ballet addict

大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

牧阿佐美バレヱ団『ローラン・プティの夕べ』【鑑賞レポート】

f:id:logue5:20211028144742j:plain

牧阿佐美バレヱ団の『ローラン・プティの夕べ』を鑑賞しました。演目は『アルルの女』『デューク・エリントン・バレエ 』

観に行ったのは10月9日(土)なのですが、ブログになかなかあげられないでいるうちに、10月20日牧阿佐美さんの訃報が…。

日本バレエ界の発展に尽力し、数多くのダンサーを育成した牧阿佐美さん。この公演のプログラムも、牧阿佐美さんの存在無くしては実現しなかったものでしょう。

心よりご冥福をお祈り致します。

公演概要

『ローラン・プティの夕べ』牧阿佐美バレヱ団

10月9日(土)15:00〜

新宿文化センター

芸術監督:三谷恭三

演出・振付 : ローラン・プティ

振付スーパーバイザー : ルイジ・ボニーノ

照明 : ジャン=ミッシェル・デジレ

音楽 : ジョルジュ・ビゼー「アルルの女」、デューク・エリントン「デューク・エリントン・バレエ」 

没後10年となる今年、ローラン・プティへのオマージュとして捧げられるプログラム。

プティとの信頼関係を築き、多くのプティ作品の日本初演を果たしてきた牧阿佐美バレヱ団ですが、その関係は1996年『アルルの女』の日本初演がスタート。

一方『デューク・エリントン・バレエ 』は、牧阿佐美バレエ団45周年を記念して、2001年世界初演された作品です。

【上演スケジュール】

15:00〜15:40 『アルルの女』

休憩 20分

16:00〜17:30 『デューク・エリントン・バレエ 』

 

公演前日のリハーサル映像↓

www.youtube.com

『アルルの女』

ヴィヴィエット:青山季可

フレデリ:水井俊介

 

プティの代表作のひとつと言われる『アルルの女』。主役のフレデリは、男性ダンサーが「いつか踊ってみたい役」「踊って大変だった役」として挙げることが多く、一度劇場で観てみたかった作品です。原作は南仏プロヴァンス地方を舞台にしたアルフォンス・ドーデの短編小説、音楽は『カルメン』で知られるジョルジュ・ビゼー。

物語は村の若者フレデリとヴィヴィエットの婚礼パーティーで始まります。祝宴の最中、フレデリはアルルで出会った名前も知らない女を思い出し、心を奪われます。フレデリの心を取り戻そうとするヴィヴィエット、妄執と闘うフレデリ…

タイトルは『アルルの女』ですが、アルルの女は登場しません。ゴッホの絵からインスピレーションを得たという舞台装置もシンプルで抽象化されたもの。余分なものを全て省き、フレデリとヴィヴィエットの心の動きだけが浮かび上がってくるような作品でした。

フレデリの水井俊介さん、素晴らしかったです。最後にフレデリがひとりで踊る「ファランドール」。途切れることのない緊迫感と爆発するようなエネルギー…エンディングまで目が離せませんでした。

青山季可さんのヴィヴィエットも切なく、美しかった。

主演ふたりのインタビュー↓

magazine.confetti-web.com

 

プティ版『コッペリア』を観たときも感じましたが、この作品でも群舞の役割が独特で面白い。祝宴に参加している男女8人ずつの友人たちなのですが、同時に舞台装置・背景でもあり、効果音(床を踏み鳴らす音とか)でもあり、黒子(主人公をみんなでリフトするところとか)でもある…この群舞によって、主人公ふたりの輪郭がよりはっきりしてくる印象でした。

 

青山さんと水井さんのペアを観るのはバレエ・アステラス2021の『薔薇の精』に続き2回目。

www.balletaddict.com

『デューク・エリントン・バレエ』

キャスト:菊池研、清瀧千晴、ラグワスレン・オトゴンニャム、坂爪智来、水井俊介、中島哲也、逸見智彦、保坂アントン慶、京當侑一籠、青山季可、茂田絵美子、米澤真弓、久保茉莉恵、中川郁、佐藤かんな、

 

『アルルの女』とは対極にあるような、軽妙洒脱なプティ作品。デューク・エリントンのジャズの名曲に乗せて踊られる楽しいバレエです。

13曲が使用されていますが、スタジオ録音に加えてライブ音源も使われていて、演奏に熱狂する観客の拍手が劇場に響きます。ラストの曲はご存知「A列車で行こう」。

この作品で圧倒的に輝いていたのは、菊池研さん

『ノートルダム・ド・パリ』カジモド役など、プティ・ダンサーとして有名な菊池研さん。2001年『デューク・エリントン・バレエ』の初演の際に、プティにソリストとして抜擢され、16歳で衝撃的なデビューを飾った菊池さん。

このインタビューで詳しいエピソードが。団員でもなかった菊池さんをいきなり抜擢!↓

spice.eplus.jp

インタビュー中の「もっと音楽を魅せる感じで踊りたい」との言葉通り、ジャズのグルーヴを感じる粋な踊りで客席を沸かせていました。

 

菊池研さんはバレエ×クィーンの公演も良かった…↓

www.balletaddict.com

『デューク・エリントン・バレエ』にも水井俊介さんが登場。ジャンプなどのテクニック満載のパートでキレのある踊りを観せてくれましたが、『アルルの女』の後にこれが踊れるって…ものすごい気力、体力。

 

この作品、曲ごとに衣裳や道具立てが変わるのですが、そのアイディアが面白い。

「Hi-Fi Fo Fums」では踏み台昇降の進化版みたいなフォームだったり、「Solitude」のポールだったり、「Ad Lib on Nippon」ではダンサーたちが作る人間ドームだったり。

またピンクのドレスに黒のチョーカー、フラッパー風のフリンジのミニドレスなど、森英恵さんデザインの衣裳も素敵でした。

おわりに

ローラン・プティのふたつの面を代表するような、『アルルの女』と『デューク・エリントン・バレエ 』。普段観るチャンスが少ない2作品を楽しみました。

こんな作品が今の日本で観られるのは、バレエ団の築いてきた振付家との信頼関係があるからこそ。図らずも、牧阿佐美さんがもたらしてくれたものの大きさを確認するいい機会になりました。

 

「SWAN MAGAZINE」ローラン・プティ特集号↓

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

SWAN MAGAZINE(vol.25) 特集:ローラン・プティの世界
価格:1100円(税込、送料無料) (2021/10/28時点)

★最後までお読みいただきありがとうございました。