリー作品。キリアン率いるネザーランド・ダンス・シアターなど世界の第一線で活躍し、現在はKバレエカンパニー舞踊監督をつとめる渡辺レイさんの振付です。

【キャスト】

飯島望未、山本雅也

萱野望美、高橋怜衣、辻久美子、吉田早織、辻梨花、新居田ゆり、栗山結衣、吉岡眞友子、酒匂麗、杉野慧、栗山廉、関野海斗、本田祥平、三浦響基、金瑛揮、髙橋芳鳳


飯島望未さんのコンテ、すごい!というのが一番の感想です。

動きの輪郭がくっきりして、エネルギーに満ちている感じ。踊りの途中で何度か、息をのむような、鳥肌が立つような瞬間がありました。ミニマルな白いワンピースの衣裳もすごく似合ってた。

ヒューストン・バレエ団に長く在籍していた飯島望未さんですが、「コンテンポラリーが踊りたい」と一時チューリッヒ・バレエ団に移籍していたことがあるんですよね。「バレリーナ過ぎる」といわれてヒューストンにもどったということですが…。こんなに素晴らしいのに!

唐突に勝手な予想ですが、次の『ロミオとジュリエット』で飯島望未さんのプリンシパル任命…ありそうな気がしてます 。

 

飯島さんのことばかり書きましたが、コンテ音痴の私にもこの作品は楽しめました。5人のダンサーがテーブルを囲む第1パート、主役男女のデュオから最後には4組の男女の踊りになる第2パート、8人の男性の踊りから全員によるフィナーレにつながる第3パート。3つのパートに分かれていて、それぞれに雰囲気が異なり、面白かった。

いつもながらキレキレの関野海斗さん、そしてやっぱり杉野慧さんが目をひきました。

飯島望未さんのインスタグラムより。

 
 
 
 
 
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『クラリモンド〜死霊の恋〜』全編
 

振付・演出:熊川哲也
音楽:フレデリック・ショパン

舞台美術デザイン:ダニエル・オストリング

衣裳デザイン:セリーヌ・ブアジズ

19世紀フランスの作家テオフィル・ゴーティエによる短編小説「死霊の恋」に着想を得た熊川哲也さん振付・演出の作品。4年前に20分1場の小品として発表され、今回全編版が完成。死してヴァンパイアとなった美しき娼婦クラリモンドと、彼女に魅入られた聖職者ロミュオーの恋物語。

【キャスト】

クラリモンド:日髙世菜

ロミュオー:堀内將平

セラピオン:石橋奨也

バーバラ:浅川紫織

ロートレック:関野海斗

修道院長:グレゴワール・ランシェ

神父たち:三浦響基、金瑛揮、武井隼人、髙橋芳鳳

娼婦たち:岩井優花、戸田梨沙子、高橋怜衣、辻久美子、吉岡眞友子

客人:杉野慧、栗山廉、奥田祥智、田中大智

 

ロミュオーは間違いなく堀内將平さんのはまり役!

佇まいも踊りも、迷える神学生ロミュオーそのものでした。ロミュオーがクラリモンドにアピールするソロの踊りなど、初々しく生き生きとしていて素晴らしかった。一目でクラリモンドに惹かれ、のめりこんでいく様子は従順な子犬のよう。吸血鬼となったクラリモンドを必死に守ろうとする姿も胸を打ちました。

ロミュオーに密かな想いをよせるセラピオンを演じる石橋奨也さんもよかった。抑えた表現や硬質な踊りがセラピオンにぴったりでした。

ちなみに、堀内將平さんと石橋奨也さんは2018年『死霊の恋』のオリジナルキャストですね。

クラリモンドの日髙世菜さんは、やはり美しい。手脚のラインを観ているだけで、もう満足。ロミュオーといるときはちょっと母性を感じさせるようなクラリモンドでした。

2018年の『死霊の恋』ではクラリモンドを演じていた浅川紫織さんが、娼館のマダム、バーバラ役で3年ぶりに舞台にもどってくるのも話題でした。ムードがあって、ブランクを感じさせない踊り。

 

この作品について書かれている堀内將平さんのブログがものすごく面白くて。とくに日髙世菜さん、成田紗弥さんというふたりのクラリモンド、石橋奨也さん、杉野慧さんというふたりのセラピオンと踊った堀内さんの感想は必読!

クラリモンド 死霊の恋 - moondance

これを読んだら、29日ソワレの成田紗弥さんのクラリモンドと杉野慧さんのセラピオンを観なかったことを激しく後悔。29日はマチソワすべきでした。

 

こちらは観られなかった29日ソワレのキャスト。成田紗弥さん×堀内將平さん。

成田紗弥さんのインスタグラムより。吉田周平さんのロートレックも観たかった。

 
 
 
 
 
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衣裳はセリーヌ・ブアジズ。公演パンフレットによると、アレクサンダー・マックイーン、グッチ、ソニア・リキエルなどのニット・デザイナーを務めたこともあるフランス出身のデザイナーで、舞台衣裳のデザインは今回がはじめてとのこと。

写真で見るとカラフルな娼婦たちの衣裳ですが、舞台上ではもう少しダークトーンに見えます。様々な素材を重ねた深みのある衣裳でした。

 

この作品のもうひとつの主役はショパンの音楽、と言えるほど名曲揃い。ピアノの演奏はKバレエカンパニーの公式YouTubeチャンネルにも出演していた塚越恭平さん。カーテンコールでは熊川哲也芸術監督とともに舞台に上がって挨拶していました。

 

スピィーディーで凝縮された、あっという間の1時間。

ロミュオーとクラリモンドが恋に落ちていくあたりとか、セラピオンの心情とか、もっと観てみたい。2幕物にしてくれないかな ?

そんなことを思わせる素敵な作品でした。毎シーズン再演してほしいです。

 

おわりに

Kバレエカンパニーの公式YouTubeチャンネルにアップされている「『クラリモンド〜死霊の恋〜』制作の裏側」の動画にでてくる衣裳デザインのセリーヌ・ブアジズさんの素敵なデザイン画。公演パンフレットに、1ページ大で掲載されていて嬉しかった。しかも今回パンフレットは1,000円。今後もぜひこの価格でお願いします 笑。

 

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★最後までお読みいただきありがとうございました。