年は明けてしまいましたが、昨年12月に観たKバレエカンパニーの『くるみ割り人形』の感想メモです。主演は日髙世菜さん×栗山廉さん。
公演概要
『くるみ割り人形』全2幕 Kバレエカンパニー
2022年12月16日(金) 14:00開演
Bunkamura オーチャードホール
芸術監督/演出/振付:熊川哲也
原振付:レフ・イワーノフ
オリジナル台本:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
指揮:井田勝大 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー
舞台美術・衣装デザイン:ヨランダ・ソナベンド/レズリー・トラヴァース
照明デザイン:足立恒
【キャスト】
ドロッセルマイヤー:杉野慧
マリー姫:日髙世菜
くるみ割り人形/王子:栗山廉
クララ:塚田真夕(←吉田早織さん降板により変更)
人形王国の王様 / Dr.シュタールバウム:ニコライ・ヴィユウジャーニン
人形王国の王妃 / シュタールバウム夫人:山田蘭
ねずみの王様:ビャンバ・バットボルト
フリッツ:関野海斗
雪の女王:小林美奈
雪の王:堀内將平
粉雪:山田夏生、辻梨花、島村彩、世利万葉
花のワルツ ソリスト:高橋怜衣、長尾美音、奥田祥智、吉田周平
アラビア人形:小林美奈、グレゴワール・ランシェ、中井皓己
スペイン人形:佐伯美帆、吉岡眞友子、田中大智、武井隼人
中国人形:辻梨花、関野海斗
ロシア人形:栗原柊、本田祥平
フランス人形:山田夏生、島村彩、世利万葉、
兵隊:金瑛揮、岡庭伊吹、山田博貴
【上演スケジュール】
第1幕 50分
休憩 25分
第2幕 50分
熊川哲也さん芸術監督/演出/振付の『くるみ割り人形』は2005年の初演以来、毎年12月に再演を重ねています。今回は岩井優花さんが怪我で降板し、戸田梨紗子さんがマリー姫デビューされました。
熊川版の『くるみ割り人形』は、クララとマリー姫(=金平糖の精)は別のダンサーが踊るバージョンです。
感想メモ
バランスが良かった日髙世菜さん×栗山廉さん
日髙世菜さんのマリー姫は2021年に引き続き2回目の鑑賞。2021年の王子は髙橋裕哉さん(退団されてしまいましたね…)でした。今回の王子は栗山廉さん。
日髙世菜さんと栗山廉さんは、以前『カルメン』でカルメンとエスカミーリョとして踊っているのを観たとき、「このふたり、結構相性がいいかも」という印象が残っていました。
今回の公演を観て、改めて相性の良さを確信しました。まず身長や手脚の長さなどのバランスがいい。日髙さんの長身と細くて長い手脚に、栗山さんのスタイルの良さがつりあっている。グラン・パ・ド・ドゥのアダージョでマリー姫と王子が、歩いて歩いてアラベスクを繰り返すところなどは、ふたりのラインの調和がとれていてとても美しかった。
そして日髙さん自身もインスタグラムでコメントされていましたが、2021年のマリー姫は高貴な感じ、2022年のマリー姫は可憐だった。日髙さん自身がそう意識したからなのでしょうが、栗山王子に引き出された部分もあるのではと思いました。栗山王子は舞台でのパートナーの扱いに、優しさを感じるんですよね。(栗山さん以外の相手役が冷たいってわけではないですけど 笑)
そして日髙さんのテクニックの強靭さは、いつ観ても感動を覚えます。今回も不安定なところが一切ない、クリアな踊りを堪能しました。
くるみ割り人形が仮面を外して王子の顔に戻るシーン。栗山王子は仮面を外した瞬間、まさに「王子登場!」って感じで納得感がすごいなと思ってたら、私は2020年に小林美奈さんと栗山廉さんの『くるみ割り人形』をライブ配信で観た感想の記事で全く同じことを書いていました。それくらい栗山王子のあの瞬間は印象に残るってことですね。
2020年の小林美奈×栗山廉『くるみ割り人形』の感想はこちら↓
猛吹雪と雪の女王&王が圧巻の雪の国!
「熊川版の"くるみ"で一番楽しみなのは雪の国」という人、けっこう多いのでは。それくらい毎回見応えがあります。
今回も雪の女王&雪の王、コール・ド・バレエ ともに素晴らしかった。途中で何度も拍手がおきていました。
雪の女王と雪の王はホリミナコンビ、小林美奈さんと堀内將平さん。相当な回数この役を踊っているであろうおふたり。女王と王にふさわしいゴージャスで威厳溢れる佇まいが素晴らしい。踊りが身体に染み込んでる感じで、決めるべきところでビシッと決めてくれるのが観ていて気持ちがいい。
以前小林さんと堀内さんのトークで、堀内さんが雪の王のメイクに力を入れていると話してたので、今回はメイクにも注目。遠目でもクオリティの高さが伝わってきました。
小林美奈さんのインスタグラムより。
ふたりともあまりに美し過ぎて、なぜかちょっと笑える 笑。今回のメイクのポイントはラインストーン使いだそうです。
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いつもながら後半に降る雪の量が半端なく、完全に吹雪。どれくらいすごいかというと雪の精たちのチュチュの丸い跡が、あっという間に床にできてしまうほど(チュチュの下だけ、雪が積もりにくいから)。滑りにくい素材の雪なんでしょうか?いつ観てもちょっと不安になる…
その後の休憩時間には、掃除機?バキューム?の大きな音が客席にも聞こえてきます。片付けも大変ですよね!
キレキレのねずみたちの正体は?
今回はじめて気がついたのですが、クララのもとにはじめに登場してくる2匹のねずみの踊りのキレがすごい!
配役表にはねずみの王様しか名前が載っていないし、ねずみのかぶりものと衣裳で顔も体型もわからない。誰が踊ってるんだろうと思っていたら、こんな投稿を見つけました。
吉田周平さんのインスタグラムより。この動画、最高。そして思った以上にリアルなねずみの衣裳が可愛いです。
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いつの公演にねずみで出演しているとは書いてありませんが、私が観に行った回は吉田周平さんは花のワルツのソリストで出演。きっとあの2匹のねずみのうちの1匹は吉田さんだったのではないかと。
吉田さんの別の投稿では、吉田さんと関野海斗さんとのねずみツーショットも。もう1匹は関野海斗さん?
関野海斗さんはこの日はクララの弟、フリッツと中国人形で出演していました。同じ1幕でもねずみとフリッツの出番は被っていないから、なんとか掛け持ちできそうだけど…。
吉田さんはねずみの視野を再現した写真も投稿。こんな視野(全然見えない)で、あんな着ぐるみ衣裳で、あのキレの良さと高いジャンプ!
でもあの2匹が吉田周平さん&関野海斗さんだとすると、それも納得です。
いつもながら、山田蘭さん演じるシュタールバウム夫人の華やかな佇まいが印象的。ブルーのストライプのドレス姿が素敵でした。
雪の女王を演じた小林美奈さんはアラビア人形にも登場。とても艶っぽかった。男性はグレゴワール・ランシェと中井皓己さん。いままで気がつかなかったのですが、中井皓己さんの肉体美に驚いた。
ロシア人形は本田祥平さん、栗原柊さん。ふたりともジャンプの滞空時間がすごかった。特に栗原柊さんは、着実にKバレエのなかで存在感を増してきていますね。
飯島望未さん&山本雅也さんのスペシャルトーク
この公演の後、クリスマススペシャル・トークイベントがあり、プリンシパルの飯島望未さんと山本雅也さんが登壇。くるみ割り人形について語ってくれました。
どちらかといえば、建前トークの山本雅也さんに対して、飯島望未さんがけっこうぶっちゃけていたのが面白かった。
印象的だったのは、熊川版『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥの振付がとにかく難しいという話。飯島さん曰く、「(どれくらい難しいかというと)はじめて踊った時は”ちょっと意味がわからない”レベル」。少し前に観たばかりのグラン・パ・ド・ドゥを思い浮かべながら、納得。
おわりに
クリスマスシーズンで、ホワイエはいつも以上に華やか。
3月の『白鳥の湖』の衣裳も展示されていました。
こんどは日髙世菜さんは山本雅也さんと組むんですね。楽しみです!
Spring 2023『白鳥の湖』 | K-BALLET COMPANY / K-BALLET FRIENDS
この本に掲載されている日髙世菜さんのインタビューでは、マリー姫の振付の難しさや役作りについても語られています。
ダンサーや指揮者のへのインタビュー、チャイコフスキー3大バレエの名曲徹底解説など、読み応えあり!おすすめです。
★最後までお読みいただきありがとうございました。