お正月の恒例のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサート。1月1日に発生した能登半島の地震によりNHKの生中継は中止になりましたが、1月6日(土)に録画中継で放送されました。
注目のウィーン国立バレエ団によるバレエシーンは2曲。2年ぶりに日本人のファースト・ソリスト(最高位)木本全優さんも出演しました。
*トップの写真:splash:Providence Doucet撮影
2023年のニューイヤーコンサートの感想はこちら↓
ウェーン・フィル ニューイヤーコンサート2024
毎年1月1日ウィーン楽友協会大ホールで開催されるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサート。美しい会場のお花の装飾も毎年楽しみしていますが、今年のテーマカラーは華やかなピンクでした。
今年の指揮者はドイツのクリスティアン・ティーレマン。2019年に続いて2回目の登場です。
NHKの現地特設スタジオのゲストは作曲家久石譲さんと、ウィーン・フィル楽団員のへーデンボルク直樹さん。ニューイヤーコンサートではお馴染みのへーデンボルク兄弟ですが、今年のスタジオゲストは次男の直樹さん、コンサートで演奏していたのはお兄さんの和樹さん(髭とキャラが濃いほうが和樹さん)でした。
今年は15曲中(アンコール曲はのぞく)8曲が初登場曲とのこと。今年生誕200年を迎えるブルックナーの作品が初登場したのも話題でした。
例年通り、途中に1回休憩を挟んだ2部構成。後半に短い曲が多く、前半に5曲、後半に10曲が演奏されました。幕開けの晴れやかな「アルブレヒト大公行進曲」から、締めくくりのドラマティックなワルツ「うわごと」まで、プログラム全体の流れが見事で、あっという間に時間が過ぎました。
演奏曲一覧は、日本ヨハン・シュトラウス協会のページを貼っておきます。
日本ヨハン・シュトラウス協会ホームページより 演奏曲目一覧
ダニエル・フロシャウアー楽団長から、日本へのメッセージ
前半と後半の間の休憩時間には、今年もダニエル・フロシャウアー楽団長が特設スタジオに登場。大きな地震に見舞われた日本を慮り、「今年の『美しき青きドナウ』は日本の皆様に捧げます」とコメントされていました。『美しき青きドナウ』はもともと、敗戦で打ちひしがれた人々を励ますために生まれた曲。ダニエル・フロシャウアー楽団長のメッセージと、美しい演奏が心に沁みました。
また「美しき青きドナウ」の演奏前の指揮者クリスティアン・ティーレマンからの新年の挨拶は、戦争が続く世界の平和に向けてのメッセージが込められたものでした。
バレエ「イベリアの真珠」?
注目したのは、ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世作曲の”バレエ「イベリアの真珠」から「学生音楽隊のポルカ」”。ピチカートを多用した短くて可愛らしい曲でした。
今回ティーレマンはピチカートが使われている作品を希望していたようで、この曲のひとつ前の曲も、ヨハン・シュトラウス2世の「新ピチカート・ポルカ」でした。
バレエ「イベリアの真珠」…どんなバレエだろう?と興味が湧きます。検索しても、AIにきいてみても、スペインを舞台にしたバレエ作品ということと、楽曲の情報が少し出てくるだけで詳細はわかりませんでした。(「イベリアの真珠」で検索するとなぜか、バレエ「パキータ」の情報が表示されます。同じスペインを舞台にしているからでしょうか…?)
昨年もヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世作曲の ”バレエ「エクセルシオール」から 「グロッケン・ポルカとギャロップ」”という曲が演奏されていて、そちらもピチカートを用いた曲でした。
ウィーン国立バレエ団によるバレエシーンは全2曲
今年のバレエシーンは全2曲。後半2曲目「イシュルのワルツ」と後半7曲目のワルツ「ウィーン市民」。木本全優さんは「ウィーン市民」に出演していました。
2曲とも振付はダヴィデ・ボンバナ(Davide Bombana)、衣装はスザンヌ・ビゾフスキ(Susanne Bisovsky)。
ダヴィデ・ボンバナは、多くのバレエ団に作品を提供しているイタリアの振付家。ホームページを見ると2012年、2015年、2018年、にもニューイヤーコンサートのバレエシーンの振付を行っています。当時のウィーン国立バレエ団の芸術監督はマニュエル・ルグリです。
ダヴィデ・ボンバナの振付作品の紹介ページ↓
ダヴィデ・ボンバナの振付作品、ウィーン国立バレエ団の『ロミオとジュリエット』。こちらもマニュエル・ルグリ芸術監督時代の作品です。
この映像のロミオは木本全優さんですね!
イシュルのワルツ 遺作ワルツ 第2番
作曲: ヨハン・シュトラウス2世
振付:ダヴィデ・ボンバナ
衣装:スザンヌ・ビゾフスキ
撮影場所:カイザー・ヴィラ(皇帝の別荘)、アルモルシュロスル(大理石の城)
出演:Ketevan Papava、Eno Peçi
オーストリア随一のリゾート地バート・イシュルが「欧州文化首都」に選ばれたことからの選曲。
風光明媚なバート・イシュルに建てられたフランツ・ヨーゼフ1世の夏の別荘、カイザー・ヴィラがバレエシーンの舞台でした。
ティアラを被った水色と黒のドレスの女性(Ketevan Papava)のカイザー・ヴィラ室内の踊りからスタート。美しい背景とは裏腹に苦悩を感じさせる振付。振り付けはがっつりコンテンポラリーです。
場面は変わって、草原で溌剌と踊る女性(Ketevan Papava 2役)が、男性(Eno Peçi)にアルモルシュロスルへと誘われます。室内で親密に踊るふたり。最後はもう一度はじめの女性が登場し、一度外したティアラを被り直し、何かに決別するようにカイザー・ヴィラの扉を閉めるシーンで終わります。
これはやはりフランツ・ヨーゼフ1世の妻エリザベートの物語でしょうか?回想シーンかと思われる男女のデュエットの舞台であるアルモルシュロスル(大理石の城)は、フランツ・ヨーゼフ1世がエリザベートに贈ったカイザー・ヴィラの丘の上の小さな宮殿とのこと。デュエット終わりの男性の冷たい表情も気になる…。
Ketevan Papavaのムードの異なる2役の演じ分けが見事でした。
個人的には今回のスザンヌ・ビゾフスキデザインの女性ダンサーの衣装がツボでした!
ドーム型のふんわりしたチュチュ、パフスリーブ、花柄、レースといった可愛らしくクラシカルな要素満載なのに、どこか前衛的で新しい。
スザンヌ・ビゾフスキのインスタグラムより。1曲目のこの衣装はとりわけ美しかった。
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調べてみると、スザンヌ・ビゾフスキはウィーンにサロンを持つファッションデザイナーのよう。
オンラインショップには、ロマンチックなドレスがたくさん!
一方、男性の衣装は1曲目、2曲目ともに、黒いタイツと袖なしのぴったりしたトップス。キラキラしたラメのような素材で胸元にスカーフ(1曲目)とかボウタイ(2曲目)のような装飾はあるものの、非常にシンプル。女性を引き立てるための衣装ですね。
ワルツ「ウィーンの市民」 作品419
作曲: カール・ミヒャエル・ツィーラー
振付:ダヴィデ・ボンバナ
衣装:スザンヌ・ビゾフスキ
撮影場所:ローゼンブルク城
出演:Olga Esina、Brendan Saye
Ketevan Papava、Hyo-jung Kang 、Ioanna Avraam、Elena Bottaro
木本全優、Eno Peçi、Török Zsolt、Giorgio Fourés
薔薇の庭園で知られるローゼンブルク城が舞台。
1曲目と違って複雑なストーリーはなさそうで、5組の男女の恋の駆け引きといったムードでした。振付はコンテンポラリーですが、1曲目に比べると若干クラシック寄りな感じ。
男女ともに均整の取れたスタイルのダンサー揃い。特に男性はぴったりした衣装なので体型が目立ちましたが、あんな中途半端な丈のタイツを履いてスタイル悪く見えないのはさすが 笑。鍛え上げられた上半身としなやかな脚の持ち主ばかりで、揃いも揃ってラインが美しかった。
昨年と比べるとけっこう出演者は入れ替わっていて、男性は総入れ替えのようです。
木本全優さんは5人の男性の中ではちょっとやんちゃな役回りという感じ。踊りは相変わらず素晴らしかったです。クリアでシャープなテクニック、足先まで美しいフォルムに惹きつけられました。
木本全優さんのインスタグラムより。
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衣装デザイナを担当したスザンヌ・ビゾフスキのインスタグラムより。2曲目の中心的なダンサーだったOlga Esinaの衣装。
たくさん投稿されている、ニューイヤーコンサートの写真がどれも可愛い。
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ちなみに、ニューイヤーコンサートのバレエシーンでは、いつも屋外や硬そうな床の室内で踊るダンサーの足元が気になるのですが、この曲の屋外シーンでは、地面の上にグレーのシート(リノリウム?)のようなものが敷いてありました。
おわりに
ウィーン国立バレエ団の現芸術監マーティン・シュレップァーは5年の任期で退任し、2025年秋からアレッサンドラ・フェリが芸術監督に就任することが発表されています。アレッサンドラ・フェリ自身が采配をふるうニューイヤーコンサートはまだ少し先になりますが、どんなバレエシーンを届けてくれるのか、今から楽しみです。
ニューイヤーコンサート2024年のブルーレイディスク↓
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