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【鑑賞レポート】「 マノン」 新国立劇場バレエ団

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新国立劇場バレエ団のマクミラン版「マノン」を観てきました。主役は米沢唯さんとワディム・ムンタギロフ。新型コロナウィルスの影響で中止のイベントも多くてちょっと心配でしたが、熱のこもった舞台を観ることができました。

公演概要

『マノン』 全3幕

2月23(日)14:00〜

新国立劇場大ホール

音楽:ジュール・マネス

振付:ケネス・マクミラン

美術・衣裳:ピーター・ファーマー

指揮・編曲:マーティン・イェーツ

管弦楽:東京交響楽団

 

【キャスト】

マノン: 米沢唯

デ・グリュー :ワディム・ムンタギロフ (英国ロイヤルバレエ プリンシパル)

レスコー:木下嘉人

ムッシューGM:中家正博

レスコーの愛人:木村優里

娼家のマダム:本島美和

物乞いのリーダー:福田圭吾

看守:貝川鐵夫

 

偉大な振付家ケネス・マクミランの 『ロメオとジュリエット』と並ぶ、ドラマティックバレエの傑作『マノン』。初演は1974年、英国ロイヤル・バレエ団。

この公演も、指揮者は英国ロイヤル・バレエ団でもおなじみのマーティン・イェーツ。本家英国ロイヤル・バレエ団にゆかりのあるスタッフで製作されています。

 

「マノン」のみどころ 

マクミランの振付は素晴らしく、音楽もとても美しいのですが、『マノン』が心から好きな作品かというと…ちょっと微妙。マクミラン本人が「天使のような外見で悪魔のような内面をくるんだ、モラルの欠如した存在」と言ったというヒロイン、マノン。学生デ・グリューと恋に落ちたものの、一度は愛よりもお金を選んだマノンが売春の罪で流刑地アメリカに送られ、言い寄ってきた看守をデ・グリューが殺害。2人で逃亡したルイジアナの沼地で力尽き、マノンはデ・グリューの腕の中で息を引き取る…。

バレエとしては珍しい汚れ役のヒロイン、きらびやかで刹那的な2幕までと一転して不幸で悲惨な世界の3幕の対比がみどころ。…ではありますが、個人的には3幕の悲劇をどんな気持ちで観ていいのか、ちょっとモヤモヤします。マノンの気持ちが想像しにくい…ボロボロになった末に死ぬ時まで寄り添ってくれるデ・グリューにどんな気持ちを抱いているのか…公演パンフレットには、沼地の場面のストーリーとして「これまでの富や贅沢への欲望をすべて捨て、マノンにはデ・グリューへの愛しかない。」と書いてありますが、マノンは欲望のまま生きてきただけできっと悪気はない。自分したことを後悔したりしただろうか?自分の不幸を理解できず、失望したまま死んでいったようにも思える…。

それに比べるとデ・グリューの悲劇はわかりやすいです。常識外の女性を心から愛してしまったことによる不幸。この物語はデ・グリューの不幸にフォーカスして観た方がカタルシスが得られるのかもしれません。

3分でわかるバレエ「マノン」

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とにかくかわいそうなワディムのデ・グリュー

日本のバレエ団の公演で主役が外国人ダンサーのゲストというのは、違和感があるので普段はあまり観ないことにしているのですが、今回は特別。先日の「輝く英国ロイヤルバレエのスター達」の公演でワディム・ムンタギロフがとてもよかったので、チケットをとりました。観るたびに良くなる今の彼を見逃してはいけない…

 

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第1幕、淡い水色の衣装で登場するワディムの姿は美しすぎて、王子にしか見えません 笑。出会いの場面のスローなソロのパートが、ちょっとグラグラしていて珍しく調子が悪いのかなと思いましたが、その後はすぐに持ち直し、後半に向かってどんどん良くなっていきました。回転のキレが素晴らしかったです。

喜びに溢れた寝室のパ・ド・ドゥもよかったですが、何と言っても第2幕でマノンに戻ってきてくれと頼む場面や、マノンに拒否されひとりで踊るデ・グリューの姿があまりもかわいそうで…捨てられた子犬のようでした。悲しみの中で力を振り絞って踊るデ・グリュー…涙。思わず「そんな女とは別れた方がいいよ!」と声をかけたくなります。

公演パンフレットに掲載されている長野由紀さんのインタビューから引用しますが

「本当にこの人は不幸だ、なんて可哀想なんだ」と観客に思わせてこそ、真のデ・グリューと言えるのではないでしょうか

その点、ワディムは真のデ・グリューと言えるでしょう。

難しい振付をなんなくこなす米沢唯さんも素晴らしかった。艶やかさもありました。ワディムとの息もぴったりで、マクミランがフィギュアスケートに影響されて振り付けたという、沼地のパ・ド・ドゥでの女性を投げてくるくる回転させる難しいリフトも見事に決まっていました。

木村優里さんはレスコーの愛人役でしたが、意外にこういう役が似合う。しなやかな踊りでした。

そして娼家のマダムの本島美和さんと、看守の貝川鐵夫さんがさすがの存在感。今の新国には役者が揃っていますね。

 

衣装や装置の色のトーンもとてもきれいでした。ただ、娼館の娼婦たちがかぶる金髪の大きめのカツラはどうなんだろう…。カツラなしの娼婦役もあるんだから、全員カツラなしでもいいのに。あの手のカツラは日本人にはきつい…。

おわりに

やっぱりワディム・ムンタギロフは見逃せない、観に行ってよかったと思った公演でした。

新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、新国立劇場のHPでは鑑賞の際の注意点が発表されていました。会場にはいろんなところに消毒用アルコールが置かれ、多くの人がマスクを着用。これ以上新型コロナウィルスの感染が広がらないように切に願います。

 

こちらはワディムとサラ・ラムの2018年収録版!

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。