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大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

DDD@横浜2021『舞踏の情熱』【鑑賞レポート】

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International Choreography × Japanese Dancers『舞踏の情熱』を鑑賞しました。「時代を変えた天才振付家たちのマスターピースに、日本のダンサーが挑む」というテーマのこの公演。ふだん観る機会の少ない演目も多く、1日限りというのがもったいなく感じる面白い公演でした。

『舞踏の情熱』は横浜で開催中のダンスイベント、DanceDanceDanse@YOKOHAMA2021のプログラム。

ダンサーのインタビューや見どころ、作品解説↓

イベントブログ | Dance Dance Dance at YOKOHAMA(DDD 横浜)

公演概要

9月18日(土)15:00

神奈川県民ホール 大ホール

Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021 ディレクター:小林十市

構成・演出:山本康介

出演
厚地康雄(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)、池本祥真(東京バレエ団)、上野水香(東京バレエ団)、、小㞍健太、佐久間奈緒、島添亮子(小林紀子バレエ・シアター)、柄本弾(東京バレエ団)、中村祥子、鳴海令那(Kidd Pivot)/スターダンサーズ・バレエ団(渡辺恭子、池田武志、関口啓、林田翔平)

上演スケジュール

第一部 15:00〜15:35

休憩20分

第2部 15:55〜17:00

当初の予定では、中村祥子さんがパートナーのヴィスラフ・デュデックさんと踊るウヴェ・ショルツ振付の『ソナタ』が予定されていましたが中止になり、中村祥子さんは一演目のみの出演になりました。

演目の前後にスクリーンが降りてきて、その作品にゆかりがある人、ダンサーや指導者、ディレクターである小林十市さんや構成・演出の山本康介さんが、登場して作品について語るという構成でした。

『ステップテクスト』  Steptext

振付:ウィリアム・フォーサイス  
演出・振付指導:アントニー・リッツィー  
出演:スターダンサーズ・バレエ団(渡辺恭子、池田武志、関口啓、林田翔平)
音楽:J.S.バッハ

1985年初演のフォーサイスの作品。スターダンサーズ・バレエ団の初演は1997年、今年の3月にも公演『Divercity』の演目のひとつとして上演されています。この公演のキャストも当初は3月の公演と同じでしたが、男性キャストのひとりが急遽、石川聖人さんから関口啓さんに変更になりました。

本来は観客が会場に入るとすでにダンサーたちが踊りはじめている、という作品らしいので「どんな始まりになるのかな」と思ってましたが、上演中の注意事項などのアナウンスが終わり、観客席の照明が落ちないうちにダンサー登場するという演出でした。

赤いレオタードの女性1人と、黒いタイツの男性3人の踊りで、男女や男性2人のデュオが繰り広げられます。

ドラマティックなヴァイオリンの旋律にシンクロする渡辺恭子さんのクリアな動きと、主に舞台のサイドから当たられた照明によって浮かび上がるダンサーの美しい身体が印象的な作品でした。

男性ひとり(池田武志さん)の足元だけがグレーなのが気になったのですが、動画をチェックしてみると、バレエ団によっては全員黒だったり、全員グレーだったり。何か意味があるんだろうか…。

 
 
 
 
 
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『二羽の鳩』よりパ・ド・ドゥ  The Two Pigeons

振付:フレデリック・アシュトン  
出演:島添亮子(小林紀子バレエ・シアター)、厚地康雄(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)  
音楽:アンドレ・メサジェ、編曲:ジョン・ランチベリー  

島添恭子さんと、厚地康雄さんは初共演。

バレエチャンネルのインタビュー↓

balletchannel.jp

『二羽の鳩』は島添さん、厚地さんそれぞれが所属する小林紀子バレエ・シアターとバーミンガム・ロイヤル・バレエ団がレパートリーにしているアシュトン振付の作品。若い恋人たちを描いた2幕のバレエで、このパ・ド・ドゥは、一度は外の世界に惹かれて少女の元を出て行った青年が、少女の元に戻り愛を確かめ合うという最後の場面です。

少女の鳩を思わせる動きが可愛らしくロマンティックなパ・ド・ドゥ。純粋無垢な少女と、申し訳なさそうに少女の元に戻り許しをこう青年が、島添亮子さんと厚地康雄さんの雰囲気にぴったりでした。

 

『A Picture of You Falling』より 

振付:クリスタル・パイト 
出演:鳴海令那(Kidd Pivot)、小㞍健太  
音楽:オーエン・ベルトン  

クリスタル・パイト率いるKidd Pivotのダンサーである鳴海令那さんと、ネザーランド・ダンス・シアター出身、現在は振付家としても活躍する小㞍健太さんの『A Picture of You Falling』(抜粋)。つぶやくようなナレーション、風の音…。張り詰めた空気を感じさせる男女のデュオ。見終わった後も、ヒリヒリするような、切ない余韻が残りました。

鳴海令那さんも、小㞍健太さんも、カーテンコール出でくると意外に小柄なのですが、踊っている時はとても大きく見えます。

 
 
 
 
 
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小㞍健太さんがこの作品を踊るのを観るのは2回目。1回目の公演はこちら↓

www.balletaddict.com

『スパルタクス』よりパ・ド・ドゥ  Spartacus 


振付:デヴィッド・ビントレー 
出演:佐久間奈緒、厚地康雄(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)
音楽:アラム・ハチャトゥリアン  

デヴィッド・ビントレーがバーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督を退任したシーズンに作られたという日本初演の作品。スパルタクスと妻のフリーギアの別れの場面のパ・ド・ドゥです。

長年デヴィッド・ビントレーの元で踊ってきた佐久間奈緒さん、厚地康雄さんだからこそ、実現したプログラムといえそうです。

公私ともにパートナーのおふたり。ラブラブな関係が伝わってくるインタビュー↓

balletchannel.jp

『スパルタクス』といえば、ボリショイ・バレエのユーリー・グリゴローヴィチ版。激しくエネルギッシュなグリゴローヴィチ版と比べると、しっとりした雰囲気ではあるのですが、じわじわとふたりの感情が胸に迫るような作品でした。

王子のイメージが強い厚地康雄さんですが、野性味あるスパルタクスも素敵でした。2年半ぶりの舞台というのが信じられない、佐久間奈緒さんの踊りも素晴らしかった。

おふたりのインタビューによると、デヴィッド・ビントレーは『スパルタクス』の全幕を創りたいと思っているらしい。新国立劇場バレエ団あたりに、ぜひ発注してほしいです!

ワイルドな厚地康雄さん↓

 
 
 
 
 
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マ・パヴロワより『タイスの瞑想曲』  Thais

振付:ローラン・プティ  
出演:上野水香(東京バレエ団)、柄本弾(東京バレエ団)
音楽:ジュール・マスネ 

恥ずかしながら、この作品を何度か観ているにもかかわらず、ローラン・プティの振付であることを今回はじめて知りました。

流麗で美しいパ・ド・ドゥ。リフトがとても多いのですが、それも静止することなく常に流れていくイメージ。男性ダンサーのサポート力が問われそうな作品です。

上野水香さん、柄本弾さんは安定のパートナーリング。リフトされている時の上野水香さんのフォルムがとても美しかった。

 

 
 
 
 
 
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『椿姫のためのエチュード』  La Dame aux Camélias

振付:モーリス・ベジャール
出演:中村祥子  
音楽:フレデリック・ショパン  
編曲:フランツ・リスト  

小林十市さんのパートナー、元モーリス・ベジャール・バレエ団のダンサーであるクリスティーナ・ブランさんに振り付けられたベジャール作品。アルマンを想うマルグリットのソロの踊りです。

バレエ・チャンネルのインタビューはこちら↓

balletchannel.jp

舞台の上には何の変哲もない椅子と白い総タイツの中村祥子さん。華やかなドレスは着ていなくても、中村祥子さんは確かにマルグリットでした。アルマンを思いながら、孤独に死を迎えようとしているマルグリット。切ないシーンではあるのですが、アルマンを想うマルグリットはどこか幸せそうでもある…。中村祥子さん、本当にきれいでした。

小林十市さんのインスタグラムより。リハーサルの様子

 
 
 
 
 
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『M』 

振付:モーリス・ベジャール  
出演:池本祥真(東京バレエ団) 

音楽:黛敏郎

小林十市さんが、21年前に英国ロイヤル・オペラ・ハウスのリニューアルオープンのこけら落としのガラ公演にために、ベジャールに振り付けてもらった特別バージョンの初の再演。『M』の「金閣寺」の場面でⅣ—シ(死)が踊るソロと、『ザ・カブキ』の由良之助のソロから構成されています。池本祥真さんは昨年の東京バレエ団の公演で、『M』の「金閣寺」のⅣ—シ(死)を踊っています。

作品前の映像や解説も小林十市さんによるもので、相当なプレッシャーですよね(笑)

ボリショイ・バレエ学校出身で、クラシック作品を踊れば、端正でキレのある踊りを見せてくれる池本祥真さん。ベジャール作品を踊るのを観るのははじめてでしたが、身体のコントロールが素晴らしく、緊迫感のある美しい舞台でした。

 

サプライズのエンディングはベジャールの『火の鳥』

『M』が終わると、出演ダンサーたちが舞台上に登場。中央には柄本弾さん。そのまま、ベジャールの『火の鳥』の不死鳥の蘇りが!

(実はベジャール作品をあまり観ていないので、『火の鳥』ということは、後で知った…)

小林十市さんのインスタグラムやバレエ・チャンネルのコラムによれば、実質数時間のリハーサルだったらしい!まったくベジャール作品と縁がないダンサーもいるというのに…

印象的だったシーン。中央は柄本弾さん、床の上に倒れているのは池本祥真さん。

 
 
 
 
 
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このエンディングがあったことで、公演全体のまとまりが感じられ、客席も一挙に盛り上がりました。

おわりに

カーテンコールではDDD@YOKOHAMAのディレクター小林十市さんと、構成・演出の山本康介さんが登場。このおふたりの個性や経歴が色濃く反映された、このふたりだから実現したと思われる公演でした。

また「作品と向き合う」ということを意識したプログラム構成という山本康介さんの言葉通り、作品に向き合い挑戦するダンサーの「熱」を感じる舞台でもありました。

今回の出演者。小林十市さんのインスタグラムより↓

 
 
 
 
 
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10月にはモーリス・ベジャール・バレエ 団の来日公演、11月には東京バレエ団が『中国の不思議な役人』を上演と、この秋はベジャールに関連する話題が多いですね。

 

東京バレエ団の『ザ・カブキ』

★最後までお読みいただきありがとうございました。