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パリ・オペラ座バレエ シネマ『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』【バレエ鑑賞メモ】

今更…なのですが(汗)、6月末に鑑賞したパリ・オペラ座バレエシネマ2022『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』の簡単な鑑賞メモです。

 ジェローム・ロビンズ振付の4作品「ファンシー・フリー」 「ダンス組曲」「牧神の午後」「グラス・ピーシズ」を大スクリーンで楽しみました。

上のシネマのチラシの『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』のビジュアルがかっこいい。さすがパリ・オペラ座。

上演概要

パリ・オペラ座シネマ2022『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』

収録日:2018年11月8日 

場所:パリ・オペラ座 ガルニエ宮

上映時間:1時間42分

演目:「ファンシー・フリー」「ダンス組曲」「牧神の午後」「グラス・ピーシズ」の4演目

振付:ジェローム・ロビンズ

指揮:ワレリー・オブシャニコフ 

演奏:パリ・オペラ座管弦楽団

芸術監督:オーレリ・デュポン

 

バレエのみならず、 「ウエスト・サイド・ストーリー」「王様と私」「屋根の上のヴァイオリン弾き」 などの大ヒットミュージカルや映画の振付でも広く知られるジェローム・ロビンズ。そのジェローム・ロビンスの生誕100周年を記念して2018年に上演されたガラ公演の映像です。

「ファンシー・フリー」1944年、「牧神の午後」1953年、「グラス・ピーシズ」1983年、「ダンス組曲」1994年。50年にわたる幅広い年代の作品が観られるプログラムでした。

「ファンシー・フリー(Fancy Free)」 

音楽:レナード・バーンスタイン

振付:ジェローム・ロビンズ 

装置:オリヴァー・スミス

衣裳:カーミット・ラヴ

照明:ジェニファー・ティプトン

キャスト:

エレオノーラ・アバニャート

アリス・ルナヴァン

ステファン・ビュリオン

カール・パケット

フランソワ・アリュ

オーレリア・ベレ

アレクサンドル・カルニアト

ロビンズの振付家としてのデビュー作品にして、大ヒット作品「ファンシー・フリー」。休暇中の海兵隊の3人組が女性をナンパ( 死語?)するコミカルなストーリー。バレエとショーダンスを融合させたロビンズならではの振付。なかでも女性たちへのアピールタイムのように、3人がそれぞれに踊りを披露する場面がみものです。

フランソワ・アリュのパワフルで躍動感ある踊り、カール・パケットの甘さのあるエレガントな踊り、ステファン・ビュリオンのちょっとセクシーでコミカルな踊り。3人それぞれの個性が生きていてとてもよかった。なかでもステファン・ビュリオンがとにかく軽快で、ムードがあって素敵でした。今年引退してしまったステファン・ビュリオン。もうこの踊り、舞台では観られないのですね…。

パリ・オペラ座の公式チャンネルより。ステファン・ビュリオンのパート。

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エレオノーラ・アバニャートも艶っぽさが役に合っていました。

また気になったのが、バーのバーテンダー役のアレクサンドル・カルニアトというダンサー。渋くて存在感があり、バーの客たちの様子にかすかにリアクションする演技が絶妙でした。

 

この演目を観て思い出したのは、リアム・スカーレット「不安の時代 The Age of Anxiety」(2014年)。バーンスタインによる音楽、バーが舞台というシチュエーションも同じ。2作品のムードは全く異なりますが…もしかすると「ファンシー・フリー」のトリビュート作品だったのでしょうか?

(ジェーロム・ロビンズ自身にも『不安の時代 The Age of Anxiety』という作品があるようですが、そちらは未見。動画も見つけられず、どんな作品かわからず…。)

「ダンス組曲(A Suite of Dances)」

音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ 

振付:ジェローム・ロビンズ

衣裳:サント・ロカスト 照明:ジェニファー・ティプトン

チェロ:ソニア・ヴィーダー=アサートン

キャスト:マチアス・エイマン

ミハイル・バリシニコフのために振り付けられたというこの作品。

チェロを持った演奏家と、赤い衣裳マチアス・エイマンが、向かい合うように舞台の下手に座っているところからスタート。バッハの「チェロ組曲」と戯れるような作品でした。散りばめられたユーモア、舞台上の楽器とのからみなど、「アザー・ダンシズ」を思わせる部分も。

エイマンの音楽と一体になった踊りがすばらしかったです。エイマンは女性と組む踊りより、こういうソロの踊りの方がのびのびしている気がする。

パリ・オペラ座バレエの公式サイトより。

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「牧神の午後(Afternoon of a Faun)」

音楽:クロード・ドビュッシー

振付:ジェローム・ロビンズ

装置:ジャン・ローゼンタール

衣裳:イレーヌ・シャラフ

照明:ジェニファー・ティプトン

キャスト:

ニンフ/アマンディーヌ・アルビッソン

牧神/ユーゴ・マルシャン

「牧神の午後」といえば、ニジンスキー振付の作品が有名ですが、ロビンズの作品の舞台はバレエのスタジオ。牧神もニンフもバレエの稽古着で登場します。

舞台の3方にはレッスンバーが設けられ、客席側は鏡という設定が秀逸。客席を見る牧神の視線は、実は自分自身を見ている。牧神とニンフも鏡越しにお互いを見ていて、2人の視線はなかなか直接交わらない。

この演目のユーゴ・マルシャンの一点の曇りもないような美しさはちょっと恐いぐらいでした。まさに夢をみているような…。

最近ややマッチョ化してる(腿の筋肉とか…)気がするマルシャンですが、この収録の時ぐらいのバランスがベストな気がする(←勝手なことをいいますが!)。

アマンディーヌ・アルビッソンもしなやかで美しかったですが、ニンフ感はあまりないかもしれません。

パリ・オペラ座バレエの公式サイトより。何度見てもユーゴ・マルシャンに魂を持っていかれる…。

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「グラス・ピーシズ(Glass Pieces)」

音楽:フィリップ・グラス

振付:ジェローム・ロビンズ

装置:ジェローム・ロビンズ/ロナルド・ベイツ 

衣裳:ベン・ベンソン

照明:ジェニファー・ティプトン 

キャスト:セウン・パク、フロリアン・マニュネほか

フィリップ・グラスはアメリカの作曲家。数々の映画音楽やオペラなどの作品があります。

36人のダンサーによる万華鏡のような踊りが繰り広げられる、3部構成の作品です。

カラフルな稽古着のダンサーたちが舞台を縦横に歩いているなかから、ふいにソリストたちが現れる部分や、舞台の奥をシルエットのダンサーたちが列になって少しずつ進んでいく様子、白に黒の格子の光る背景に浮かび上がるダンサーたちなど、視覚的に新鮮でハッとさせられるシーンが多かったです。

おわりに

ロビンズの作品では「アザー・ダンシズ」が大好きなのですが、今回のガラでは多様な魅力を知ることができて面白かったです。

9月にはスター・ダンサーズ・バレエ団がロビンズの「コンサート」と「牧神の午後」を上演するので、楽しみにしています!「牧神の午後」は誰が踊るんでしょうか?

The Concert スコッチ・シンフォニー/牧神の午後/コンサート(国内バレエ団による初演) | STAR DANCERS BALLET

 

2008年収録。「コンサート」が収録されています↓

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。