新国立劇場バレエ団の『不思議の国のアリス』を鑑賞しました。
6月11日(土)18:30からの公演、アリスは小野絢子さん、ジャックは福岡雄大さん。マッドハッターは英国ロイヤルバレエのスティーブン・マックレー!
- 公演概要
- 圧倒的な存在感!スティーブン・マックレー
- 小野絢子さん、福岡雄大さんのパートナーリングが最高
- チャーミングな中島瑞生さんの白ウサギ
- ダンサーたちの新たな魅力を発見
- 現代アートのような衣裳と美術
- おわりに
公演概要
『不思議の国のアリス』全3幕 新国立劇場バレエ団
2022年6月11日(土)18:30〜
会場:新国立劇場オペラパレス
芸術監督:吉田都
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ジョビー・タルボット
装置・衣裳:ボブ・クロウリー
台本:ニコラス・ライト
照明:ナターシャ・カッツ
映像デザイン:ジョン・ドリスコル/ジュンマ・キャリントン
パペット:トビー・オリー
マジック・コンサルタント:ポール・キエーヴ
指揮:ネイサン・ブロック
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【キャスト】
アリス: 小野絢子
庭師ジャック/ハートのジャック:福岡雄大
ルイス・キャロル/白ウサギ:中島瑞生
アリスの母/ハートの女王:木村優里
手品師/マッドハッター:スティーヴン・マックレー(英国ロイヤルバレエ)
ラジャ/イモ虫:宇賀大将
公爵夫人:小柴富久修
牧師/三月ウサギ:清水裕三郎
聖堂番/眠りネズミ:原健太
料理女:渡辺与布
召使い/魚:木下嘉人
召使い/カエル:小野寺雄
アリスの姉妹たち:飯野萌子、広瀬碧
執事/首斬り役人:中家正博
3人の庭師:太田寛仁、渡邊拓朗、佐野和輝
【公演スケジュール】
1幕 18:30〜19:20
休憩 25分
2幕 19:45〜20:15
休憩 20分
3幕 20:35〜21:20
『不思議の国アリス』という誰もが知っている、けれども非常にバレエにするのが難しそうな原作を、3幕のグランドバレエに仕立てたクリストファー・ウィールドンの振付作品。初演は2011年、英国ロイヤル・バレエ。(初演時は全2幕。のちに全3幕に改定)
新国立劇場バレエ団での初演は2018年です。
映像表現なども取り入れながら表現される原作の不思議な世界やユニークなキャラクター、アリスとジャックの恋物語。大人も子供も楽しめるエンターテイメント性と、おしゃれでコンテンポラリーなビジュアルが魅力です。
圧倒的な存在感!スティーブン・マックレー
大きなケガを2回も克服して、昨年秋に奇跡の復活を果たしたスティーブン・マックレー。また日本で観られる日が来るとは(涙)。しかも初演時のオリジナルキャストであり、ハマり役のマッドハッター役。なんだか信じられないような気持ちで、公演日を今か今かと待っていました。
1幕では手品師としてアリスの家のパーティーに登場。登場した途端、強烈なオーラに目が釘付け。客席からは大きな拍手が。
2幕、マッドな帽子屋、マッドハッターが登場!劇場に響きわたるクリアなタップの音、圧倒的な存在感、清々しいまでのマッドっぷり…。
さらに3幕では、舞台に落ちてたゴミ(フラミンゴの羽?2枚)まで、自然な演技を交えながら回収するという神技も見せてくれました。
カーテンコールでは晴れやかな笑顔を見せてくれたマックレー。おかえりなさいマックレー!
スティーブン・マックレーのインスタグラムより。
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小野絢子さん、福岡雄大さんのパートナーリングが最高
吉田都さんが芸術監督になってから、別のパートナーと組むことも増えた小野絢子さんと福岡雄大さん。今回改めて感じたのは、この2人のパートナーリングの素晴らしさ。特にリフトの時の軽やかさといったら、アリスがどこまでも跳んで行きそうでした。
観る前はアリスはどちらかといえば、米沢唯さんのイメージかなと思いましたが、少女の凛々しさみたいなものを感じさせる小野絢子さんのアリス、よかったです。
躍動感溢れる福岡雄大さんのジャックも素晴らしかった。
ただひとつだけ…2幕以降のハートのジャックの衣裳がどうも福岡さんにしっくりせず(失礼!)。あの衣裳の首回りの飾りが気になって…。
3幕でジャックが上着を脱いだ時はなんだかほっとした(失礼!)。白いシャツと赤いタイツになって踊る福岡さんの踊りを堪能しました。
チャーミングな中島瑞生さんの白ウサギ
もうひとつ今回楽しみにしていたのは、中島瑞生さんの白ウサギ。
白ウサギは、現実世界では原作者のルイス・キャロル、アリスを不思議の国に連れて行く重要な役柄です。
『DANCE to the Future: 2021 Selection』では、「ナット・キング・コール組曲」の華のある踊りが素晴らしかった中島瑞生さん。
白ウサギは絶対に似合うだろうという予想通り、踊りもウサギ姿も軽妙でチャーミング、ときにシニカルなムードがあって素敵でした。
『DANCE to the Future: 2021 Selection』の感想はこちら↓
ダンサーたちの新たな魅力を発見
『不思議の国のアリス』は出てくるキャラクターがいちいち個性的。それを演じるダンサーたちの新たな魅力が発見できて楽しかった。
アリスの母/ハートの女王は初役の木村優里さん。高身長をかわれてのキャスティングと思われます。ハートの女王といえば英国ロイヤルバレエのゼナイダ・ヤノウスキーの迫力が思い出されますが、木村さんの女王は迫力というよりは、ユーモラスで憎めない感じ。
客席が沸いた3幕のローズ・アダージョのパロディシーン。ハートの女王を嫌々エスコートする3人のトランプのうちの1人が、ジャックにも配役されている渡邊峻郁さん。コミカルな演技が最高でした。
ラジャ/イモ虫の宇賀大将さんは、しなやかでパワーのある踊りが素晴らしく、カーテンコールのときの拍手もひときわ大きかったです。
可憐なイメージの渡辺与布さんのエネルギッシュな料理女、召使い/魚の木下嘉人さん、召使い/カエルの小野寺雄さんのコンビの、軽快でキレがある踊り、女王の尻に敷かれるアリスの父/ハートの王は貝川鐵夫さんの絶妙な情けなさ(特に女王の大きなスカート?から現れるシーンが好き)も印象に残りました。
現代アートのような衣裳と美術
アリスはずっとラベンダー色の衣裳を着ています。現実世界の普段着、パーティーのドレス、2幕の不思議の国でのドレス、夢から覚めた後のワンピース、といろんなバージョンが見られるのが楽しかった。
ハート、スペード、ダイヤ、クローバーの形をしたチュチュを着て、頭に数字をつけてるトランプたちも可愛かったです。
渡辺与布さんのインスタグラムより。
この日は渡辺与布さんと中島瑞生さんがトランプのペアを組んでいたよう。観たかった…。
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衣裳と装置のカラートーンやデザインがお洒落で、どのシーンを切り取ってもモダンアートになりそうでした。
おわりに
公演の感想ではないのですが…
『不思議の国のアリス』ではハートの女王を演じていたプリンシパル・キャラクター・アーティスト本島美和さんの退団が発表されました。
新国立劇場バレエ団の公演を頻繁に観るようになったのは割と最近なので、本島美和さんといえば、気品ある王妃や、『くるみ割り人形』のアラビアの踊り、『ペンギンカフェ』の熱帯雨林の家族などが印象に残っています。佇まいが美しく、存在感があり、新国立劇場バレエ団の公演には欠かせないダンサーでした。さびしくなります。
ハートの女王、観たかったな…
これからのご活躍をお祈りしております。
ホワイエに展示されていたハートの女王のパネル。素敵。↓
英国ロイヤルバレエの初演、2011年の映像。この時は全2幕。
アリスはローレン・カスバートソン、ジャックはセルゲイ・ポルーニン!
2017年収録の全3幕版。主演はオリジナルキャストのローレン・カスバートソン。
★最後までお読みいただき、ありがとうございました。