英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマ シーズン2021/2022、英国ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』を鑑賞しました。大好きなマクミラン版『ロミオとジュリエット』をスクリーンで堪能しました。
上演概要
『ロミオとジュリエット』 英国ロイヤル・バレエ
収録日 2022年2月3日
【振付】ケネス・マクミラン
【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ
【指揮】ジョナサン・ロー
【上映スケジュール】2時間55分
解説、インタビュー 16分
第1幕 58分
休憩 10分
解説、インタビュー 10分
第2幕+第3幕 81分
【出演】
ジュリエット:アナ=ローズ・オサリバン
ロミオ:マルセリーノ・サンベ
マキューシオ:ジェームズ・ヘイ
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド
ベンヴォーリオ:レオ・ディクソン
パリス:ニコル・エドモンズ
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリー
キャピュレット卿:ギャリー・エイヴィス
エスカラス:ルーカス・B・ブレンスロッド
ロザライン:クレア・カルヴァート
乳母:ロマニー・パイダク
ローレンス神父╱モンタギュー卿:フィリップ・モーズリー
モンタギュー夫人:オリビア・カウリー
ジュリエットの友人:ミカ・ブラッドベリ、アシュリー・ディーン、レティシア・ディアス、佐々木万璃子、シャーロット・トンキンソン、アメリア・タウンゼント
3人の娼婦:メ―ガン・グレース・ヒンキス、イザベラ・ガスパリーニ、ジーナ・ストーム・ジェンセン
マンドリン・ダンス:ジュンヒュク・ジュン、デヴィッド・ドネリー、ハリソン・リー、フランシスコ・セラノ、スタニスラウ・ヴェグリジン、デヴィッド・ジュデス
ケネス・マクミラン版の『ロミオとジュリエット』の初演は1965年。すでに530回以上も上演されているそうです。
疲れ切ったロミオと元気なジュリエットのバランス?
シネマの楽しみのひとつは、上演前や幕間のインタビュー。恒例の芸術監督ケヴィン・オヘアへの開演前のインタビューからはじまり、メインキャストのアナ=ローズ・オサリバン、マルセリーノ・サンベ、トーマス・ホワイトヘッド、デボラ・マクミラン、エドワード・ワトソンとリャーン・ベンジャミンらへのインタビューがありました。
特に面白かったのはロミオとジュリエット役の指導を行ったエドワード・ワトソンとリャーン・ベンジャミンへの幕間のインタビュー。(話の内容とは関係ないけど、エドワード・ワトソンのジャケット姿がカッコよかった!)
ロミオはとても難しい役で、特に1幕が大変だという話からの流れから、リャーン・ベンジャミンが「バルコニーのパ・ド・ドゥの難しさのひとつは、生き生きとした(元気な)ジュリエットと疲れているロミオのバランス」と話していました。ジュリエットは全体を通しても意外に踊りが少ないとのこと。言われてみれば確かに!
踊りあり、ソード・ファイトありで、疲れ切ったロミオが力を振り絞って、大変そうなリフト頻出のパ・ド・ドゥを踊っているんですね。
エドワード・ワトソンとリャーン・ベンジャミンはでてきませんが、インタビューの一部はこちら↓
構成はシンプル。ディテールは細かくみせるマクミラン版
今回改めてマクミラン版を観ると、非常にシンプルで主役の2人にフォーカスした構成だなと感じました。
それと同時に、街の群衆やキャピュレット家の舞踏会に集う人々にも細かな設定があり、さまざまな小さなストーリーが舞台上で繰り広げられている。娼婦にちょっかいを出して、彼女に怒られる街の男の子や、舞踏会で呑みすぎて気持ちが悪くなってしまった客人…。断片的にしか観客の目には入らないのですが、それがドラマに奥行きを与え、主役の2人をさらに引き立てている気がします。
シネマだと、そんな表情や演技を細かく拾ってくれるので、生の舞台とはまた違った面白さが味わえました。
可憐なジュリエットとしなやかなロミオ
昨年プリンシパルに昇格したばかりのアナ=ローズ・オサリバン。可憐な容姿はいかにもジュリエットにぴったりです。印象に残ったのはキャピュレット家の舞踏会で婚約者パリスと踊るシーン。演じるダンサーによっては、憂いを帯びた表情だったり、無表情だったりしますが、アナ=ローズ・オサリバンのジュリエットは、無邪気に踊りを楽しんでいる雰囲気。
表情のなかに憂いを感じさせるようになるのは、ロミオと出会ったあとです。そして女性として成長していくにつれて、踊りもよりダイナミックに変化していく、そんなジュリエットでした。
2020年日本公開の映画版ではマキューシオを踊り、驚異的な身体能力を感じさせたマルセリーノ・サンベ。今回のロミオでもキレのある踊りは相変わらずですが、よりコントロールされ、しなやかになった印象でした。
ロイヤル・バレエ・スクールの同級生という2人。とてもフレッシュで息のあったロミオとジュリエットでした。
やさぐれティボルト
ジュリエットのいとこで、ロミオの宿敵となるティボルトはプリンシパル・キャラクター・アーティストのトーマス・ホワイトヘッド。シーズン2018/2019のシネマでは、ティボルトは同じくプリンシパル・キャラクター・アーティストのギャリー・エイヴィス。英国ロイヤル・バレエではティボルトにベテランをキャスティングするのが定番のようです。
ギャリー・エイヴィスは堂々とした威圧感のあるティボルトでしたが、トーマス・ホワイトヘッドは、かっとしやすいものの、そこまで強そうではない、キレやすい性格の裏に臆病さが見えるような、暗い目をしたティボルトでした。叔父のキュピレット卿も「しょうがない奴だな」と手を焼いてる感じの、やさぐれ感のあるキャラクターがなかなか面白かった。
そして今回ギャリー・エイヴィスが演じていたのが、キャピュレット卿。このキャピュレット卿がよかった!ジュリエットを扱いあぐねている感じとか、ジュリエットに冷たくされたパリスへの対応とか、細部に至るまで本当にリアル。
キャピュレット夫人を演じるクリステン・マクナリーとともに、英国ロイヤル・バレエの舞台に欠かせない名優です。
そしてダンサーではないのですが、指揮者のジョナサン・ローのことが気になりました。とてもタイトなスーツ姿、ちょっと踊るような軽快な指揮で、つい見入ってしまう感じ。指揮者を映す映像もいつもより長めだった気がする…。
おわりに
英国ロイヤル・バレエの『ロミオとジュリエット』は観るたびに、さすがシェークスピアの国!と思ってしまう。今回も素晴らしかったです。
『ロミオとジュリエット』ラッシュの今年。東京バレエ団公演のジョンクランコ版も今から楽しみです。
概要/ロミオとジュリエット/2022/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会
2019年収録、ヤスミン・ナグディ&マシュー・ボール主演↓
こちらは映画版。フランチェスカ・ヘイワード&ウィリアム・ブレイスウェル↓
★最後までお読みいただきありがとうございました。