6月19日(金)から6月25日(木)まで上映中の英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/2020『眠れる森の美女』を観てきました。
ローレン・カスバートソンが怪我で急遽降板し、ファーストソリストの金子扶生さんがオーロラを演じた今年1月の舞台の収録です。
TOHOシネマズシャンテでは、1日2回の上映。先週同じく英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/2020の『ドンキ・ホーテ』を観た時は、コロナ禍の影響でチケットは当日販売のみでしたが、今回はオンラインでのチケット販売は2日前からと、通常通りに戻っていました。ひとつの席の前後左右は空けた状態での販売で、週末の午後の回で入場者は20人ほどでした。映画館の入り口では、体温チェック(非接触式の体温計の設置あり)があります。
上映館はこちら↓
眠れる森の美女 | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/2020の『ドンキ・ホーテ』(2018/2019の再上演)の鑑賞レポートはこちら↓
『眠れる森の美女』公演概要
【振付】マリウス・プティパ
【追加振付】フレデリック・アシュトン、アンソニー・ダウエル、クリストファー・ウィールドン
【プロダクション】モニカ・メイソン(ニネット・ド・ヴァロワとニコライ・セルゲイエフに基づく)
【美術】オリバー・メッセル【デザイン追加】ピーター・ファーマー
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【指揮】サイモン・ヒューイット
【キャスト】
オーロラ姫:金子扶生
フロリムント王子:フェデリコ・ボネッリ
国王フロレスタン24世: クリストファー・サウンダーズ
お妃: エリザベス・マクゴリアン
カタラビュット:トーマス・ホワイトヘッド
カラボス:クリステン・マクナリー
英国の王子:ギャリー・エイヴィス
フランスの王子:ニコル・エドモンズ
インドの王子:デヴィッド・ドネリー
ロシアの王子:トーマス・モック
伯爵夫人:クリスティーナ・アレスティス
フロレスタン:ジェームズ・ヘイ
フロレスタンの姉妹:マヤラ・マグリ、アナ・ローズ・オサリヴァン
長靴を履いた猫:ポール・ケイ
白猫:レティシア・ストック
フロリナ姫:ヤスミン・ナグディ
青い鳥:マシュー・ボール
赤ずきん:ロマニー・パイダク
狼:ニコル・エドモンズ
澄んだ泉の精: ロマニー・パイダク・お付きの騎士:アクリ瑠嘉
魔法の庭の精: マヤラ・マグリ・お付きの騎士: ヴァレンティノ・ズケッティ
森の草地の精: クレア・カルヴァート・お付きの騎士:カルヴィン・リチャードソン
歌鳥の精: アナ・ローズ・オサリヴァン・お付きの騎士: ジェームズ・ヘイ
黄金のつる草の精: 崔 由姫・お付きの騎士: セザール・コラレス
リラの精:ジーナ・ストーム=ジェンセン・お付きの騎士:ニコル・エドモンズ
英国ロイヤル・バレエの歴史とともにある『眠れる森の美女』
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマの恒例とも言える、芸術監督のケヴィン・オヘアの冒頭インタビューでは、「『眠れる森の美女』は英国ロイヤル・バレエを世に知らしめた作品」と表現していました。第二次世界大戦後の1946年、英国ロイヤル・バレエ(当時の名称はサドラーズ・ウェルズ・バレエ団)がはじめて英国ロイヤル・オペラ・ハウスで行った公演が『眠れる森の美女』。
収録版は英国ロイヤル・バレエ団の創立者であるニネット・ド・ヴァロワによる初演を忠実に再現したといわれるモニカ・メイソン(元英国ロイヤル・バレエ芸術監督)によるプロダクションです。幕間のインタビューでも、モニカ・メイソンが登場。衣裳やセットも当時の雰囲気を再現していて、豪奢でクラシカル。全体に暗めの色調で装飾的です。初演当時は第二次世界大戦後の物資のない時代で、衣裳の袖口のレースには紙ナプキンを用いるなど、使えるものはなんでも使ったとのことでした。
プティパの振り付けに、フレデリック・アシュトン、アンソニー・ダウエル、クリストファー・ウィールドンという英国ロイヤル・バレエの歴史を象徴するような3人が追加振り付けを行っています。
花のような金子扶生さんのオーロラ
ローレン・カスバートソンの怪我により、急遽代役でオーロラ姫を踊ることになった金子扶生さん。当初、この公演ではリラの精を踊る予定でした。オーロラ役は2019年11月にデビューしていたものの、並み居るプリンシパルを抑えて、ファーストソリストの金子扶生さんの抜擢は異例のものだったと想像されます。24公演の最終日、さらに世界の多くの国に配信されるシネマの収録日…
プレッシャーはいかばかりだったかと思いますが、金子さんは見事に「オーロラ姫」でした。
オーロラ登場直後のローズ・アダージオ。4人の王子の手をとっての、アチチュード・バランス。1回目はさすがに硬さがあり、金子さんの緊張が見ているこちらにも伝わってくる感じでしたが、終盤の再度のアチチュード・バランスでは徐々に落ち着いてバランスが整い、最後には大きな拍手が。舞台も客席も彼女を応援しているような暖かさを感じました。
オーロラ姫のようなおとぎ話の登場人物は、内面を掘り下げたり、感情を表現したりではなく、ただオーロラ姫としてそこに存在することが求められていると思うのですが、金子扶生さんは、初々しい1幕、幻想的な2幕、高貴な3幕と、まさに輝くオーロラ。ラインの美しさ、端正さ、特にデコルテ、肩から首にかけての線に惚れ惚れしました。
重圧に負けず見事に踊りきり、最後のカーテンコールでの金子扶生さんの晴れ晴れとした笑顔に、思わず涙が…。金子さんのオーロラの指導を行い、シネマの中継の司会をしていたダーシー・バッセルも最後に感激のあまり「泣きそうです」と言っていました。
こちらは昨年のワールド・バレエ・ディに公開された金子さんのローズ・アダージオのリハーサル。ダーシー・バッセルとケヴィン・オヘアが指導を行っています。↓
こちらはリラの精のリハーサル。リラの精も金子さんのはまり役。
プリンシパルが脇を固める豪華配役
演目によっては地味に見えてしまうこともある(笑)フェデリコ・ボネッリのノーブルな踊りは、フロリムント王子にぴったり。金子さんをしっかりとサポートしていました。
フロリナ姫&青い鳥をヤスミン・ナグディとマシュー・ボールの豪華プリンシパルペアで見られるのも得した気分です。マシュー・ボールはフロリムント王子より青い鳥の方が似合うかも。
またクリステン・マクナリーのカラボスもよかった!見た目もぴったり(笑)この版のカラボスの子分はなぜかネズミ。一瞬「くるみ割り人形」っぽいのですが、ネズミたちの引く馬車に乗って登場するクリステンがかっこいい。
金子扶生さんの代わりにリラの精を演じたジーナ・ストーム=ジェンセンも大柄で美しいダンサー。存在感がありました。レティシア・ストックの白猫もキュートでした。
おわりに
久しぶりに『眠れる森の美女』の豪華な世界に浸ることができました。
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/2020、次回のバレエ作品上映はまだスケジュール未定ですが、『ザ・チェリスト』『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』が予定されています。
『ザ・チェリスト』は、少し前に英国ロイヤル・オペラ・ハウスの公式チャンネルで特別無料配信されていましたね。夭折の天才チェリスト ジャクリーヌ・デュ・プレの生涯を描いた素晴らしい作品でした。大きなスクリーンで観るのが楽しみです
こちらはマリネラ・ヌニュスとヴァディム・ムンタギロフのペア↓
*最新上映情報は公式サイトでお確かめください。
★最後までお読みいただき、ありがとうございました。