Kバレエカンパニーのコンテンポラリーダンスの新プロジェクト、K-BALLET Opto(Kバレエ オプト)の旗揚げ公演『Petit Collection- Petit,Petit,Petit !』(「プティ・コレクション」─プティ・プティ・プティ! )を鑑賞しました。初日9月30日(金)12:30の公演です。
前記事の『ラ・バヤデール』より前に観ていたのですが…簡単な覚え書きです。
- 公演概要
- 『Petite Ceremonie( プティ・セレモニー)/小さな儀式』
- 『Petit Barroco(プティ・バロッコ) / 小さな真珠(ゆがんだ真珠)』
- 『Petite Maison(プティ・メゾン) / 小さな家』
- おわりに
*感想には作品内容(ネタバレ)含みます。(新作が含まれるので、念のため)
公演概要
『Petit Collection- Petit,Petit,Petit !』K-BALLET Opto
2022年9月30日(金)12:30〜
KAAT神奈川芸術劇場大ホール
芸術監督 / 企画・構成:熊川哲也
【上演スケジュール】
『プティ・セレモニー』 約30分
休憩 15分
『プティ・バロッコ』 約30分
休憩 15分
『プティ・メゾン』 約30分
新作2作とアジア初演1作品というフレッシュなプログラム。3作品とも、タイトルに「プティ(小さい)」がついています。
Kバレエカンパニーの公演でもここまで揃うことはないと思われる、トップダンサー総出演の贅沢な舞台でした。
『Petite Ceremonie( プティ・セレモニー)/小さな儀式』
*アジア初演
振付:メディ・ワレルスキー
振付助手:シルヴァン・スネズ
音楽:V.ベッシリーニ、W.A.モーツァルト、B.グッドマン、A.ヴィヴァルディ
【出演】
小林美奈、成田紗弥、山田蘭、岩井優花、戸田梨沙子、佐伯美帆、塚田真夕、辻梨花、堀内將平、山本雅也、関野海斗、グレゴワール・ランシェ、本田祥平、田中大智、武井隼人
男性デュエット:堀内將平、山本雅也
ジャグラー:グレゴワール・ランシェ
男性デュエット2:関野海斗、本田祥平
ブルームーンソロ:岩井優花
デュエット1:小林美奈、山本雅也
デュエット2:戸田梨沙子、堀内將平
デュエット3:成田紗弥、関野海斗
デュエット4:辻梨花、グレゴワール・ランシェ
NTDなどでダンサー、振付家として活躍し、現在はバレエ・ブリティッシュ・コロンビアの芸術監督を務めるメディ・ワレルスキーの作品。初演は2011年。
幕開け、上手下手に15個の白い立方体が並ぶ舞台に、あちこちから登場するリトルブラックドレスや黒のスーツで正装した15人のダンサーたち。
ほぼ無音の中、細かくステップを踏むような小さな動きから始まって、どんどん展開していく踊りと場面。時に全体でシンクロしたり、てんでバラバラな動きになったり、集まったり離れたり。
どの瞬間を切り取ってもモダンアートになるような、空間構成が印象的な作品でした。
個というよりは、ダンサーたちの集団としてのエネルギーを感じる作品でしたが、そんななかでも自然と目がいくダンサーがいます。しなやかなソロパートで、クラシック作品とは別の魅力を感じた岩井優花さん、佇まいに独特のムードがある山田蘭さん、伸びやかな踊りが素晴らしかった関野海斗さん。またデュエットを踊った関野さんと成田紗弥さんが思いのほか濃厚なカップルで見応えがありました。
『Petit Barroco(プティ・バロッコ) / 小さな真珠(ゆがんだ真珠)』
*世界初演
振付:渡辺レイ
音楽:X.バウマサ、C.マンセル、H.F.ツィマー、C.エイヴィンソン、F.ジェミニアーニ
【出演】飯島望未、山田夏生、吉田早織、栗山結衣、吉岡眞友子、島村彩、清水理那
石橋奨也、奥田祥智、金瑛揮、岡庭伊吹
「ジェンダー」がテーマの作品…ということですが、観終わった感想としては、まずは「カッコよかった!」。
舞台手前で男性ダンサーがアクロバティックに踊る後方、舞台の奥に下がった幕の下の隙間から、赤いハイヒールだけ見えている、女性ダンサーたちの登場シーン。そのハイヒールが一瞬見えなくなってから、幕が上がって女性たちが姿をあらわすのですが、あれはどういう仕掛けだったんだろう。
女性ダンサーのセンターには飯島望未さん。動きやポーズのひとつひとつが、抜群にカッコいい。他のダンサーとの違いは、上げた手やひねった腰のちょっとした角度など、本当に微差なのですが。モデルのお仕事などを通じて培われたセンスでしょうか。きっと「カッコいい」の基準が、自分のなかにはっきりあるんだろうな。
以前観た渡辺レイさん振付作品『FLOW ROUTE 』の飯島望未さんも素晴らしかった。おそらく相性がいいのでしょう。
飯島望未さんの存在は今後のK-BALLET Optoの核になりそうな予感。
『FLOW ROUTE 』の感想はこちら↓
衣裳は女性ダンサーはシャンパンカラーのキャミソールに赤いハイヒール、男性は黒いスカートにも見える衣裳。女性ダンサーが脱いだ赤いヒールが、後で装置として再び舞台に登場するという仕掛けが面白かった。
キャミソールの衣裳はワコールの人気ブランドSalute(サルート)とのタイアップ。
『Petite Maison(プティ・メゾン) / 小さな家』
*世界初演
振付:森優貴
音楽:D.ショスタコーヴィチ、S.ラフマニノフ
【出演】
天使:辻久美子、世利万葉、丸山さくら、栗山廉、栗原柊、中井皓己
悪魔:日髙世菜、高橋怜衣、鳥羽瑞穂、杉野慧、吉田周平、高橋芳鳳
ドイツ・レーゲンスブルク歌劇場ダンスカンパニーの芸術監督を務めていた森優貴さんの振付作品。
3作品のなかでは1番物語性がある作品でした。テーマは分断。天使vs悪魔の対立、融和が描かれて、最後に帰るべき場所として「小さな家」が出てくる。
白と黒に塗り分けられた舞台、床には白と黒の大きな紙屑のようなものが撒かれ、白いステージでは白い衣裳の天使たち、黒いステージでは黒い衣裳の悪魔たちが踊ります。
上の階から観ていたので、黒い床の上で黒い衣裳のダンサーが踊る姿はちょっと見えにくかったけど、暗闇のなかでうごめいている感じは、視覚的に面白かった。
天使と悪魔に分けられた配役は興味深いですね。
栗山廉さんの天使、杉野慧さんの悪魔、あたりは順当な感じではありますが、敢えて逆の配役でも観たいなと思ったり。
コンテンポラリーでも、日髙世菜さんの踊りはキレがあります。思いのほか、悪魔が似合っていました。
おわりに
最近の週刊文春に阿川佐和子さんと熊川哲也さんの対談が掲載されていました。K-BALLET Opto旗揚げも含めて、熊川哲也さんのチャレンジは果てしがないとあらためて感服。
K-BALLET Optoの次回公演は、2023年1月。
なんとテーマは”プラスチック”、そしてゲストにジュリアン・マッケイが出演!
2023 K-BALLET Opto「プラスチック」 | K-BALLET COMPANY / K-BALLET FRIENDS
★最後までお読みいただきありがとうございました。