スターダンサーズ・バレエ 団のピーター・ライト版『ジゼル 』を鑑賞しました。5月14日(土)の公演、主演は渡辺恭子さんと林田翔平さんです。
公演概要
ピーター・ライト版『ジゼル 』全2幕 スターダンサーズ・バレエ団
5月14日(土)14:00開演
会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ
音楽:アドルフ・アダン
振付:マリウス・プティパ
追加振付・演出:ピーター・ライト
舞台美術・衣裳:ピーター・ファーマー
振付指導:デニス・ボナー
指揮:田中良和
管弦楽:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
総監督:小山久美
【キャスト】
ジゼル:渡辺恭子
アルブレヒト:林田翔平
ヒラリオン:渡辺大地
ウィルフリード:友杉洋之
ベルタ:周防サユル
クールランド公:鈴木稔
バチルド:フルフォード佳林
狩猟長:鴻巣明史
パ・ド・シス:塩谷綾菜、佐野朋太郎、石山沙央理、冨岡玲美、関口啓、飛永嘉尉
ミルタ:榎本文
ドゥ・ウィリ:石山沙央理、東真帆
【上演スケジュール】
第1幕 14:00〜14:55
休憩20分
第2幕 15:15〜16:05
開演前に総監督小山久美さんによるプレトークがあり、あらすじなどの紹介がありました。マントを着るのは貴族のみ。当時の農民は右側に短剣を差し、貴族は左腰に長い剣を差していたなど、作品理解に役立つ知識も。
ピーター・ライト版『ジゼル』は、1965年に英国ロイヤル・バレエ団が初演。スターダンサーズ・バレエ団での初演は1989年、初演時のジゼルは現在の総監督小山久美さんです。
小山久美さんのインタビューを読むと、スターダンサーズ・バレエ団にとって、とても大切なレパートリーであることがわかります。
【ジゼル】総監督小山久美INTERVIEW | STAR DANCERS BALLET
アルブレヒトに裏切られ、もともと体が弱かったジゼルは、錯乱状態になって死に至る。そんな描き方が多い中、ピーター・ライト版では、ジゼルは自ら剣を手にして自殺します。キリスト教世界では自殺は罪。ジゼルのお墓は村のはずれの人目につかないに場所に造られる、という演出です。
期待を裏切らなかったコール・ド・バレエ
渡辺恭子さんは、儚げな佇まいのジゼル 。ふわっと空気を抱くような、腕のしなやかなラインが印象的でした。演じる役によって雰囲気がガラッと変わりますね。いつもながらの揺るぎのないテクニックも素晴らしい。
林田翔平さんの伸びやかな踊りもよかったです。英国ロイヤル・バレエ団が、2021年の12月ぐらいに同じピーター・ライト版『ジゼル 』を配信していました。この時アルブレヒトを演じていたのはマシュー・ボール。マシュー・ボールが演じるアルブレヒト、かなり尊大で好色そう(笑)で驚きました。
林田さんのアルブレヒトは好色さのかけらもなく、ジゼル に夢中なさわやかな若者でした。無自覚なだけに、より愚かな男にも見えてくる…。アルブレヒトは、演じるダンサーによる違いが大きくて面白いですね。
3月にスターダンサーズ・バレエ団の『セレナーデ』を観たときから期待はしていましたが、2幕のウィリたちの群舞のクォリティーが素晴らしかったです。脚や腕の高さや角度だけではなく、動きの質みたいなものが揃っていて迫力がありました。
踊っているダンサーはかなり被っていそうですが、1幕の村娘たちの華やかな群舞もよかった。
ピーター・ライト版では1幕に6人の男女によるパ・ド・シスが踊られます。いわゆる「ペザントのパ・ド・ドウ」は出てきません。パ・ド・シスの男性のメインのソリストは、昨年Kバレエカンパニーから移籍した佐野朋太郎さん。Kバレエでも注目していましたが、パ・ド・シスでも躍動感のある踊りが目を引きました。
アルブレヒトの婚約者バチルド役はフルフォード佳林さん。3月に観た『マラサングレ』でも迫力のある踊りが印象に残ったダンサーですが、わがままなお嬢様役も上手かった!
3月に観たトリプルビルの感想はこちら。
絵画のような衣裳や美術
舞台美術・衣裳はピーター・ファーマー。雰囲気は近いものの、同じピーター・ライト版の英国ロイヤル・バレエの衣裳や装置とは少し異なっていました。
1幕の村人たちはベージュ、くすんだオレンジ、ブラウンなどの茶系の衣裳。ジゼルとアルブレヒトもそこに馴染むような白とブラウンの衣裳。美術も含めて全体の色のトーンの調和がとれていて、絵画のようで美しい。
よくみかける、ほかの村人はアースカラーなのにジゼルだけ鮮やかなブルーっていうパターンの衣裳、あんまり好きではないんです。「←この人、主役です」みたいな感じがして 笑。
村を訪れる貴族の一行の中でひときわ目を引くのが、アルブレヒトの婚約者バチルド。みるからに上質そうなエクリュに輝く衣裳が、バチルドにぴったりで素敵でした。バチルド役のフルフォード佳林さんにもすごく似合っていた。
2幕のウィリたちの衣裳もとても美しかった。右胸と左腰のあたりに、葉っぱのような飾りがあり、ウェストあたりに少しだけ緑色がグラデーションで入っているのです。緑はボトルグリーンのような、やや青みを帯びたカラー。
精霊たちが森に漂っている間に、緑に染まってしまった…そんなイメージ。
そして、ジゼルの衣裳だけは純白。よくみると右胸と左腰にはほかのウィリたちと同じような葉っぱのような飾りがあるようなのですが、その飾りも白。まだ精霊の仲間入りをしたばかりという表現なのでしょうか。確か英国ロイヤル・バレエでも、ジゼルは純白、他のウィリたちはややベージュがかったトーンでした。
振付指導のデニス・ボナーさんが登場!
カーテンコールで巨漢の外国人男性が舞台にあがったのですが、振付指導(レペティター)のデニス・ボナーさんだったようです。
スターダンサーズ・バレエ団のインスタグラムより。主演の渡辺恭子さんとデニス・ボナーさん。2枚目以降の画像にウィリの衣裳も写っています。照明の効果か、舞台ではもう少し青みを帯びて見えます。
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山本康介さんの著書『英国バレエの世界』のピーター・ライト卿について書かれた項にも、ピーター・ライト作品やデイヴィット・ビントレー作品に欠かせない存在として紹介されていたデニス・ボナーさん。指導に来日されていたのですね。
おわりに
英国ロイヤル・バレエ団のドラマッチクな『ジゼル』とはまた違った、静かで清らかな雰囲気の『ジゼル』でした。『ジゼル』は日本のバレエ団にもなじみのいい演目だなと改めて感じました。
スターダンサーズ・バレエ団、9月の公演のチラシが会場で配られていました。
2022年9月公演の概要決定! | STAR DANCERS BALLET
なんと、以前「笑えるバレエ」として記事に書いジェローム・ロビンス振付の『The Concert(コンサート)』をやるらしい!国内バレエ団としては初演とのこと。
ジェローム・ロビンスの『The Concert』と『牧神の午後』、バランシンの『スコッチ・シンフォニー』という魅力的なトリプルビル。これは観たい。
「笑えるバレエ」の記事はこちら。『The Concert』の動画も貼ってあります。
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