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英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマ『ドン・キホーテ』【バレエ鑑賞メモ】

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2023/24のカルロス・アコスタ版『ドン・キホーテ』を鑑賞しました。

当初1月26日(金)から2月1日(木)まで上演の予定でしたが、TOHOシネマズ日本橋では2月8日(木)までのアンコール上演が決定。

私は2月1日(木)に鑑賞しましたが、この日も満席。チケット売り切れで、ガッカリしている人を見かけました。

バレエ『ドン・キホーテ』アンコール上映決定! | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2019/20アコスタ版『ドン・キホーテ』の鑑賞メモはこちら。キトリは高田茜ちゃんです!

www.balletaddict.com

 

公演・上演概要

『ドン・キホーテ』全3幕 英国ロイヤル・バレエ団

収録日:2023年11月7日

【振付】カルロス・アコスタ、マリウス・プティパ
【音楽】レオン・ミンクス
【デザイナー】ティム・ハットリ―
【照明】ヒューゴ・バンストーン
【ステージング】クリストファー・サンダース
【指揮】ワレリー・オブシャニコフ
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

【出演】
ドン・キホーテ:ギャリー・エイヴィス
サンチョ・パンサ:リアム・ボズウェル
ロレンツォ(キトリの父):トーマス・ホワイトヘッド
キトリ:マヤラ・マグリ
バジル:ギャリー・エイヴィス
ガマーシュ(金持ちの貴族):ジェームズ・ヘイ
エスパーダ(闘牛士):カルヴィン・リチャードソン
メルセデス(街の踊り子):レティシア・ディアス
キトリの友人:ソフィー・アルナット、前田紗江
二人の闘牛士:デヴィッド・ドネリー、ジョセフ・シセンズ
ロマのカップル:ハンナ・グレンネル、レオ・ディクソン
森の女王:アネット・ブヴォリ
アムール(キューピッド):イザベラ・ガスパリーニ
ファンダンゴのカップル:ミーシャ・ブラッドベリ、ルーカス・B・ブレンスロド

【上演スケジュール】

解説+インタビュー 19分

第1幕 52分

休憩 11分

解説+インタビュー 14分

第2幕 34分

休憩 12分

解説+インタビュー 11分

第3幕 46分

この日の公演は、チャールズ国王とカミラ王妃が鑑賞。国王が着席する際の劇場の様子なども映されていました。

いつものように、上演前に芸術監督ケヴィン・オヘア、幕間には振付のカルロス・アコスタや小道具の管理を担当するスタッフの方が登場。出演ダンサーたちや衣裳・美術のティム・ハットリ―のインタビュー映像も流されました。

幕間に登場した、タイトなスーツ姿のカルロス・アコスタは現役時代と変わらず、スレンダーでカッコよかった!

 

英国ロイヤル・オペラ・ハウスの公式youtubeチャンネルより。

ギャリー・エイヴィス、マヤラ・マグリ、マシュー・ボールのインタビューや、リハーサルの映像を見ることができます。

www.youtube.com

ゴールデンカップル!マヤラ・マグリとマシュー・ボール

なんと言っても、マヤラ・マグリの天性の明るさや活力に溢れたムードが、キトリにぴったり!マシュー・ボールのシャープで若々しいバジルも魅力的でした。テクニック、特に回転系のキレが素晴らしい。

実生活でもカップルであることが知られる2人だけに、パートナーリングの息もぴったり。1幕の片手リフトなども余裕を感じさせ、落ち着いて観ていられます。

2人そろって長い脚のラインが美しく、組んだときの体型のバランスもいいですね。

リアム・ボズウェルのサンチョ・パンサが気になる

『ドン・キホーテ』では主演以外のキャストの名演を観るのも楽しみ。

いつもは好青年なイメージのジェームス・ヘイですが、ガマーシュが予想外に似合ってました。表情が豊かでキュート。

カルヴィン・リチャードソンのエスパーダも素敵だった。酒場でエスパーダの目線だけで女の子が倒れちゃうシーンがありますが、それも納得のカッコよさ。踊りに重厚さと迫力がありました。

闘牛士たちの中ではルーカス・B・ブレンスロドが光ってた。イザベラ・ガスパリーニのアムール(キューピッド)もチャーミング!

 

そして今回もっとも気になるキャスティングだったのはリアム・ボズウェルのサンチョ・パンサ。ベテランのキャラクターアーティストが演じる役なのかなと思っていましたが、リアム・ボズウェルは2019/20シーズン入団、2023年にファースト・アーティストになったばかりの若手。公式サイトの写真に見覚えがある…と思ったら、昨年の英国ロイヤル・バレエ団の来日公演で上演された『田園の出来事』でコーリャ(息子)を演じたダンサーでした。コーリャのソロの踊りがクリーンでキレがあり印象的だった。(私は観られなかったけど、来日公演では、ウィリアム・ブレイスウェル、ジョセフ・シセンズ、レオ・ディクソンと共に『FOR FOUR』にも出演していますね。)

サンチョ・パンサは、3幕最後にストリート・キッズ(街の悪ガキ4人組)たちと一緒に登場し、キレキレのピルエット・ア・ラ・スゴンドを披露していました。こんなに踊るサンチョ・パンサははじめて見た。サンチョ・パンサ体型になるためには、かなりの肉襦袢を身体につけてるはずですが、リアム・ボズウェルすごいな。

それにしてもなぜ彼がサンチョ・パンサに?演技力を買われて??ご本人のインスタグラムを見ると、すでに先シーズンから『くるみ割り人形』のハンス・ピーター/くるみ割り人形を演じているんですね。サンチョ・パンサからくるみ割り人形まで、振り幅がすごい。これからどんな役を踊るのか、気になるダンサーになりそうです。

リアム・ボズウェルのインスタグラムより。

ハンス・ピーター/くるみ割り人形を演じるリアム・ボズウェル。

 
 
 
 
 
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アコスタ版のキモは3幕なのかも

ダンサーたちが声をあげたり、舞台でギターの生演奏が行われたり、と大胆な演出も多いアコスタ版ですが、3幕の結婚式の設定もこの版ならでは。

3幕のキトリとバジルの結婚式のシーンは、貴族の館とか庭園みたいな場所で、高貴そうな人たちに見守られながら、と言うパターンが一般的で、1幕のバルセロナの街とは別世界。でもアコスタ版ではバルセロナの街中で、1幕にも登場してる街の人たちに祝福されながらの結婚式です。庶民の物語に徹しているところが潔いし、1幕から物語が途切れないところが魅力ですね。

ドン・キホーテの馬には人が入ってた!

幕間で行われた小道具管理のスタッフの方のインタビューも面白かった。

この作品には300個以上の小道具があるらしい。小道具はすぐ壊れるので修理も大変とのことでした。確かにカップとか放り投げたりしますしね。

驚きだったのは、ドンキホーテが跨って登場する藁と金属でできた大きな馬。あの馬の中には人が入ってた!馬の胴体部分に操作する人の上半身を入れ、足はそのまま外に出ていて歩いて馬を動かしてる。脚には馬と同じような衣裳をつけて馴染ませてるということでした。

3幕でドン・キホーテが馬に乗って去っていくシーンを注意して見たら、確かに馬の後ろ脚の間に人間の脚が!今まで全く気がつきませんでした。

2幕の場面転換が秀逸

美術でもみどころの多いアコスタ版。

印象的なのは2幕のジプシーと風車の場面から、夢の場へと転換するところ。それほど大きく背景を変えていないのに、荒涼としたジプシーたちの野営地から、エキゾチックな花が咲き乱れる夢の場へと転換するデザインが見事です。

 

衣裳については、酒場のシーンのエスパーダの緑の衣裳が好き。主役より派手、しかも主役は着替えていないのにエスパーダは衣裳チェンジ!闘牛士たちやファンタンゴの衣裳も素敵です。

夢の場のチュチュも独特の装飾がきれい。この版はアムール(キューピッド)もチュチュなのですが、キトリは白、森の女王は黄色、アムールは水色と意表をついた配色。3幕のキトリの友人のベージュとラベンダーが段々になったスカートも可愛かった。

おわりに

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2023/24のバレエの次回上演作品は『くるみ割り人形』。2024年2月16日(木)からです。

くるみ割り人形 | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。