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大人バレエとバレエ鑑賞を楽しむための情報発信ブログ

2023年に観たバレエをまとめて振り返る その3【バレエ鑑賞メモ】

昨年観たバレエ公演やバレエシネマをまとめて記録。その3です。

鑑賞メモを投稿済みの公演については過去記事を貼っておきます。

 

2023年3月

ハンブルク・バレエ団『ジョン・ノイマイヤーの世界 Edition 2023』

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映画『ヌレエフ:伝説と遺産』

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ハンブルク・バレエ団『シルヴィア』

2023年3月11日(土)18:00開演

東京文化会館大ホール

音楽:レオ・ドリーブ
振付・ステージング:ジョン・ノイマイヤー
装置・衣裳:ヤニス・ココス

指揮:マルクス・レティネン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【キャスト】

シルヴィア: 菅井円加
アミンタ: アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ: アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン: クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン: ヤコポ・ベルーシ

【上演スケジュール】

第1部 1時間5分
休憩 25分
第2部、第3部 50分

 

2023年に印象的だった公演ベスト5には確実に入る『シルヴィア』。菅井円加さんをはじめとするダンサーたちの素晴らしさや、作品世界へ強く引き込まれる感覚が忘れられません。

そして、ヤニス・ココスの衣裳・美術が、4半世紀たってもまったく古びていないのも驚きです。

カーテンコールではジョン・ノイマイヤーも登場し、熱狂的な拍手を受けていました。芸術監督退任前にハンブルク・バレエ団が来日してくれたことに感謝!

幕が上がる前から始まるノイマイヤーの演出

SNSで上演前に何かが起こるらしいとの情報を得て、早めに劇場に到着。上演前の舞台には弓矢の的が置かれ、バックにはブルーの空に白い三日月が出ている。

開演少し前になると、緑のドレスと白いパンツの男女(1幕の”森”を演じるダンサーたち)が、舞台に登場し、ゆっくりと動き始める。徐々に観客の注目が舞台上に集まって、客席が静まりかえると、舞台の幕開け。女狩人たちが2階の客席にも現れて、的に矢を放つというドラマティックな演出で一挙に物語に引き込まれます。

開演前の無粋なアナウンスなしでも、自然に観客が舞台に集中して幕が開く。新鮮な体験でした。

幕間の休憩の前後も同じような演出がありましたが、ちょっとトイレに行くタイミングの見極めが難しかった 笑。

3つの舞踏詩

ノイマイヤーの『シルヴィア』は3部構成。パートごとにまったくイメージが異なります。パンフレットには「神話をテーマとした3つの舞踏詩」という言葉が。"舞踏詩"という言葉が、本当にこの作品にぴったりだなと思いました。

パートごとにタイトルもついているのですが、当日の配役表では、

第1部 弓の技術

第2部 感覚の世界

第3部 冬の太陽

けれど、公演パンフレットに載っていた「ノイマイヤーによるあらすじ」のところに書かれていたのは、ちょっとちがっていました。

第1部 デイアナの聖なる森

第2部 アムール/オリオンの宴

第3部 冬

 

第1部 弓の技術=デイアナの聖なる森

なんと言っても、アンナ・ラウデール演じるディアナを筆頭に、革のベスト、黒のショートパンツ、素足にポアントで弓を持って踊る女狩人たちのかっこよさ!

シルヴィアを演じる菅井円加さんのしなやかさ、躍動感は群を抜いていました。ひとつひとつのパが、くっきりとした輪郭で浮かび上がってくる感じ。

アミンタとシルヴィアの出逢いのパ・ド・ドゥでは、徐々に距離を縮めていく2人の繊細な表現に引き込まれます。菅井円加さんとアレクサンドル・トルーシュは、ユニゾンで踊るときのシンクロぶりも完璧。

赤いキャップに赤いサロペットで登場するアムールは、クリストファー・エヴァンズ。

ガタイがよくて迫力のあるタイプが多いハンブルク男性ダンサーの中で、軽快な雰囲気のクリストファー・エヴァンズは、物語を影で操る役回りにぴったりでした。『ジョン・ノイマイヤーの世界』でも、ノイマイヤーの分身を演じていましたね。

デイアナの想い人で、永遠の眠りにつかされた美しい羊飼いエンディミオン役のヤコポ・ベルーシのちょっと甘いムードも印象的だった。ゆっくりと動き続けるエンディミオンから目が離せませんでした。

第2部 感覚の世界=アムール/オリオンの宴

ムードはガラッと変わり、真紅のドレスを着たシルヴィアと燕尾服姿のアムール/オリオン、正装の客人たちが、真っ白なモダンな空間で踊る官能的な2部。2部の菅井円加さんの洗練された美しさも神々しい。

タキシードだったり、燕尾服だったり、ドレスシャツ姿だったりの男性客人たちの中で、気になったのはひとりだけ上半身裸だった長髪のダンサー。裸で目立つということを差し引いても、存在感があった。おそらく、ガラでも目立っていたダヴィッド・ロドリゲス…だったと思う。

 

第3部 冬の太陽=冬


3部の核は、年月を経て再び巡り合った年老いたシルヴィアとアミンタのパ・ド・ドゥ。可愛らしいピチカートの音楽とは、不釣り合いにも思えるちょっとクラシックで垢抜けない感じの服装のシルヴィアとアミンタ…

ガラ公演で上演されるのを観るたびに、ちょっとどう観ていいのかわからない感じがあったのですが、全幕を観てやっと腑に落ちた感じ。

パ・ド・ドゥを踊ったあと、シルヴィアは落ち着いた紳士然とした男性とともに立ち去ります。この男性は誰なのか?死?

シルヴィアが去った後の、膝を抱えるトルーシュの哀しい瞳が印象的。

アミンタは聖なる森に現れるときも、立ち去るときも、「森を守ろう」という日本語のスローガンが書かれた看板を担いでいました。パリ・オペラ座の昔の映像などでは、それらしきものは出てこない。ジョン・ノイマイヤーからのメッセージでしょうか。

Kバレエ・カンパニー『白鳥の湖』 

2023年3月22日(水) 14:00開演

Bunkamura オーチャードホール

芸術監督/演出/再振付:熊川哲也

原振付:マリウス・プティパ / レフ・イワーノフ 

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 

指揮:井田勝大 管弦楽:シアター オーケストラ トウキョウ

衣裳・舞台美術:ヨランダ・ソナベンド / レズリー・トラヴァース

照明デザイン:足立恒

【キャスト】

オデット/オディール:日髙世菜
ジークフリード:山本雅也
ロットバルト:堀内將平

王妃:山田蘭

ベンノ(王子の友人):関野海斗   

家庭教師:ビャンバ・バットボルト
パ・ド・トロワ:岩井優花、吉田周平、成田紗弥

4羽の白鳥:山田夏生、吉田早織、塚田真夕、辻梨花

2羽の白鳥:小林美奈、戸田梨紗子

6人の姫:成田紗弥、岩井優花、佐伯美帆、辻久美子、吉岡眞友子、長尾美音

ナポリ:山田夏生、吉田早織、栗原柊、本田祥平

チャルダッシュ:戸田梨紗子、グレゴワール・ランシェ

塚田真夕、辻梨花、世利万葉、藤吉沙季、金瑛揮、武井隼人、本元光、森雅臣

マズルカ:川本果侑、島村彩、丸山さくら、清水理那、吉田周平、岡庭伊吹、髙橋芳鳳、中井 皓己

スペイン:高橋怜衣、栗山結衣、布瀬川桃子、今本和佳、杉野 慧、栗山廉、奥田祥智、山田博貴

【上演スケジュール】

プロローグ・第1幕・2幕 70分

休憩 25分

第3幕・4幕 65分

2021年春の日髙世菜さん主演の『白鳥の湖』の配信を観たのがきっかけで、日髙さん推しになったので、今回日髙さんのオデット/オディールを舞台で観るのを楽しみにしていました。

日髙さんの細く伸びやかな手足のライン、端正なテクニックは、オデット/オディールを踊るために生まれてきたダンサーのようです。配信のときより、のびのびと大胆になった印象。踊りの緩急がよりはっきりし、ギリギリまで攻めていくような音の取り方が印象的でした。

ジークフリート王子は山本雅也さん。このふたりが主演で組むのははじめてかな?

長身の日髙さんとのバランスからいうと、若干身長が足りない感じはあるのですが(失礼!)、相性はよかった気がする。ふたりの気持ちの交流が感じられる2幕、後悔と悲嘆にくれる4幕と、感情のこもった踊りでした。

関野海斗さん(退団されてしまいましたね…)の軽快なベンノ、岩井優花さん、吉田周平さん、成田紗弥さんによる躍動感のあるパ・ド・トロワ、小林美奈さんのダイナミックな大きな白鳥も印象に残りました。

 

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマ『赤い薔薇ソースの伝説』

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新国立劇場バレエ団『DANCE to the Future 2023』

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パリ・オペラ座バレエ団 シネマ『眠れる森の美女』

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おわりに

公演4回にシネマ3本の3月。内容も濃厚な味わいのものが多く、見応えありました!

★最後までお読みいただきありがとうございました。

2023年に観たバレエをまとめて振り返る その2【バレエ鑑賞メモ】

昨年観たバレエ公演やバレエシネマをまとめて記録。その2です。

鑑賞メモを投稿済みの公演については過去記事を貼っておきます。

2023年2月

日本バレエ協会公演 水谷実喜×アクリ瑠嘉『ドン・キホーテ』

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東京バレエ団『上野水香オン・ステージ』Bプロ

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英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマ『ダイヤモンド・セレブレーション』

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新国立劇場バレエ団 小野綾子×福岡雄大 『コッペリア』

2023年2月23日(木・祝)14:00開演

新国立劇場オペラパレス

芸術監督:吉田都

振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ
芸術アドヴァイザー/ステージング:ルイジ・ボニーノ
美術・衣裳:エツィオ・フリジェーリオ
照明:ジャン=ミッシェル・デジレ

指揮:マルク・ルロワ=カラタユード
管弦楽:東京交響楽団

【キャスト】

スワニルダ :小野絢子
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之

スワニルダの友人:寺田亜沙子、飯野萌子、渡辺与布、広瀬碧、益田裕子、花形悠月

【上演スケジュール】

第1幕 45分

休憩 25分

第2幕 50分

 

2021年に新型コロナの影響で中止になった公演を、全キャスト無料ライブ配信したことが話題になった新国立劇場バレエ団のローラン・プティ版『コッペリア』。当時チケットを買っていたのも、小野絢子さん×渡邊峻郁さんの組。あのとき配信でしか観られなかった公演を、劇場で観るのを楽しみにしていました。

ところが、公演当日に渡邊峻郁さんの降板が発表され、福岡雄大さんが代役で出演!配信で観た渡邊峻郁さんのひょうひょうとしたフランツがとてもよかったので、ちょっとガッカリ…。もちろん福岡さんが素晴らしいダンサーであることは重々承知していますが、私の中ではフランツというイメージではなかったのです…この舞台を観るまでは。

プティ版『コッペリア』はフランツが舞台中央でタバコを吸っているシーンから始まります。福岡さんのタバコを燻らせる佇まいと、踊り始めた姿を観て、「フランツが似合わないなんて、完全に私が間違っていました!」と謝りたくなりました。

青年らしいシャープさ、しなやかな若さのオーラが、福岡さんの全身から発散されていたからです。

あとはもう、最後まで完璧な踊りでした。テクニックのキレ、躍動感、音に気持ちよくはまる動き…公演初日の急な代役というプレッシャーを完全にパワーに変換しているように感じました。

そして久しぶりに全幕で観た、小野絢子×福岡雄大の新国看板ペアの相性は素晴らしかった。小野絢子さんの可憐で蠱惑的で気が強そうなスワニルダと、福岡さんのやはり強気なフランツ。パワーカップルというムードで息もぴったり。

2幕のグラン・パ・ド・ドゥのコーダで、フランツがスワニルダを回転をかけて放り投げ、お姫様キャッチするスローイングなどは相当の大技(しかも2連発)でしたが、軽々とクリア。

お互いの信頼感が目にみえるようなパートナーリングでした。

プティ版の肝ともいえる、コッペリウスの孤独と悲哀を表現する山本隆之さんもよかった。人形スワニルダと楽しく踊った後、夢から覚めたように急に人形の扱いがぞんざいになるところとか、深い哀しみを感じさせました。

主要キャスト3人とスワニルダの友人6人以外は、衛兵たちと街の娘たちしかでてこないプティ版の『コッペリア』では、コール・ド・バレエの配役も豪華です。

印象的だったのは、衛兵の福田圭吾さん。表情や踊りの洒脱なニュアンスが素晴らしく、ついつい福田さんばっかりオペラグラスで追ってしまいました。

作品とは関係ないけど、今回鑑賞した3階R側の席からはコッペリアの窓がほとんど見えなかった!以前ロミジュリを4階から観てバルコニーの上方が見切れてたことがありましたが、それに匹敵する、まさかの見切れ。痛恨のミス!次回のために記録しておきます。

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマ金子扶生×ウィリアム・ブレースウェル『くるみ割り人形』

英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズン2022/23

英国ロイヤル・バレエ団『くるみ割り人形』

収録日:2022年12月8日

【振付】ピーター・ライト
【原振付】レフ・イワーノフ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術】ジュリア・トレヴェリャン・オーマン
【原台本】マリウス・プティパ(「くるみ割り人形とねずみの王様」 E.T.A. ホフマンに基づく)
【プロダクションとシナリオ】ピーター ・ライト
【ステージング】クリストファー・カー、ギャリー・エイヴィス
【指揮】バリー・ワーズワース
【管弦楽】ロイヤル・オペラ ・ ハウス 管弦楽団 
【出演】

ドロッセルマイヤー:ベネット・ガートサイド
クララ:前田紗江
ハンス・ピーター/くるみ割り人形:ジョセフ・シセンズ
金平糖の精:金子扶生
王子:ウィリアム・ブレイスウェル
ドロッセルマイヤーのアシスタント:中尾太亮
シュタルバウム博士:ギャリー・エイヴィス

クララのパートナー:ジャコモ・ロヴェロ/ キャプテン:テオ・ドゥブレイル
アルルカン:レオ・ディクソン/ コロンビーヌ:ミカ・ブラッドベリ
兵士:ジョンヒュク・ジュン/ ヴィヴァンデール:レティシア・ディアス
ねずみの王様:デヴィッド・ドネリー
スペイン:ミカ・ブラッドベリ、トーマス・モック、マディソン・ベイリー、アメリア・タウンゼンド、ハリス・ベル、ケヴィン・エマートン
アラビア:メリッサ・ハミルトン、ルーカス・ビヨルンボー・ブレンズロッド
中国:ジュンヒュク・ジュン、中尾太亮
ロシア:フランシスコ・セラノ、ジャコモ・ロヴェロ
葦笛:カタリーナ・ニケルスキ、レティシア・ストック、シャーロット・トンキンソン、ユー・ハン
ローズ・フェアリー(薔薇の精):マヤラ・マグリ
ローズ・フェアリーのエスコート:レオ・ディクソン、デヴィッド・ドネリー、テオ・ドゥブレイル、カルヴィン・リチャードソン
花のワルツのソリスト:佐々木万璃子、レティシア・ディアス、ジュリア・ロスコ―、ジーナ・ストーム=ジェンセン
天使と子供たち:ロイヤル・バレエ・スクールの生徒たち

【上映スケジュール】2 時間 39 分

解説+インタビュー 18分

第1幕 53分

休憩 17分

解説+インタビュー 11分

第2幕 60分

なんといっても、金子扶生さんの金平糖の精の圧倒的な輝き!眩いばかりのオーラと正確なテクニックが素晴らしい。コーダ 終盤では驚愕のスピードで回転していました。

この公演では金子さんを筆頭に、日本人ダンサーの活躍が目立ちました。

クララに抜擢された前田紗江さんは踊りが大きく華やか。ドロッセルマイヤーの助手とチャイナ踊った中尾太亮さんのキレのある踊りもよかった。

花のワルツの4組のソリストの1人だった佐々木万璃子さん。男女ともに高身長 ダンサーで固められたソリストの中で、佐々木さんは1番小柄でしたが、その伸びやかな踊りが目を引きました。

各国の踊りで印象的だったのは、メリッサ・ハミルトンとルーカス・ビヨルンボー・ブレンズロッドのアラビア。鍛え上げられた肉体&長身ペアの身体能力を活かした踊りに、観客の拍手もひときわ大きかったです。

おわりに

公演3回、シネマ2回で忙しかった2月。

私的月間MVPは新国立劇場バレエ団『コッペリア』の福岡雄大さんでした。

 

★最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2023年に観たバレエをまとめて振り返る その1【バレエ鑑賞メモ】

昨年はあまりバレエ公演の鑑賞メモが投稿できませんでした。

とにかく忘れっぽい自分のために鑑賞記録だけは残しておきたいと思い立ち、2023年に観たバレエ公演やバレエシネマをまとめて記録しておこうと思います。

2023年1月

パリ・オペラ座バレエ団シネマ オーレリ・デュポン×ロベルト・ボッレ『マノン』

収録:2015年5月18日  パリ・オペラ座 ガルニエ宮

指揮・編曲:マーティン・イェーツ
演奏:パリ・オペラ座管弦楽団
美術:ニコラス・ジョージアディス
振付:ケネス・マクミラン

【出演】

マノン・レスコー:オーレリ・デュポン

デ・グリュー:ロベルト・ボッレ

レスコー:ステファン・ビュリョン

レスコーの愛人:アリス・ルナヴァン

ムッシューG.M.:バンジャマン・ペッシュ

看守:カール・パケット

恵比寿ガーデンシネマ、パリ・オペラ座バレエシネマフェスティバルの3作目。オーレリ・デュポンの引退公演の映像。デ・グリュー役のエルヴェ・モローが怪我で降板し、ロベルト・ボッレが代役をつとめた舞台です。

来日公演で観たオーレリ・デュポン×エルヴェ・モローの『椿姫』が素晴らしかったので、本当はモローが観たかったけど…。モローとは全くタイプが違うボッレを、なぜわざわざパリ・オペラ座外から?と思ってましたが、『マノン』でのふたりの相性は、予想より良かった。分かり合えないけど、それでも愛し合う2人というムードがありました。

デュポンは素晴らしかった。繊細な表現や表情豊かな腕の動きに魅了されました。心身ともに今が頂点と感じさせるような踊り。パリ・オペラ座の引退年齢、見直した方がいいのでは?と思わせます。(それとも、頂点で引退させるという設定なんだろうか?)

作品とは関係ないのですが、カーテンコールで印象的なシーンがありました。ひとり舞台に残されたデュポンの上に降り注ぐシルバーの星型の紙吹雪。その一枚を手に取って、自分の胸元に張り付け、はにかんだように微笑んだデュポン。「ああ、この人は生まれながらのエトワール(星)なんだな」と思わせる瞬間でした。

デュポンの引退公演だけあって、脇を固めるダンサーたちも豪華。白タイツの脚が美しいステファン・ビュリオンのレスコー、バンジャマン・ペッシュの存在感のあるムッシューG.M、カール・パケットの冷酷な看守、どれも見事でした。そして当時入団4年目のユーゴ・マルシャンが群舞のなかでも輝きすぎてた!

新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』

2023年1月13日(金)19:00開演

新国立劇場オペラパレス

芸術監督:吉田都

指揮:ポール・マーフィー
管弦楽:東京交響楽団

ピアノ(A Million Kisses to my Skin ):高橋優介

【上演スケジュール】

第1幕 30分

休憩 25分

第2幕 70分

新国立劇場バレエ団による『A Million Kisses to my Skin』、『シンフォニー・イン・C』と、海外からのゲスト2組による『眠れる森の美女』のグラン・パ・ド・ドゥ、『ドン・ジュアン』という、バラエティに富んだプログラム。「ゲストが英国ロイヤル・バレエ団(2023年6月来日)とハンブルク・バレエ団(2023年3月来日)って、もしかすると?」と思ってましたが、当日招聘元のNBSのチラシが配られていていて、まさかのタイアップ(的なもの?)だったことが判明 笑。

A Million Kisses to my Skin <新制作>

【振付】デヴィッド・ドウソン
【音楽】ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
【美術】デヴィッド・ドウソン
【衣裳】竹島由美子
【照明】バート・ダルハイゼン

【出演】米沢 唯、柴山紗帆、小野絢子、五月女 遥、中島春菜、根岸祐衣、渡邊峻郁、速水渉悟、中島瑞生

体を極限まで使うような振付がスリリング!ダンサーから発散される強いエネルギーを感じました。衣裳デザインはレオタードブランドYUMIKOでもお馴染みの竹島由美子さん。繊細なブルーの色合いが美しかった。

『眠れる森の美女』第3幕よりグラン・パ・ド・ド

【振付】マリウス・プティパ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【衣裳】ルイザ・スピナテッリ
【出演】ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール(英国ロイヤル・バレエ団)

ヤスミン・ナグディ&マシュー・ボールは安定の美しさと華やかさ。ただマシュー・ボールはちょっと不調だったのかも?このところ感じていた「マシュー・ボールは王子より、アクの強い役の方がハマるのでは?」という思いを強くしました。

『ドン・ジュアン』(抜粋)

【振付】ジョン・ノイマイヤー
【音楽】クリストフ・ヴィリバルト・グルック、トマス・ルイス・デ・ビクトリア
【衣裳】フィリッポ・サンジュスト
【出演】アリーナ・コジョカル(ハンブルク・バレエ団 ゲストダンサー)、アレクサンドル・トルーシュ(ハンブルク・バレエ団 )

ガラ公演でやるには難しそうな演目ですが、コジョカルとトルーシュのドラマに引き込む力がすごかった。ナルティスティックなドン・ジュアンを演じるアレクサンドル・トルーシュも、意外性があって素敵。

シンフォニー・イン・C

【振付】ジョージ・バランシン
【音楽】ジョルジュ・ビゼー
【衣裳】大井昌子
【照明】磯野 睦

【出演】

〔第1楽章〕米沢 唯、福岡雄大
〔第2楽章〕小野絢子、井澤駿
〔第3楽章〕池田理沙子、木下嘉人
〔第4楽章〕吉田朱里、中家正博

まさにニューイヤー・オールスター・バレエ!新春にふさわしい華やかさで、フィナーレに向けてどんどん盛り上がっていく高揚感がたまらない。毎年恒例にしてほしいぐらい。

それぞれに異なる楽章の雰囲気が、ダンサーの個性に合っていました。プリンシパル、ファースト・ソリスト勢揃いの中に抜擢されていた吉田朱里さんがまわりに負けない輝きを放っていたのが印象的。

第3楽章の池田理沙子さんが途中で怪我をされたようで、フィナーレに出てこないというアクシデントも。翌日からは奥田花純さんが代役で出演されていました。(池田さんはその後、比較的早く復帰されていたので良かった。)

パリ・オペラ座バレエ団シネマ エレオノラ・アバニャート×ユーゴ・マルシャン『夏の夜の夢』

上映時間:1時間52分

収録:2017年3月 パリ・オペラ座オペラ・バスティーユ

振付:ジョージ・バランシン

音楽:フェリックス・メンデルスゾーン

​衣装・舞台:クリスチャン・ラクロワ

​出演:

タイターニア:エレオノラ・アバニャート

オベロン:ユーゴ・マルシャン

パック:エマニュエル・ティボー

ハーミア:レティシア・プジョル

ライサンダー:アレッシオ・カルボーネ

ヘレナ:ファニー・ゴルス

ディミトリウス:オドリック・ベザール

ヒッポリタ:アリス・ルナヴァン

テーセス:フロリアン・マニュネ

ボトム・フランチェスコ・ヴァンタッグロ

タイターニアの騎士:ステファン・ビュリヨン

パピヨン:ミュリエル・ズスペルギー

ディヴェルティスマン:パク・セウン、カール・パケット

 

パリ・オペラ座バレエシネマフェスティバルの4作目。バランシン振付、ラクロワ美術・衣裳の、まさに夢のように美しい作品。以前配信で観て以来、ぜひもう一度観たいと思っていました。

まず配役が素晴らしい。エレオノラ・アバニャートの可憐で、なおかつ気が強うそうなタイターニアと、ユーゴ・マルシャンの圧倒的に高貴で美しいオベロン。エマニュエル・ティボーのパックも似合い過ぎです。

結婚行進曲ではじまるディヴェルティスマン中心の2幕は、別の作品かと思うほど1幕と雰囲気が異なるけど、踊りは見応えあり。伸びやかなアリス・ルナヴァン、端正なパク・セウンとカール・パケット。

タイターニアのピンクのドレス、大きなシェルのような寝台、パリ・オペラ座学校の生徒たちが演じる妖精たちの衣裳、内側だけピンクになった2幕のコールドバレエのシャンパン色のチュチュ…ラクロワの衣裳・美術は、何度観てもため息がでるような美しさでした。

おわりに

これが1月分。メモを見つつ振り返っていると、つい関連の動画を見てしまったりして予想外に時間がかかりました。はたして12月までたどり着けるのか?

 

★最後までお読みいただきありがとうございました。