Bunkamura ル・シネマで、映画『新章 パリ・オペラ座〜特別なシーズンの始まり』を鑑賞しました。
上の写真はル・シネマで入場者に配られていたポストカード。エトワールのユーゴ・マルシャンが、舞台袖で『ラ・バヤデール』のコール・ド・バレエのリハーサルを眺めている写真。素敵…。(入場者プレゼントはなくなり次第終了とのことです。)
映画は現在も上映中。Bunkamura ル・シネマでは今のところ、2022年9月1日(木)までの上演スケジュールが発表されています。
新章パリ・オペラ座 特別なシーズンの始まり | ル・シネマ | Bunkamura
ル・シネマ以外の上映館は公式サイトでご確認ください。
映画『新章 パリ・オペラ座 ~特別なシーズンの始まり~』公式サイト
*記事には映画のストーリーも載せています。(ネタバレあり)
作品概要
映画『新章 パリ・オペラ座〜特別なシーズンの始まり』
監督:プリシラ・ピザート
2021年/フランス/73分/原題:Une saison (très) particulière
出演:パリ・オペラ座バレエ
アマンディーヌ・アルビッソン、レオノール・ボラック、ヴァランティーヌ・コラサント、ドロテ・ジルベール、リュドミラ・パリエロ、パク・セウン、マチュー・ガニオ、マチアス・エイマン、ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン、ポール・マルク
アレクサンダー・ネーフ(パリ・オペラ座総裁)、オレリー・デュポン(バレエ団前芸術監督)
カメラが追っているのは、世界中が新型コロナの感染拡大に翻弄された2020年から2021年にかけてのパリ・オペラ座。
2020年6月、世界的なパンデミックで自宅待機になったダンサーたちが、3ヶ月ぶりにクラスレッスン再開。
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年末劇場再開の公演、ヌレエフ版「ラ・バヤデール」に向けてのリハーサル風景。
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再びの感染拡大で、公演は中止に。1日限りの無観客公演が行われ、世界に配信される。公演後、ポール・マルクがエトワールに任命される。
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2021年6月、劇場には観客が戻り「ロミオとジュリエット」が上演される。ジュリエットを踊ったパク・セウンが、公演後エトワールに任命される。
”世界的パンデミック禍、バレエの殿堂に訪れた葛藤と静寂
新エトワール誕生までの軌跡を追った情熱のドキュメンタリー”
(公式サイトより)
情熱のドキュメンタリーとありますが、カメラはむしろ淡々とダンサーたちを捉えています。ダンサーたちへのインタビューが断片的に挟まれる以外は、煽るような演出やナレーションは一切なし。個人的にはとても観やすかったです。
リハーサルシーンは圧巻
映画には、クラスレッスン、リハーサル、ゲネプロ、本番と、ダンサーたちが踊るシーンがたくさん出てきます。
レッスンとは思えないほど情感豊かなクラスレッスンのシーン、舞台から袖に入った時のダンサーたちの荒い息遣い…。映像は普段見られないダンサーたちの姿を映し出します。
なかでも『ラ・バヤデール』のリハーサルのシーンは圧巻。
リハーサルシーンがたっぷり観られたのは、ユーゴ・マルシャン、ポール・マルク、アマンディーヌ・アルビッソン……。
キレのある踊りに、スタジオで見ていたダンサーたちから大きな拍手が(しかもラストまで待たずに)おきていたブロンズアイドルのポール・マルク。
ソロルのヴァリエーションのリハーサルで、体力の限界まで踊って、床に倒れこむユーゴ・マルシャン。
衣裳で隠されてしまわない分、ダンサーの身体が生々しく感じられて、迫力があります。
「僕らの体の生物学的時間との闘いだ」
断片的に挟まれるダンサーたちへのインタビューにも、印象的な言葉がたくさん出てきます。
誰もが踊れない、表現できない苦しさを語っていましたが、なかでもユーゴ・マルシャンの「僕らの体の生物学的時間との闘いだ」という言葉は重い。
42歳で定年になるパリ・オペラ座バレエ。ユーゴ・マルシャンのように今こそが活躍のときというダンサーはもちろん、伸び盛りの若手、キャリアの終盤を迎えているベテランダンサー、誰にとっても約20年前後の現役時代の時間を奪われることの重さはいかばかりでしょう。
舞台は観客とともに創るもの、という言葉もたくさん出てきました。
無観客公演になった『ラ・バヤデール』の配信を観ましたが、静まり返った観客席は映像で観ているだけでも胸が痛くなった…。
映画で映し出された舞台裏のダンサーたちも辛そうでした。観客とダンサーは双方向でつながっているんだなと改めて感じました。
そんななかで告げられた、ポール・マルクのエトワール昇進。本人のみならず、まわりのダンサーたちにとっても暗闇のなかの希望の光として、受けとめられていたような気がします。
配信の感想はこちら↓
とにかく絵になるパリ・オペラ座
パリ・オペラ座ってこの手のドキュメンタリー映画、多いですよね。
ここ数年でも…
『新世紀、パリ・オペラ座』
『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』
『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』
広報戦略のひとつなのか?
でもこれらの映画を見ると、パリ・オペラ座を映画にしたくなるのも頷ける。
スタジオや劇場、ダンサーたちのクラスやリハーサルの風景、舞台袖、メイク室、衣裳部屋…。どこをどう撮っても(もちろん撮影や演出のセンスも優れているのでしょうが)、パリ・オペラ座は絵になる。
ダンサーたちのレッスンウェアひとつとっても、ムードがあるんですよね。
映画の素材としては、最高なのでは?
余計な演出なしでも、この映像が見られれば、それだけで満足してしまう感じです。
おわりに
この映画を観ると、無性にパリ・オペラ座の公演が劇場で観たくなる。
現在では、ガラ公演やゲスト出演で、ダンサーの来日はできるようになっているけれど、やはり全幕の引っ越し公演が観たい!
次の来日公演が1日も早く実現するように祈ります。
パンデミック直前、ギリギリのタイミングで来日したパリ・オペラ座バレエの公演の記事はこちら。この公演のこと、今でもよく思い出します。
ヌレエフ版『ラ・バヤデール』。1994年収録、主演はイザベル・ゲラン、ローラン・イレール。
★最後までお読みいただきありがとうございました。