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Kバレエカンパニー 飯島望未×山本雅也『ロミオとジュリエット』【鑑賞メモ】

Kバレエカンパニーの『ロミオとジュリエット』を鑑賞しました。ジュリエットは飯島望未さん、ロミオは山本雅也さん。私が鑑賞したのは初日の3月17日ですが、同じキャストで上演された3月21日の千秋楽の舞台の後、飯島望未さんはプリンシパルに任命されました!

公演概要

Spring 2022『ロミオとジュリエット』 Kバレエカンパニー

Bunkamura オーチャードホール

2022年3月17日(木) 14:00〜

芸術監督/演出/振付:熊川哲也

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

原作:ウイィアム・シェイクスピア

舞台美術・衣裳デザイン:ヨランダ・ソナベンド

照明デザイン:足立亘

指揮:井田勝大
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

 【上演スケジュール】

第1幕 55分

休憩 25分

第2幕 65分

【キャスト】

ジュリエット:飯島望未

ロミオ:山本雅也

マキューシオ:吉田周平

ティボルト:杉野慧

ベンヴォーリオ:奥田祥智

ロザライン:日髙世菜

パリス:堀内將平

キャピュレット卿:グレゴワール・ランシェ

キャピュレット夫人:山田蘭

乳母:前田真由子

僧ロレンス:ニコライ・ヴィユウジャーニン

キャピュレット家の娘たち:浦邉玖莉夢、新居田ゆり、栗山結衣、澤美葵、丸山さくら

キャピュレット家の若者たち:栗山廉、金瑛揮、武井隼人、田中大智、中井皓己

ヴェローナの娘たち:毛利実沙子、戸田梨沙子、高橋怜衣、山田夏生、塚田真夕、辻梨花

ジュリエットの友人たち:辻久美子、菅野望美、佐伯美帆、吉田早織、吉岡眞友子

マンドリンダンス:酒匂麗、栗山廉、金瑛揮、田中大智

 

熊川哲也版『ロミオとジュリエット』の初演は2009年。Kバレエカンパニー創立10周年の記念として制作され、その後15周年、20周年と節目の年に上演されている作品であることからも、熊川哲也さんの自信作であることがうかがわれます。

今回東京7公演のジュリエット役は、飯島望未さん、成田紗弥さん、岩井優花さん、吉田早織さん。飯島望未さん以外は全幕のジュリエットは初役(昨年夏入団の飯島さんも熊川版『ロミオとジュリエット』のジュリエット役は今回がはじめて)。さらに岩井優花さん、吉田早織さんは全幕主役デビューというフレッシュな配役でした。

 

ジュリエットそのものだった飯島望未さん

飯島望未さんの可憐な佇まいはジュリエットにぴったり。踊りは力強くしなやかで、ロミオとの愛に突き進んでいく一途さと情熱を感じさせました。

飯島望未さん主演の全幕を観たのは、Kバレエカンパニー入団前にゲストでキトリを踊った昨年5月の『ドン・キホーテ』以来。キトリより今回のジュリエットのほうが格段に良かった。決してキトリが悪かったわけではないのですが、ふとした瞬間に飯島さんの表現が周囲とはやや異質に見えることがあり…。カンパニーに入団する前の、ゲストとしての出演だったからかもしれません。

今回はロミオの山本雅也さんとの息もぴったり。幕が下りる瞬間まで、ドラマへの没入感が途切れることはありませんでした。

『ドン・キホーテ』の感想はこちら↓

www.balletaddict.com

 

ティボルト、マキューシオ、パリス…脇を固める名優たちに魅せられる

Kバレエカンパニーの公演ではいつも目をひかれる杉野慧さん。今回のティボルトも魅力的でした。アクが強くて眼光が鋭く、熊川版ティボルトのワルなキャラクターにはまっていました。その一方で、剣で戦うときの所作は美しくスマート。ティボルトが、マキューシオとベンヴォーリオのふたりを相手に戦うシーンがあるのですが、思わずティボルトを応援したくなりました。

終演後の杉野慧さんのインスタグラムの投稿に笑った。暗闇に佇むティボルト↓

 
 
 
 
 
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杉野 慧(@kei.sugino)がシェアした投稿

 

キレのある踊りが、快活なマキューシオにぴったりだった吉田周平さん。超絶に難しそうな振付を生き生きと踊り、ティボルトを挑発する演技がうまかった。

堀内將平さんのパリスも素敵でした。踊りに品があり、育ちのいい「坊ちゃん」な雰囲気が似合い過ぎ。嫌な奴感はあまりないパリスなので、ジュリエットに毒を飲まれたうえに、ロミオに殺されてしまうのがちょっと気の毒に思えてしまいます。

黒髪のイメージの堀内將平さんですが、今回はパリス仕様なのか、明るい茶髪だったのが新鮮でした。別の回ではロミオとティボルトにも、キャスティングされているんですよね。そちらも観てみたかったです。

Kバレエカンパニーの舞台になくてはならない名優、山田蘭さん。山田蘭さんが舞台に登場すると、思わずオペラグラスを覗いてしまいます。キャピュレット夫人も素晴らしかった。1幕のモンタギュー夫人と形だけの仲直りをするシーンで、頭を下げつつも内心「ふんっ!」みたいな演技が最高でした。

ヴェローナの娘たちのリーダー役の毛利実沙子さんも、はすっぱで華やかな雰囲気が似合っていて、目を引きました。

熊川版『ロミオとジュリエット』の特徴、踊るロザライン!

熊川版バレエの特徴のひとつは、スピーディーな展開。通常3幕の『ロミオとジュリエット』も、2幕で構成しています。マクミラン版などではティボルトの死までが2幕ですが、熊川版では物語はそのまま最後まで続きます。『ロミオとジュリエット』はもともと数日間の物語だし、一気にラストまで駆け抜ける感じがして、これはこれでありかなと思いました。

もうひとつ、通常ほとんど踊らないロザラインをポアントで踊る役にしているのも、熊川版『ロミオとジュリエット』の大きな特徴。キャラクターも華やかで奔放な女性という設定のようです。冒頭からロミオが弾くマンドリンに合わせて踊り、ロミオたちがキャピュレット家にしのびこむときの「仮面」の踊りにも参加。しかも義理のいとこであるティボルトとは恋人同士という設定。ティボルトの死を嘆くのも、ロザライン。かなり活躍場面が増えています。

この回のロザラインは日髙世菜さん。いつもながらの美しいラインを堪能しました。(日髙世菜さんの踊りが観られたのはうれしかったのですが、個人的な好みとしては踊らないロザラインも「高嶺の花感」があって好きなんですけどね…。)

熊川版バレエには、「踊る役」が多い。なるべく多くのダンサーに踊るチャンスを与えるためなのかな、と想像しています。ロザラインだけではなく、ティボルトも踊るシーンが多いし、キャピュレット卿がけっこう派手に踊っていたのには驚いた!

この演出はいいなと思ったのが、手紙のエピソード。ジュリエットがロミオに書いた手紙(仮死状態になる薬を飲むという説明の手紙)を僧ロレンスから託された僧ジョンが、ロミオに届けにいく途中で、強盗に襲われるシーンが挿入されています。

悲劇の原因となった2人の行き違いが軽く扱われている感じがしていましたが、これなら納得です。

ヨランダ・ソナベンドの衣裳が素晴らしい

Kバレエカンパニーの公演を観る楽しみのひとつは舞台装置や衣裳。とくにヨランダ・ソナベンドの衣裳は好きです。豪奢で美しいうえに、現代的なセンスも感じさせる衣裳だなと思う。

今回のジュリエットの淡いピンクのシンプルな衣裳も、とても美しかった。キャピュレット卿と夫人のモノトーンの衣裳も素敵でした。

舞台美術で印象に残ったのは、キャピュレット家の大広間のシーンで、奥の高い位置に設けられていた回廊。ロミオとジュリエットがはじめて視線を交わすとき、ロミオがこの回廊の上にいて、ジュリエットは下の広間にいます。見つめ合うふたりの距離が、観客からも立体的に感じられ、その後のバルコニーのシーンとは上下が逆になっているのも効果的な演出だなと思いました。

おわりに

Kバレエカンパニー+飯島望未さんの相乗効果か、いつにも増して客席は若々しく華やか。新しいファン層を確実に開拓している気がします。

GWには東京バレエ団のジョン・クランコ版『ロミオとジュリエット』、5月にはシネマになりますが、英国ロイヤルバレエ団のマクミラン版。今年は『ロミオとジュリエット』を観る機会が多くてうれしいです。

 

Kバレエカンパニーの音楽監督・指揮者の井田勝大さんの「ダンスマガジン」での連載「バレエ音楽館」、4月号、5月号のテーマは『ロミオとジュリエット』。プロコフィエフの名曲への考察が興味深い。

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Kバレエコンパニーの次回公演は『カルメン』。こちらも楽しみです!

Spring 2022『カルメン』 | K-BALLET COMPANY / K-BALLET FRIENDS

 

バレエとはなんの関係もないけど「ロミオとジュリエット」という名のイタリアワイン。ラベルがかわいい↓

★最後までお読みいただきありがとうございました。