『NHK バレエの饗宴2022』を鑑賞しました。とても楽しみにしていたこの公演、当日の東京は台風が接近していてヒヤヒヤしましたが、予定どおり開催されました。
簡単な鑑賞メモです。
- 公演概要
- Variations for four(バリエーション・フォー・フォー)
- Pas de quatre(パ・ド・カトル)
- 牧神の午後への前奏曲
- ウェスタン・シンフォニー
- 「ロメオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ
- 「ドン・キホーテ」からグラン・パ・ド・ドゥ
- Andante(新作)
- おわりに
公演概要
『NHK バレエの饗宴2022』
2022年8月13日(土)14:00開演
会場:NHKホール
指揮:冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【上演スケジュール】
第1部 14:00〜14:45(約45分)
Variations for four
Pas de quatre
休憩(20分)
第2部 15:05〜15:55(約50分)
牧神の午後への前奏曲
ウェスタン・シンフォニー
休憩(20分)
第3部 16:15〜17:00(約45分)
「ロメオとジュリエット」から
「ドン・キホーテ」から
Andante
例年だと日本のバレエ団の団体戦?といった様相だった『NHK バレエの饗宴』。2022年は趣が変わり、国内外で活躍する豪華出演者によるガラ公演でした。
Variations for four(バリエーション・フォー・フォー)
振付:アントン・ドーリン
音楽:キーオ
振付指導:ミハイル・カニスキン 振付指導補佐:山本康介
出演:
厚地康雄(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
清瀧千晴(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)
猿橋賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ファースト・ソリスト)
中島瑞生(新国立劇場バレエ団アーティスト)
「Variations for four」は4人の男性ダンサーがテクニックを競い合う、男性版「パ・ド・カトル」とも言えそうな作品(雰囲気はまったく異なりますが)。振付のアントン・ドーリンは「パ・ド・カトル」の振付を復刻した人です。
難しそうだったな〜、この作品の振付。特にひとりずつのバリエーションの部分が、みんなちょっと苦しそうだった印象 笑。そんななかでも猿橋賢さんの歯切れの良いソロは目を引きました。
個人的に注目の新国立劇場バレエ団の中島端生さんは、長い腕の動きがエレガントで素敵でした。元プリンシパルやプリンシパルに混じっても、目を引く華があります(ひいき目?笑)。
白タイツに、4人それぞれのカラーとデザイン(地、風、火、水を表現しているらしい)の光沢のあるトップスという衣裳が暗めの照明に浮かび上がって綺麗でした。
Pas de quatre(パ・ド・カトル)
振付:アントン・ドーリン
音楽:プーニ
振付指導:ミハイル・カニスキン 振付指導補佐:山本康介
出演:
中村祥子(Kバレエカンパニー名誉プリンシパル)
水谷実喜(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
菅井円加(ハンブルク・バレエ団プリンシパル)
永久メイ(マリインスキー劇場バレエ団ファースト・ソリスト)
素晴らしかった!美しすぎてちょっと涙が。
4人全員が、それぞれの個性としっかりしたテクニックで魅せてくれました。
以前の記事で、誰がどのパートを踊るのか予想しましたが、やはり年齢順でしたね。
以前の記事はこちら。チェリート役の金子扶生さんは、水谷実喜さんに変更になっています。
中村祥子さんは、さすがの存在感と端正な踊り。まさにタリオーニにふさわしく、祥子さんなしでは成立しない舞台だったなと思います。
そして永久メイちゃん(どうしても”さん”ではなくて”ちゃん”付けしちゃう)!ふわっと漂う、どこまでも細く長い腕の美しいライン。メイちゃんのまわりだけ空気の質が違う感じ。
中村祥子さんと永久メイちゃんがふたりで踊るパートも、異なるふたりの個性が寄り添って調和しているさまが印象的でした。
こういう演目の菅井円加さんのたおやかさも好き。どんな踊り、役柄でも役にピタリとはまりつつ、菅井円加さんの個性も見えるところが素晴らしい。
厚地康雄さんのインスタグラムより。「Variations for four」と「Pas de quatre」の出演者。バレエ人生で1番の挑戦だったかも、とのコメントが。
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牧神の午後への前奏曲
振付:平山素子
音楽:ドビュッシー
フルート:高木綾子
出演:小㞍健太
柴山紗帆(新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト)
飯野萌子(新国立劇場バレエ団ソリスト)
当初は「小㞍健太 ほか」と発表されていたこの演目。新国立劇場バレエ団から柴山紗帆さんと飯野萌子さんがニンフの役で出演しました。
フルートの高木綾子さんがひとり舞台の上手に立って演奏する姿が、下手の鏡に写り込んでいるという、印象的な幕開け。そのあとさらにたくさんの鏡が舞台に降りてきて、そこに映り込むダンサーたちの姿と実像のダンサーたちが交差する装置が面白かった。
小㞍健太さんの身体から発せられる強いエネルギーには、いつも惹きつけられる。以前から舞台上ですごく大きく見えるなぁと思っていましたが、今回の演目では変幻自在というか、瞬間瞬間で大きく見えたり、小さく見えたりするのが印象的でした。
衣裳デザインは堂本敦子さん。ニンフの衣裳の大人な色合いが素敵。
小㞍健太さんは普通のシャツとズボン。小㞍健太さんは普段着キャラなのか、舞台で観るときは、いつもこんな衣裳の気がする 笑。
ウェスタン・シンフォニー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ケイ
出演:スターダンサーズ・バレエ団
第1楽章ソリスト 塩谷綾菜、林田翔平
第2楽章ソリスト 渡辺恭子、池田武志
第3楽章ソリスト 富岡玲美、関口啓
第4楽章ソリスト 喜入依里、飛永嘉尉
アメリカ開拓時代を舞台にした、バランシン振付の作品。パンフレットによるとバランシンは西部劇が好きだったらしい!
唯一バレエ団としての出演のスターダンサーズ・バレエ団。スタダンらしい演目を観せてくれました。度々上演している作品だけあって、コール・ド・バレエも含めて踊りこまれている感じがしました。
4つのパートに分かれていて、それぞれにソリストのペアが登場。
第2楽章の渡辺恭子さんはいつもながらキレのある踊り。池田武志さんは1番カウボーイらしい雰囲気があってカッコよかったです。
「ロメオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:レオニード・ラヴロフスキー
音楽:プロコフィエフ
出演:永久メイ、ビクター・カイシェタ(オランダ国立バレエ団ソリスト)
永久メイちゃんの瑞々しいジュリエット、素晴らしかった。
永久メイちゃんを劇場で観るのは、2018年のマリンスキー劇場バレエ団の来日公演以来。来日公演のときは、すごい日本人が出てきたと感心したものの、とにかく華奢でやや線の弱い印象を受けたのですが、4年で全く印象が変わっていました。
華奢なのは相変わらずなのですが、存在感が全く違う。舞台の中心にいて当然と思わせる、強いオーラを感じました。
ロミオのビクター・カイシェタは、テックニック強い系の人かと思っていましたが、想像以上にエレガントで、ラインも美しかった。マリインスキーでたびたび組んでいただけあって、メイちゃんとは安定のパートナーシップがうかがえました。
ビクター・カイシェタは現在はマリインスキーから移籍して、オランダ国立バレエ団のソリスト。永久メイちゃんは今はどこを拠点にしているのだろう。インスタではモナコの恩師のところにいたりしたようですが。
メイちゃんが早く安心して、たくさんの舞台に立てるような状況になるように願ってやみません。
「ドン・キホーテ」からグラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
音楽:ミンクス
出演:菅井円加、清瀧千晴
「パ・ド・カトル」からのキトリ。何を踊っても期待を裏切らない菅井円加さん。
揺るぎのないテクニックと明るいオーラで会場を沸かせました。シンプルなエシャッペだけでも、ここまで魅せられるなんて…。
この手のテクニックを見せつけるような演目って、ともすると「ドヤ顔」とか「イケイケ」な感じになりがちですが、菅井円加さんは絶対そっちにはいかないんですよね。知性と品格を感じさせます。
清瀧千晴さんも、円加さんパワーなのか、「Variations for four」より伸び伸びしていた気がする。ふたりのパートナーシップも良かったです。
Andante(新作)
振付:金森穣
音楽:バッハ
バイオリン:小林美樹
出演:中村祥子、厚地康雄
中村祥子さん、厚地康雄さんというキャリアの円熟期にあるふたりのダンサーに金森穣さんが振付けた新作。
哀感のあるバッハのバイオリン協奏曲にのせた、大人の男女のストーリーを感じさせる作品でした。
ふたりとも、はじめはシアーな素材のゆったりしたシャツやボトムを着ているのですが、踊りながらそれを脱いでいき、後半はふたりとも白の総タイツ姿に。
なにも隠すことのできない衣裳ですが、長いキャリアを経たふたりの身体がほんとうに美しかった。
おわりに
この公演はNHKのBS8Kで中継されていたようですが、地上波での放送も決まっています。
2022年9月18日(日)21:00〜 Eテレ「クラシック音楽館」
あの感動をもう一度!放送を楽しみに待ちたいと思います。
★最後までお読みいただきありがとうございました。