スターダンサーズ・バレエ団の『The Concert』を鑑賞しました。9月24日(土)の公演です。
ジェローム・ロビンスの『コンサート』『牧神の午後』、ジョージ・バランシンの『スコッチ・シンフォニー』という魅力的なトリプルビルでした。
以前「笑えるバレエ」 として記事にした『コンサート』。念願かなって劇場で観ることができました。
公演概要
『The Concert』スターダンサーズ・バレエ団
2022年9月24日(土) 14:00 〜
東京芸術劇場プレイハウス
指揮 : 田中良和
管弦楽 : テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
【上演スケジュール】
第一部 14:00〜14:30
『スコッチ・シンフォニー』
休憩 20分
第二部 14:50〜15:05
『牧神の午後』
休憩 20分
第三部 15:25〜16:00
『コンサート』
開演前には恒例の総監督 小山久美さんによるプレトーク(作品紹介)ありました。
『スコッチ・シンフォニー』
振付:ジョージ・バランシン
音楽:F.メンデルスゾーン 交響曲第3番”スコットランド”
振付指導: ベン・ヒューズ
【キャスト】
喜入依里、林田翔平、塩谷綾菜
『NHK バレエの饗宴』で、スターダンサーズ・バレエ団によるバランシンの『ウェスタン・シンフォニー』を観たばかりだったので、その対比が興味深かったです。
バランシンがスコットランドを訪れ、バグパイプなどによるパフォーマンスに触発されて制作したという『スコッチ・シンフォニー』。キルト姿の男性とピンクのチュチュに黒いコルセットの衣裳の女性たち。パンフレットにも書いてありましたが、同じスコットランドを舞台にした『ラ・シルフィード』のようなムードもあります。
ストーリーはない作品ですが、女性ソリストを追おうとする男性ソリストが他の男性たちによって阻止されたりと、バランシンらしいちょっと思わせぶりな物語の断片のようなものが組み込まれています。
ソリストの喜入依里さんの音に気持ちよくはまった踊り、安定の林田翔平さん、美しく揃ったコールドバレエ…素晴らしかったです。
そしてこの演目で印象的だったのは、赤いキルトを履いて踊る女性ソリスト「スコッチ・ガール」。男性並みにジャンプがふんだんに組み込まれた振付で、塩谷綾菜さんの躍動感あふれる踊りがとても良かった。赤いキルトに赤いハイソックス、赤のポアント(赤いマジックで塗ってるらしい!)という衣裳も可愛かったです。
スターダンサーズ・バレエ団の公式インスタグラムより。
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この女性ソリストと一緒に踊る男性2人のうちのひとりが、佐野朋太郎さん。クリアな踊りが群舞の中でも目を引きました。
『牧神の午後』
振付:ジェローム・ロビンス
音楽:C.ドビュッシー”牧神の午後への前奏曲”
舞台美術・照明:ジーン・ローゼンタール
衣裳デザイン:アイリーン・シャラフ
演出・振付指導:ベン・ヒューズ
【キャスト】
東真帆、林田翔平
バレエのスタジオで稽古着を着た牧神とニンフ(妖精)が出会う、ロビンス版『牧神の午後』。
団内のオーディションで選ばれたという『牧神の午後』のキャストへのインタビューはこちら。客席側に設定された架空の鏡ごしに、自分や相手を見つめて踊ることの難しさが語られています。↓
キャストインタビュー【牧神の午後】喜入依里&東真帆&林田翔平 | STAR DANCERS BALLET
この日のニンフは、パリ・オペラ座バレエ団を経て2021年に入団したばかりの東真帆さん。振付・指導のベン・ヒューズ氏に抜擢にされ、今回がメインロールデビューとのこと。伸びやかな手脚が美しく、無垢な感じと色っぽさが同居していて、ニンフの役にぴったりでした。端正な林田翔平さんとのバランスも良かったです。
レッスンスタジオのシンプルな装置は映像より劇場で観る方が綺麗。青い照明の中に浮かび上がり、夢の中のシーンのような美しさがありました。
6月にパリ・オペラ座のシネマで上演されていたユーゴ・マルシャンとアマンディーヌ・アルビッソンの『牧神の午後』の感想はこちら↓
『コンサート』
振付:ジェローム・ロビンス
作曲:フレデリック・ショパン
舞台美術デザイン:ソール・スタインバーグ
衣裳デザイン:アイリーン・シャラフ
照明デザイン:ジェニファー・ティプトン 照明再構成:足立恒
演出・振付指導:ベン・ヒューズ
ピアノ:小池ちとせ
【キャスト】
秋山和沙 池田武志(ハズバンド) 岩本悠里 小澤倖造 加地暢文 喜入依里(ワイフ) 久野直哉 早乙女愛毬 佐野朋太郎 関口啓 飛永嘉尉 冨岡玲美 仲田直樹 西原友衣菜 橋本まゆり 東真帆 宮司知英 森田理紗 渡辺恭子(バレリーナ) 渡辺大地
『コンサート』は2021年の公演中止を経て、日本のバレエ団としては初の上演となりました。
ピアノコンサートをコミカルに描いた笑えるバレエ、『コンサート』。コンサートに集まった個性的な人々の描写から、ショパンの曲からイメージを膨らませた妄想のようなパートまでが、多彩に繰り広げられます。
6人の女性ダンサーによる揃わないバレエ「ミステイクワルツ」のパートが有名ですが、作品全体としては、ブラックでシニカルな笑いが多め。美しいショパンの調べと毒のある笑いというコントラストの妙…。
日本人が演るにはハードルが高そうな作品ですが、ダンサーたちはナチュラルに演じていました。
渡辺恭子さん演じるちょっとイっちゃってる”バレリーナ”、喜入依里さん演じる威圧的な”ワイフ”もよかったですが、なかでも印象に残ったのは池田武志さんの”ハズバンド”!
この”ハズバンド”、つねに葉巻を口にくわえ、セクハラ&パワハラまがいの行いも平然と行う、今の時代的には(今の時代じゃなくても)完全にアウトな人物。そんな役が似合ってるというのもちょっとためらわれるのですが、ふてぶてしく、小憎たらしい感じが上手かった!カーテンコールの最後、客席に手を振ってくれたときまで、完全にニヒルなハズバンドでした。
もちろん演技だけではなくジャンプなど、踊りのキレも素晴らしかったです。
そしてこの作品の衣裳が可愛い!
衣裳デザインは『牧神の午後』と同じくアイリーン・シャラフ。ブロードウェイ、映画の衣裳を数多く手掛けた衣裳デザイナーで、ジェローム・ロビンス監督の映画『ウエスト・サイド・ストーリー』でも衣裳デザインを担当し、アカデミー衣裳デザイン賞を受賞しています。
女性はごく淡いペールブルーのトーンで胸元にボタンがついたちょっとレトロなレオタード、男性は同じ色の総タイツという衣裳。
この衣裳をベースに、役柄やシーンに合わせて、帽子、ネクタイ、バッグ、ベストなどがプラスされます。「ミステイクワルツ」ではこのレオタードにチュチュをつけています。
メインビジュアルに使われている写真で、”バレリーナ”が被っているふわふわの丸い羽の帽子も可愛いかった。
最後には、蝶の羽とか、触覚のついた帽子とか、いろいろ付け加えられて、ごちゃごちゃになっちゃってるところもなんだか面白い。
スターダンサーズ・バレエ団の公式インスタグラムより。
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おわりに
日本ではなかなか観る機会のない作品に意欲的に取り組んでくれるスターダンサーズ・バレエ団に感謝したトリプル・ビルでした。
スタ団といえば!「ドラゴンクエスト」
*ジェローム・ロビンスか、ジェローム・ロビンズか。
名前の表記を迷いましたが、スターダンサーズ・バレエ団のパンフレットなどの表記に習って、この記事ではジェローム・ロビンスとしました。(パリ・オペラ座シネマではジェローム・ロビンズ表記です。)
★最後までお読みいただきありがとうございました。