ballet addict

大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

「審査員」が語る!ローザンヌ・トーク〜島﨑徹×齊藤亜紀×加治屋百合子 参加レポート【Hearts for Artists/バレエのイベント】

f:id:logue5:20200105124208j:plain
ヒューストン・バレエ団プリンシパルの加治屋百合子さんが代表をつとめるアーティスト支援のプロジェクト〈Hearts for Artists〉(ハート・フォー・アーティスト)のオンラインイベント。プロジェクトは8月2日(日)までで一区切り。

頻繁に参加していたイベントが終了してしまい、ちょっとしたロス状態に…笑。気を取り直して、まだあげていない参加レポートがたくさんあるので、少しずつ記事にしていきます。

今回は7月19日(日)に開催された『「審査員」が語る!ローザンヌ・トーク~島﨑徹×齊藤亜紀×加治屋百合子』の参加レポートです。

ちょうど、コロナの影響で放送が遅れていた2020年ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝の放送が8月16日(日)15:00からNHK Eテレで放映になるタイミング。審査員目線でファイナルを鑑賞するのも楽しそうです。

〈Hearts for Artists〉のイベントの収益は公益基金《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。 今回もZoomウェビナーのシステムを利用したイベントで参加費用は1,000円でした。

*トークの言葉遣いなどは正確ではありません。およその内容としてご覧ください。

島﨑徹さん、齊藤亜紀さんのプロフィール

今回は加治屋百合子さんを含め、全員がローザンヌ国際バレエコンクールの審査員経験者。島崎徹さんはコンテンポラリー課題曲の振り付けを担当された経験もお持ちです。

齊藤亜紀さんのプロフィール

1991年 ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラーシップを受賞し、ベルギー王立アントワープバレエ学校に留学
1994年 ベルギー・ロイヤル・フランダースバレエ団にハーフソリストとして入団
1995年 ソリストに昇格
1998年 ファーストソリストに昇格
2004年 プリンシパルに昇格
2018年 現役を引退

現在はベルギー王立アントワープバレエ学校で後進の指導にあたる。
ローザンヌ国際バレエコンクールでは2002年、2003年、2007年、2017年と審査員を4回務めている。

島崎徹さんのプロフィール

1990年 SITTER SCHOOL OF DANCING(カナダ)のバレエ部門主任兼振付家に就任。 1998年 日本舞踊批評家協会新人賞受賞
1999年 ローザンヌ国際バレエコンクール審査員
2001年〜2003年 ローザンヌ国際バレエコンクールコンテンポンラリー課題曲の振付けを手がける
20011年 ローザンヌ国際バレエコンクール審査員
2011年〜2013年 ユースアメリカグランプリジャパン審査員

世界各国のバレエ団に振り付けるほか、宝塚歌劇団やミュージカルの振り付けも手がける。2005年度より神戸女学院大学音楽学部舞踊専攻教授。

 

齊藤亜紀さんと加治屋百合子さんは2010年に青山劇場で上演された「ローザンヌ・ガラ」で共演。そして島崎徹さんは、加治屋さんが出演した2013年の「ローザンヌ・ガラ」の芸術監督をされていました。

ローザンヌは特別なコンクール

ローザンヌ国際バレエコンクールはスイスのローザンヌで毎年開催される15歳から18歳までを対象とするコンクール。スイスの非営利団体が開催し、若手ダンサーの登竜門として知られています。

島崎さん「非常にクリーンなコンクール。出演者のことを第一に考えている」

斎藤さん「ローザンヌは本番で失敗しても大丈夫。たまたま失敗したのか、普段できていたのか、審査員には見えている。その日の出来だけを見てるわけではない」

非常にクリーンということはクリーンでないコンクールもあるということかな(笑)

単にその時の舞台の出来を競うのではなく、将来有望な子供を見出し、プロになるための環境を提供するという目的のはっきりしたコンクールがローザンヌ。その目的のために審査方法を絶えず更新させているということでした。

審査員は何を見ているのか?

出場者の将来性を見抜くには、審査員は何を見ているのか?気になるところです。

まず3人で話されていたのは、例えばクラシックが素晴らしくコンテンポラリーが良くない子の場合、ローザンヌなら帳尻合わせる。つまり(ファイナルで)クラシックを見たいからコンテにすごく悪い点はつけないということです。

斎藤さん曰く「その子をもう一度観たいか?」が何よりも大切ということ。

そして、グッドラーナーであるか(学べる子であるか)、目、受け答え、先生への反応、一週間での成長。また学校関係者からすると、自分の学校に入ってその子がハッピーでいる姿が描けるか

これは、レッスンでの審査がかなり重要になりそう。審査員は審査がない日のレッスンも見るそうです。

 

そしてやはり基礎は大切。

出場者のポテンシャルや伸び代はどこを見るのかという質問には、

斎藤さん「基礎は大切、体の条件をどう使っているか。人を惹きつける何か、音楽性など学んだものでない何か」

島崎さんからは「日本では舞台とバーレッスンが結びつかないことがある。ヨーロッパでは基礎と舞台は比例する」という指摘がありました。

日本では一つのバリエーションに取り組む期間が長く、バリエーションが素晴らしくても、初めての先生のクラスに対応できない出場者もいるそう。

 

そして現実的なアドバイスとしては「濃いメイクはしない!

加治屋さん「アジア勢はメイクも濃く、衣裳も派手すぎる」

その年齢ならではの良さが隠れてしまうようなメイクはしないことが重要なようです。

コンテンポラリーは何歳から?

ローザンヌの審査にコンテンポラリーダンスが加わったのは1999年から。現代のバレエダンサーにはクラッシックとコンテンポラリーの両方が求められるというのは異論がないところでしょうが、視聴者からの「コンテンポラリーは何歳からやらせるのがいいか」という質問にはおふたりの回答は別れていました。

 

島崎さん「バレエ団に入ってからでもいい。エクストリームなものは別かもしれないが、バレエ団のディレクターは自分のバレエ団にあうコンテンポラリー作品を買って来るもの。やりたいならやればいいし、もっと自由に体を動かすということをやってもいい。頭を柔らかくメンタルバリアを作らない人で、バレエがしっかり踊れていれば大丈夫」

 斎藤さん「国にもよる。ヨーロッパはコンテ、クラシック半々。(入団した時に)両方踊れる子の方が活躍できる」

 現実的には、コンテをやらないとローザンヌにも出られないわけなので、島崎さんの答えは「極端に言えば」ということなのでしょう。

ヨーロッパではクラシックとコンテンポラリーの境が曖昧で、よりコンテンポラリーが踊れることが重視される傾向にあるようです。アメリカの方がコンサバティブということでした。

コンテンポラリーへの比重が大きくなってきている理由としては、バレエ団の経済事情もあるとのこと。お金がかかるクラシックに比べ、オーケストラがいらない場合もあり、衣装もシンプルであることが多い

この傾向はコロナ禍でさらに加速するかもしれません。バレエ団の経済状況はますます苦しくなっており、感染を防ぎつつ公演をするためにも、大人数での大掛かりな作品はやりにくくなりそう

コンクールが舞踊を変えつつある

コンクール全盛時代の今、コンクールが舞踏を変えつつあるという話題も。

島崎さん「(踊りが)心ではなく目に訴えるものになってしまっている

「白鳥が何幕あるか知らずに、白鳥のバリエーションをやっている子がいる」

 

そして島崎さんが世界のバレエ団と仕事をする時、ダンサーが休憩中、世界共通で熱心に練習するパはピルエットだといいます。「ピルエットだけが数字に置き換えられるパだから」

なるほど~。コンクールの影響で、分かりやすい基準があるもので競いあう傾向が強くなっているということでしょうか。

さらに「テクニックが優れているのと、アートであるかどうかは別問題。こういう時期だからこそ本当のアートが必要、その場の空気が変わるということは映像ではわからない」というお話には深く納得。空気が変わる…わかりますね。コロナで舞台公演から遠ざかっている今、生の舞台が本当に恋しい。

これから求められるダンサーとは

これから求められるダンサー像については、

島崎さん「今ヨーロッパでは”リアルな人”を探していて、それが舞台の上でも求められている」

加治屋さん「”こうでないといけない”ではなく(それはもう古い)、自分の個性や自分がどんな人間なのか…アメリカン・バレエ・シアターに入った時、みんなが(目標として)ソロを踊りたいのだろうと思っていたが、違った。それぞれに自分なりのゴールを持っていて驚いた」

斎藤さん「10代なら10代の良さがある。現在の自分を受け入れることが大切。みんなが同じゴールを目指す必要はない」

 

作られた振る舞いは見抜かれてしまうこれからのダンサーには、作り物ではないリアルな個性が求められているということでしょう。

Hearts for Artists〉今後の予定

バレエチャンネルで【Hearts for Artists】のイベントのアーカイブ映像の有料配信がスタートしました!

27イベントのうち21イベントが配信されています。見逃したイベントもあるのでこれは嬉しい。また参加したイベントの映像を視聴する場合は割引クーポンが適用されます。

販売終了日は2020815日、視聴は購入日から1週間の期間限定ですのでお見逃しなく!

この有料配信の収益も《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。

balletchannel.jp

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》について

〈Hearts for Artists〉が寄付を行う《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》は、コロナ禍で大きな影響を受けた舞台芸術に携わるアーティスト・クリエーター・スタッフ(個人・団体・企業問わず)の今後の活動に向けた金銭的支援を目的として設立された基金です。

2020年8月25日までクラウドファンディングで寄付を募っています。一口3,000円から寄付が可能です。

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》https://www.butainomirai.org/

おわりに

ローザンヌ国際バレエコンクールのみならず、バレエという芸術の将来を見据えた熱のこもった議論が繰り広げられました。その時代に求められるダンサーを育成するために、常に審査方法を変化させているローザンヌ。今回のコロナ禍で、舞台芸術の置かれる状況も大きく変化しそうですが、ローザンヌもまた変わっていくのでしょうね。

また、島崎さんがあくまでもバレエは才能があり、選ばれた肉体が踊るものとしながらも、才能がない子供でもバレエをやる意味はあると言われていたのが印象的でした。自分でどうにかできる部分でやることをやる経験が、その子が何か才能のあるものに出会った時に生きてくると。

自分でどうにかできる部分でやることをやる全くレベルが違う話ではあるのですが(笑)大人バレエにおいても胸に刻んでおきたい言葉です。

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。

崔由姫×平田桃子×加治屋百合子バレリーナ・トーク 参加レポート【Hearts for Artists/バレエのイベント】

f:id:logue5:20200105124208j:plain
ヒューストン・バレエ団プリンシパルの加治屋百合子さんが代表をつとめるアーティスト支援のプロジェクト〈Hearts for Artists〉(ハート・フォー・アーティスト)のオンラインイベント。プロジェクトは8月2日(日)までで一区切りのため、ラストスパートでイベントが頻繁に開催されています。

今回は7月18日(土)に開催された「崔由姫×平田桃子×加治屋百合子 バレリーナ・トークの参加レポートです。

〈Hearts for Artists〉のイベントの収益は公益基金《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。今回もZoomウェビナーのシステムを利用したイベントで参加費用は1,000円

balletchannel.jp

*トークの言葉遣いなどは正確ではありません。およその内容としてご覧ください。

崔由姫、平田桃子 プロフィール

崔由姫 英国ロイヤル・バレエ団 ファースト・ソリスト

2002年 ローザンヌ国際バレエコンクールでプロ研修賞と現代舞踊賞受賞。英国ロイヤル・バレエ団の研修生となる

2003年 英国ロイヤル・バレエ団に正式入団した

2008年 ファースト・ソリストに昇格

平田桃子 バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 プリンシパル

2001年 ローザンヌ国際バレエコンクールでエスポワール賞を受賞し、ロイヤル・バレエ・スクールに留学
2003年 バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に入団
2010年 ファーストソリストに昇格
2012年 バルセロナ・バレエ団に移籍し、プリンシパルを務める
2013年 バーミンガム・ロイヤル・バレエ団にプリンシパルとして再入団

3人の出会いはニューヨーク

加治屋さんはアースカラーのプリント柄のトップス(ワンピースかな?)、平田さんは白いストライプのシャツ、崔由姫さんは白いブラウスで登場。イギリスとアメリカを結んでバレリーナ・トークがスタートしました。

平田桃子さんと崔由姫さんは、平田さんがロイヤル・バレエ・スクール3年生の時、崔由姫さんが英国ロイヤル・バレエ団に研修生として入ってきたのが出会い。

3人揃っての最初の出会いは、2004年ニューヨークで開催されたリンカーンセンター・フェスティバルの「アシュトン・セレヴレーション」というガラ公演にバーミンガム・ロイヤル・バレエ、英国ロイヤル・バレエ、Kバレエカンパニーが出演した際、加治屋さんが普段から受けているデヴィッド・ハワード(多くのダンサーを育てた名指導者)のクラスを出演者たちが受けにきた時。その時は吉田都さん、山本康介さん、平野亮一さんも一緒だったそう!すごいクラスですね。

ローザンヌ国際バレエコンクール 傾斜舞台の恐怖

3人はその後、青山劇場で上演された「ローザンヌ・ガラ」で共演して親しくなったと言います。そう、3人の共通点は、ローザンヌ国際バレエコンクールで入賞していること。それも2000年から2002年の3年間に続けて出場しています。

2000年 加治屋百合子さん スカラシップ賞→ナショナル・バレエ・オブ・カナダへ留学
2001年 平田桃子さん エスポワール賞 →ロイヤル・バレエ・スクールに留学
2002年 崔由姫さん プロ研修賞 コンテンポラリー賞 →英国ロイヤル・バレエ団で研修

平田さんはロイヤル・バレエ・スクールに入りたくてローザンヌに出場したそうですが、加治屋さんも実はロイヤル・バレエ・スクールが希望だったとのこと。しかし、その年のロイヤル・バレエ・スクールは女子が多く、女子はひとりしか受け入れられないと言われたことから、ナショナル・バレエ・オブ・カナダへ。同じコンクールで入賞しても、いろんなタイミングで人生は変わっていくものですね。

「ローザンヌは緊張しましたか?」という質問に対しては、
崔由姫さん「一週間クラスなどを受けて出場者みんなと過ごすので、コンクールっていう感じはしなかった。でも決勝は緊張した。坂のステージになれなくて、準決勝の前に2回転んでトラウマになってて」。平田さんは「日本のコンクールに出ていたから、逆にクラスの審査とかが緊張した」とのこと。
崔由姫さんが転んだというローザンヌ ボーリュ劇場の傾斜舞台の怖さは想像以上ようで、加治屋さんによると「マネージュの時は山登り。登ったと思ったら下りる感じ(笑)」。平田さんも黒鳥のバリエーションは怖くて目をつぶって回っていたとおっしゃっていました。(目をつぶるのも怖そうですが!)観ているぶんにはそこまでの傾斜にみえませんが、実際に舞台に立つ方にとってはかなりの傾斜のようです。

加治屋さんが2000年のローザンヌで踊ったジゼル。3:25あたりからです。後半のマネージュに注目。

www.youtube.com


一度はモニカ・メイソンに断られる!

 

「オーディションの経験は?」という質問の答えからは、崔由姫さんの英国ロイヤル・バレエ入団のエピソードが明らかに。

崔由姫さんは英国ロイヤル・バレエ団研修中にモニカ・メイソン(当時の芸術監督)に入団したいと言ったら断られ、他のバレエ団のオーディションを受けることに。モンテカルロ・バレエ団のオープンオーディションを受ける前日に、モニカに「気が変わったから入団しないか」と言われたそう!(実際は何か事情が変わったのでしょうが…)「オーディションは経験として受けてみなさい」と言われ、受けに行ったそうです。

一方平田さんはロイヤル・バレエ・スクール3年生でそろそろオーディションという時期に、デヴィッド・ビントレー(当時のバーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督)がクラスを見にきて入団のオファーがあったため、オーディションは受けなかったとのこと。

ちなみに英国ロイヤル・バレエ団やバーミンガム・ロイヤル・バレエでは、履歴書での審査をパスした人が、カンパニークラスに2、3日から1週間ぐらい参加するのがオーディション。そこではバレエ団のダンサーたちと馴染めるかがみられているとのことでした。

 通じるものがあるパートーナーは貴重

「パートナーの男性によって舞台の緊張が変わるか?」という質問に対しては、3人揃って「変わる!」と回答。
加治屋さん「仕事だけど、やっぱり相性もある。(ふたりの相性が)あっている時はこれ以上のものはないと思う。ひとりで踊るよりいい」
崔由姫さん「相手を信じることが大切」
平田さん「サポートという面だけではなく、舞台の上で会話ができるような、通じるものがあるのは本当に貴重なパートナー」

平田さんは、2018年のバーミンガム・ロイヤルバレエの来日公演で共演したマチアス・エイマン(パリ・オペラ座 エトワール)について聞かれると「上手なだけではなく、人間的にもとてもいい人で、食事に行くなど仲良くなった」といい、加治屋さんは「スタジオの外でも仲良くなると信頼感が増すよね」と話されていました。

 バランシンはハード!

「印象に残っている役、気に入ってる役や作品は?」という質問に対しては、

崔由姫さん「初めて踊った全幕の主役。バヤデールのニキヤ。セルゲイ・ポルーニンと一緒にデビューだったし。ナターシャ(ナタリア・マカロワ)が1ヶ月指導してくれた。本番でも2幕と3幕の間もダメ出しされた(笑)」
一方、「アシュトン作品が一番自分に合っている気がする。音の取り方も好き」とも話していました。

平田さん「(マクミラン版の)ジュリエットを初めてやった時。”踊った”という感覚がなかった。その人を生きるというか。実際に役をやるまではすごく『ロミオとジュリエット』がやりたかったわけではなかったけど、経験してから作品に対する見方が変わった」

平田さんはさらに「普段マクミランなどを中心にやっているなかで時々バランシンをやると大変!体の使い方が全然違う」
崔由姫さんも「バランシンは体力的にも大変。ロイヤルは”コンパクト”にするけど、バランシンは”解放する”踊り。メソッドの違いもある」

そこで話は「大変だったバランシン作品」に。
崔由姫さん「『シンフォニー in C』の第3!(『ジュエルズ』の)ルビーもだけど」
加治屋さん「第2、第3やったことある。第3はみんな舞台袖で伸びてる(笑)」
平田さん「『テーマとバリエーション』も。コーダの時は意識がない(笑)立っているかどうか感覚がなくなる」
流麗で躍動感あふれる『シンフォニー in C』や『テーマとバリエーション』。観ているぶんには爽快そのものですが、ダンサーの皆さんは気を失いそうなほどキツいということがよくわかりました(笑)

 

他にも舞台での失敗談やポアントのブランドやレオタード、趣味の話など、なかなか話は尽きませんでしたが、バレリーナ・トークは予定時間を40分ほどオーバーして終了。加治屋さんも「会いたいね。女子会したい!」と名残惜しそうでした。

Hearts for Artists〉今後の予定

今後はオンライントークやオンラインレッスンが8月2日(日)まで続く予定です。

レポートが全く追いついていませんが、7月25日(土)に開催された小野絢子さんとのトークの最後に、これから登場するダンサーの名前が告知されました。

すでに告知されているのはこちらのイベント↓

近藤亜香さん(オーストラリア・バレエ団)飯島望未さん(ヒューストン・バレエ) 大久保 沙耶さん(オランダ国立バレエ団)と加治屋百合子さんのバレリーナ・トーク!

balletchannel.jp

 さらに日程はまだ明らかになっていませんが、再登場の川崎章広さんによるトレーニング・レッスンや、池田武志さん(スターダンサーズ・バレエ団)大谷遥陽さん(スペイン国立ダンスカンパニー)西島勇人さん(ブライト・ステップ代表/ポーランド国立ポズナン歌劇場バレエ団)アクリ瑠嘉さん(英国ロイヤルバレエ)、金子扶生さん(英国ロイヤルバレエ)のお名前も!最終日には加治屋百合子さんご本人のレッスンやトークが開催されるようです。

 

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》について

〈Hearts for Artists〉が寄付を行う《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》は、コロナ禍で大きな影響を受けた舞台芸術に携わるアーティスト・クリエーター・スタッフ(個人・団体・企業問わず)の今後の活動に向けた金銭的支援を目的として設立された基金です。

2020年8月25日までクラウドファンディングで寄付を募っています。一口3,000円から寄付が可能です。

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》https://www.butainomirai.org/

おわりに

前回に引き続き、3人の仲の良さが伝わってくる和やかな対談でした。平田さんが「みんながバレエ団で活躍しているのを見ると心強い」と話していましたが、それぞれの活躍が励みになる存在っていいですね。

もともと崔由姫さんの踊りのファンなのですが、チャーミングで率直でちょっと天然な(笑)キャラクターが伝わってきてますます好きになりました。

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。

平野亮一×菊地研×厚地康雄×加治屋百合子 同世代!ダンサーズ・トーク 参加レポート【Hearts for Artists/バレエのイベント】

f:id:logue5:20200105124208j:plain
ヒューストン・バレエ団プリンシパルの加治屋百合子さんが代表をつとめるアーティスト支援のプロジェクト〈Hearts for Artists〉(ハート・フォー・アーティスト)のバレエダンサートークイベント。

今回は7月15日(水)に開催された「平野亮一×菊地研×厚地康雄×加治屋百合子 同世代!ダンサーズ・トークの参加レポートです。

〈Hearts for Artists〉のイベントの収益は公益基金《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》に寄付されます。今回もZoomウェビナーのシステムを利用したイベントで参加費用は1,000円でした。

balletchannel.jp

*トークの言葉遣いなどは正確ではありません。およその内容としてご覧ください。

平野亮一×菊地研×厚地康雄 プロフィール

平野亮一 英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル

2001年:ローザンヌ国際バレエコンクールでプロフェッショナルスカラーシップ賞を受賞し、研修生として英国ロイヤル・バレエ団へ入団
2002年:英国ロイヤル・バレエ団に正式入団
2012年:ファーストソリストに昇格

2016年:プリンシパルに昇格

菊池研 牧阿佐美バレヱ団 プリンシパル

2001年:牧阿佐美バレヱ団入団。入団後ローラン・プティ「デューク・エリントン・バレエ」のソリストに抜擢される。同年ボリショイ・バレエ学校に短期留学

2003年:「くるみ割り人形」王子役で初の主役をつとめる

2004年:プティの指名により、パリ・リヨン・ボルドー・モスクワで上演された、ローラン・プティのガラ公演に、ただ一人の日本人として参加。

現在は牧阿佐美バレヱ団プリンシパルとして活躍。

厚地康雄  バーミンガム・ロイヤルバレエ団プリンシパル

2003年:英国ロイヤル・バレエ学校に入学。

2006年:バーミンガム・ロイヤルバレエ団に入団。

2010年:新国立劇場バレエ団に移籍

2013年:バーミンガム・ロイヤルバレエ団にファースト・アーティストとして再入団

2017年:ファースト・ソリストに昇格

2018年:プリンシパルに昇格

厚地さんの女優ライト?

今回のトークは加治屋さんがヒューストン、菊池さん厚地さんが日本、平野さんはロンドンから参加。加治屋さんは白黒のギンガムチェックのトップス(ワンピース?)、厚地さんは白いポロシャツ、菊池さんは白いボタンダウンシャツ、平野さんは「ROCKET…(2行目は画面から切れて読めず)」と書いてあるネイビーのTシャツ姿。

前回の加治屋さんとのトークで平野さんが宇宙オタクであることが判明しましたが、このTシャツも宇宙絡みの一枚でしょうか。

 前回対談で、平野さんはNASAのTシャツを着用!↓

www.balletaddict.com

 はじめのご挨拶のところで、みんなに「顔が赤い」と指摘される厚地さん。「実は…」と、顔にスタンドのライトを当てていたことを明かしていました!「少しでもよく見えるように」と話す厚地さん、並の女子より女子力が高いです(笑)みんなに消した方が自然と指摘され、スタンドの電気を消して対談がスタート!

 

4人の出会いやエピソード

3人と加治屋さんとのつながりは、菊池さんは今回がはじめまして。平野さんと厚地さんとの出会いは「ローザンヌ・ガラ」。

Hearts for Artists〉のイベントで加治屋さんとゲストダンサーとの繋がりを聞くと「ローザンヌ・ガラ」がとても貴重な機会だったことがわかります。「ローザンヌ・ガラ」は今はなき青山劇場で2004年から2013年まで4回開催された、ローザンヌ国際コンクールの歴代入賞者によるガラ公演。2010年の「ローザンヌ・ガラ」には平野さんと加治屋さん、2013年には平野さん、厚地さん、加治屋さんが出演しています。

お互いについてのエピソードでは、平野さんは「(10代のころコンクールでよく一緒になっていた)研ちゃんの家に泊まりにいったのを覚えている」「引っ越した新しい家に遊びにきて、はじめて吐く人はやっくん(厚地さん)(笑)」。

厚地さんは菊池さんと福島の公演で一緒だったとき、打ち上げで菊池さんに白いTシャツに凍ったブルーベリーを投げつけられたあと、Tシャツを破かれた(!)ことを話していました。この3人にはお酒がらみのエピソードがたくさんありそうです(笑)

20代と比べバレエへの取り組み方は変化したか?

30代半ばのみなさん、ちなみに年齢は、平野さん>菊池さん=加治屋さん>厚地さん。キャリアを重ねてバレエへの取り組みは変わってきているのでしょうか?

厚地さん「責任感、一つ一つの舞台の重みが違う。以前よりよく練習するようになった。下から上がってくる若い人も納得するプリンシパルでないと」

菊池さん「20代はキャリア以上に構えすぎてた。重圧の捉え方が変わり、今の方が楽しい。」

加治屋さん「20代はとにかく認めてもらおうと余裕がなかった。リハーサルから150%力を出すとか」

平野さん「やはり20代とは体力が違う。今はリハーサルが全てじゃないことがわかり、(リハーサルで)疲れすぎても影響がでる。自分のペースで今日できる限りの事を精一杯するように。視野が広くなった」

長く踊り続けるためにやった方がいいことという質問には、平野さんが足腰の筋力トレーニング、特に男性はジャンプやリフトがあるので」とおっしゃっていました。

バレエをやめたい9歳の男の子へのアドバイス

バレエをやめたいと言っている9歳の男の子のお母さんからの質問に対しての3人の答えからは、男の子がバレエを続けるための重要な条件が明らかに!

お兄さんの平野啓一さん(元ナショナル・バレエ・オブ・カナダ ファースト・ソリスト)と一緒にバレエをやっていた平野さん自身はやめたいと思ったことはないとのこと。

5歳でバレエをはじめた厚地さんは、「男の子が一人でつまらなかった。中学で一度やめたのち、お教室の先生に一公演だけと頼まれて戻ったら同年代の男の子がいて急に楽しくなった」と話されていました。

菊池さんのバレエ教室には八幡顕光さんがすぐ後に入ってきたし、4歳上ぐらいのお兄さんたちがいたとのこと。

バレエ男子人口は以前より増加しているとはいえ、普通のバレエ教室ではまだまだ「自分以外に男の子がいたらラッキーな環境」。自分以外に男の子がいるかどうかは、男の子がバレエを楽しく感じられるかどうかの重要なポイントのようです。加治屋さんも男の子のお母さんに、ワークショップなど友達と知り合う機会があればいいかも、とアドバイスされていました。

また厚地さんいわく、「男性ダンサー同士はすぐ仲良くなる」。それを聞いて「女性の方がバチバチがあるかも」と加治屋さん。菊池さんも「言葉がわからなくてもすぐに仲良くなり、難しい技を一緒に練習したりする」とボリショイ留学を振りかえっていました。

好きな役、好きな作品は?

厚地さんは『ロミオとジュリエット』(マクミラン版)のロミオ。『じゃじゃ馬馴らし』(クランコ版)。

菊池さんは、ローラン・プティ振付『ノートルダム・ド・パリ』のカジモド。視聴者からも「やっぱり菊池研さんといえばカジモド」というコメントが。

平野さんははじめは『マノン』のレスコーの酔っ払うところが得意と話されましたが、忘れられない公演として、ロサンゼルスツアーの『マイヤリング(うたかたの恋)』の主演(ルドルフ皇太子)をあげました。ずっとライバルでもあり、背中を見てきたお兄さんの平野啓一さん(カルガリー在住)にロイヤルで主演をやっているところを初めて観てもらったことがとても嬉しかったとのこと。

その時の心情を平野さん自身がつづっている記事↓

www.absolute-london.co.uk

しかし、この話のあとに平野さんは厚地さんだけに「おれ、いい話したやろ」とダイレクト・メッセージを送っていたことが判明(笑)!照れ臭かったのかもしれませんね。

最後はビールで乾杯!

二日酔いで踊れなくなることは?」という質問に、平野さん、厚地さん、アクリ瑠嘉さんの3人で飲んだ時のエピソードが披露されました。厚地さんは翌日バーミンガム・ロイヤルのガラでパ・ド・ドゥだけを踊る予定でしたが、ひどい二日酔いで受ける予定の英国ロイヤル・バレエでのクラスレッスンに遅刻。一方、平野さんは翌日ロイヤルの公演で『マノン』全幕のレスコーを踊ったそうです!「酔った人の演技を予行演習した」とのことでした(笑)

こうして話は尽きず(ほとんど恒例になっていますが)トークは予定時間を大幅オーバー。 お酒の話題が多かった今回のトークにふさわしく(笑)、最後はそれぞれがビールを取りに行き(加治屋さんだけは朝なのでジュース)乾杯!でしめくくられました。

ちなみにzoomウェビナーでは、トーク中に視聴者がチャットで質問を書き込めるようになっていて、多くはトーク中に回答されます。さらに今回は答えきれない質問に平野さんがトークをしながら、自らチャットで回答されていました!(その回答によると平野さんのよく飲むお酒はビール、ワイン、ウィスキー、シャンパンとのこと(笑))

 

Hearts for Artists〉今後の予定

今後もトークやオンラインレッスンが8月上旬まで続く予定です。

7月23日(木・祝)から26日(日)までの4連休には、久々のオンラインレッスンも含めて、4日連続、5イベント開催!岩田守弘さん小野絢子さんも登場します。

トーク中に加治屋さんが厚地さん経由で英国ロイヤル・バレエ団のアクリ瑠嘉さんにも連絡していると話されていたので、今後の登場もある…かも?

 

balletchannel.jp

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》について

〈Hearts for Artists〉が寄付を行う《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》は、コロナ禍で大きな影響を受けた舞台芸術に携わるアーティスト・クリエーター・スタッフ(個人・団体・企業問わず)の今後の活動に向けた金銭的支援を目的として設立された基金です。

2020年8月25日までクラウドファンディングで寄付を募っています。一口3,000円から寄付が可能です。

《舞台芸術を未来に繋ぐ基金》https://www.butainomirai.org/

おわりに

トークの中でも男性ダンサー同士はすぐに仲がよくなるという話が出ていましたが、3人の中の良さが伝わるダンサーズ・トークでした。今まで参加したトークの中では一番リラックスした雰囲気だったかも。途中で平野さんがトイレに立つという一幕も(笑)豪快な平野さん、気遣いの菊池さん、いじられキャラの厚地さんという3人の個性がよくわかり、楽しかったです!

8月上旬まで続く〈Hearts for Artists〉のイベント。参加することが、すっかり生活の一部になっています。終わったら寂しくなってしまいそう…

 

 

 ★最後までお読みいただきありがとうございました。