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大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

【大人バレエつれづれ】おさらい会(その2)の反省と大人バレエのバリエーションについて

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年末に予定していたふたつのおさらい会(スタジオ内での踊りの披露)が終わりました。

ひとつめのおさらい会の反省はこちら↓

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 ふたつめのおさらい会ではポアントでバリエーションを踊りました。反省と気づき、大人バレエにおけるバリエーションについて書いてみたいと思います。

本番はいつも一瞬

コロナ禍で思うようにレッスンできなかった今年前半の反動か、ふたつのおさらい会に出ることにしてしまった私。そのふたつが終了した今、ちょっとした「おさらい会ロス」の状態になっています。

ああ、もうとりあえず練習すべき踊りはないのか…(空虚)

 

本番は一瞬で終わりました。特に今回は「フロリナ」を踊ったので、本当に始まったと思ったらもう終わってた感じです。(1分ぐらいですからね〜、カップ麺すらできない時間です。)

内輪の会だし、そんなに緊張しているつもりはなかったのですが、ピケ・ターンのところでいつも以上に身体が持ち上がらず、「あっ緊張しているのかも」と気がつきました。自分的にはポアントのピケ・ターンの上達がひとつのテーマだったので、ちょっと悔しい…まあ練習でもきちんとできていないので、本番でできないのは当然といえば当然なんですけど。

初心者向けバリエーション?

「眠れる森の美女」の「フロリナ姫のバリエーション」というと、初心者向けバリエーションの定番。「初心者におすすめのバリエーション5選」とかでは、確実にランクインしています。

とはいえ私にとっては簡単であるわけはなく、冒頭のフェッテからもうできないし、エシャッペからアチチュードへの一連の振りもいちかばちかだし、最後のシャッセ・アントゥールナンも今回はじめて挑戦しましたが、習得できないまま終わりました。

そもそも簡単なバリエーションというものは存在しない。バリエーションはソリストの踊りですから、当然ですね。そんな中から、多少でも自分向きと思われ、なおかつ好きになれる(踊りたいと思える)バリエーションを選ばないといけない…その選択からして初心者には難しいです。

初心者向けバリエーションと紹介されているものも色々ありますが、個人的には私ぐらいのレベルでは、主役のバリエーションは避けたほうがいいかなと思っています。

自分で選ばず、潔く選択を指導の先生に委ねてしまうのも手ですね。

「フロリナ」はとにかく短いので体力に自信がない人(←私)にはおすすめのバリエーションです。あとジャンプが苦手な人(←私)にもおすすめです。

 大人バレエ、バリエーション挑戦の意味とは

こうして4ヶ月ぐらい練習したバリエーションは一瞬で終わったわけですが、この挑戦は私のバレエに何かをもたらしたのでしょうか?

正直…わからない。

ただひとつ、バリエーションを踊ってわかるのは、自分にはあまりにも色々なものが不足していること。基本的な姿勢、アンディオール、柔軟性、筋力、体力、上体の使い方…

そんなの普段のレッスンでもわかるだろう!と言われれば、確かにその通りなんですけど…わかってはいたけど改めて思い知らされる、という感じです。

本番を撮影した動画で、自分のことを客観的に見られるのも貴重。脳内でいいように補正した自分ではなく、現時点での本当の自分を知るいい機会です。

本来バリエーション練習は、バレエの基礎が身についている人がさらに技術や表現力を高めるために行うものでしょう。先生によっては、大人にはバリエーションをやらせない方針の方もいますが、それはそれで理解できる。バリエーションの練習に費やした時間を基礎練習に当てた方がいいんでは?という意見にも頷ける…

でもバリエーションはやっていて単純に楽しい!普段のレッスンもがぜんやる気がでるし。挑戦というよりは自分へのご褒美なのかもしれない 笑。(←自分に甘い大人)

大人初心者の場合は基礎が身につくのを待っていたら、機会は永遠に訪れないということもありますし!

おわりに

というわけで大人バレエのバリエーション、色々迷いながらも、機会があればまた挑戦してしまうんだろうな、懲りずに…

  

★最後までご覧いただきありがとございました。

新国立劇場バレエ団 『くるみ割り人形』小野絢子×福岡雄大【鑑賞レポート】

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新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』を観てきました。

全9公演初日の2020年12月12日(土)のマチネ。主演は新国立劇場バレエ団の看板ペア、小野絢子さんと福岡雄大さんです。

昨年の『くるみ割り人形』公演の時は、クリスマスリースやクリスマスツリーが飾られ華やかだった会場ですが、今年はコロナのせいなのか、ほとんど装飾なしでちょっと寂しい。装飾まで自粛しなくてもいい気がしますが…人が集まったり、触ったりを避けるためには仕方がないのか…それとも主催者はそれどころではないのか…

観客は連絡先を事前登録、体温チェック、手の消毒を済ませ、自分で半券を切り取って会場に入ります。観客側も主催者側も感染防止対策にだいぶ慣れてきた感じ。

公演概要

『くるみ割り人形』全2幕 新国立劇場バレエ団

2020年12月12日(土) 13:00〜

会場:新国立劇場 オペラパレス

芸術監督:吉田都

振付:ウエイン・イーグリング

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

指揮:冨田実里 管弦楽:東京フィルハーモーニー交響楽団

【キャスト】

 クララ/こんぺい糖の精:小野絢子

ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大

ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫

ねずみの王様:奥村康祐

ルイーズ:池田理沙子

シュタルバウム:中家正博

シュタルバウム夫人:関晶帆

雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布

スペインの踊り:寺田亜沙子、細田千晶、速水渉悟

アラビアの踊り:本島美和、宇賀大将、小柴富久修、清水裕三郎、中島駿野

中国の踊り:奥田花純、髙橋一輝、樋口 響

ロシアの踊り:福田圭吾、加藤朋子、木村優子、菊地飛和、関 優奈

蝶々:池田理沙子

花のワルツ:柴山紗帆、飯野萌子、井澤 諒、原 健太

 

新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』は、2017年に新制作されたウエイン・イーグリング版。ウエイン・イーグリングは元英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルで、オランダ国立バレエやイングリッシュ・ナショナル・バレエの芸術監督も務めています。

今年の新国立劇場バレエの「くるみ割り人形」全9公演の主演キャストは昨年と同じ、小野絢子&福岡雄大、米沢唯&井澤駿、池田理沙子&奥村康祐、木村優里&渡邊峻郁の4組。吉田都新芸術監督の元での初の『くるみ割り人形』だったので、新キャストがありそうと予想していたのですが、コロナの影響で難しかったのかもしれません。

昨年2019年は木村優里&渡邊峻郁ペアを鑑賞。コロナに怯えることなく鑑賞できて、握手会も開催されていた昨年の公演が懐かしい…

感想はこちら↓ 

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オケピットは密ですね…前から3列は販売されていません。1階はほぼ満席でした。

 小野絢子さんと福岡雄大さんの鉄板ペア

男女が組んだ踊りが多く、時にアクロバティックとも言えそうなリフトが多用されるイーグリング版。高度なパートナーリングが要求される振り付けですが、小野絢子さんと福岡雄大さんの2人なら、安心して観ていることができます。福岡さんにリフトされている時の小野さんは、羽が生えたように軽く見える…。

小野絢子さん主役の舞台は、およそ1年前に観た『ロミオとジュリエット』以来でしたが、キラキラした輝きと美しいラインは相変わらず。

イーグリング版の大きな特徴とも言えるのは、男性の主役がドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子の3役を踊ること。舞台には出ずっぱり、ドロッセルマイヤーの甥とくるみ割り人形はなんども入れ替わる複雑な構成、さらにくるみ割り人形ではマスクもかぶる…本当にハードそうですが、福岡さんの安定感は素晴らしかったです。

奥村康祐さんのコミカルなねずみの王様

 イーグリング版では、結構踊るネズミの王様。クララたちの乗る気球の下にぶら下がってお菓子の国までついてきてしまうなど、見せ場も多い。

昨年の公演と最も印象が違ったのは、このねずみの王様。コミカルな動きが強調され、ちょっと憎めない印象に変わりました。これは演じている奥村康祐さんのキャラクターによるところが大きそう。振り付けにはもともとコミカルな要素があったのでしょうが、それが前面に出た感じ。昨年は目が赤く光るマスクや衣裳のちょっと怖い感じに隠れて、あまり目立ちませんでした。

奥村さん演じるねずみの王様は、公演中のみならずカーテンコールでも、隣に並んでいる王子役の福岡雄大さんと手を繋ごうとして拒否され、それでもしつこく手を差し出したり、長いねずみの尻尾を自分で持ってくるくる回したりのやりたい放題で、会場の笑いを誘っていました。

奥村さんは、シーズン幕開けの『ドン・キホーテ』のガマーシュもとても良かった。果たして演技がうまいのか、地なのか…。

翌日のマチネではドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子にキャスティングされている奥村康祐さん。被り物で踊ったあとは3役で出ずっぱりのタイトルロール…昨年も書きましたが、イーグリング版は男性ダンサーにとって非常に過酷!

奥村康祐さんのほか、渡邊峻郁さん、井澤駿さんもドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子とねずみの王様、両方にキャスティングされています。

ドロッセルマイヤーは貝川鐵夫さん。貝川鐵夫さんの演じる役をいつも楽しみにしているのですが、今回のドロッセルマイヤーも独特の奇妙な味があって好きです。

一糸乱れぬ雪の国

雪の国のシーンは、いつもながら一糸乱れぬフォーメションと踊り、ハリのあるチュチュの円形の動きが美しかった!新国立劇場のコールドバレエは本当に素晴らしい。

昨年の公演で気になったチュチュのバサバサいう音は今回はさほど気にならず。座席の位置にもよるのかな…。

幻想的なお菓子の国

イーグリング版お菓子の国の装置や衣装は、子供が喜びそうなキラキラしたパステルではなく、全体的に重めのトーンで大人っぽい世界。そんな中で繰り広げられる各国の踊りはちょっと幻想的なムードです。花のワルツも、ピンクではなくてポピーをイメージしたオレンジ。

個人的に楽しみにしていたのは、シーズン幕開けの『ドン・キホーテ』で初の全幕主役に抜擢された速水渉悟さんのスペインの踊り。キレのあるダイナミックな踊りで目を引きました。女性2人を同時にリフトするなど大変そうなサポートも力強くこなしていました。

気高く美しい本島美和さんが4人の男性にかしずかれるアラビアの踊りも素敵でした。 

花のワルツもリフトが多用された男女ペアの踊り。群舞としてのフォーメーションを整えたまま、男女ペアの高度な踊りを行うのは相当大変なことだと思う…。ソリストの原 健太さんが丁寧な踊りで爽やかな印象でした。

おわりに

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』の公演は12月20日(日)まで。

くるみ割り人形 | 新国立劇場 バレエ

12月20日(日)18:00〜の公演はライブ配信があります。(*見逃し配信はなし)

主演は小野絢子さんと福岡雄大さん。

また年明けにはオンデマンド配信の予定があります。

おうちでも新国立劇場バレエ団のステージを!『くるみ割り人形』映像配信のご案内 | 新国立劇場 バレエ

 

2017年収録のイーグリング版DVD。主演は小野絢子さんと福岡雄大さんのペア↓ 

★最後までお読みいただきありがとうございました。 

Kバレエカンパニー『くるみ割り人形』ライブ配信【鑑賞レポート】

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Kバレエ カンパニーの『くるみ割り人形』12月5日(土)17:00の公演をライブ配信で鑑賞しました。主演は小林美奈さん栗山廉さんです。

公演概要

『くるみ割り人形』全2幕 Kバレエカンパニー

 2020年12月5日(土) 17:00〜

Bunkamura オーチャードホール

芸術監督/演出/振付:熊川哲也

原振付:レフ・イワーノフ

オリジナル台本:マリウス・プティパ

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 

指揮:井田勝大 管弦楽:シアターオーケストラトウキョウ

【キャスト】

ドロッセルマイヤー:宮尾 俊太郎

マリー姫:小林美奈
くるみ割り人形/王子:栗山 廉

クララ:吉田このみ

人形王国の王様 / Dr.シュタールバウム:ニコライ・ヴィユジャーニン

人形王国の王妃 / シュタールバウム夫人:山田蘭

ねずみの王様:西口直弥

フリッツ:関野海斗

雪の女王:毛利実沙子

雪の王:石橋奨也

アラビア人形:成田紗弥、髙橋 裕哉、杉野慧

スペイン人形:佐野佐代子、新居田ゆり、中井皓己、田中大智

中国人形:河合有里子、本田祥平

ロシア人形:酒匂麗、佐野朋太郎

フランス人形:萱野望美、吉田早織、塚田真夕

 【上演スケジュール】

第1幕 50分

休憩 25分

第2幕 50分

10月の『海賊』公演では、コロナの影響で音楽は録音でしたが、今回はオーケストラ。

わかりやすい物語でお子さんも楽しめる、Kバレエカンパニーの熊川版『くるみ割り人形』の特徴については、昨年の『くるみ割り人形』in Cinemaの感想で触れました。

シネマは中村祥子さん、遅沢祐介さんが主演!↓

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小林美奈さんの端正な踊り

主演の小林美奈さん栗山廉さんは2021年1月放送スタートのBSプレミアムのドラマ『カンパニー』に出演予定

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 ドラマ撮影中の小林美奈さんと栗山廉さん。小林美奈さんのインスタグラムより。

 

小林美奈さん主演の公演ははじめて観ましたが、一つ一つの動きをきっちり決めて流さない、端正な踊りでした。熊川版のかなり難しそうなグラン・パ・ド・ドゥのバリエーションも乱れることなく踊っていました。

くるみ割り人形/王子の栗山廉さんは、長身でスタイルが良くハンサム。くるみ割り人形の被り物をとったときも「ハンサムな王子登場!」みたいな感じで納得感があります。踊りと演技は爽やかでマイルド。

ベテランの存在感とフレッシュな若手の活躍

栗山廉さんのマイルドな王子に対して、アクの強い存在感を放っているのがベテラン宮尾俊太郎さんのドロッセルマイヤー。ドロッセルマイヤーの衣裳の派手な柄のマントがやたらと似合う。クララの吉田このみさんと組んで踊る場面などは躍動感があり、クララも生き生きとして見えました。

人形王国の王妃 / シュタールバウム夫人の山田蘭さんも、いつも目を引く存在。優美で華やかな存在感はさすがです。

雪の女王は、別の公演ではマリー姫にもキャスティングされている毛利実沙子さん。表情や踊りは現代的で生き生きとした感じ。雪の精のコールドバレエは揃っていて迫力がありました。いつもながら雪の量もすごい!

アラビア人形は成田紗弥さん、髙橋 裕哉さん、杉野慧さんの豪華キャスト。ちょっと三角関係っぽいシチュエーションを成田紗弥さんがとても楽しそうに演じていてよかった。

スペイン人形では、田中大智さんが目を引きました。動きがシャープで、勢いがある踊り。

ロシア人形は酒匂麗さん佐野朋太郎さん向かって左のややぽっちゃりした人(失礼!)、酒匂麗さん…ですよね??ふたりともジャンプが高かく、エネルギッシュな踊りでした。

フランス人形では萱野望美さんのラインがきれいでした。

ライブ配信ではストレスなく鑑賞

国内バレエ公演の有料ライブ配信の鑑賞は今回がはじめて。 それぞれの通信環境によるところが大きいと思いますが、ライブ配信は特にストレスなく鑑賞できました。映像が乱れたりすることもなかったです。

劇場内の様子が映ったり、開演前のオーケーストラの慣らし演奏(?)が聞こえたりするのは臨場感があっていいですね。

劇場で公演を観る時は、観ることに没入できますが、自宅でアーカイブ配信を観るときは、集中力がそがれることが多い。トイレに行きたくなったり、メールの着信が気になったり…。その集中力の差も、受け取る感動の差の一因になっている気がします。

今回のようなライブ配信だとライブで見届けたいという気持ちが働き、かなり集中できました。幕間の休憩も劇場公演と同じ長さなので、幕間でトイレと飲食を済ませることもできます。

さらに終演後のアーカイブ配信で、細部をじっくり見返すことができるのは配信のいいところ。以下に紹介したKバレエの公式チャンネルでは、生の舞台を観た後に、アーカイブ配信で見直すのもおすすめとのこと。確かに生の舞台を観て気になったダンサーを、すぐにアーカイブでチェックできたらいいですね!(お金はかかりますが 笑)

今回のアーカイブ配信は、ライブ配信スタートから24時間でしたが、欲を言えばもう少しアーカイブ配信が長いといいな〜。

劇場で観るバレエが一番ではありますが、新しい鑑賞スタイルとしてライブ配信が今後も継続されることを願います。

 

Kバレエカンパニー公式サイトより。10月に行われた『海賊』ライブ配信の裏側を関野海斗さんがレポート。Kバレエの配信を支えているのはTBSの技術!

2:46からのプロデューサーが語るバレエの撮影についての話が興味深い。

www.youtube.com

 おわりに

大幅な世代交代期を迎えているKバレエカンパニー。

ダンサーのプロフィールを見ると、Kバレエスクール出身者がかなり多くなってきています(特に男性)。熊川哲也さんが自ら育てたダンサーたちがこれからどんなKバレエカラーを創っていくのか、注目です!

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。