増加傾向にある東京のコロナ感染者が気になりつつも、バレエ鑑賞が恋しくてつい観に行ってしまうバレエ・シネマ。一部劇場で6月26日から上映がスタートしたパリ・オペラ座バレエ・シネマ2020の第3弾『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』を観てきました。劇場の様子や感想などをレポートします。
*劇場の状況などは2020年6月30日時点のものです。
平日の劇場は空いてます
東銀座の東劇で鑑賞しましたが、平日はガラガラ、入場者10人ちょっとぐらい?入り口でアルコール消毒をして入場。ひとつおきに席を開けてのチケット販売で、販売しない席にガムテープでバッテンしてあるのが、非常事態感がありますね…ロビーのソファーなどもテープを張って座れないようになっていました。売店は営業中。
入場料は3,300円で、ボリショイ、ロイヤル(3,700円)よりお安いのが嬉しい(笑)
現在発表されているスケジュールでは東劇では7月9日(木)までの上映です。
作品概要
パリ・オペラ座バレエ・シネマ 2020
『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』
上映時間:1時間50分(休憩なし)
収録:2017年3月(パンフレット記載)
*同じパンフレットに(2015年)とも書かれており、2015年製作と書かれているサイトもあります…。
2014年11月から2016年2月まで、パリ・オペラ座の芸術監督だったバンジャマン・ミルピエによるロビンスとバランシンに捧げたトリプルビル。スクール・オブ・アメリカンバレエでジェローム・ロビンズに師事し、ニューヨーク・シティ・バレエでプリンシパルを務めたミルピエならではの企画です。
『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』
振付:バンジャマン・ミルピエ
音楽:ニコ・マーリー
出演:レオノール・ボラック、エレオノール・ゲリノー、オーバーヌ・フィルベール、マリオン・バルボー、レツィシア・ガローニ、ロレーヌ・レヴィ、ロクサーヌ・ストヤノフ、イダ・ヴィキンコスキ、アクセル・イーボ、フロリモン・ロリュー、ジェルマン・ルーヴェ、アリステル・マダン、ユーゴ・マルシャン、マルク・モロー、イヴォン・デモル、ジェレミー・ルー・ケール
ミルピエがパリ・オペラ座の芸術監督として手がける初シーズンの幕開けに用意された作品です。新進気鋭の作曲家ニコ・マーリー、若きマエストロ マキシム・パスカル、衣裳のイリス・ヴァン・ヘルペンら若い感性を集結させて創り上げた33分の作品。ダンサーもコリフェやスジェを中心に若手を起用しています。
まず舞台装置は下手にベンチがあるだけの四角いグレーの箱。男性の衣裳はグレーのグラデーション。女性の衣裳はグレー(シルバー?)のカットワークが施されたレオタード。モノトーンの世界に響く、音が溢れ出てくるようなニコ・マーリーの音楽は圧巻です。
踊りは誰が主役ということもなく、群舞や男女のペアの踊りが入り混じる構成。そんなかでも現在はエトワールに昇進したレオノール・ボラック、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェの踊りはやはり目を引きますが、作品としてはひとりのダンサーを数人でリフトしたり、全員が繋がってメリーゴーランドのように回転したりと、集団としての動きの面白さやボリューム感の方が印象深かったです。
『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』といえば、ドキュメンタリー映画『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男』(2015年)で話題を集めた作品。映画ではこの作品の製作過程を追いながら、短命に終わったミルピエの芸術監督時代を描いています。
先入観なく作品を鑑賞したいという方は別として、『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』を観る前に、『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男』を観ておくのが個人的にはおすすめです。舞台に何気なく置かれたベンチにも、女性の衣裳にもいろんな裏話があるんですよね…。
『作品19/ザ・ドリーマー』
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番
出演:アマンディーヌ・アルビッソン、マチアス・エイマンほか
ロビンズがミハイル・バリシニコフのためにに振り付けた『作品19/ザ・ドリーマー』。ひとりの男の白昼夢の情景を描いた作品です。アルビッソンが演じる女性や10人ほどの群舞も全て青い衣裳、背景も青い中、「男」を演じるマチアス・エイマンだけが純白の衣裳。
エイマンの繊細で精巧なテクニックが堪能できる作品でした。青い夢の中で彼だけがくっきりと浮かび上がる感じ…。アルビッソンは好きなダンサーなのですが、この作品ではあまり印象に残らず。
こちらは本家ニューヨーク・シティ・バレエ団 のプリンシパル、テイラー・スタンレーによる『作品19/ザ・ドリーマー』の紹介映像です。↓
『テーマとヴァリエーション』
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:ローラ・エケ、ジョシュア・オファルトほか
ジョージ・バランシンの 名作のひとつであり、物語はないものの20世紀の『眠れる森の美女』とも言われる『テーマとバリエーション』。端正で気品溢れる雰囲気と、繰り返されるチャイコフスキーの美しい旋律が胸に迫ります。ローラ・エケもジョシュア・オファルトもエレガントで作品にぴったりでした。
『テーマとバリエーション』は2017年のパリ・オペラ座日本公演の「グラン・ガラ」でも上演されました。こちらは当時の予告映像↓
おわりに
パリ・オペラ座の魅力を改めて考えさせられるトリプルビルでした。
東劇では7月9日(木)までの上映のようですが、恵比寿ガーデンシネマでは9月4日(金)から上映が予定されています。
また、東劇では上映が終了しているパリ・オペラ座バレエ・シネマ2020の第2弾『真夏の夜の夢』も7月31日(金)から上映予定です。『真夏の夜の夢』は緊急事態宣言中にオンラインで特別配信されていましたが、夢のように美しい舞台でした。『真夏の夜の夢』東劇上映は見逃してしまったので、恵比寿に観に行きたいと思っています。コロナの第2波が来ないように祈ります!
パリ・オペラ座バレエ・シネマ2020公式サイト↓
https://www.culture-ville.jp/parisoperaballetcinema
★最後までお読みいただきありがとうございました。