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『スーパースター・ガラ 2022』Aプログラム【バレエ鑑賞メモ】

『スーパースター・ガラ 2022』のAプログラムを鑑賞しました。初日の11月24日(木)の公演です。

コンテンポラリー作品多め。初めて観る演目が多くて、ディテールについてはすでに記憶が薄れかけていますが…簡単な鑑賞メモです。

 

公演概要

『スーパースター・ガラ 2022』【A プログラム】

2022年11月24日(木) 19:00開演
東京文化会館大ホール

芸術監督:パトリック・ド・バナ

【出演者】

マニュエル・ルグリ(ミラノ・スカラ座バレエ団 芸術監督)

スヴェトラーナ・ザハロワ(ボリショイ・バレエ団 プリンシパル)

エレオノラ・アバニャート(ローマ歌劇団バレエ団 芸術監督)

マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ団 エトワール)

マリアネラ・ヌニェス(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

ナタリア・オシポワ(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

エドワード・ワトソン(元英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

ダリア・パブレンコ(元マリンスキー・バレエ団 プリンシパル)

ダニーラ・コルスンツェフ(元マリンスキー・バレエ団 プリンシパル)

エレナ・マルティン(元ラファエル・アギラル・スペイン舞踏団 プリンシパル)

パトリック・ド・バナ(「スーパースター・ガラ」芸術監督)

【上演スケジュール】

第1部 65分

休憩 20分

第2部 75分

今回のガラ公演の芸術監督はベジャール・バレエ・ローザンヌ、スペイン国立ダンス・カンパニーで踊ったのち、現在はフリーのダンサー、振付家として活躍するパトリック・ド・バナ。マニュエル・ルグリに数多くの作品を振り付けていることでもおなじみです。

Aプログラムでは3作品がパトリック・ド・バナ振付でした。

 

第1部

「白鳥の湖」より “黒鳥のパ・ド・ドゥ”

振付:マリウス・プティパ

音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
出演:マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ

 

冒頭から、一気に物語に引き込まれました。

ムンタギロフの伸びやかでノーブルな踊りが、久しぶりに観られて満足!オディールが差し出した手に王子が頬をつける、おなじみの最後のポーズ(マイム?)。何度観ても、ムンタギロフはこのポーズが似合うなぁ。

ヌニェスの強烈な存在感と安定したテクニックも素晴らしかったです。

 

「月の光」<日本初演>

振付:アラスター・マリオット

音楽:クロード・ドビュッシー
出演:マチュー・ガニオ

当初発表では、「マチュー・ガニオがローラン・プティの「アルルの女」に初挑戦!」のはずだったのですが、このソロに変更に。「アルルの女」観たかったので、ちょっとがっかり。

でもこの演目自体はよかったです。現在のマチュー・ガニオにフィットする作品だと感じました。

振付のアラスター・マリオットは、今年10月に上演された新国立劇場バレエ団の新制作の「ジゼル」の改訂振付をした人ですね。

この作品のマチュー・ガニオはまさに「月の光」を浴びて踊る美しい彫像のよう。もうひたすら、しみじみと美しい。お馴染みの「月の光」のメロディも一層心にしみる…。

衣裳は上半身裸で、下は袴のようなくすんだ朱色のパンツ。脚の付け根までスリットが入っていて動きによって、脚が大胆に見え隠れするのがドラマティックでした。

パンフレットに載っていたこの作品をマチュー・ガニオが踊ることになった経緯が面白かった。

もともとは映像作品としてエドワード・ワトソンのために振り付けられ、その後舞台で上演する際に、直前に怪我をしたワトソンの代わりに急遽マチューが踊ることに。この作品が気に入ったマチューの希望で、パリ・オペラ座のレパートリーに加えられたそうです。

今回のガラに、エドワード・ワトソンが参加しているのも巡り合わせですね。この舞台を観た後、ワトソンが踊っている映像作品をちらっと観ましたが、マチューとは雰囲気が全く異なっていて面白かった。

 

「スパルタクス」


振付:レオニード・ヤコブソン

音楽:アラム・ハチャトゥリアン
出演:ダリア・パブレンコ、ダニーラ・コルスンツェフ

 

私がバレエを観始めた頃は、ロパート・キナの相手役として活躍していたダニーラ・コルスンツェフ。

かなり久しぶりに観ましたが、容貌は思ったほど変化していなかった。長身でスレンダーなスタイルも当時のまま。

しかしこのレオニード・ヤコブソン版のパ・ド・ドゥ、スパルタクスは演技が中心であんまり踊らないんですね。ダリア・パブレンコが演じるフリギアの踊りも、ちょっと独特な振付でわりと地味。

「白鳥の湖」ほど馴染みがないこともあって、ドラマに没入できないうちに終わってしまった。

「Ashes」

振付:ジェイソン・キッテルバーガー

音楽:ゴラン・グレゴヴィッチ
出演:ナタリア・オシポワ

ナタリア・オシポアは2演目ともコンテンポラリー。

「Ashes」はジェイソン・キッテルバーガー(オシポアの私生活でのパートナー、ですよね?)が、オシポアのために振り付けたという作品。オシポアの素晴らしい身体能力、自由自在のボディ・コントロールを観られる作品でした。

ペルシャ絨毯ぽい敷物の上に置かれたスツールの上にオシポアが座っているところからスタートして、途中でスツールを蹴り飛ばし(オシポア、楽しそう)、最後には敷物にぐるぐると包まって(クレオパトラみたいに)終わる。どういう意味?と気になったけど、パンフレットの作品解説にもでてなかった。

「MEDEA MOTHER」

振付:パトリック・ド・バナ

音楽:マックス・リヒター
出演:エレナ・マルティン、パトリック・ド・バナ

ギリシャ神話に登場する王女メディアがテーマの作品らしい。エレナ・マルティンの息づかい(←効果音でしたでしょうか…?)が妙に耳に残りました。

「インポッシブル・ヒューマン」

振付:アーサー・ピタ

音楽:ベヴ・リー・ハーリング
出演:エドワード・ワトソン

初演は今年7月の「ロイヤル・バレエ・ガラ」。用事で途中までしか観られなかったBプロで見逃した作品が、まさかここで観られるとは!嬉しい驚きでした。

プリンシパル引退早すぎたんじゃ…と思うようなエドワード・ワトソンの素晴らしい踊り。作品も面白かった。

作品タイトルは楽曲名から。ベヴ・リー・ハーリングの哀愁を帯びた歌声が印象的でした。

 

「Árbakkinn」<日本初演>

振付:シモーネ・ヴァラストロ

音楽:オーラヴル・アルナルズ
出演:エレオノラ・アバニャート、マニュエル・ルグリ

 

長年パリ・オペラ座で一緒に踊り、現在はそれぞれイタリアの二大バレエ団の芸術監督を務めるエレオノラ・アバニャートとマニュエル・ルグリ。

この作品、大人っぽい雰囲気とは裏腹に、リフトが連続するようなハードそうな振付も含まれているのですが、さすがのパートナーリングでした。(まだこんなハードな振付を踊るんだと、正直驚いた。)

ルグリが公演パンフレットのインタビューで、長年一緒に踊ったエレオノラ・アバニャートとはたくさんの思い出があり、「…彼女についてだけで一冊の本を書けるくらい。(笑)」と話していました。その本、読んでみたい。

 

「瀕死の白鳥」

振付:ミハイル・フォーキン

音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:スヴェトラーナ・ザハロワ

演奏:金木博幸(チェロ)、中村愛(ハープ)

ザハロワの「瀕死の白鳥」を観るのは、2021年の世界バレエ・フェスティバル以来。ザハロワはあの時より痩せてしまったような気がする…。

踊る人によってかなりニュアンスの異なる「瀕死の白鳥」。ザハロワの「瀕死の白鳥」は、あえて感情を抑えた表現のように見えました。死という運命を受け入れひっそりと息絶える白鳥。静かで、透き通るようで、美しかった。

第2部

「シェヘラザード」

振付:ミハイル・フォーキン

音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
出演:ダリア・パブレンコ、ダニーラ・コルスンツェフ

 

「スパルタクス」よりは、ふたりの踊りが観られてよかった。ダリア・パブレンコの妖艶さに比べると、ダニーラ・コルスンツェフの金の奴隷はややあっさりめではありましたが。

「Limbaé」

振付:エレナ・マルティン

音楽:アラ・マルキアン
出演:エレナ・マルティン

エレナ・マルティンとストールの競演とでもいえそうな作品。

始終長いフリンジのついたストールを振り回しながら踊るエレナ・マルティン。「ドン・キホーテ」のエスパーダばりにストールさばきが上手かった。

「病める薔薇」

振付:ローラン・プティ

音楽:グスタフ・マーラー
出演:エレオノラ・アバニャート、マチュー・ガニオ

この作品ではエレオノラ・アバニャートの情感豊かな魅力が前面にでて、マチュー・ガニオはひかえめだった印象。パンフレットで知りましたが、エレオノラ・アバニャートはエトワール任命も、アデュー公演もローラン・プティの作品なんですね。

エレオノラは薄いコーラルピンク系の美しいドレス、マチューは上半身裸の白タイツ。パンフレットには「初演の衣裳デザインはイヴ・サンローラン」とあったけれど、今回の衣裳はどうなんでしょうか?

 

「Ambar」<日本初演>

振付:ウェイン・マクレガー

音楽:ニルス・フラーム
出演:ナタリア・オシポワ、エドワード・ワトソン

 

「ウルフ・ワークス」から、直前に演目変更。この変更だけは、パンフレットに間に合ってなかった。

この2人が組むのははじめて観たかも。まったくタイプの異なるダンサーと思いきや、意外に相性はいいと感じました。

 

「Digital Love」

振付:パトリック・ド・バナ

音楽:ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
出演:スヴェトラーナ・ザハロワ、パトリック・ド・バナ

ベージュのシンプルなミニドレスで登場したザハロワがひとりで踊ったあと、黒い衣裳のパトリック・ド・バナが登場。パトリック・ド・バナは黒子のように、ザハロワをリフトし、動かし…。人形のように操られているように見えつつも、次第にザハロワの動きが自由に、解放されたように見えてくるのが面白かった。

最後にザハロワが「瀕死の白鳥」のポーズになったのは、このガラ用の特別バージョンだったのかな。

この作品の過去の動画と比べると、今回は演出が少し違っていた気がします。

 

「ドン・キホーテ」

振付:マリウス・プティパ

音楽:レオン・ミンクス
出演:マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ

明るい演目がほとんどないプログラムの中、一気に盛り上がる「ドン・キホーテ」!

マリアネラ・ヌニェスのバランスがすごかった。

このプログラムの中で、古典2作品を完璧に踊りきる2人に清々しさを感じました。このクラシックあってこそのコンテンポラリー。ガラ全体の満足度をめちゃくちゃ上げていたと思う。

 

「The Picture of…」 <新バージョン>

振付:パトリック・ド・バナ

音楽:ヘンリー・パーセル
出演:マニュエル・ ルグリ

「ルグリ、最後のステージ」と銘打たれた今回のガラ。ラストに踊るのはマニュエル・ルグリとパトリック・ド・バナの最初のコラボレーション作品でした。

海の中のようなブルーを背景に、浮かび上がるルグリのシルエット。聞こえてくる鯨の鳴き声。

隅々までコントロールされた洗練された動きは衰えも感じさせず、これまで観てきたルグリなのですが、どこか淡々とした、とても静かな印象を受けました。ああ、こうやってルグリは舞台を去っていくんだな…と、感慨深かったです。

 

おわりに

今回は残念ながら都合がつかず、Aプログラムのみの観賞でした。Bプロも観たかった。(もうちょっと公演日が多くてもいいのに…)

演目変更が相次いだりということはありましたが、出演者は当初発表通りだったのでは。これだけの出演者を日本によんでくれたことに感謝です。

今回の公演、観客の雰囲気が他の公演とちょっと違ってた。ダンサーがベテラン揃いだったから、年季の入ったバレエファンが多いのかな、なんて思いました。

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★最後までお読みいただきありがとうございました。