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パリ・オペラ座バレエ団『バレエ・リュス』【バレエ シネマ鑑賞メモ】

恵比寿ガーデンシネマで開催されているパリ・オペラ座バレエ団シネマフェスティバルの上演作品『バレエ・リュス』を鑑賞しました。

 

パリ・オペラ座バレエ団シネマフェスティバルは5月上旬まで。週替わりで作品を上演。

4月7日(金)〜『プレイ』と『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』の交代上演

4月21日(金)〜『白鳥の湖』2016年版

4月28日(金)〜『白鳥の湖』2019年版

↓フェスティバルの詳細はこちら

パリ・オペラ座 | バレエ | エトワール

 

 

公演・上演概要

『バレエ ・リュス』パリ・オペラ座バレエ団

収録:2009年12月パリ・オペラ座(ガルニエ宮)

管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団

指揮:ヴェロ・パーン

上映時間:108分

『薔薇の精』10分

『 牧神の午後』12分

『三角帽子』36分

『ペトルーシュカ 』36分

1909年に結成され、バレエの世界に革命をもたらしたバレエ ・リュス。誕生100周年を記念した2009年の公演の映像です。

 

『薔薇の精』(原題:“Le Spectre de la rose”)

振付:ミハイル・フォーキン

音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー

編曲:エクトル・ベルリオーズ

美術:レオン・バクスト

出演:

薔薇の精:マチアス・エイマン

少女:イザベル・シアラヴォラ

 

薔薇の精は、前の週に上演されていた『眠れる森の美女』でデジレ王子を演じていたマチアス・エイマン。2013年収録の「眠り」より4年前になりますね。

踊りの精度は「眠り」のほうが上かなと思いましたが、濃密な薔薇の香りが漂ってくるようなムード、柔らかな動きは素晴らしかった。

イザベル・シアラヴォラの少女も気高く美しい。

ほかのバレエ団が上演する時も基本的なデザインは同じだと思いますが、パリ・オペラ座の衣裳や美術のクオリティーはどこかが違う。少女がドレスの上に着ていたピンクの柄のガウンや、ドレスの凝った装飾、白のヘッドピースが素敵でした。

薔薇の精の衣裳の腰の辺りに薔薇の葉っぱが描かれているのは、初めて観た気がする。今まで気づかなかっただけなのか、パリ・オペラ座仕様なのかはわかりませんが。

『牧神の午後』(原題 :“L’Après-midi d’un faune”)

振付:ヴァーツラフ・ニジンスキー

音楽:クロード・ドビュッシー

美術:レオン・バクスト

出演:

牧神:ニコラ・ル・リッシュ

ニンフ:エミリー・コゼット

今観てもあまりに独特で官能的(というか性的)。100年前の観客にとってはどれだけの衝撃だったのか。初演がほとんど「事件」だったのも頷けます。

神秘的なメロディが流れる中幕が上がると、中央の丘でひとりまどろむ牧神、背景には深く広大な森。レオン・バクストによる美術が息をのむほど美しい。

体を立体的にみせるクラシックバレエのポジションとは真逆の、古代ギリシャの絵画やレリーフのような平面的なポーズや動きの連続。回転も跳躍もなし。

驚異的な跳躍で人気を博していたとされるヴァーツラフ・ニジンスキーが、どんな気持ちでこの作品を振り付けたのか…。

ニコラ・ル・リッシュの牧神は、ニンフの残したヴェールを手にしたときの歓喜の表情が印象的だった。半獣神の「獣」の部分が一気に表出したような瞬間でした。

牧神はサンダル(グルカ・サンダルみたいなやつ)を履いてるんだなと、はじめて気がついたのですが、あとでWikipediaを見たら、レオン・バクストによるデザイン画では片足サンダル、片足素足でした。半獣神の表現なのか?

さすがに片足サンダルでは踊りにくかったのか、映像では両足サンダルでした。YouTubeでいくつか動画をチェックしたけど、やはりみんな両脚履いてた。

 

『三角帽子』(原題:"El sombrero de tres picos")

振付:レオニード・マシーン

音楽:マヌエル・デ・ファリャ

美術:パブロ・ピカソ

出演:

粉屋の女房:マリ=アニエス・ジロ

粉屋:ジョゼ・マルティネズ

コリヒドール:ファブリス・ブルジョア

 

男性のソロはガラ公演で観た覚えがありますが、この作品を通しで観るのははじめて。

予備知識なしで観てしまったので、今ひとつ見どころがわからなかったけど、音楽の迫力とマリ=アニエス・ジロの華やかさ、ジョゼ・マルティネズのかっこ良さは楽しめた。

スペインが舞台で、バレエ・リュス的『ドン・キホーテ』みたいな感じもありますが、『ドン・キホーテ』ほど単純に明るくない。粉屋の女房に手を出す代官を懲らしめるというストーリーは、支配層に対する揶揄なのか。

パブロ・ピカソによる衣裳はユニークだけど、好きかといわれると??主役ふたりの衣裳が一番普通で、脇役になるほど奇抜になっていく感じ。

ちなみに三角帽子って横から見て「三角」なんじゃないんですね。横と後ろのつばを折ってある帽子で上から見て「三角」。18世紀に欧米で流行した帽子で、主に士官らが被っていたようなので、支配層の象徴なのかな。これもあとからWikipediaで調べて知りました。恥ずかしながら、『三角帽子』っていうタイトルを見るたびに、折り紙で折った兜みたいな三角形の帽子を想像してた 笑。

『ペトルーシュカ』(原題:“Petrouchka”)

振付:ミハイル・フォーキン

音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

美術:アレクサンドル・ブノワ

出演:

ペトルーシュカ:バンジャマン・ペッシュ

バレリーナ:クレールマリ・オスタ

ムーア人:ヤン・ブリダール

魔術師:ステファン・ファヴォラン

 

映像では何度か観ているけど、改めて観ると印象が違った。もう少しペトルーシュカの哀しみにスポットが当たっていた気がしたのですが、そうでもなかった。意外にドライな扱い。

むしろムーア人の描かれ方がミステリアスで気になった。あの小部屋で彼は何を考えていたんだろう。

はじめと最後のお祭でにぎわう街の群衆のシーンが思っていたより長くて、そこで繰り広げられているさまざまなドラマに引き込まれました。大道芸人たちの小競り合い、浮気したり、浮気されたりしているカップル、泥酔してる人、群衆全員にキャラクターとストーリーがある感じ。そんな活気あふれる街の風景に、きらきらと音が降り注ぐような音楽がぴったりでした。

見世物小屋でペトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人が踊り出す有名なシーンは、やっぱりワクワクする。バンジャマン・ペッシュ演じる”ペトルーシュカ”の人形感、”バレリーナ”役のクレールマリ・オスタの軽やかなポアントワークが素晴らしかったです。

おわりに

独特のエネルギーに満ちた4作品。バレエ・リュスが遺したものの大きさを感じさせる映像でした。どの作品も音楽が素晴らしく、生オーケストラで観てみたい…。

 

読みたくなったこの本↓

柄本弾さん推しのバレエファンとして知られる桜沢エリカさんが描く、ニジンスキーとディアギレフの物語↓

★最後までお読みいただきありがとうございました。