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大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

パリ・オペラ座バレエ シネマ『シンデレラ』【バレエ鑑賞メモ】

パリ・オペラ座バレエ シネマ『シンデレラ』を鑑賞しました。恵比寿ガーデンシネマの再オープン記念企画、「パリ・オペラ座バレエ シネマフェスティバル」のスタートを飾る作品です。

今回の『シンデレラ』は、確か1年ぐらい前にほかの映画館で上演されたと思うのですが、見逃していたので観られてよかった。

 

公演・上演概要

『シンデレラ』全3幕 パリ・オペラ座バレエ団

収録日:2018年12月31日

場所:パリ・オペラ座 バスティーユ

上映時間:2時間30分

振付:ルドルフ・ヌレエフ

原振付:シャルル・ペロー

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

指揮者:ヴェロ・パーン

舞台美術:パトリカ・イオネスコ

衣装:森英恵

照明:グィード・レヴィ

オーケストラ:コンセール・パドルー

芸術監督:オーレリ・デュポン

キャスト:

シンデレラ/ヴァランティーヌ・コラサント

映画スター/カール・パケット

姉妹/ドロテ・ジルベール、リュドミラ・パリエロ

継母/オーレリアン・ウエット

プロデューサー/アレッシオ・カルボーネ

ダンス教師/ポール・マルク

春/マリオン・バルボー
夏/エミリー・コゼット
秋/パク・セウン
冬/ファニー・ゴルス

ハリウッド映画の世界が舞台という独創的なヌレエフ版『シンデレラ』。王子は映画スター、仙女の代わりにプロデューサーが登場します。1986年の初演時はシルヴィ・ギエムがシンデレラを、ヌレエフ自身がプロデューサーを演じました。

 

余談ですが、パリ・オペラ座バレエ シネマは英国ロイヤル・オペラハウス シネマと違って、途中の幕間休憩はありません。幕間は、舞台裏映像やイメージ映像などがちょっとだけインサートされるだけで、すぐ次の幕が始まります。トイレが近い方(←自分のこと 笑)は注意が必要です。

カール・パケットの輝き

映像はエトワール、カール・パケットの2018年のアデュー(引退)公演で収録されたものです。

シンデレラの王子(この作品では映画スターですが)の登場は2幕から。

シャンパンゴールドの衣裳で登場するカール・パケットの圧倒的な輝き!

その姿を観ただけで、カール・パケットがこの演目を引退公演に選んだ訳がわかった気がしました。甘いマスクと華やかなオーラが、映画スターにぴったり。自分に似合うものをわかっているなぁ。

客席の拍手もひときわ大きかった。

自ら幸せをつかむシンデレラ

ヴァランティーヌ・コラサントはヌレエフ版の超絶難しそうな振付をきっちりこなす、安定したテクニックが素晴らしかった。明るくしっかりもののシンデレラという雰囲気で、義母や義理の姉にいじめられてもウェットにならないところもよかったです。

ヌレエフ版では、シンデレラが撮影所(普通の版ならお城)に登場するときは、ヒールのあるキラキラのダンスシューズ。ダンスシューズで映画スターと踊り、途中でポアントに履き替えて、さらに映画スターと踊り、12時になってポアントのまま撮影所を去るときに、はじめに履いてきたダンスシューズの片方を忘れていくという流れ。

ガラスの靴の演出は版によって色々で面白いですね。

注目すべきは、映画スターが靴の持ち主を探して、シンデレラの家に来るシーン。スターがシンデレラに靴を履かせる前に、シンデレラは自分の手元に残った片方のガラスの靴を、自らスターの前に置くのです。

「幸せは(成功は)自らつかむ!」っていうところが現代的。ヴァランティーヌ・コラサントが演じるシンデレラにも合っていたと思う。

楽しそうだった義理の姉たち

義理の姉たちはふたりともエトワールという豪華なキャスティング。ドロテ・ジルベール、リュドミラ・パリエロともに楽しそうに演じていました。エトワールともなると、こういう弾けた役をやる機会も少ないんでしょうね。

ちょっと鈍臭い感じのドロテ・ジルベールと、活発で奔放なリュドラミラ・パリエロのキャラクターのバランスも良かった。

驚いたのは、シンデレラの家でポール・マルクが演じるダンス教師が、姉たちにダンスを教えるシーン。

壁をバーがわりにバレエレッスンを行うのですが、このときのリュドミラ・パリエロのアンディオールがすごかった。膝を曲げた状態ではありましたが、180°をはるかに超えたアンディオールだったような。あえて開き過ぎのアンディオールでバレエレッスンをコメディタッチに演じるシーンだったと思うのですが、「プロは無理すればあそこまで開くのか!」「脚は大丈夫なのか?」と、本筋とは関係ないところに気をとられてしまいました。

ほかの踊りのシーンでもリュドミラ・パリエロのポアントのクリアで柔軟な動きは素晴らしかったです。

ポール・マルクのダンス教師もとてもよかった。ちょっと気取ったキャラクターと、この上なくエレガントな踊りがぴったり合っていました。

ヌレエフ版のダンス教師は、撮影所で出演者たちに振り移しをするという役割を与えられているせいもあって、ものすごく踊るシーンが多い。

映画スター、シンデレラ、ダンス教師という3人で踊るシーンも結構長くて、思わず「ダンス教師ちょっと邪魔では?(ポール・マルクの踊りが観られるのは嬉しいけどね)」と思ってしまったほど。なにか隠された意味があるんだろうか、あのダンス教師役には…?

また撮影所の場面の最初でてきた、刑務所のストーリーらしき映画(何かの映画へのオマージュでしょうか?このあと「キング・コング」のような映画も出てくる)の撮影シーンのなかの、赤と白の縞の囚人服を着たダンサーが素晴らしかった。残念ながら名前がわからない…。短いシーンにもかかわらず、躍動感あふれる踊りがとても印象に残りました。

 

アール・デコ調の舞台美術が美しい

さすがパリ・オペラ座のプロダクトと感じさせるのは、パトリカ・イオネスコによる舞台美術。シンデレラの家や撮影所(撮影セット?)は美しいアール・デコ調。特にシンデレラの家は舞台セットとは思えない質感でした。

シンデレラが到着する撮影所の背景にはアール・デコの装飾を施したスクリーンがあるのですが、このスクリーンを使ったシンデレラ登場の場面が印象的でした。スクリーンの後ろにつくられた空中回廊を歩いてくるシンデレラと、写真を撮るマスコミたちのシルエットがスクリーン越しに浮かび上がるのです。

衣裳は森英恵さん。変身したシンデレラが現れたときにドレスの上に着ているペールピンク(ベージュ?)のジャケットなどはハナエモリブランドっぽいイメージ。

継母や変身前のシンデレラのシックなグレーのワンピース、撮影所での映画スターやコール・ド・バレエの男性のシャンパンゴールドの三揃など、クチュールっぽい正統派の雰囲気と、四季の精などのちょっとサイケデリックな前衛的な衣裳が組み合わされている感じ。

特に時間の精(?)の衣裳はかなり異質で強烈でした。刺青みたいな柄の全身タイツに、フンドシっぽいものとそれぞれの時間を書いたゼッケンをつけている…。これはヌレエフのオーダーなんでしょうか??

おわりに

「パリ・オペラ座バレエ シネマフェスティバル」は現在日本で上演可能なパリ・オペラ座シネマ8作品をこの12月から2023年4月にかけて、一挙上演するというありがたい企画。過去にテレビで放映されている映像も多そうですが、大きいスクリーンで集中して観られるのはやっぱりいいですね。

まだ観に行けていませんが、アーティゾン美術館では「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」展もやっているし、ちょっとしたパリ・オペラ座祭り状態で嬉しい。

 

シンデレラはアニエス・ルテステュ、映画スターはジョゼ・マルティネズ。

ジョゼ・マルティネズはこの12月にパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督(舞踏監督)に就任しましたね!

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★最後までお読みいただきありがとうございました。

大人バレエ自宅トレーニング4ヶ月経過。その成果は?【大人バレエつれづれ】

自宅でバレエのトレーニングを始めて、4ヶ月が経ちました。

4ヶ月続けてみて、いちばんの感想は「苦手克服って本当に難しい!」ということ。

今感じていることを書きたいと思います。

 

自宅トレーニングをはじめたきっかけは、発表会の反省から。記事はこちら ↓

www.balletaddict.com

 

自分の弱い部分に向き合うのは大変

まずトレーニングの目的は、バレエに必要な筋力と柔軟性を向上させて、バレエを踊れる身体を作ること。

トレーニングを続けながら少しづつ内容を見直しているのですが、実際のメニューとしては、こんな感じ。

  1. 体幹、お尻、背筋などのトレーニング
  2. 身体をゆるめて動きやすくする
  3. ストレッチ
  4. バーレッスンの基本的な動きのいくつかをゆっくりていねいに行う
  5. 最後に使った筋肉をほぐす

(やっている順番も、およそこんな感じなのですが、はたしてこれが正解なんだろうか…)

こうやって書き出すと、なんかすごそうですけど、トータルで40分ぐらい。疲れているときは短縮版にしています。

 

4ヶ月やってみて、劇的な変化はないものの、脚の力はついてきた気がする。ポアント履いたときの感覚も少し変わった。

ですが!脚の力はもともと弱くないといわれていて。骨格とか、しなやかな筋力とか、およそバレエ向きの資質は持ち合わせていない私ですが、脚だけは強いといわれることが多いのです。

逆にもっともダメなのは柔軟性。上半身、背中や肩まわりは特にひどい。トレーニングをはじめたきっかけは、そんな弱点をなんとかしたいということだったのですが、なぜか改善されたのは、元々強い部分だったという!

もちろん脚が鍛えられたこと自体はいいことではあるのですが、柔軟性についてはほとんど成果がでていません。

やり方が間違ってるのか、取組み方が甘いのか、成果が出るまで時間がかかっているのか…。

苦手なことへの取組み方が甘くなることについては、トレーニングをはじめたときの記事にも散々書いているのですが。

体をゆるめたり、硬いところをストレッチしたり。メニューに入れて、毎日やってはいるものの、徐々にこなしてる感が出てきてしまう。効いてるのかどうか、実感がなくてモチベーションも上がらない。

私の場合、筋トレは割と楽しくできるんですけど。

 

というわけで、もう一度弱点克服を胸に刻んで、トレーニングを続けていこうと思います。

地図のない旅

なんとか足腰の立つうちにバレエの世界の入り口にたどり着きたいと四苦八苦しているわけですが、しみじみ思うのは、これは地図のない旅だなぁということ。

単純すぎる例ですが、資格試験などに挑戦するときは、ある程度取り組めば合格への道筋が見えてくる。この過去問を3回やれば、まず受かるだろう、とか。

でもバレエは習得の道筋が全く見えない。知れば知るほど、、やればやるほど、自分に足りないものが明らかになって、やるべきことは増えていく。

こっちだ!と思ってずんずん歩いていくと、とんでもない方向違いだったり。同じところをぐるぐる回ってたり。

もちろんバレエの先生の指導がいちばんの道しるべにはなるわけですが、先生にもすべては教えてもらえない。

長いこと生きてきた大人には、それぞれがいままでの人生で身についてしまった体の使い方の癖みたいなものが、山ほど体に張り付いているんですよね(いらない贅肉とかもね 笑)。この癖をふるい落として、バレエの体の使い方を新たにインストールする。

大人バレエの習得の道筋は、人それぞれなのだと思う。自分で考えて、感じて、やってみて、進んでいかないといけない。ほんとうに難しい。

でもそれが楽しさでもあるんだな、きっと。

 

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★最後までお読みいただきありがとうございました。

『スーパースター・ガラ 2022』Aプログラム【バレエ鑑賞メモ】

『スーパースター・ガラ 2022』のAプログラムを鑑賞しました。初日の11月24日(木)の公演です。

コンテンポラリー作品多め。初めて観る演目が多くて、ディテールについてはすでに記憶が薄れかけていますが…簡単な鑑賞メモです。

 

公演概要

『スーパースター・ガラ 2022』【A プログラム】

2022年11月24日(木) 19:00開演
東京文化会館大ホール

芸術監督:パトリック・ド・バナ

【出演者】

マニュエル・ルグリ(ミラノ・スカラ座バレエ団 芸術監督)

スヴェトラーナ・ザハロワ(ボリショイ・バレエ団 プリンシパル)

エレオノラ・アバニャート(ローマ歌劇団バレエ団 芸術監督)

マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ団 エトワール)

マリアネラ・ヌニェス(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

ナタリア・オシポワ(英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

エドワード・ワトソン(元英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)

ダリア・パブレンコ(元マリンスキー・バレエ団 プリンシパル)

ダニーラ・コルスンツェフ(元マリンスキー・バレエ団 プリンシパル)

エレナ・マルティン(元ラファエル・アギラル・スペイン舞踏団 プリンシパル)

パトリック・ド・バナ(「スーパースター・ガラ」芸術監督)

【上演スケジュール】

第1部 65分

休憩 20分

第2部 75分

今回のガラ公演の芸術監督はベジャール・バレエ・ローザンヌ、スペイン国立ダンス・カンパニーで踊ったのち、現在はフリーのダンサー、振付家として活躍するパトリック・ド・バナ。マニュエル・ルグリに数多くの作品を振り付けていることでもおなじみです。

Aプログラムでは3作品がパトリック・ド・バナ振付でした。

 

第1部

「白鳥の湖」より “黒鳥のパ・ド・ドゥ”

振付:マリウス・プティパ

音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
出演:マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ

 

冒頭から、一気に物語に引き込まれました。

ムンタギロフの伸びやかでノーブルな踊りが、久しぶりに観られて満足!オディールが差し出した手に王子が頬をつける、おなじみの最後のポーズ(マイム?)。何度観ても、ムンタギロフはこのポーズが似合うなぁ。

ヌニェスの強烈な存在感と安定したテクニックも素晴らしかったです。

 

「月の光」<日本初演>

振付:アラスター・マリオット

音楽:クロード・ドビュッシー
出演:マチュー・ガニオ

当初発表では、「マチュー・ガニオがローラン・プティの「アルルの女」に初挑戦!」のはずだったのですが、このソロに変更に。「アルルの女」観たかったので、ちょっとがっかり。

でもこの演目自体はよかったです。現在のマチュー・ガニオにフィットする作品だと感じました。

振付のアラスター・マリオットは、今年10月に上演された新国立劇場バレエ団の新制作の「ジゼル」の改訂振付をした人ですね。

この作品のマチュー・ガニオはまさに「月の光」を浴びて踊る美しい彫像のよう。もうひたすら、しみじみと美しい。お馴染みの「月の光」のメロディも一層心にしみる…。

衣裳は上半身裸で、下は袴のようなくすんだ朱色のパンツ。脚の付け根までスリットが入っていて動きによって、脚が大胆に見え隠れするのがドラマティックでした。

パンフレットに載っていたこの作品をマチュー・ガニオが踊ることになった経緯が面白かった。

もともとは映像作品としてエドワード・ワトソンのために振り付けられ、その後舞台で上演する際に、直前に怪我をしたワトソンの代わりに急遽マチューが踊ることに。この作品が気に入ったマチューの希望で、パリ・オペラ座のレパートリーに加えられたそうです。

今回のガラに、エドワード・ワトソンが参加しているのも巡り合わせですね。この舞台を観た後、ワトソンが踊っている映像作品をちらっと観ましたが、マチューとは雰囲気が全く異なっていて面白かった。

 

「スパルタクス」


振付:レオニード・ヤコブソン

音楽:アラム・ハチャトゥリアン
出演:ダリア・パブレンコ、ダニーラ・コルスンツェフ

 

私がバレエを観始めた頃は、ロパート・キナの相手役として活躍していたダニーラ・コルスンツェフ。

かなり久しぶりに観ましたが、容貌は思ったほど変化していなかった。長身でスレンダーなスタイルも当時のまま。

しかしこのレオニード・ヤコブソン版のパ・ド・ドゥ、スパルタクスは演技が中心であんまり踊らないんですね。ダリア・パブレンコが演じるフリギアの踊りも、ちょっと独特な振付でわりと地味。

「白鳥の湖」ほど馴染みがないこともあって、ドラマに没入できないうちに終わってしまった。

「Ashes」

振付:ジェイソン・キッテルバーガー

音楽:ゴラン・グレゴヴィッチ
出演:ナタリア・オシポワ

ナタリア・オシポアは2演目ともコンテンポラリー。

「Ashes」はジェイソン・キッテルバーガー(オシポアの私生活でのパートナー、ですよね?)が、オシポアのために振り付けたという作品。オシポアの素晴らしい身体能力、自由自在のボディ・コントロールを観られる作品でした。

ペルシャ絨毯ぽい敷物の上に置かれたスツールの上にオシポアが座っているところからスタートして、途中でスツールを蹴り飛ばし(オシポア、楽しそう)、最後には敷物にぐるぐると包まって(クレオパトラみたいに)終わる。どういう意味?と気になったけど、パンフレットの作品解説にもでてなかった。

「MEDEA MOTHER」

振付:パトリック・ド・バナ

音楽:マックス・リヒター
出演:エレナ・マルティン、パトリック・ド・バナ

ギリシャ神話に登場する王女メディアがテーマの作品らしい。エレナ・マルティンの息づかい(←効果音でしたでしょうか…?)が妙に耳に残りました。

「インポッシブル・ヒューマン」

振付:アーサー・ピタ

音楽:ベヴ・リー・ハーリング
出演:エドワード・ワトソン

初演は今年7月の「ロイヤル・バレエ・ガラ」。用事で途中までしか観られなかったBプロで見逃した作品が、まさかここで観られるとは!嬉しい驚きでした。

プリンシパル引退早すぎたんじゃ…と思うようなエドワード・ワトソンの素晴らしい踊り。作品も面白かった。

作品タイトルは楽曲名から。ベヴ・リー・ハーリングの哀愁を帯びた歌声が印象的でした。

 

「Árbakkinn」<日本初演>

振付:シモーネ・ヴァラストロ

音楽:オーラヴル・アルナルズ
出演:エレオノラ・アバニャート、マニュエル・ルグリ

 

長年パリ・オペラ座で一緒に踊り、現在はそれぞれイタリアの二大バレエ団の芸術監督を務めるエレオノラ・アバニャートとマニュエル・ルグリ。

この作品、大人っぽい雰囲気とは裏腹に、リフトが連続するようなハードそうな振付も含まれているのですが、さすがのパートナーリングでした。(まだこんなハードな振付を踊るんだと、正直驚いた。)

ルグリが公演パンフレットのインタビューで、長年一緒に踊ったエレオノラ・アバニャートとはたくさんの思い出があり、「…彼女についてだけで一冊の本を書けるくらい。(笑)」と話していました。その本、読んでみたい。

 

「瀕死の白鳥」

振付:ミハイル・フォーキン

音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:スヴェトラーナ・ザハロワ

演奏:金木博幸(チェロ)、中村愛(ハープ)

ザハロワの「瀕死の白鳥」を観るのは、2021年の世界バレエ・フェスティバル以来。ザハロワはあの時より痩せてしまったような気がする…。

踊る人によってかなりニュアンスの異なる「瀕死の白鳥」。ザハロワの「瀕死の白鳥」は、あえて感情を抑えた表現のように見えました。死という運命を受け入れひっそりと息絶える白鳥。静かで、透き通るようで、美しかった。

第2部

「シェヘラザード」

振付:ミハイル・フォーキン

音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
出演:ダリア・パブレンコ、ダニーラ・コルスンツェフ

 

「スパルタクス」よりは、ふたりの踊りが観られてよかった。ダリア・パブレンコの妖艶さに比べると、ダニーラ・コルスンツェフの金の奴隷はややあっさりめではありましたが。

「Limbaé」

振付:エレナ・マルティン

音楽:アラ・マルキアン
出演:エレナ・マルティン

エレナ・マルティンとストールの競演とでもいえそうな作品。

始終長いフリンジのついたストールを振り回しながら踊るエレナ・マルティン。「ドン・キホーテ」のエスパーダばりにストールさばきが上手かった。

「病める薔薇」

振付:ローラン・プティ

音楽:グスタフ・マーラー
出演:エレオノラ・アバニャート、マチュー・ガニオ

この作品ではエレオノラ・アバニャートの情感豊かな魅力が前面にでて、マチュー・ガニオはひかえめだった印象。パンフレットで知りましたが、エレオノラ・アバニャートはエトワール任命も、アデュー公演もローラン・プティの作品なんですね。

エレオノラは薄いコーラルピンク系の美しいドレス、マチューは上半身裸の白タイツ。パンフレットには「初演の衣裳デザインはイヴ・サンローラン」とあったけれど、今回の衣裳はどうなんでしょうか?

 

「Ambar」<日本初演>

振付:ウェイン・マクレガー

音楽:ニルス・フラーム
出演:ナタリア・オシポワ、エドワード・ワトソン

 

「ウルフ・ワークス」から、直前に演目変更。この変更だけは、パンフレットに間に合ってなかった。

この2人が組むのははじめて観たかも。まったくタイプの異なるダンサーと思いきや、意外に相性はいいと感じました。

 

「Digital Love」

振付:パトリック・ド・バナ

音楽:ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
出演:スヴェトラーナ・ザハロワ、パトリック・ド・バナ

ベージュのシンプルなミニドレスで登場したザハロワがひとりで踊ったあと、黒い衣裳のパトリック・ド・バナが登場。パトリック・ド・バナは黒子のように、ザハロワをリフトし、動かし…。人形のように操られているように見えつつも、次第にザハロワの動きが自由に、解放されたように見えてくるのが面白かった。

最後にザハロワが「瀕死の白鳥」のポーズになったのは、このガラ用の特別バージョンだったのかな。

この作品の過去の動画と比べると、今回は演出が少し違っていた気がします。

 

「ドン・キホーテ」

振付:マリウス・プティパ

音楽:レオン・ミンクス
出演:マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ

明るい演目がほとんどないプログラムの中、一気に盛り上がる「ドン・キホーテ」!

マリアネラ・ヌニェスのバランスがすごかった。

このプログラムの中で、古典2作品を完璧に踊りきる2人に清々しさを感じました。このクラシックあってこそのコンテンポラリー。ガラ全体の満足度をめちゃくちゃ上げていたと思う。

 

「The Picture of…」 <新バージョン>

振付:パトリック・ド・バナ

音楽:ヘンリー・パーセル
出演:マニュエル・ ルグリ

「ルグリ、最後のステージ」と銘打たれた今回のガラ。ラストに踊るのはマニュエル・ルグリとパトリック・ド・バナの最初のコラボレーション作品でした。

海の中のようなブルーを背景に、浮かび上がるルグリのシルエット。聞こえてくる鯨の鳴き声。

隅々までコントロールされた洗練された動きは衰えも感じさせず、これまで観てきたルグリなのですが、どこか淡々とした、とても静かな印象を受けました。ああ、こうやってルグリは舞台を去っていくんだな…と、感慨深かったです。

 

おわりに

今回は残念ながら都合がつかず、Aプログラムのみの観賞でした。Bプロも観たかった。(もうちょっと公演日が多くてもいいのに…)

演目変更が相次いだりということはありましたが、出演者は当初発表通りだったのでは。これだけの出演者を日本によんでくれたことに感謝です。

今回の公演、観客の雰囲気が他の公演とちょっと違ってた。ダンサーがベテラン揃いだったから、年季の入ったバレエファンが多いのかな、なんて思いました。

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★最後までお読みいただきありがとうございました。