小林ひかるさんプロデュースのガラ公演『The Artist〜バレエの輝き〜』、8月12日(土)のマチネとソワレを鑑賞しました。まずは、8月12日(土)のマチネ(Program 3 & 1)の感想メモです。
公演概要
8月12日 (土) 13:00開演
文京シビックホール 大ホール
『The Artist〜バレエの輝き〜』Program 3 & 1
芸術監督:小林ひかる(元英国ロイヤル・バレエ団)
出演:
【英国ロイヤル・バレエ団】
マリアネラ・ヌニェス、マヤラ・マグリ、、金子扶生、ワディム・ムンタギロフ、マシュー・ボール、ウィリアム・ブレイスウェル、五十嵐大地
【アメリカン・バレエ・シアター】
キャサリーン・ハーリン、アラン・ベル、山田ことみ、
【ニューヨーク・シティ・バレエ】
タイラー・ペック、ローマン・メヒア
【上演スケジュール】
第1部 50分
休憩 20分
第2部 65分
2020年の小林ひかるさんプロデュースの公演『輝く英国ロイヤルバレエのスター達』がとてもよかったので、今回もぜひ観たいと思っていました。
前回は3つのプログラムを2つずつ組み合わせた公演。今回は4つのプログラムを2つずつ組み合わせた公演でした。
8月12日のマチネとソワレを観れば、4つのプログラムが全部観られる組み合わせになっているのがうまいな〜。というわけで久しぶりにマチソワしてしまいました。この日マチソワしていた人、かなり多かったのではないでしょうか?
今回は英国ロイヤル・バレエ団のダンサーたちに加え、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)とニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)のダンサーたちが共演するのもみどころ。
2020年の『輝く英国ロイヤルバレエのスター達』の感想はこちら↓
第1部 The Routine (Program 3)
ピアノ:蛭先あゆみ
振付:ベンジャミン・エラ
映像:アンドレ・ウスペンスキ
出演:全員
日常のレッスンを舞台上でみせてくれるというプログラム。少しショーアップされたりするのかなと思ってましたが、オーソドックスにフルのクラスをみせてくれました。毎年ワールド・バレエ・ディにYoutubeにアップされる英国ロイヤル・バレエ団のクラスの動画をライブで観ている感じ。
演出としては、映像作家が舞台上でダンサーたちを撮り、それがライブで舞台後方のスクリーンに映し出されることぐらい。面白い試みではあるけど、舞台上に生身のダンサーがいると、後ろのスクリーンにはあまり目がいかなかったな。(2階後方から観ていたので、スクリーンの上の方がかなり見切れていたということもありますが)
小林ひかるさんが登場するイントロダクションの映像が流れたあと幕が開くと、舞台上にはピアノとハの字型にバーが置かれていて、バーレッスンがスタートします。
指示を出すのは、Program 4で新作を振り付けたベンジャミン・エラでした。
アメリカ勢は、皆はじめて観るダンサーだったので、クラスを観て予習。山田このみさんのクリアな動きが目立っていました。NYCBのタイラー・ペックも明るいオーラがあって引きつけられます。
金子扶生さんはやっぱり華があるなぁ。金子さんの肩から腕のラインが好きなのですが、基本的な動きも美しくてうっとり。五十嵐大地さんのキレのあるジャンプや回転も目を引きます。
大好きなムンタギロフはバーの最後尾、照明のあまり当たらないところで、しかも黒っぽいウェア。バーの間はほとんど見えなかった。マリアネラ・ヌニュスは自分の内側に深く集中している印象。
センターレッスンは徐々に盛り上がり、最後の方では、自然に拍手もおこっていました。
ステージ上のピアノで演奏された蛭崎あゆみさんのピアノも美しかった。右と左で曲を変えてくれていたようで、たくさんの曲が聴けたのも楽しかった。
第2部 The Masters(Program 1)
マリウス・プティパからアレクセイ・ラトマンスキーまで、7人の振付家による7つの作品。バランスのいい見応えのあるプログラムでした。『輝く英国ロイヤルバレエのスター達』のときと同様に、各演目の上演前にダンサーたちのインタビュー映像が流れるのも興味深かったです。
『7つのソナタ』より
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
振付:アレクセイ・ラトマンスキー
出演:山田ことみ、五十嵐大地
本来は3組の男女が踊るラトマンスキー作品から、ソロとデュエットの抜粋。
若手2人によるフレッシュで切れ味の良い踊りでした。
2人の踊りのムードは割とシリアスでしたが、振付はちょっとユーモラスな要素があるものでした。男性のジャンプの着地に2番プリエが多用されてたり。
『カルーセル』よりパ・ド・ドゥ
音楽:リチャード・ロジャース
振付:ケネス・マクミラン
出演:マヤラ・マグリ、マシュー・ボール
マクミラン最後の振付作品。ミュージカル作品『カルーセル』のリバイバル上演に際してマクミランが振り付けたデュエット、とのこと。
クラシックベースの振付ですが、全体の印象としては確かにミュージカル。少女ルイーズの恋模様がドラマティックに描かれます。少女はポアントではなくバレエシューズでした。
マヤラ・マグリの生命力に溢れた少女が見事。以前ローザンヌ国際バレエコンクールの展覧会で見た、10代のマヤラ・マグリの映像を思い出しました。
ちょっと不実な青年を演じるマシュー・ボールもよかった。やっぱり悪役で輝くな、マシュー・ボール!
2人のパートナーリングも素晴らしい。マクミラン特有の超絶難しそうなリフトやスローイングも、流れるようにスムーズでした。
『薔薇の精』より
音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー(エクトル・ヴェルリオーズ編曲)
振付:ミハイル・フォーキン
出演:ウィリアム・ブレイスウェル、山田ことみ
観る前はウィリアム・ブレイスウェルに『薔薇の精』のイメージは全くなかったのですが、予想外によかった。プリエの柔らかさやしなやかなポール・ド・ブラが美しかったです。
私の観る目がないんだと思いますが、「ウィリアム・ブレイスウェルの魅力が、いまひとつ掴めない」とずっ〜と思っていて。その分気になるダンサーでもあります。
『Who Cares?』より
音楽:ジョージ・ガーシュイン(ハーシー・ケイ編曲)
振付:ジョージ・バランシン
出演:タイラー・ペック、ローマン・メヒア
本家NYCBが踊るバランシン作品、最高でした。
エネルギーに溢れたタイラー・ペック、粋でかっこいいローマン・メヒア。2人とも、とにかくパワフルでスピーディー。超絶難しそうな振付を踊りながら、華やかでおしゃれなニュアンスを完璧に体現していて素晴らしかったです。
この作品、Youtubeでいろんなバレエ団が踊っているのを観ることができますが、NYCBの2人はやはり別格でした。
『葉は色あせて』より
音楽:アントニン・ドヴォルザーク
振付:アントニー・チューダー
出演:キャサリーン・ハーリン、アラン・ベル
キャサリーン・ハーリンは素晴らしいプロポーションのダンサーで、洗練されたラインが美しかった。
アラン・ベルは、どこかで見た顔と思ったら、映画『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』にでていた少年なんですね!
11歳のアラン・ベルくん。デニス・ガニオ(マチュー・ガニオのお父さん)に師事。
小柄だった少年は、長身でスタイルのいいダンサーに成長していました。現在24歳とのことですが、演目の印象も手伝ってか、もう少し落ち着いて大人っぽく見えた。
とても美しい2人の精緻な踊りは、この作品にとても合っていました。
『シンデレラ』よりパ・ド・ドゥ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:フレデリック・アシュトン
出演:金子扶生、ワディム・ムンタギロフ
シンデレラがポアントで階段を降りてくるところから始まるパ・ド・ドゥ。
ムンタギロフの王子が観られただけで満足。いつもながら、ノーブルで端正な踊り。白い上下に水色のサッシュの衣裳が似合い過ぎる。
金子扶生さんの輝きも素晴らしく、シンデレラにふさわしかったです。いつ観ても、ひとつひとつの動きの精度が本当に高い。
ムンタギロフのインスタグラムより。
でもムンタギロフって誰と組んでも、ちょっとだけ弟っぽく見えるな 笑。
『眠れる森の美女』よりローズ・アダージョ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:マリウス・プティパ
出演:マリアネラ・ヌニェス、ウィリアム・ブレイスウェル、マシュー・ボール、アラン・ベル、ローマン・メヒア
意表をつかれたのは、王子たちの衣裳。全員が白いシャツと黒いスラックスという出立ち。
4人一緒に出てきたときは、昼休みのサラリーマンかと思いました 笑。
シャツがなんかワイシャツっぽいんですよ、ノータイで1番上のボタンだけ開けてて。せめてウィングカラーとかのドレスシャツだったらいいのに。
まあ、サラリーマンと言っても、とんでもなくかっこいいサラリーマンですけどね。英米の美しいダンサー4人の共演、目の保養でした。
一瞬「オーロラの衣裳は?」と思ったけど、オーロラはスターンダードにピンクのチュチュ。
マリアネラ・ヌニュスの後光がさしているような堂々とした佇まいが圧巻。第1部のクラスで観た、求道者のような静かな姿とは全く違う。
見せ場である4人の王子たちの手を次々にとって、アチチュードバランスするところは、完全に自立していて王子のサポートなんて一切不用な感じ。
おわりに
2020年の『輝く英国ロイヤルバレエのスター達』のときも公演グッズが素敵だったのですが、今回も素敵で思わずトートバッグを購入してしまいました。チャコットとコラボのTシャツなんかも可愛かった。
ほかにも、パンフレットと配役表の紙の質感が揃っていたりと、細部まで小林ひかるさんのこだわりを感じる公演でした。
★最後までお読みいただきありがとうございました。